4.コース(分野)別選択科目部分

(1)コース(分野)の設定の考え方

 各学生は、共通科目(基本科目)を確かな土台とした上で、各コース(分野)、学生の専攻分野、研究テーマ等に応じた科目を履修することとなる。

 コース(分野)の設定においては、

  1. 学校現場における今日的課題を設定し、その解決の研究に必要な、学問分野の枠を超えた科目群(例えば「学力定着のための教材開発」における、教科教育法、認知心理学、学習集団論、など)をコース・専攻分野とする場合
  2. 「教科カリキュラム研究科目群」「教育組織マネジメント研究科目群」「教育臨床研究科目群」など、各学生の関心領域に応じた科目群を、コース・専攻分野とする場合
  3. 一般教授学、心理学、教科教育法学など、個別学問体系を基礎とする科目群を、コースや専攻分野として構成する場合

 など、その設定方法は各大学院の特色や得意領域、指導目標等により様々な方法があり得る。

 教職大学院においては、事例に関する知識を、基礎的理論を基に構造的・体系的に捉えることのできる資質能力を通じて、学校現場の課題に取り組むことのできる力量の育成を図ることが重要であることから、コース(分野)の設定に当たっては、各学生の関心領域に応じた科目とすることや、学校現場における今日的課題を設定し、その解決の研究に必要な、学問分野の枠を超えた科目群とすることが特に有効と考えられる。
 他方、学問体系を基礎とする科目群によるコース・専攻分野の設定においても、その科目群の履修内容が、単なる「理論のための理論」ではなく、学校における教育課題の把握や教員の実践を裏付けるとともに、様々な事例を構造的・体系的に捉えるものとすることが重要である。

(2)フィールドワーク的な内容の捉え方

 学校現場における実践力・応用力など教職に求められる高度な専門性を備えた教員を育成する観点から、事例に関する知識とそれを構造的・体系的に捉える知見を踏まえつつ、現場の課題に実際に取り組むことのできる力量の育成が必要である。このことから、特にコース(分野)により選択する内容においては、現場における実践活動・現地調査(フィールドワーク)や実務実習的な内容が含まれることが重要である。

 現場における実践活動・現地調査(フィールドワーク)や実務実習的な内容の実施の仕方としては、

  1. 設定したテーマについての課題演習・研究に関する科目の中で、必要な授業・講義、事例研究・分析、授業計画案作成等とともに、現場における実践活動・現地調査(例えば研究授業実施、教育課程編成、学習支援活動などのフィールドワーク)を含める場合のほか、
  2. 各学生の課題に応じた、学校での実務実習(例えば、教科カリキュラム編成・運営実務、教育組織経営実務の実習など)を課す場合、

 など、その実施内容・方法は、各大学院の特色や得意領域、教育目標等により様々な方法があり得る。
 いずれの場合においても、その実施に当たっては、大学の指導教員と調査・実習校の指導教員との間で、指導計画、実習指導、事後分析指導等に当たって、密接な連携・協力が必要である。

1.コース(分野)別選択科目部分における科目のねらい

 コース(分野)別選択科目部分は、共通科目(基本科目)を確かな土台とした上で、各コース、学生の専攻分野、研究テーマ等に応じた科目を履修する。これは、共通科目(基本科目)を履修した上で、その内容との十分な関連の上で、学生がさらに専門的に絞り込んで修得したいと希望し履修する科目部分であり、大学が得意分野やコース等に応じて設定し履修させる部分である。その意味では、コース(分野)別選択科目部分のねらいは、個々の学生の得意分野づくりを図ることにある。
 現行の修士課程においては、特定の専門分野において深く研鑽を積み、特定の分野について得意分野を持った教員の養成を建前としてはいる。しかし実際には多くの場合、専攻・専修・コース設定に当たっては、「特定の分野」の意味がいわゆる教科専門(教科につらなる学問内容)のイメージでしか捉えられてはこなかった。また、教科専門の内容も教員が現実に直面している学校や学級、児童生徒等の課題との関連はあまり意識されていなかった面がある。
 教職大学院においては、共通科目(基本科目)の履修による幅広く厚みのある基礎の上に、コース(分野)別選択科目の分野として、学校教育における各問題分野に対応したコース(分野)別選択科目群を開設・履修し、それぞれの分野において専門職としての高度の実践的な問題解決能力・開発能力を有する人材を養成する。例えば、「学級経営分野のエキスパート」「教材開発分野のエキスパート」「生徒指導分野のエキスパート」として、学校教育の主要な分野で組織の中心として活躍できる力量を持った人材を養成する。

