6.各領域の内容

 以下、各領域における科目の内容を示したものである。
 【扱う内容】は、補論中「具体的内容例」として示した、科目の設定にあたり念頭に置くべき、教員が直面する場面・内容をもとに、基本的内容を項目として例示したものである。各大学の科目設定に当たっては、当該科目の履修により養成すべき資質能力の検討・明確化が必要となるが、この扱う内容は、その前提とされる当該科目の履修により養成する教員が直面する場面や必要とする行為の内容を例示したものである。
 【一般目標】【到達目標】は、当該科目の履修により修得させるべき資質能力を目標として明示したものである。このうち【一般目標】は当該科目による全般的な教育内容を示しており、他方【到達目標】は一般目標により記載された項目について、学生が具体的にどの程度のレベルまで修得しなければならないかの指標である。
 【対象とする課題例】は、当該科目による内容を、学校現場における具体的課題をもとに検討するなどにより修得させる場合、設定される具体的課題の例である。
 【科目例】は、当該領域における科目の具体例である。各教職大学院においてはこれら科目例を参考にしつつ、当該科目において修得させるべき知識・技能と、当該教職大学院の特色、得意領域、教育目標等の関係を考慮し、具体的科目を設定することとなる。
 【その他テーマ例】は、その他各科目の内容として含めることが考えられるテーマ・内容の例である。各教職大学院において、当該科目において修得させるべき知識・技能の一般性と、学校教育が直面している今日的課題を見通しつつ、適切なテーマ設定を検討することが期待される。

(1)教育課程の編成・実施に関する領域

扱う内容

 教科等の内容を、学校における教育課程及び学校教育全体の中で俯瞰する内容とする。

  • 学習指導要領と教育課程の編成実施
  • 個に応じた指導の充実
  • 指導と評価の一体化、教育課程の自己点検・自己評価
  • 総合的な学習の時間の全体計画の内容と取扱い(各教科・道徳・特別活動との関連、学年間や学校段階間の指導との関連への配慮を含む。) など

一般目標

  • a)各学校種を通じての教育課程の編成方法及び構成要素相互間の関連の在り方等について理解するとともに、カリキュラムマネジメント(教育課程及び個々の児童生徒等の学びの履歴の管理)の在り方について理解する。
  • b)各学校の実状(児童生徒等の状況、教職員集団の力量、地域との関係等)を見据え、当該校の教育課程全体の編成について複数の計画を立て、それぞれに予想される効果等を検証した上で最善の計画の選択を行い、教職員集団をリードしてその実施に当たることができる力量を身に付ける。

到達目標

(A群)(教員個人としての資質に関する内容(以下同じ。))

  • カリキュラムを構成するために必要な領域と内容について熟知している。
  • カリキュラムを構成することができる。(年間・単元)
  • カリキュラムの計画性に優れている。
  • 児童生徒等の実態に即し、カリキュラムの変更を考案することができる。
  • カリキュラムの計画と評価の方法を言語化することができる。
  • 児童生徒等が各教科等で学んだ知識を生かす学習活動を計画・指導することができる。
  • カリキュラム全体として、効果的で多様な教育形態・教育活動を組み込むことができる。

(B群)(同僚・教員集団との協力に関する内容(以下同じ。))

  • カリキュラム作りに向けて他の教員をリードするカリキュラム・コーディネーターとしての知識と技量を有している。
  • 総合的な学習の時間のみならず、必要に応じて合科・教科の再編成を行うことができる。
  • 教育課程活動と教育課程以外の活動(部活動やその他の活動)とを体系的に組み合わせて組織することができる。

対象とする課題例

  • 学習指導要領を踏まえ、各学校の置かれている状況に即した教育課程編成をどのように行うか。
  • 各学校の独自性を活かし、各児童生徒の個性に応じた指導体制をどのように構築するか。
  • 校内外のスタッフの協働により、「総合的な学習の時間」をどのように企画実施するか。
  • 各学校で児童生徒等の実情に応じて行った教育活動に関する「学びの履歴」を、どのようにマネジメントするか。

