資料5 第6回教員免許制度ワーキンググループにおいて出された主な意見

1.教員養成・免許制度の改革の基本的な考え方

  • 知識を積み重ねる仕組みをつくり、新しい知見等に対する資質能力が備わっていることを保証することで、教員が尊敬され、信頼されるようにする中に、更新制を位置付けられるのではないか。
  • 更新制は導入しなければならないが、更新制が教員の最低限の資質向上のためだけに利用されるのでは、教員の向上意欲を刺激しないし、優れた教員を生み出すことはできない。
  • 更新制は、教職の専門性が、教職生活全体を通じて向上されていくことを促進し、社会に対して証明していく一つの手段という考え方であるべきである。
  • 教職生活を通じての専門性だけでなく、適格性や、同僚性のような共同作業として教育活動ができる資質についても、触れた方が良い。
  • 更新制を打ち出すにあたり、制度設計のみを検討するのであれば、不完全燃焼となるため、更新制をてこに、現行の教員養成や研修を根本的に問い直すことが必要になる。
  • 教員養成についての大学の責務に触れているが、素晴らしい実践をしている大学と、最低限のことすらできていない大学の格差を、どのように検証していくかについて、触れた方が良い。
  • 国立大学法人化以降、各大学では財政面を考えざるを得なくなり、カリキュラム編成等にも影響が出ている。法人化後の運営経費も含めた、教員養成における財政上の問題も課題としてある。
  • 教員養成については、教養教育と専門教育が二分されているのが問題である。また、今後は、地域に根差す教育が求められている。
  • 日本の教員は、使命感と情熱で頑張っており、これを評価し、サポートする仕組みをつくらなければならない。
  • 総論では、なぜ更新制を検討しなければならないのかという問題意識を記述すべき。

2.改革の具体的方策

1.教員免許状の授与の仕組みの見直し

  • 適格性については、学級経営や生徒指導といった科目の中で、それらを相互に関係させながら適格性を判断するものであり、特定の科目のみで適格性を判断するのは難しい。
  • 現行の教職課程を前提にするなら、より教育現場に学生を置かせるようなカリキュラム開発を行い、そこで適格性を判定すべきではないか。
  • 教職の意義等に関する科目は、教職に対するモチベーションとしてどのような勉強をすれば良いのかという意識を持たせるものとする一方で、適格性に関する科目という考えから、むしろ4年次に持ってくるべきではないかという意見があった。
  • 大学においても、適格性を身に付けさせるために努力しているが、十分ではない。適格性は、実践的な活動から身に付いてくる。このため、案1は必要条件であり、案2の考え方まで含めて十分条件という形が検討できないか。
  • 座学的な科目であれば、適格性の判断は難しい。1~2年次の段階に2週間程度、学校現場でのインターンシップやボランティア等を行い、そこで教員に向いているか自己判断させ、3~4年次に、改めて進路を考えさせるのはどうか。
  • 更新制を前提とした免許状授与の仕組みを考えると、案2の考え方が妥当。大学が自己評価をして、実習を良い方向に高めていくとしても、完璧ではない。ただし、暫定の免許状を付与し、その後、正規の免許状を授与することは混乱を招く。5年間の有効期限付の正規の免許状を授与する方が良いのではないか。
  • 教育実習については、第三者の評価委員会をつくり、一定基準の下で、客観的な評価ができるようにしても良い。
  • 更新制がない場合、免許状授与のハードルを高くすることが大切だが、更新制や教員評価等を重視する中で免許状授与の仕組みを考える場合には、免許状授与のハードルが高すぎると、外部の多様な人材を集める際に、プラスに作用しない。
  • 現在、大学は自己評価や第三者評価を行い始めたが、教員養成大学・学部についても、教員養成に係る自己評価や第三者評価を行い、その公開も含めて義務付けるなど、国家試験に代わる検証システムが必要ではないか。

2.教員免許更新制の導入

(1)教員免許更新制についての基本的な考え方

  • 教職に就く入口のハードルは低くした方が良い。教職に就いた後の実践を通じて、適格性や専門性を向上させていくことを前提にして、更新制等を検討してはどうか。更新制を導入する場合、現場での経験がなければ適格性を評価できないので、一定期間の教育実践を見て、更新を検討する形にしてはどうか。
  • 更新制は、専門性向上の契機にした方が良い。教職生活の節目ごとに、職能に応じて、様々な研修が求められ、研修内容もそれぞれに対応したものが必要となる。
  • 更新制とは、専門的な職務を行う者に対して、職務の質の向上を促すものである。そこでは、高いハードルは設けず、研修等で資質能力の向上が見られ、適格性があれば、上級免許状に上進していくというイメージを持っている。