2.コース(分野)別選択科目部分の科目設定及び単位数

 コース(分野)別選択科目部分の科目群の設定の仕方(例えば、1明確にコースとしての区分を設定するのか、あるいはコース等は設けず学生による選択履修群とするか、2どのような分野のコース又は科目群を設定するのか、等)は、各教職大学院の規模や特色・得意領域、指導目標等により様々な形があり得る。
 しかしながら、教職大学院が学校現場など養成された教員を受け入れる側(デマンド・サイド)との連携を重視し、社会のニーズに即した教員養成を目指すことに鑑みれば、学校教育における様々な領域に対応するため、可能な限り、複数のコース・選択履修科目群を置くことが望ましい。
 コース(分野)別選択科目部分の科目から学生が履修すべき単位数は、15単位程度以上を目途とする。

3.コース(分野)別選択科目部分における科目設定に当たっての留意点

 各科目の具体の設定は基本的に各大学院の設定に任されているが、その設定に当たっては、以下の点に留意する必要がある。

  1. コース(分野)別選択科目部分におけるコース(分野)又は選択科目群の設定については、補論でも述べているように、(ア)学校現場における今日的課題を設定し、その解決の研究に必要な、学問分野の枠を超えた科目群(例えば「学力定着のための教材開発」における、教科教育法、認知心理学、学習集団論、など)をコース・専攻分野とする場合、(イ)「教科カリキュラム研究科目群」「教育組織マネジメント研究科目群」「教育臨床研究科目群」など、各学生の関心領域に応じた科目群を、コース・専攻分野とする場合、(ウ)一般教授学、心理学、教科教育法学など、個別学問体系を基礎とする科目群を、コースや専攻分野として構成する場合、など、その設定方法は各教職大学院の特色や得意領域、指導目標等により様々な方法があり得る。
     いずれの方法を採る場合であっても、コース(分野)別選択科目部分における科目の内容は、共通科目(基本科目)との内容上の関連性・体系性が明確になっている必要がある。
  2. 複数のコース又は選択科目群を置く場合であっても、相互の関連を常に意識した科目群の設定になっていることが望ましい。
  3. コース(分野)又は選択科目群の内容としては、例えば、教科教育系領域、生徒指導系領域、学級経営系領域などが考えられる。
     この場合、教科教育系領域では、「授業のエキスパート」「授業のプロ」を養成するため、その分野に関する豊富な知識・技術の蓄積、児童生徒等を感動させ学習への期待をふくらませられる教材開発力と授業の展開力の育成等が図られるような科目群の設定とすることが望ましい。この意味で、いわゆる「教科専門」についても、現在の学校現場が直面する課題に対応し得る実践力・応用力の育成の観点から、その専門性が教職としての高度な専門性の育成に資することが期待される。
     生徒指導系領域では、基本的には様々な事例に基づく授業となろうが、その場合であっても、単にさまざまの学説の紹介とそれに基づく診断名のラベルを貼るだけの授業に終わらないよう留意すべきである。また、児童生徒等一人ひとりの内面的な諸問題に関して、教員が幅広く深い土台に立って解釈できるような厚みのある人間理解力が育成できるようなカリキュラム上の工夫が期待される。
     学級経営系領域では、学部段階で修得した学級経営に関する基礎的知識・技能をもとに、具体的な事例に基づき、課題の診断と解決策の検討等、現在の学校教育が直面する学級経営に関する課題の解決に求められる、より専門的なマネジメント能力の獲得を目指すものとなる必要がある。また、例えば、「授業を通した自主と協働の学級づくり」といった教科教育との関連づけ、また「一人ひとりの自発的な成長を促す援助活動としての生徒指導に支えられた学級経営」といった生徒指導との関連づけなどがカリキュラムの設定において十分に工夫されていることが望ましい。
  4. コース(分野)又は選択科目群の内容としては、このほか、例えば「特別支援教育」や「幼児教育」など様々に考えられるが、どのような内容により設定するかは各教職大学院において、特色・得意領域、指導目標等様々な要素から検討されることとなる。各教職大学院においては、教員を受け入れる側(デマンド・サイド)等社会のニーズを見定めつつ、多様で特色ある内容を工夫することが期待される。
  5. 特にコースを設定する場合にあっては、各コースにおける専任教員の配置に留意するなどにより、適切な指導体制が確保される必要がある。

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