科目例

  • 「教育課程経営の実践と課題」
    • 方法:典型的な事例についての実地調査(フィールドワーク)及び、それを踏まえある特定の条件下での複数プランのシミュレーョンを中心とする。(複数プランの比較検討・効果予測、実地検証等を含む。)
    • 内容:
      1. 教育課程の立案・実施
        • 教育課程編成、時間割編成、校時表編成の実際(小学校・中学校・高等学校等各学校種の事例研究/小規模校・大規模校、都市部・へき地校等各学校の特色に応じた事例研究)
        • 「教科センター方式」の事例研究
        • 2学期制・3学期制等の実践事例研究
      2. 教科指導と教科外指導の全体計画・実施
        • 学校行事の配置・実施についての事例研究
        • 「学校裁量の時間」の使い方に関する事例研究
  • 「カリキュラムマネジメントの実践と課題」
    • 方法:ワークショップ及びフィールドワークを中心とする。
    • 内容:
      1. 「個に応じた指導」の実際
        • 小学校・中学校・高等学校等各学校種における事例研究(担当者、全体指導との関わり、実施体制等)
        • 複式学級の事例研究
        • 学びの履歴の管理に関する事例研究(ポートフォリオ等)
      2. 「評価」
        • 学習指導と評価の在り方(評価の在り方、指導と評価の一体化)
        • 相対評価と絶対評価
  • 「総合的な学習の時間と教科指導の関連」
    • 方法:ワークショップを中心として行う。
    • 内容:
      1. 「総合的な学習の時間」の基本的理解
        • 「総合的な学習の時間」のねらい、年間指導計画の作成
        • 各単元の学習活動づくり、学習テーマの設定
      2. 「総合的な学習の時間」と教科指導の関連の在り方
        • 各教科の共働による「総合的な学習の」の実践事例の検討
        • 学校行事との関連の在り方
        • 実地のための指導体制の在り方

(2)教科等の実践的な指導方法に関する領域

扱う内容

 児童生徒の確かな成長・発達と創造的な学力を保証する教科等の実践的指導力に関する内容とする。

  • 教科等の意義・目的(教科間の関連指導の工夫を含む。)
  • 授業計画(学習指導案の作成)
  • 教材研究(教材の収集・選択・分析、教材化の工夫など)
  • 指導方法(授業構成・授業形態の工夫(少人数指導や習熟度別指導など、個に応じた指導等)を含む。)
  • 指導と評価(テスト等の作成、評価の在り方) など

 本領域においては、学生は自らの学校種・担当教科等における指導方法に関する内容を念頭に履修することとなるが、本領域の履修により修得される資質能力は当該特定教科における指導方法にとどまるものではなく、汎化を図ることにより広く教科領域一般における指導方法開発に係る内容であることに留意する必要がある。(3.「1.共通科目(基本科目)のねらい・目的」参照)

一般目標

  • a)全教科・各学校種に共通する「教科等の授業」の在り方(「教科」の全体構成、基本的な授業技術、他教科・教科外活動との関係、教科の授業と学問の関係、多様な教育方法、知識と技能との関係、情報機器の利用等)について、体系的に理解する。
  • b)他教科・他学年の授業との関連を踏まえて、ある特定の授業の構成・立案に関して他の教員に指導・助言が出来、かつ、その授業の評価を適切に行うことができる。

到達目標

(A群)

  • 指導案を作成し、児童生徒等の実態に応じて変更することができ、そのことを言語化することができる。
  • 児童生徒等の生活や間違いにヒントを得て、新しい教材を開発することができる。
  • 示範授業等ができる。
  • 少なくとも1つの教科等の専門性において卓越し、常に最新の内容と方法を獲得する方法を知っており、それを遂行することができる。
  • 高度な指導技術を身に付けており、必要に応じていつでも使え、そのレパートリーを増やしていくことができる。
  • 学校内外の情報手段等を適切に活用するとともに、活動や体験を活用した授業を組織することができる。
  • 児童生徒等の確かな学力の育成に関わって、優れた結果を出すことができる。
  • 学習する児童生徒等の間の相互作用に着目できる
  • 児童生徒等に届く語りかけができる。
  • 表情や様子から児童生徒等の反応を読み取ることができる。
  • 児童生徒等のつまづきや間違いを生かそうとする発想を有している。
  • 児童生徒等とその達成に関する評価能力が優れている。
  • 授業の診断と問題発見ができ、解決の手立てを見い出して、実行することができる。
  • 自分の実践を振り返り、評価・改善する方法を知っており、実践することができる。
  • 授業記録・実践記録を書くことができ、その分析・検討を踏まえて授業改善において主導的な役割を果たすことができる。