(2)教員免許更新制の具体的な制度設計

  • 教壇に立って適格性が高まり、本人の努力により専門性が磨かれるというのであれば、有効期限の5年は長い。1回目は3年、2回目以降は10年で良いのではないか。また、免許状の種類によって有効期限に差をつける必要はない。
  • 初任者研修は別制度であるため、更新制と絡めると複雑になる。仮に5年の有効期限とした場合、2回目の更新では、10年経験者研修と重なるが、自治体の判断で更新の仕方に工夫があっても良い。
  • 懲戒免職処分となれば、免許が失効するので、更新制において不適格と判断されて、免許状が失効することとの整合性が問題となる。更新制で免許状が失効する判断は、懲戒処分や分限処分における不適格の判断よりも軽いものなのか、検討の余地がある。
  • 失効後、3~5年程度経過するまでは、再授与の申請を認めないとするのは良いが、再授与にあたっては、再教育・再訓練を義務付けなければならないのではないか。
  • 校内での研修や提案授業、研修センターでの自主研修、教育雑誌への投稿や研究会での提案発表、さらには、教員が教員養成大学・学部の教員と一緒に、授業実践の研究発表をすることも、更新制における評価のポイントに換算していくべきではないか。
  • 更新制の導入を前提にした場合、例えば3~5年の間に、専門性や適格性、同僚性が身に付くということが前提となるが、現行の研修の在り方では、これらを向上させることは難しいのではないか。
  • 多くの者は免許状を取得するのみで、教職に就くことはない。ペーパーティーチャーは、一定期間後に消滅することを想定しなければならないが、現行制度の中でそこまで踏み込めるのか。

3.教職課程の改善・充実

  • 大学全入時代が近づき、定員割れしている大学もある。今後、学力の低い学生も受け入れる中で、検証制度が重要になってくるのではないか。
  • 国は、学習の到達度を評価する方向で進んでいる。教職課程についても、国がカリキュラムをつくり、きちんと教育されているかを実地視察等で評価することも検討して良い。
  • 今回の免許法の改正に合わせて、免許取得に必要な科目で教えるべき内容を詳細に定めても良いのではないか。
  • 日本では、米国や欧州と比べて、いまだに教育評価に関する理論は培われていない。教育評価理論に限らず、カリキュラム理論や教授学習理論でも担当教員任せとなっている。免許状ごとに、最低限必要な内容を定めることができないか。
  • 教育実習の評価は、実際には、評価に未熟な指導教員が行うことになる。このため、評価者としての指導教員の訓練が必要となる。
  • 教育実習を通じて、子どもをより好きになったという学生もいることから、早い時期に子どもに触れさせることが重要である。
  • 教育実習は、母校や附属校、一般校というように、複数校で行う必要がある。
  • 教員養成大学・学部は、科目ごとの計画や評価ではなく、Plan-Do-Check-Action(計画・実施・評価・改善)やManagement Cycleといった広い視点の組織マネジメントの発想が必要である。自大学の教職課程にどのような特色があり、何を目指して、どう実行していくのかといったものを示す必要がある。

4.採用及び現職研修の改善・充実

  • 研修修了者に対する評価システムを検討しなければならない。
  • 更新制の導入と同時に、研修制度を改め、また、地域に根差した研修・研究・教材開発を充実させる教材開発支援センターのようなものを整備しなければならない。
  • 学校現場と大学、教育委員会をつなぐ機能、教員が集まる場にして、様々な研究開発ができる機能を持った教育センターの仕組みがあれば良い。
  • カリキュラム開発センターのような組織をつくるのであれば、大学の紀要等も含めて幅広く情報検索できるシステムをつくり、センター間で情報交流ができる形をつくらなければならない。そのようなセンターでの研修も、更新制における自己研鑽の一つとして考えて良いのではないか。
  • 大学教員に研究費があるように、小・中・高等学校の教員の研修活動についても、財政的に支援する必要があるのではないか。

5.その他

  • 校長や教頭の資格については、学校運営に責任を持つ教育委員会に任せれば良く、免許状の種類によって拘束するということは適切ではない。
  • 例えば、都道府県等の研修センターの研修も、大学院の授業と同じく単位認定することとし、専修免許状が取得できる仕組みをつくることで、原則として、校長は専修免許状を有することが望ましいとなれば良い。
  • 将来的には、校長や教頭、教育長の免許状の在り方についても議論する必要がある。
  • 今後、小学校教員の養成が重要となるが、音楽や美術、体育等については、専科制や交換授業、教科担任制を検討しなければならない。

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