3.教職課程の改善・充実

 教員養成・免許制度の改革が実効あるものとなるためには、大学の教職課程が教員に必要な資質能力を確実に身に付けさせるものとなることが不可欠である。このため、教員養成を行う大学においては、教員として必要な資質能力を身につけた学生を送り出すことは大学の当然の責務であり、「社会に対する約束」であると強く自覚し、養成する教員像を明確にするとともに、それを達成するための組織編成やカリキュラム編成等を行うなど、主体的な改善・充実に努めていくことが必要ではないか。

 また、教員には豊かな人間性や社会性、対人関係能力、コミュニケーション能力、常識や教養などの基礎的素養を備えていることが求められるが、変化の激しい社会状況や子どもの多様化などを考慮すると、教員養成を行う大学には、これまで以上に広く豊かな教養を身に付けた人材を育成するため、体験活動やボランティア活動などの充実に加えて、自然科学や人文科学、社会科学等の高度な教養教育が求められる。また、これらの教育を通して、地域社会理解や教材解釈等の能力を育成することも必要である。

 平成11年の教養審第三次答申において、教職課程のモデルカリキュラムの開発研究が提言され、これを受けて、複数のモデル・コア・カリキュラムが作成されたが、必ずしも各大学において十分活用されるには至っていない。このため、引き続き、各大学における構造的・体系的なカリキュラム編成に資するようなモデル・コア・カリキュラムの検討を進めるとともに、教育内容・方法の開発・充実や実践性の高い優れた取組みを支援していくことが必要ではないか。

 教育実習については、学校現場での教育実践を通じて、自らの教職への適性や進路を考える貴重な機会であり、今後とも大きな役割が期待される。このため、教職課程全体を通じた計画的な実施の工夫や、受講要件の明確化、大学の教員と指導教員による連携の強化、事前・事後指導の徹底、受け入れ側の学校の理解促進と負担軽減、単位付与の際の適切な評価等の点で、一層の改善・充実を図っていくことが必要ではないか。

 各大学において、教員養成・免許制度の改革の理念を踏まえた教員養成が確実に行われるようにするため、例えば、大学全体の教職課程の運営方針等を教職課程の認定に係る審査の対象とすることや、認定後の教職課程の変更について、特に教職課程履修者が一度も卒業していない段階での変更については、その可否も含めて方法を見直すこととするなど、審査基準や手続き等の見直しを検討することが必要ではないか。

 教職課程として認定された課程が、所定の基準を満たしているかどうかを適切に確認するため、例えば、教員養成部会の下に置かれている課程認定委員会による実地視察の充実や、定期的に教職課程の運営状況の報告を課すなどの事後的な調査の実施等について、検討する必要があるのではないか。これらの実施状況も見ながら、今後、教職課程を継続的に評価する仕組みとして、課程認定委員会の体制強化や外部評価機関の設置等について検討する必要があるのではないか。また、この点に関連して、法令や認定基準に違反すると認められる等の場合には、例えば是正勧告や課程認定の取り消し等の措置を行うことを可能とすることについても、検討する必要があるのではないか。

 平成9年の教養審第一次答申を踏まえて、平成10年に教育職員免許法を改正し、「教職の意義等に関する科目」や「総合演習」の新設、中学校における教育実習の充実など、教職に関する科目の格段の充実を図ったところである。今後、この改正の効果・影響等について検証を行うとともに、義務教育の改革の動向や教育課程の基準の見直し等も視野に入れつつ、教職課程の科目の在り方等について検討することが必要ではないか。

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