(B群)

  • 授業の診断と問題発見ができ、解決の手立てを発見し、それを実行し言語化することができる。
  • 指導方法や教材の工夫等の授業評価ができる。
  • 教科等の指導に関し、他の教員に助言・支援することができる。
  • 教育実習生に対して、その力量形成の手助けを適切に行うことができる。
  • 新人教員に対するメンター教師としての役割を果たすことができる。
  • 中・長期的な学校経営を見通した指導計画を立案することができる。
  • 学校内外の専門的人材の活用を含め、複数のスタッフの協働による授業運営を企画・組織し、適切に遂行することができる。
  • テーマに基づく研究を実施することができる。
  • 授業記録・実践記録に基づいて校内研修を組織することができる。

対象とする課題例

  • 各教科の構成原理及びそれらに連なる各学問分野の研究成果は、どのような関連を持っているか。
  • 各教科における指導方法の共通点・相違点(独自性)はどのような点にあるか。
  • 各教科の指導における課題にはどのようなものがあり、そのための手だてはどうあるべきか。
  • 児童生徒等の刻々と変化する様子の評価にはどのようなものがあるか。
  • 各教科における児童生徒等の学習の評価はどのようになされ、今後どのようにあるべきか。

科目例

  • 「教科教育の実践と課題」
    • 方法:フィールドワーク(各学生が自担当教科や自校種以外の事例の調査を行う。)をもとに、事例に関し相互検証・検討を行うことを中心とする。
    • 内容:
      1. 授業の指導計画と教材研究
        • 教科と学問、指導における「知識」と「技能」の関係
        • 指導案の作成
        • 教材研究(教科書を含む)の手法
      2. 指導方法の工夫
        • 各教科、各学年における指導の特性
        • 「板書」「示範」等の実際とその教育効果
        • 教科指導と情報処理、教具の活用
      3. 授業の評価、授業改善の在り方と工夫
  • 「教育方法の実践と課題」
    • 方法:ワークショップ(各学生が教育方法に関して、自らの担当教科や校種の実践例を持ち寄る。)を行い、相互に検証・検討を行うことを中心とする。
    • 内容:
      • 様々な指導方法について、その特性と工夫について考察する。
      • 少人数指導・習熟度別指導(その実践例、授業形態、効果及び課題等)
      • TA(ティーチング・アシスタント)・ティームティーチングの活用
      • 複式学級
      • 体験型授業の組織及び運営

(3)生徒指導、教育相談に関する領域

扱う内容

 児童生徒等の社会的・情緒的発達についての理解を深め、児童生徒等が教育領域の諸活動を通して発達課題の達成と社会的自立を図ることを促進するとともに、社会的・情緒的発達の課題や問題の把握と適切な対処のできる実践的指導力を修得する内容とする。

  • 児童生徒理解の内容と方法(思春期等に見られる心身症、精神疾患等に関する知識を含む。)
  • 児童生徒等の社会的・情緒的発達を促す指導
  • 教員と児童生徒等、児童生徒等の相互の人間関係
  • 児童生徒等の生活の構築、生き方を考えさせる指導
  • 児童生徒等の健全育成の取組み
  • ガイダンスの機能と教育相談の充実
  • 問題行動等に関する事例研究
  • 学校における生徒指導体制
  • 家庭・地域や関係機関との連携
  • 児童生徒等の進路発達を促す指導援助体制 など

一般目標

  • a)各学校種における児童生徒等の生徒指導・進路指導上の諸課題を総合的に理解するとともに、その代表的な指導方法(生徒指導、カウンセリング、集団づくり、保護者・関係機関との連携等)について熟知する。
  • b)各児童生徒等の生徒指導上の諸課題に関して、適切な指導方法を選択して実施するとともに、生徒指導・教育相談に当たる他の教員に対して適切な助言・指導ができる。
  • c)児童生徒等が自らの生き方・在り方を考えることを適切に指導・援助するとともに、主体的に進路を選択し、進路先で適応できる力を伸長するための指導・援助について習熟する。

到達目標

(A群)

