別添3 第1回、第2回教員免許制度WGにおいて出された主な意見

1.教員免許制度の改革、とりわけ教員免許更新制の導入について

(1)教員養成・免許制度の改革の基本的な視点

  • 排除のための更新制ではなく、研修を受ければ十分力を持って子どもの前に立てる教員をつくるという更新制を考えたらどうか。実力を付けて、大学の教職課程から送り出していくシステムをつくらなければならず、また、教員が尊敬され、夢を持って教員になる人たちが増えるような社会にしなければならない。
  • 大学全入時代になると、きちんとチェックをしなければ実力のない教員が現場に入り、教職に対する尊敬がなくなり、教員不信が社会を支配することになるのではないか。
  • これまで条件附採用期間は形骸化していたが、ここ数年、厳格に扱われるようになってきた。教員は23歳で教壇に立ち、生徒と相対するという職責を担うこととなるため、保護者からすれば、10年後に検証されても困る。採用段階で、しっかりした教員が採用されているという安心感を与える制度はどうあるべきか、また採用段階でどのくらいの資質能力を備えた教員を確保できる制度とするかが、更新制の在り方を規定していくのではないか。
  • 教員養成段階で、最小限必要な資質能力を持った教員として送り出さなければ、現場は困る。1年間の条件附採用期間できちんとチェックされておらず、このことが不適格教員や指導力不足教員を生み出しているのではないか。
  • 14年答申では、免許制度の抜本的検討とあわせて、更新制の検討が必要とされていたが、一方で、この秋までに更新制を検討するとされており、「抜本的」の範囲の整理が必要ではないか。
  • 更新制に視点を当てつつ、教員免許制度全体との関わりを持ちながら検討していくのが良いのではないか。
  • 更新制が、直ちに現職教員に適用されるものではないと仮定すると、教員養成、免許授与の要件を含めて、理想的な教員免許制度の在り方を検討する中で、現行の免許制度の良し悪しも考える必要がある。
  • 現在、学校では正規教員の比率が減っており、その分、負担が大きくなっている。教職のあるべき姿をきちんと整理しなければ、更新制の導入以前に、夢のある職場でなくなってしまう。
  • 新採教員の中には、能力の問題だけでなく、親や子どもへの対応への疲れや、一生懸命やるが評価されないこと等、自分の夢が崩れ、人間性を否定されてしまうことでやめる者もいる。教職に夢を持つ教員が育てられるような環境を整備し、保護者や地域が支えていかなければならない。
  • 教員になったものの、夢破れてやめるという人の中には、忙しすぎて、本来の仕事ができないという面がある。教員の仕事を整理していかなければ、教員が実力を発揮できないと考える。

(2)教員免許更新制の導入の意義及び位置づけ

  • 更新制がプラスに作用していくのであれば、大学と免許状の授与権者、任命権者、学校の管理運営責任を持つ教育委員会との間で、現職研修を含めた制度設計ができて、教員がモチベーションを高めながら、学び続け、免許が更新されていくものとなる可能性があるのではないか。
  • 様々な社会の批判がある中で、排除の論理ではなく、これだけの力を持った教員であると保証するようなものとして、更新制が考えられないか。
  • 初等中等教育の教員の質の低下は諸外国と同じであり、その中で、優秀な教員や質の高い教育を維持していかなければならず、ここに更新制の必要があると考える。学力は、教員の指導力と子どもの学習努力、家庭の教育力の総和で上がっていくものである。更新制については、排除するのではなく、処遇をきちんとしていけば優秀な人材は来る。これからは、学校に競争原理を入れていくべきであり、優秀なやる気のある教員を入れなければならない。
  • 教員の職責について考えた時、4年間で十分な資質を持った者を送り出すことは難しく、現在の教員養成において完璧を期すことはできないことを前提とし、かつ教員は研修で特別な扱いがなされていることを考えた場合、一定期間内に、教員としての専門性が一定レベルまで達することは当然要求されていると考える。そのようなレベルに全ての教員が達成することを期待し、実現し得ない教員は排除するために更新制を導入することが考えられる。また、教職に対する信頼性が揺らいでいることは事実であり、教員や免許状の社会的信頼を適切に確保していく必要がある。現在、免許状の失効や取上げ等の制度があるが、そこに至らないレベルで教職としての信頼、あるいは免許状の信頼を失う行為を排除する更新制も考えられるのではないか。
  • 更新制導入の是非について検討する際、教員の社会的信頼が上がるのか下がるのかが大切な視点である。更新制については、社会の中で教育活動をしていく上で支えとなるものとして、機能するようにする必要がある。研修等がある中で、更新制がどのような位置を占めるのかを議論する必要があるが、基本的には古い知識を常にリニューアルする、あるいはそのような専門性を持つ者であると制度的に位置づけられれば良い。
  • 更新制を導入する際には、現場で育つ人をどのようにフォローアップしていく制度とするのかという点も重要である。
  • 教職に対する信頼の確立に関しては、14年答申においても、教職、学校、教員の社会的信頼の向上について、一連の体系を提示したのではないかと考える。その中で、改めて更新制がどのようなインパクトを持つのか議論する必要がある。また、更新制を打ち出した場合、どれほどの成果が得られるのかの見通し、吟味が必要である。
  • 更新制の導入がどのような効果をもたらすのかについては、見通しを最大限求めながら論議を重ねることが大切である。

