5.教員養成・免許制度の改革の方向

 大学における教員養成や開放制の原則の理念、及びこれらの原則の下に行われてきた我が国の教員養成の実績等を考慮すると、今後とも、この2つの原則は尊重することが適当である。したがって、教員養成・免許制度の改革に当たっては、これらの原則を尊重しつつ、制度のリニューアルを図るという視点に立って、改革を進めることが適当である。
 また、養成段階で、教員たるにふさわしい資質能力を確実に身に付けることができるようにするとともに、教員免許状が教員として最小限必要な適格性や専門性を身につけたことを保証するものとして、適切に機能するようにするという視点も重要である。

 このような基本的な視点に立って教員養成・免許制度の改革を図る場合、今後の改革の方向としては、次の2点が重要である。

1.大学の教職課程が、教員に必要な資質能力を確実に身に付けさせるものとなるようにすること

 我が国の教員養成が大学の教員養成の機能に期待して行われている以上、各大学は教員養成を自らの主要な任務として強く自覚する必要があり、教員として必要な資質能力を身に付けた学生を送り出すべく、質の高い教育活動を責任を持って行うことは、大学としての当然の責務である。
 教職課程の教育内容・方法等の改善については、平成9年の教養審第一次答申や平成11年の教養審第三次答申をはじめ、これまでしばしば指摘されてきたところである。教員養成を行う大学は、これらの答申を真摯に受け止め、学内に周知するとともに、学長や学部長等がリーダーシップをもって、改善に向けた取組みを積極的に行うことが期待される。同時に、各大学における教職課程の改善が着実に進むよう、特色ある取組みを支援するための方策や、教職課程の認定に係る審査や事後チェックの在り方等について、検討することも必要である。

2.教員免許状が、教職生活の全体を通じて、教員に必要な資質能力を確実に保証するものとなるようにすること

 前述のように、現在の教員免許状については、教員に必要な資質能力を確実に保証しているのかという制度的課題や、教員免許状の社会的評価に関わる課題など、様々な問題がある。我が国の教員養成が開放制の原則の下に行われている以上、実際の教員採用者数よりも免許状取得者数が相当程度、多くなることは避けられないことである。また、教職課程を履修した多くの者が社会の様々な分野で活躍することは、教育に対する国民の理解を高める等の点で、好ましいことでもある。
 しかしながら、教員養成を行う大学が飛躍的に増加し、免許制度上の最低限の基準は満たすものの、質的に必ずしも十分とはいえない教職課程が増えた結果、教員免許状がいわば「希望すれば、容易に取得できる資格」とみなされ、社会的に評価が低下してきたことは否定できない。また、そのことが社会全体の高学歴化等の影響もあり、教員や学校に対する信頼低下の一因になっている。教員免許状が基本的に教職に就くための唯一の資格であることを考えると、教員に対する尊敬と信頼を確立するためには、免許状取得者が身に付けた資質能力を社会に対して明らかにし、保証することが不可欠である。
 このような観点から、教員免許状について、授与の段階から、その後の教職生活に至る全過程を通じて、教員に必要な資質能力を確実に保証するものとなるように制度的な整備を図ることが必要である。
 具体的には、まず教員として最小限必要な資質能力(教員としての適格性及び専門性)を有していることを適切に評価・確認した上で免許状を授与するよう、教員免許状の授与の仕組みを見直すことが必要である。
 また、教員免許状を取得し、教職に就いた後も、一定期間ごとに教員として最小限必要な資質能力を有しているかどうかを確認し、明らかにすることが必要であり、このための方策として、教員免許更新制を導入することが必要である。
 さらに、教員には、教職経験を積むことにより、専門性の着実な向上が期待されていることを踏まえると、最小限必要な資質能力を維持するだけでなく、専門性の向上が促進されるよう、教員免許制度を改革することが必要である。

 一方、現在の学校教育や教員を取り巻く状況等を考慮すると、教員養成・免許制度の改革にあたっては、次のような点に留意することが必要である。

  • 質の高い人材を迎え入れるためには、教職や学校が魅力ある職業、職場であることが不可欠であり、現職教員や教員志願者の意欲を高める方向で改革を進める必要があること
  • 努力している教員が適切に評価され、処遇されるよう、教員の評価や処遇等の在り方について検討する必要があること
  • 教員の多忙感を軽減し、本来の教育活動に専念できるよう、学校の事務・業務の見直しや、国・都道府県・市町村が行う調査等の精選、事務処理体制の整備などの環境整備に努める必要があること
  • 児童生徒の学ぶ意欲や学力・気力・体力の低下、いじめや不登校、校内暴力等の問題の深刻な状況等、学校教育が抱える複雑・多様化する課題に、学校全体として組織的に対応するための体制整備が必要であること

お問合せ先

初等中等教育局教職員課