2.教育委員会の在り方 7 保護者・地域住民と教育委員会・学校との関係の改善

(1)保護者・地域住民の参画

1.保護者・地域住民の意向の反映

 教育に対する多様な保護者・地域住民の要請にこたえていくためには,保護者・地域住民に対し学校の管理運営や教育行政への参画を積極的に求めていくことが必要である。また,地域が学校を育てると同時に,学校が地域を育てるという双方向の関係が必要である。
 保護者・地域住民の参画については,平成12年度に学校評議員が制度化され,平成16年時点で7割を超える公立学校で導入されている。その一方,地域によって導入がほとんど進んでいないなど,導入状況に差があるところである。今後,学校評議員制度の設置が全国的に進んでいくとともに,適切な運用が望まれる。
 また,学校評議員制度に加え,平成16年度に新たに学校運営協議会制度が導入された。この制度は,教職員人事についての意見や学校運営の基本方針についての承認など,地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画するものである。今後積極的にこの制度が活用され,保護者や地域住民と学校との協働による自律的な学校運営が広く定着することが期待される。
 また,学校教育以外の分野でも,地域住民の意思を施策や施設運営に反映するため,公民館運営審議会や図書館協議会などの制度の積極的な活用が望まれる。
 また,教育委員会の政策立案のため,保護者や地域住民の代表,教育関係の活動を行う団体の代表や有識者等によって構成される審議会や研究会を,必要に応じて設置することも有効な方策である。

2.保護者・地域住民等の学校への協力

 学校は,学校安全の徹底や食の指導など,以前より多くのことが求められるようになっている。また,総合的な学習の時間やインターンシップ(就業体験)など,学校外の協力を得て行う必要のある教育活動にも取り組むようになっている。このような中,学校は,保護者や地域住民,更には地域の企業や大学などの協力を得ながら教育活動を行っていくことが不可欠となっている。
 学校は,保護者や地域住民に対して自らの教育活動について情報提供し,その理解を得ていくと同時に,どのような協力が必要なのかも併せて説明し,保護者・地域住民の協力を求めていくことが必要である。このような学校の求めに対しては,保護者・地域住民は,学校を含めた三者で子どもを育てていくという観点に立ち,子どもの教育における家庭や地域としての役割を果たしつつ,学校の教育活動に積極的に協力していくことが望まれる。
 また,地域の企業や大学等は,多くの子どもたちが学校を卒業した後の進路先であり,地域の貴重な教育資源でもある。学校は,企業や大学等と緊密に連携し,学校の教育活動について理解を求めるとともに,企業や大学も学校に対して積極的に協力していくことが望まれる。

3.PTA活動の充実

 保護者の参加する団体としては,従前よりPTAがあり,学校に対する支援を行うなど重要な役割を果たしている。今後,保護者・地域住民の学校の教育活動への参画が進む中で,その役割はますます大きくなるものと考えられる。学校評議員や学校運営協議会の委員の人選の母体としても重要性を増すことになる。
 学校は,PTAを通じ,保護者に対して学校の教育方針や教育活動の実施状況,学校評価結果を説明し,保護者の十分な理解を得るようにし,一方,PTAは,保護者全体の意見を踏まえながら学校に協力していくことや,子どもの教育の当事者として各家庭における教育の充実に取り組むことが望まれる。また,学校はPTAに対し学校評価への協力や参画を促すことも重要である。
 更に,PTA活動の中に地域住民を取り込み,PTAが核となって保護者・地域住民の学校教育への参画を推進していくことが望まれる。
 PTAが学校に協力する際には,学校の求めに応ずるだけではなく,例えば,有志の親の会の結成や学校支援ボランティアの組織化など,保護者や地域住民の自発性を重視した取組を進めることが望まれる。

(2)保護者・地域住民への情報発信と要望への対応

 保護者・地域住民の参画については,住民側で参画に十分な時間が取れない,参画に躊躇(ちゅうちょ)するといったことから,一部の住民の参画のみにとどまってしまう場合も考えられる。
 今後,保護者・地域住民が参画しやすくなるよう様々な工夫を行っていく一方で,情報提供を広範に行い,随時住民の意見や要望を受ける体制をとることについても重視していくことが必要である。これらを通じ,保護者・地域住民と教育委員会や学校が相互に理解し,その信頼を得ていくことが可能となると考えられる。

1.積極的な情報発信

 教育委員会が保護者・地域住民の信頼を得るため,教育委員会が行っている施策を十分に知らせるよう努力することが必要である。
 教育に関する地域住民の理解と支援の機運を盛り上げるため,条例による「教育の日」の制定や教育週間の設定など,教育に関する地域住民への情報発信を行うことが望まれる。また,学校開放週間の設定や,研究授業を地域に公開して実施するなど,学校の授業の公開に努めることが必要である。
 また,教育委員会は,インターネット,テレビ,ラジオなどの各種の広報媒体を活用し,教育委員会の審議状況や学校における教育活動の現状,教育委員会の施策の情報を積極的に発信することも必要である。

2.保護者・地域住民の要望への対応

 平成13年の地教行法改正では,教育委員会が,地域住民の様々な要望や苦情に対応できるよう,行政相談窓口を明示することとされたところである。今後,これに加え,ホームページの掲示板や電子メール,FAXなどにより,住民が直接教育委員会に意見を述べることができるようにすることが望まれる。

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