4.採用及び現職研修の改善・充実

 教員としての資質能力は、養成、採用、現職研修の各段階を通じて形成されていくものであり、教員養成・免許制度の改革に対応して、採用及び現職研修についても、一層の改善・充実を図るとともに、必要な見直しを行っていくことが必要である。この場合、大学における養成段階から、採用5年目程度までの概ね10年程度を、教員として必要な資質能力の定着を図り、その向上に向けた基盤を形成する重要なプロセスとして位置づけ、これをどのように機能させるのかという視点に立つことが重要である。

(1)採用の改善・充実

 教員の採用については、任命権者である都道府県教育委員会等が、それぞれの採用方針に基づき、様々な工夫を凝らして採用選考試験を実施し、教員として適格性のある者の採用に努めてきたところであり、特に、近年は面接の重視、実技試験の実施、社会経験の評価など、人物評価を重視する方で改善が進められている。

 教員の採用は、平成9年の教養審第一次答申において示されているように、開放制の教員養成による多様な免許状取得者の存在を前提に、教員としてより優れた資質能力を有する者を選考する過程である。このため、養成段階で教員として最小限必要な資質能力を身に付けているかどうかを確認し、その上で、任命権者が求める教員像に照らして、より優れた資質能力を備えた人材を確保していくことが、今後とも重要である。

 また、教員養成・免許制度の改革により、養成段階で教員として最小限必要な資質能力を身に付けさせることが期待できることから、これを踏まえた採用選考方法の見直しを行うことが必要である。具体的には、各都道府県教育委員会等は求める教員像をより明確かつ具体的に示すとともに、それに合致する者を採用するにふさわしい選考方法を工夫することが重要である。その際、多面的な人物評価の一層の充実や、ボランティア等の諸活動の実績の評価等のほか、例えば大学の成績や教職課程の履修状況をこれまで以上に適切に評価すること等も考慮する必要がある。

 今後、教員の大量採用時代を迎えることが見込まれることから、各都道府県教育委員会等においては、採用選考において、質及び量の両面で優れた教員を確保するための方策について検討していくことが不可欠である。このため、教職経験を有する者や民間企業等の勤務経験を有する者の登用、退職教員の積極的な活用、任期付任用制度の活用等、多様な人材を登用するための採用選考の一層の改善・工夫を図っていくことが必要である。

(2)現職研修の改善・充実

 教員の現職研修については、任命権者である都道府県教育委員会等においては、法定研修である初任者研修や10年経験者研修をはじめ、教職経験等に応じた研修や社会体験研修など、様々な研修を実施している。また、国においても、各地域の中核的な役割を果たす教員等を対象とした研修を実施しており、国、都道府県、市町村の各段階において、それぞれの役割分担のもと、教職経験や職能に応じた研修の体系的な整備が図られている。

 初任者研修については、平成9年の教養審第一次答申において、養成段階で修得した最小限必要な資質能力を、円滑に職務を遂行し得るレベルまで高めることを目的とするものとされているが、例えば、研修内容が画一化している、研修内容が講義中心となっている等の課題が指摘されている。
 また、10年経験者研修については、平成15年の制度創設から間もないため、必ずしも個々の教員の能力・適性等に応じた研修が実施されていないことや、教員のライフステージに応じた研修となっていないこと等が指摘されている。
 このため、教員養成・免許制度の改革に対応して、都道府県教育委員会等においては、初任者研修及び10年経験者研修について、これまでの実施状況を検証するとともに、研修内容・方法や受講者の評価の在り方も含め、一層の改善・充実を図っていくことが必要である。また、都道府県教育委員会等における研修が多様化する中で、国においては、初任者研修や10年経験者研修の内容や評価方法等について、モデルを作成するなど、全国的な水準を確保するための方策について検討することが必要である。なお、10年経験者研修については、国において、制度創設の経緯や制度の趣旨等を踏まえつつ、今後の実施状況も見ながら必要に応じて、その在り方について検討していくことが必要ではないか。

 平成11年の教養審第三次答申で示されているように、今後は、行政研修や校内研修に加えて、教員の自主性・主体性を重視した自己研修が一層重要であり、学校や都道府県教育委員会等においては、このような研修活動を奨励・支援していくことが必要である。このうち、行政研修については、臨時採用や非常勤講師の経験者、民間企業経験者など、多様な経歴を有する教員が増加している状況を踏まえ、個々の教員のキャリアに応じた柔軟な研修体系や研修内容について検討することが必要である。また、教員の自己研修については、大学や教育研究団体等との連携による多様な研修機会の提供や、研修プログラム・教材の研究開発等について、考慮する必要がある。

これからの校長等には、学校の自主性・自立性の確立に向けた学校運営の改善のためのマネジメント能力の向上や、教員評価や教員免許更新制の実施にあたっての評価者としての能力の向上等が求められており、都道府県教育委員会等においては、これらの能力向上のための研修の充実について検討することが必要ではないか。

 現在、国として実施する責務を有する研修は、独立行政法人教員研修センターにおいて一元的に実施しているが、特に各地域において中核的な役割を担う教員等を一堂に集めて行う研修等については、我が国全体の教育水準の維持・向上を図る上で極めて重要であり、今後とも、一層の充実を図っていく必要がある。また、同センターにおいては、今後、都道府県教育委員会等が行う研修の改善・充実に資するよう、全国の優れた実践事例の収集・提供や、研修モデルの開発・提供など、教育委員会に対する指導、助言、援助の機能を充実、強化していくことが必要ではないか。

 都道府県教育委員会が所管する教育センターにおいては、研修の実施のみならず、学校現場や教員養成を行う大学、教育委員会と密接に連携・協力して、地域に根ざした教材やカリキュラム等の研究開発を行うとともに、優れた指導実践を蓄積し、学校現場に提供していくなど、その機能の充実・強化を図ることが必要ではないか。

平成11年の教養審第三次答申でも指摘されているように、今後は、現職研修の面でも、大学と教育委員会や学校との一層の連携を図っていくことが重要である。特に、教員免許制度の改革や教員養成の専門職大学院の設置により、養成段階における連携が飛躍的に進むことが期待できることから、その成果を現職研修にも活用していくことは有益である。このため、例えば、大学における研修プログラムの研究開発や現職教員を対象とした研修講座の開設、教育センター等との共同による研修事業の実施等について検討することが必要である。

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