(3)教員免許更新制と他の制度(現職研修、公務員法制、他の資格制度等)との関係

  • 更新制については、上進制、初任研、10年研、処遇等を統一的に考えて導入する必要がある。ほとんどの教員は更新されると考えるが、その中から優秀な教員を選び出して、上進や資格認定していくというのが良いのではないか。
  • 適格性を確認した上での免許の授与と、初任者研修との関係は避けて通れないのではないか。
  • 非常勤講師等は、正規の教員と異なり、初任者研修を受けていないという実態を踏まえる必要がある。また、10年研の実態を押さえておく必要がある。
  • 採用試験を受けて通らなかった人が、臨時に任用され、初任者研修も受けないということは議論していく必要があるのではないか。
  • 各都道府県では、10年研の評価を持っており、また、ほとんどの都道府県で人事評価も行っているが、ねらいは排除でなく、育成評価である。その視点は更新制にもつながると考える。
  • 人事評価や指導力不足教員の問題は、更新制とは直接結びつくものではないと考えれば良いのではないか。
  • 医師や弁護士は終身免許で更新制はないが、医師や弁護士は、患者や相談者が選ぶことができる。教員の場合は、子どもが選ぶことができず、医師や弁護士と同じに扱うことはできないのではないか。
  • 14年答申では、医師や弁護士等との比較において見送ったが、仮に他は他として、教職は教職として捉えるのであれば、その論理をどのように組み立てるのかは、大きなテーマになる。
  • 更新制のある他の資格は、教職に比べると少数で、性格がはっきりしている。教職の場合、職務上の広範な能力が求められ、また人数も多いことをどのように考えるのか検討しなければならない。

(4)平成14年中教審答申との関係

  • 14年答申の時は、問題教員を排除するという論理のもと、更新制の議論を行い、10年研により資質能力を高める方向の結論となったが、その後の実態を考えると疑問がある。条件附採用期間後の不採用者数は、14年から15年に激増している。更新制によって何を得ようとしているのか、意義・目的ははっきりさせなければならない。
  • 問題教員を排除するために更新制を導入するとなると、14年答申と合わなくなってくる。現在の教員の指導力不足等の問題は、人事考課や業績評価、給与の問題と連動してクリアできる可能性はあるため、現在の教員の問題は置いた上で、更新制を考える必要がある。
  • 14年答申は、教員生活途中における更新の可能性について議論したが、今回は免許付与段階を重視している。子どもや保護者からすれば、新任であっても免許の公証性で証を立てている。免許状の授与段階で、教員としての適格性を判断することが可能であれば、排除の論理が出てくる必要はない。
  • 更新制の代わりに10年研が導入されたが、実態は10年研の趣旨や更新制が目指したところが理解されていないため、更新制の意義、ねらいを再度検討することが必要ではないか。
  • 10年研については、各都道府県でも色々な手法を加えているが、これが更新制の代替だとは思えない。一番必要な研修は、教員同士の教材研究や、学校を越えた公開授業やその後の研究であり、これらを服務上の研修とした方が、教員の自主的な向上が期待できる。
  • 14年答申と今回の諮問との間隔が短いため、なぜそうなったのか説明は必要である。
  • 14年答申で、更新制の導入には慎重であるべきとされて2年しかたっておらず、この2年で何が変わり、なぜ導入するのか、現状についてのデータを基に必然性、妥当性について検討すべき。