  • 生徒指導の趣旨を理解し、当該校の実情に応じた適切な指導方針を立案することができる。
  • 児童生徒等の変化を鋭敏に察知し、方向性を持って働きかけることができる。
  • 児童生徒等の内的葛藤や問題行動等に対する理解と評価に優れている。
  • いじめ・不登校等の問題行動に対して、必要な指導等適切な対応を取ることができる。
  • 生徒理解・生徒指導の多様な方法を理解しており、とりわけ集団づくりを中心とした多様な方法を実践することができる。
  • カウンセリングマインドを理解するとともに、相談技法を身に付け、教育相談に生かすことができる。
  • 生徒指導・教育相談、進路指導・相談と教科等の指導の関連を図り、両面からの指導を考えることができる。
  • 予習・復習等、児童生徒等が学習に臨む日頃の態度を培い適切に保つことの重要性を理解させ、指導・援助することができる。
  • 児童生徒等が自らの心身の健康を維持するための努力や生活を送ることができるよう、指導・支援することができる。
  • 児童会・生徒会活動への指導についての知識を有している。
  • 学校生活が児童生徒等にとっての豊かな自己実現の場となるような指導ができる。
  • 児童生徒等に自らの生き方を考えさせ、目標をもって自ら向上するための活動を支援するとともに、その目標に応じた選択を適切に指導・助言することができる。
  • 就職指導・進学指導を通じて、児童生徒等が自らの進路に関する各種情報を収集・取捨選択し、自らの生き方の目標等に応じて適切な進路選択を支援することができる。

(B群)

  • 生徒指導・教育相談・進路指導について、他の教員の相談に乗ることができる。
  • 心身症や精神疾患な等に関する知識を有し、適切な対応を他の教員に助言・指導することができる。
  • 教職員集団による対応を組織化することができる。
  • 生徒指導・教育相談、多様な進路指導を適切に行うよう、関係機関や地域等との連携を組織することができる。

対象とする課題例

  • 児童生徒等の社会的・情緒的発達の段階的変化、発達課題と問題行動との関係にはどのようなものがあるか。また、それらが生じる背景にはどのような要因があるか。
  • 児童生徒等の多様な問題行動に対処する方法はどのように考えられるか。また、それらを実施する際の課題は何か。
  • 生徒指導・教育相談、進路指導と教科等の指導との関連はどうあるべきか。
  • 児童生徒等の抱える内面的な葛藤を理解し、サポートする体制をどのように構築していくか。
  • 生徒指導・教育相談において、学校と保護者、地域・関係機関・団体等との連携はいかにあるべきか。
  • 児童生徒等の進路決定における問題、情緒的課題、進路選択の困難な理由とについてどのように理解し、対処すべきか。
  • 進路問題と不適応行動との関係について、どのように理解し、対処すべきか。

科目例

  • 「生徒指導の実践と課題」
    • 方法:事例についての実地調査(フィールドワーク)及びワークショップ(各学生が事例・実践例を持ち寄り検討)を中心とする。
    • 内容:
      1. 生徒指導上の諸課題(不登校、いじめ、校内暴力等)の実際(児童虐待、思春期等に見られる心身症・精神疾患等を含む。)
      2. 生徒指導上の諸課題への対応、指導、相談の在り方
      3. 校内指導体制の構築と関係機関との連携(守秘義務と情報交換を含む。)
  • 「生徒指導と関係機関との連携の実践と課題」
    • 方法:事例についての実地調査(フィールドワーク)及びワークショップ(各学生が事例・実践例を持ち寄る。)をもとに、相互に検討・検証を行うことを中心とする。
    • 内容:
      • 児童生徒指導の諸課題の理解に立った、関係諸機関との連携の実例を検討
      • 児童福祉施設(児童相談所、児童自立支援施設、児童養護施設)
      • 病院等医療機関
      • 警察・司法・矯正施設(家庭裁判所等)
  • 「進路指導(キャリアガイダンス)参画演習」
    • 方法:事例についての実地調査(フィールドワーク)及びシミュレーションを行うことを中心とする。
    • 内容:
      • 学校教育における実際場面への参画(企画・立案・実施・省察・評価)
      • 進路指導の情報収集・管理・提供
      • キャリアガイダンスの実務(進路相談等)

その他テーマ例

  • 思春期等に見られる心身症、精神疾患等に関する基礎的知識・事例
  • 学校カウンセリングの実践と課題(ストレスマネジメントを含む。)
  • 学力不振と問題行動の事例研究
  • 触法行為の事例研究
  • 事故発生時の危機管理(情報管理を含む。)

