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カビ対策専門家会合(第8回)議事概要

1. 日時
  平成18年9月12日(火曜日)14時30分〜16時

2. 場所
  文部科学省宇宙開発委員会会議室(4階)

3. 出席者
 
(委員) 宇田川主査、高鳥委員、岡田委員、佐野委員、園田委員、細矢委員
(文科省) 吉野大臣政務官、田中大臣官房政策課長、小松伝統文化課長、その他関係官

4. 議事等
 
(1)  宇田川主査からカビ制御技術検討ワーキング・グループの検討項目について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(○委員、●吉野大臣政務官)
吉野大臣政務官  ワーキング・グループではカビ被害の修復技術についての検討は行っていないのか。

委員  カビを防ぐ技術を検討するための専門家を選んでおり、防菌・防カビを中心に議論している。

吉野大臣政務官  大切な技術であり、検討する方向性を審議経過報告に盛り込んでほしい。

委員  カビを防ぐ技術として、酵素を固定したフィルターにより、菌糸体や胞子を分解する技術があると聞いたことがあるが、ワーキング・グループでは取り上げられたのか。

委員  委員に聞いたが、把握している人がいなかった。今後、もう少し調査したい。
 なお、抗菌製品には効果が疑わしいものも出回っており、ワーキング・グループでは微生物学的データによってきちんと裏付けられたものだけ取り上げる方針である。

(2)  事務局から審議経過報告(素案)について説明があり、その後、審議が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(○委員、●事務局)
委員  カビ対策研修会の実施に関連して、10月以降に実際に研修を行っている機関等からヒアリングを行うことを提案したいが、どうか。

委員  研修会のあり方を考える際に有効な提案であり、きちんと情報収集を行うためにも賛成である。
 「おわりに」で指定管理者について言及しているが、指定管理者に対する研修をどのように行っていくかが課題である。学芸員等を有しない民間事業者が資料保存も含めて管理者となる例があり、指定管理者になるための条件として当該研修の受講を必須にしたり、一定数の受講者の確保を求めたりすることなどは検討できないか。

委員  ヒアリングの中で、いわゆる環境調査等が外注して行われているという例を聞いてきた。これらの試験検査が文化財等の保存の観点から適正に行われているかは疑問の余地があり、試験検査法についてもある程度のマニュアル化が必要ではないか。検査機関の指定といった手法を採用することもあり得るのではないか。

委員  カビ対策マニュアルは、実践につながるような具体的なものとすることが必要だろう。その際、建築、食品、医療といった各関係団体が作成しているマニュアルも参考としてはどうか。
 研修会については、レベルを分けて長期的に継続して行えるプログラムとすることが望ましい。

委員  文化財等の保護のため、カビを取り扱える人材を育成するためにはどういった方策が考えられるか。

委員  人手の問題を考えると、これからは民間委託等によって民の力を取り入れていくことも重要ではないか。

委員  人材育成に対する大学の研究者の協力等が書かれているが、実際に大学においてカビを研究している人は病気に関する医学部、歯学部、あるいは植物病理に関する農学部等に集中しており、文化財等で問題となるようなカビの研究を行っている人は少数である。人材育成の裾野を広げるためには、生物系でカビを扱う研究者を増やしていくことができればよいのではないか。

事務局  現在の審議経過報告(素案)はこれまでの議論の整理として作成している。財政上の問題はあるが、長期的にカビ被害の軽減、防止に役立つ取組として足りない部分があれば御指摘いただきたい。

委員  以前吉野政務官から発言があったように、我々は目で見て初めてカビを認識している。マニュアルを作成する際には、カビを発生させてしまったら手遅れであるというカビ被害の恐ろしさも伝わるような工夫が必要ではないか。研修においても同様に恐ろしさを周知していく努力が求められる。