2.改革の具体的方策

(1)教員免許状の授与の仕組み

  • 大学の教職課程の履修者に直ちに免許を与えるのは問題であり、修得認定書だけで良い。採用試験のペーパーテストは国家試験にすべきである。国家試験を課すことで、教員養成大学のシラバスが決まっていく。一方、教育委員会が面接や実技試験を通じて適性を見て、合格者に仮免許状を与える、さらに初任者研修の目標を達した者に正規の免許状を授与する、更新制は正規の免許状の保有者を対象に行っていく、というような抜本的な改革をする必要がある。
  • 養成段階で適格性を判定していないという指摘があるが、そうであれば適格性を判定する仕組みとして、教育実習に加えてキャリア教育としてふさわしいものを用意していく必要がある。
  • 現行の免許状は、国家試験がないため、単位履修証明書となっている。
  • 現行では教職課程を経れば免許状が授与されるが、教職課程の履修者を対象に試験を実施すると、教職課程の位置づけ、性格等が変わってくる可能性がある。教職課程の出口をどのように制度的に検討するのかを論議すべきではないか。
  • 大学等の養成機関と学校現場が乖離しており、一つの方策として国家レベルでの試験の導入は議論の価値がある。一方で、学校現場の困難さが増し、教員の仕事に魅力がなくなってきているという危機感があり、教員の処遇の改善等も議論しなければならないが、あまり過重な負担を求めることは気を付けなければならない。
  • 教職課程の履修者を対象に試験をするとなると、採用試験との関わりが出てくる。また、試験の内容がペーパーテスト中心となると、大学の養成内容が試験に受かるためのものになる可能性があり、慎重であるべき。
  • 米国では、大学での単位修得に加えて、一般教養、教職教養、専門教養の受験が、全員に義務づけられており、学区における採用の際の参考になっている。試験は何回もあり、ペーパー試験だけでなく、模擬授業等もある。米国の場合は、採用試験がないが、我が国で国家試験を導入するとなると採用とどうリンクするのか。
  • 授与の段階では、チャンスを与えるということはあっても良く、あまり締め付けることはしない方がよい。むしろ、その後の個々の教員の職能成長プランについて、更新制との関わりの中で、自己啓発を考えた方が良い。
  • 大学が全入時代となり、格差が出てくる中で、単位取得証明書のような免許制度では問題ではないか。大学の自主性を尊重し、ダブルスクールで学ぶような仕組みにならない制度を担保しつつ、養成段階をどのように改善したら良いか。
  • 集中して研修に打ち込んだり、自分を見直したりできない現状があり、ある期間、徹底的に研修に打ち込めるようにすることが必要。教員は、子どもが好きでないとうまくいかず、また同僚と一緒に仕事をして学ぶことが大きいことから、免許状の授与の際に、これらをどのように取り入れるかを考える必要がある。

(2)教員免許更新制の制度設計

1.更新の仕組みに関する主な事項

  • 教特法で研修が義務づけられるなど、教職特有の制度として、教職生活を通じて専門性や指導力が随時向上するような仕組みを作っている。また、免許制度においては、教職経験を積むことによって、専門性が向上するという上進制度がある。この中に更新制を導入するとすれば、教員の専門性等が格段に向上するような仕組みとしなければならず、またそれにより専門性の向上が担保されると証明することが必要である。また、適格性については、条件附採用期間や分限制度により見ており、このような仕組みがある中で、なぜ免許状で適格性を担保するのか、説明が必要である。このような観点から見た時、一定期間毎に専門性を高めるという更新制を考えることについて、もう少し理屈を整理しておかなければならないのではないか。
  • 養成期間4年に採用、初任者研修の後5年、あわせて最初の10年がポイントになる。すなわち、5年目が一つの区切りではないか。ライフステージの組み立て方が見合っているのかどうかを検討する必要がある。採用されたばかりの教員が厳しい状況に置かれており、養成段階から5年目くらいまでをどのように機能させていくか、その先に更新制を位置づけることになるのではないか。
  • 初任者研修を終えて5年目、2回目は10年経験者研修と同時期、3回目は40代になる20年目、4回目は50代になる30年目と、生涯4回の更新が良いのではないか。更新制は、実績や専門性向上等をしっかりやれば、大半の教員は更新されるが、各ステージにおいてどのような教員を生み出していくか、またどのような資格を与える研修で更新するのかをきちんとすれば良い。
  • 教育委員会が面接や実技試験を通じて適性を見て、合格者に仮免許状を与える、さらに初任者研修の目標を達した者に正規の免許状を授与する、更新制は正規の免許状の保有者を対象に行っていく、というような抜本的な改革をする必要がある(再掲)。
  • 米国の更新制について、基準は州がつくるが、研修内容は各学区の判断で、自主的な研修や本人のニーズに合った内容を入れている。各教員のキャリアに応じて、本人の自主的な意欲を高めるための研修メニューが必要である。国が制度として設けるのは一定の枠であり、具体的な内容は各教育委員会で検討すべきものである。
  • 更新時だけ学ぶのではなく、色々なメニューの中から実力に応じて、日常的に研修を重ね、それにより更新を受ける資格が与えられ、さらに処遇面でも評価されるような方針が出てくれば良い。
  • 現場が求めているのは、毎日インセンティブ高く生徒と対応する教員であり、インセンティブが高く、勤務実績をあげている教員は、多くのポイントを与える、何年毎に更新というのではなく、一定のポイントを取ったら上級免許状とするのはどうか。
  • 医師の場合は、内科の専門医、認定医、指導医などがあり、専門医等になるためには、例えば手術を何回以上、研修を何日以上などの条件が必要である。教員の更新制も、このようなものではないかと考える。更新によって優秀な教員には認定教諭や専門教諭、指導教諭などの資格を与え、処遇を改善していくような制度としなければならない。