(4)学級経営、学校経営に関する領域

扱う内容

 児童生徒に充実した学校・学級生活を保障する学校・学級経営とともに、その課題の分析と解決の方策に関する内容とする。

  • 学級経営の内容と果たす役割
  • 学級経営と学校経営(学年経営案、学年会、学校行事など)
  • 保護者と連携を図った学級経営
  • 学校組織、校務分掌とその機能
  • 校内研修の意義・形態・方法
  • 開かれた学校づくり(家庭や地域社会との連携、学校間交流の推進、学校運営と学校評議員、情報公開と説明責任)
  • 学級・学校運営と評価 など

一般目標

  • a)組織としての学校やその基本単位としての学級という組織の在り方について、地域や保護者・他機関等の対外的な関係も含めて総合的に理解することができる。
  • b)学校において、その実状や特性の把握の上に立って、適切な経営を行う計画を立て、その実施に当たって指導的な役割を果たすことができる。

到達目標

(A群)

  • 授業を含めた学級経営に優れている。
  • 児童生徒等の集団づくりの手法を知っており、実践することができる。
  • 保護者に対し、適切に対応することができる。
  • 学校経営の基礎を理解した上で、業務の遂行に参画することができる。
  • 学級経営・学校経営(学年経営)に関し、他の教員と適切に情報を共有することができる。

(B群)

  • 学級経営に関し、他の教職員に指導・助言することができる。
  • 校内の組織作りや校内研修の組織化に関し、リーダー的な役割を果たすことができる。
  • 他の教員や外部の専門家と協働して、課題解決に当たることができる。
  • 保護者との対応において、他の教員をリードする形で適切に対処することができる。
  • 学校経営に関する制度・財政措置等について理解し、学校内外の多様な人材・資源を活用して多様な教育活動を展開することができる。
  • 学校間の連携、共同・協働の在り方の趣旨・立案に習熟し、効果的な教育活動を展開することができる。
  • 学校評価の理念と方法について熟知し、当該校の状況に即した具体的な在り方を考え、その実施に参画することができる。
  • 組織マネジメントに関する知識・知見を活用し、学校の教育活動を効果的に進めることができる。

対象とする課題例

  • 児童生徒等を指導する単位としての「学級」「学年」組織はいかにあるべきか。
  • 学級内の児童生徒等の関係づくりはどのようになされるか。
  • 学級における児童生徒等と各保護者との関係をどのように構築していくか。
  • 学級や学校に対する保護者からの要望や意見等にどのように対処すべきか。
  • 組織としての学校を成立させているスタッフの適切な協働体制はどうあるか。
  • 学校における安全指導の在り方とともに、児童生徒等の安全を保証するための対策はいかにあるべきか。
  • 学校において扱う情報の管理はいかにあるべきか。

科目例

  • 「学級経営の実践と課題」
    • 方法:シミュレーション、事例についての実地調査(フィールドワーク)及びワークショップ(各学生が事例・実践例を持ち寄る。)を行い、相互に検討・検証を行うことを中心とする。
    • 内容:
      1. 学級経営の実際
        • 学級経営案の検討
        • 児童生徒を生かす学級経営の方法と改善
      2. 保護者と連携を図った学級経営
        • 学級PTA
        • 保護者との連携の在り方
  • 「学校経営の実践と課題」
    • 方法:事例についての実地調査(フィールドワーク)及びワークショップ(各学生が事例・実践例を持ち寄る。)を行い、相互に検討・検証を行うことを中心とする。
    • 内容:
      1. 学校経営の在り方に関する事例研究
        • 特色ある学校経営の在り方
        • 学校経営戦略の立て方(地域のニーズ、学校選択制、公立と私立の競合等)
        • 学校経営における裁量
      2. 学校組織の在り方に関する事例研究
        • 学校における組織の在り方(校務分掌の在り方、教員の集団づくり等)
        • 学校における合意形成の手立て(職員会議等)
        • 校内研修の在り方・組織化
      3. 地域など社会と連携した経営の在り方
        • 学校と地域との関係(地域開放、学校評議員制度等)
        • 異校種間連携
  • 「学校における『管理』実践とその課題」
    • 方法:フィールドワーク及びワークショップ(部分的にロールプレーイング(例えば模擬職員会議等))を行うことを中心とする。
    • 内容:
      1. 情報管理
        • 個人情報の扱い
        • 保護者への対応や報道機関等外部機関への対応
        • 守秘義務の在り方
      2. 労務管理
        • 教員の管理
        • 非常勤教職員の管理
      3. 危機管理
        • 想定される危機状況とその対応事例(合意形成、組織化、情報管理、対外的な対処、等)

