資料6 教員免許更新制の法制化についての考え方

1.教員免許制度に更新制を導入する必要性

  • 教員免許状は、学校教育法で規定される初等中等教育段階の学校における、いわゆる公教育の実施に最小限必要な資質能力を有する者に授与される資格であるが、その水準の担保は養成機関である課程認定大学の単位認定により行われている。
     また、現行制度においては、一旦授与された場合は、当該免許状が失効又は取り上げ処分の対象とならない限り、終身有効なものとされている。
  • 教員として必要な資質能力が不変のものであれば、一旦、大学においてその水準が保証された者に対して授与された免許状は終身有効なものとしつつ、爾後、各人の能力が低下している場合があり得るとしても、それについては、任命権者による服務監督あるいは分限処分等により対応することで足りる。
  • しかし、公教育の実施者である教員として最小限必要な資質能力は、本来的に、時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しているものと考えられる。
     例えば、学習指導要領は、時代の要請に応じて不断に見直しが行われており、新しい学習指導要領に対応した資質能力が、教員には不可避的に必要とされる。
     また、子どもの学ぶ意欲の低下への対応や、社会性やコミュニケーション能力の低下への対応、いじめや不登校などの学校不適応への対応、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥/多動性障害)等の新たな課題への対応、学校現場における安全の確保、ニート現象などを背景とした職業・進路に関する指導の充実など、免許状取得後も教員として必要な資質能力は常に変化している
  • したがって、公教育の実施者に必要な資質能力を一定水準以上に確保することを目的とする教員免許制度においては、当該制度の趣旨・目的に鑑み、その本来的な在り方として、教員として必要な資質能力が更新されるものとして、その制度設計が行われる必要がある。
  • これまで、教員として必要な資質能力の保持と向上については、国や地方公共団体による各種の研修等により対応を図ってきており、今後とも、研修の充実が重要であることに変わりはない。
     しかし、今日の公教育が直面している課題の重要さや教員の果たす役割等に鑑み、国民の期待に応え得る公教育を実現していくためには、教員免許制度を、恒常的に変化する教員として必要な資質能力を担保する制度として、再構築することが必要である。
     これにより、設置者の別や地域のいかんを問わず、我が国全体における公教育の改善・充実が図られることが期待され、また、教育の機会均等の保証にも、より適切に応えることができる。
     また、現職教員以外にも、多くの免許状保有者がおり、民間企業経験者等、多様な人材の登用が進んでいる現状を考慮すると、免許状に一定の有効期限を付し、恒常的に変化する教員として必要な資質能力が刷新された場合に免許状の更新を認めるという「更新制」を導入することは、公教育の目的を実現する上で不可欠であるとともに、公教育に対する保護者や国民の信頼を確立する上でも、大きな意義を有するものである。

2.更新制の仕組みの合理性の確保

  • 教員免許状に更新制を導入する必要性があるとしても、教員免許制度は職業資格であるとともに、学校の教員としての雇用(任用)資格でもあり、教員の職業生活をいたずらに不安定にするものであってはならない。
  • したがって、更新制の仕組みが合理性のあるものであるためには、更新要件は、免許制度の趣旨・目的を達成するために必要とされる最小限のものとし、客観性を担保するとともに、更新のための負担も合理的範囲内のものとなるようにすることが必要である。
  • このため、更新の要件は、大学等における講習の受講・修了とし、客観性を担保するとともに、講習の時間・内容についても、合理的範囲内のものとなるようにする必要がある。また、所定の講習を受講せず有効期間が経過した場合は、免許状は失効することとなるが、その場合でも、所定の講習を受講・修了して申請すれば、改めて免許状が授与されることとする必要がある。すなわち、当初の免許状授与の要件である大学における単位修得は終身有効なものとしつつ、再授与のために必要な講習を課す仕組みとすることが適当であると考える。

3.現に教員免許状を有する者への更新制の適用について

  • 現在授与されている教員免許状は終身有効であり、現に教員免許状を有する者について、新たに更新制を適用することには、相当の必要性と合理性が求められる
  • 我が国の現在の幼児児童生徒の数はおよそ1,600万人であり、また、現に免許状を有する者は、長い者で今後30年以上にわたり、教壇に立つこととなることから、現に免許状を有する者、特に現職教員が、当分の間、我が国の公教育の中核的担い手であると言える
     公教育の適切な実施のため、時代の進展に即応して教員として必要な資質能力を確保するという更新制の導入の趣旨に鑑みれば、現に免許状を有する者について更新制を適用することは不可欠であり、今後、新たに免許状を取得する者についてのみ更新制を適用することでは、公教育に対する保護者や国民の信頼に十分応えることができず、前記のような新制度の目的は実現し得なくなるものと考える。
  • 既に授与された教員免許状が終身有効であることは、一つの既得権益でもあるが、このような権益は必ずしも絶対不可侵のものではなく、公共の要請により、合理的な範囲内で新たに制約を課すことは、なお許容し得るものと解される。
  • 前記のとおり、教員免許制度は、その本来的在り方として、時代の進展に即応した資質能力を担保する制度として構築されるべきものである。また、更新要件についても、その趣旨・目的を達成するため必要最小限のものとし、負担を合理的範囲内のものにすることとしている。さらに、現に免許状を有する者が当分の間、我が国の公教育の中核的担い手であることに鑑みれば、現に免許状を有する者について、一定期間ごとに同様の講習の受講を法的に義務付け、当該講習を修了しない場合は、免許状が失効することとする更新制の基本的枠組みを適用することには、必要性と合理性があるものと考えられる

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