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第2章 青少年の意欲をめぐる現状と課題

2.データが示す青少年の生活実態等の現状と課題

(3)直接体験の少なさ

1  スポーツ等の体を動かす体験の少なさ

[調査結果]
  •  近年,青少年がスポーツや外遊び等の体を動かす時間が減ってきており(図31),自由時間の大半は自分の家や友達の家など屋内にいる(図32)。しかも,たとえ周囲に友達がいても各々が別々に一人遊びをしており,このことは戸外にいても同様である。また,現代の青少年の運動能力は以前の同年代と比較して低くなっている(図33)。
[これまでに得られた知見]
  •  乳幼児期において頭も体も動かすこと,特に五感を存分に使うことが,身体機能の発達に対してだけでなく脳の成長にとっても必要であることが明らかとなっており,成長期に十分に体を動かさないことは,運動能力だけでなく心身の発達全体に影響が及ぶ。
     このため,スポーツや外遊び等の体を動かす活動を意識的に青少年の生活に取り込むよう,特に乳幼児期や学童期には保護者をはじめとした周囲の大人が配慮することが必要である。
青少年の運動時間は減少しており,帰宅後に戸外で遊ぶ青少年は少ない。

図31-1 1週間の運動時間(男子)

図31-2 1週間の運動時間(女子)
財団法人日本学校保健会
『児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書』(平成12年度,14年度,16年度)

図32 学校から帰ってどこで遊ぶか
川村学園女子大学
『平成16年度子どもたちの体験活動等に関する調査研究のまとめ』

小中学生の運動能力は,20年前の同年代に比較して低下している。

図33 昭和60年と平成17年の体力・運動能力の比較(上段:昭和60年,下段:平成17年)
◆走る力(50メートル走、持久走)
※男子6歳,女子6歳
50メートル走

※男子12歳、女子12歳
持久走

◆跳ぶ力
※男子9歳、女子8歳
跳ぶ力(立ち幅跳び)

◆投げる力
※男子10歳、女子11歳
投げる力(ボール投げ)

◆握力
※男子17歳、女子16歳
握力
文部科学省
『平成17年度体力・運動能力調査』

2  自然体験の少なさ

[調査結果]
  •  「太陽の昇るところや沈むところを見る」「チョウやトンボ,バッタなどの昆虫をつかまえる」といった身近な自然体験をほとんどしたことがない青少年が以前と比較して増えている。また,「キャンプ」や「川や海で泳ぐ」ことなども含め,自然の中で活動する体験を持つ青少年が全般的に減っている(図34)。
     しかも,家族や友達と一緒に自然体験を行う割合が,学校や青少年教育施設(注8),青少年団体を通じて自然体験を行う割合と比較して著しく減少している(図35)。
[これまでに得られた知見]
  •  自然体験の多い青少年の中には,道徳観・正義感があり学習意欲・課題解決意欲の高い青少年の多いこと(図36,37)や,集団による長期キャンプは,積極性や協調性を高め判断能力を育てるといった社会性の育成に効果の高いことが明らかとなっている。これは,自然という,人間が完全にはコントロールできない環境の下で,仲間や指導者に支えられながら一緒に様々な課題や困難に立ち向かう中で,社会性は育成されていくものであるためと考えられている。
     青少年の自然体験の少なさは,青少年がこうした教育効果の高い活動に参加する機会を失っていることを示す指標の一つである。
身近な自然体験も含め,自然の中で活動する青少年が減少している。

図34 自然体験をした割合
チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと
大きな木に登ったこと
太陽が昇るところや沈むところを見たこと
野鳥を見たり鳴く声を聞いたこと
キャンプをしたこと
海や川で貝を取ったり魚を釣ったりしたこと
ロープウェイやリフトを使わずに高い山に登ったこと
夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと
海や川で泳いだこと
独立行政法人国立青少年教育振興機構
国立オリンピック記念青少年総合センター
『青少年の自然体験活動等に関する実態調査』報告書 平成17年度調査』(平成18年)

夏休みに青少年が家族や友達などと一緒に自然体験活動に参加する機会が減少している。

図35 夏休みにおける自然体験活動への参加割合
独立行政法人国立青少年教育振興機構国立オリンピック記念青少年総合センター
『「青少年の自然体験活動等に関する実態調査」報告書平成17年度調査』(平成18年)

自然体験の多い小中学生には道徳感・正義感の身に付いている者が多く,自然に触れることで学習意欲を喚起される者が多い。

図36 自然体験と道徳観・正義感の関係
独立行政法人国立青少年教育振興機構国立オリンピック記念青少年総合センター
『「青少年の自然体験活動等に関する実態調査」報告書平成17年度調査』(平成18年)

図37 自然に触れる体験をしたとき勉強に対してやる気になるか
図37 自然に触れる体験をしたとき勉強に対してやる気になるか
文部科学省
『平成14年学習意欲に関する調査研究』
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