(5)学校教育と教員の在り方に関する領域

扱う内容

 上記(1)から(4)までを総覧し、現在の社会における学校教育の位置付けを理解し、教員としての役割や使命を考える内容とする。

  • 学校と社会(社会における学校教育の位置付け、学校教育の役割、学校教育が抱える課題等の俯瞰)
  • (上記のような学校における)教員の社会的役割と社会的・職業的倫理
  • (上記のような社会・学校における)教員に必要なコミュニケーション論(対子ども、保護者、同僚、学校外(関係機関、広く社会))

 本領域は、学校教育における実践力・応用力など教職としての高度な専門性の養成の観点、特に、地域において指導的な役割を果たし得る教員として、学校及び学校教育が社会の中でどのような位置にあり、どのような役割を求められているのか、またそのような学校及び学校教育の中で、指導的な役割を果たし得る教員として求められている役割についての理解と、それに必要な基本的資質能力を修得させるために設定されたものである。
 このため、科目設定にあたっては、「社会における学校教育の位置付け・意義」「学校の役割」「教員の役割・在り方」を一連のものとして理解することができるよう留意することが必要である。

一般目標

  • a)社会の中における学校の役割を的確に認識し、教員としてふさわしい社会的役割を理解し、果たすことができる。
  • b)「よき教育実践を行う教員」の在り方と、教員の資質向上に関する手立てについて具体的に理解する。
  • c)教育実践者としての自己を反省的に捉えるとともに、様々な考え方を持つ多様な他者とのコミュニケーションを保つ力量を備えるとともに、他の教員をリードする形で教員の資質の改善に資することができる。

到達目標

(A群)

  • 公教育の役割についての理解とともに、地域との関連における学校・学校教育の役割を深く考察することができる。
  • 保護者との信頼関係を構築することができる。
  • 学校の教育計画・教育方針について理解し、説明することができる。
  • 学校内外の多様な人材・資源の活用など地域に開かれた教育活動の展開が、学校教育活動にとって有効であることを理解している。
  • 自己を客観的に省察することができる。
  • 研究的な実践活動を行うことができ、その成果を効果的・説得的に説明することができる。
  • 教員の服務の在り方について理解し、適切な実践ができる。
  • 学校の組織的教育活動の展開に際し、職員の職能成長や健康管理、志気高揚等が必要であることを理解している。

(B群)

  • 児童生徒等の実態に応じて、家庭教育の在り方等について保護者と十分話し合うことができる。
  • 校内研修や現職研修に関し、プログラムを作成し、組織することができる。
  • 理論と実践の統合を志向する態度を有し、他の教職員と共有することができる。
  • 他人の尊厳を認め、共感することができる。
  • 保護者等からの意見・要望等に耳を傾け、学校教育の改善・充実をリードすることができる。

対象とすべき課題例

  • 現在の児童生徒の心身の発達において、学校教育が果たしている役割は何か。
  • 変化する社会において学校教育と社会との関係はいかにあるべきか。
  • 学校において教員が果たすべき役割と、大切にすべき職業的倫理とはどのようなものか。

科目例

  • 「学校教育と教員の在り方」
    • 方法:ワークショップ及びロールプレーイングを行うことを中心とする。
    • 内容:
      1. 学校と社会
        • 現代社会における学校教育の役割と現代的諸課題の解決策
      2. 教員の社会的役割と社会的・職業的倫理
      3. 教職員評価(教職員人事評価制度、指導力不足教員など)
  • 「教育コミュニケーションの実践と課題」
    • 方法:ワークショップ及びロールプレーイングを中心とする。
    • 内容:
      1. 教員と児童生徒間のコミュニケーションの実践的技法
        • 教員の同僚性・仲間づくりに関する実践
      2. 教員と保護者、地域のコミュニケーションの実践的技法
        • 保護者・地域とのコミュニケーションの在り方
        • コミュニケーション能力開発の実践

その他テーマ例

  • 教員の力量形成プロセス
  • 教員評価に見る教員に求められる資質能力

お問合せ先

高等教育局専門教育課教員養成企画室

(高等教育局専門教育課教員養成企画室)