2.対象者や対象となる免許状に関する主な事項

  • 更新制については、現職教員に適用することを前提とするのか、それとも新たな免許状授与の段階から更新制を導入することにするのか、整理する必要がある。
  • これから教員になる人に更新制を導入するというのが原則ではないか。その場合、現職教員については、人事評価を活用することで職能開発ができるのではないか。
  • 入り口段階は、何らかの形で機会を与えて、その際に免許状を終身とするのか、仮免許状にするのかという問題はあるが、ペーパティーチャーの存在を無くすのが良い。
  • ペーパーティーチャーについては、免許を持っていることを理由に教員を責めてくるケースもあるため、しかるべき期限が過ぎたら失効する手だてが必要である。
  • PTAやボランティア等の中には、教員免許を持っている方がおり、地域の教育力の向上につながっている。教壇に立っていないことで排除してしまうと、教員採用が少ない時期には、免許を取らなくなる。ペーパーティーチャについては、例えば、教育等に関わるボランティア経験や、大学の公開講座の受講等を更新の要件とすれば、全体としての教育力の向上になるのではないか。

(3)教員免許状の種類のあり方

 

(4)教員免許状と教員の処遇との関係

  • 更新時だけ学ぶのではなく、色々なメニューの中から実力に応じて、日常的に研修を重ね、それにより更新を受ける資格が与えられ、さらに給与・処遇面でも評価されるような方針が出てくれば良い(再掲)。
  • 更新によって優秀な教員には認定教諭や専門教諭、指導教諭などの資格を与え、処遇を改善していくような制度としなければならない(再掲)。

(5)その他

  • これまでの教養審答申では、大学が養成する教員像を明確に持ち、それを達成する組織構成とカリキュラム編成をしなければならないとしている。また、最小限必要な資質能力という仕上がり基準まで示されているが、大学によっては、これらが理解されていないのではないか。
  • 最近、教育課程の基準が教科中心、学力中心に変わろうとする中で、教員養成についても、教職重視という考えで良いのかどうか。
  • 一種免許状は標準的な資質を求めているが、教職課程において、教科又は教職に関する科目を設けており、標準的に必要な資質として、そのような扱いが妥当なのか論じる必要がある。
  • 教育実習は、出身校実習でみんな優がつくのが現実。教員養成系大学でも、附属学校での実習は教員になるための自信を付ける研修にはなるが、様々な環境の学校へ行った途端自信を失ってやめていく。教育実習とは別にボランティアや、一般校実習を義務づける必要がある。
  • 今までは、研修を受けさえすれば、どれだけ力がついたかは、ほとんど評価されなかったが、不十分であれば再度研修を受けさせるなど、研修における評価が必要である。
  • 研修について、熱意のある教員がモチベーションを高めて、専門性を高めていくための条件整備がなされていない。また、研修は飽和状態にあり、特化、自由化、組織化が必要である。特化とは必要な人に必要な研修を行うこと、自由化とは選択させること、組織化とは現場で育てることである。
  • 条件附採用期間は2年が良いのではないか。

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-- 登録:平成21年以前 --