委員  すぐにできるものではないが、博物館等の事務系職員から保存担当者まで広く用いてもらえるよう、マニュアルの内容は複数用意しておくことが必要ではないか。
 人材育成に関しては、最近は大学で教える内容に先端的なものが多くなってきており、社会教育の中で基礎的な部分を補っていく必要があるのではないか。

委員  東京文化財研究所ではまさにそのような社会教育を行っている。具体的には保存担当学芸員研修の中で、防虫、防カビ、修復等も含め、実践を念頭においた教育を行っているが、その際は修復業者の協力の下、修復の注意点等も教えるようにしている。
 詳細にわたる内容を一手に教えることは不可能であり、民間の研修会も含めて、どこの研修会を利用すればよい、といったアドバイスができるよう情報をきちんと収集することが大事である。

委員  日本食品分析センターでも講習を行っているが、実際にカビの観察を行うなど、実習を主体に取り組んでおり、企業の品質管理担当者等の意識啓発につながっている。

委員  カビの世界ではいまだに多くの新種の発表がなされている。マニュアル作成の前提として、どのようなカビがあるかを把握しておくことが重要であり、カビのリストの作成といった基礎的な研究も重視していく必要があるのではないか。
 また、実際に研修を行う際には各種の学会にも中心的な役割を担っていただくことになると思われるが、研修を行う場所や機器も問題になると考えられ、その点に対する配慮も必要ではないか。

委員  ターゲットに応じてマニュアルを分けていくことが必要であり、現場が一番求めているのは実践に役立つマニュアルである。カビの早期発見法等を盛り込むことができれば、非常に役に立つのではないか。

委員  オランダの王立菌類研究所では、環境問題も含めたマニュアルを作成している。それに相当するものは時間をかければ作成できると思うし、民間事業者に対して環境調査方法の指導を行うよりどころとして活用もできるのではないか。

委員  素案に記述されているように、東京文化財研究所への相談件数は本当に氷山の一角で、相談窓口については、最低でも全国7ブロック、できれば各都道府県に開設することが望ましいが、窓口の周知が徹底されればある程度数を絞り込むことは可能だろう。ただし、相談窓口はマニュアル、研修が有効に機能して初めて意味をなすものであり、三者を一体として取り組んでいくことが必要である。
 現状を把握したいが、自然史系博物館からの問い合わせは国立科学博物館にどの程度あるのか。

委員  夏休みの宿題の関係など身の回りのことで問い合わせを受けたことはあるが、現場からの直接的な相談は寄せられない。相談窓口を設ける際は、名称をきちんと考えないとこのような日常レベルの問い合わせまで受けることになってしまうので注意が必要。

委員  すべてがオールマイティの窓口になる必要はなく、それぞれに得意分野をもって役割分担していってもよいのではないか。地方の事情はさまざまだが、ある程度コアとなる博物館や美術館を介して、各分野の専門家にアクセスできるようになればよい。

委員  専門家とのやりとりはインターネット上でもできる時代になっており、相談窓口ではそのための前提として、サンプリングや撮影用の機材の貸し出しも行えればよい。

委員  専門家の集団ということでは日本防菌防黴学会でカビ対策のための分科会を設けるなど、バックアップをお願いすることも考えられる。

委員  カビ対策の専門家はやはり少数であり、学会のような集団がある程度一括して引き受けることも一つの方策としてあり得るだろう。東京文化財研究所には相当の相談が寄せられているようであるが、キャパシティとしてはどこまで対応可能か。

委員  現状では、専属の人員を充てたとして、80館からの虫・カビに関する相談で1名、150館の保存環境調査で1名というのが限界ではないか。

委員  それでも非常に大きな負担になるのではないか。

(3)  審議経過報告(素案)については、9月15日(金曜日)まで各委員からさらなる意見を受け付けた上で、この日の審議を含め、意見を踏まえた修正については主査に一任された。
 次回は9月20日(水曜日)12時から開催することとなった。

(大臣官房政策課)


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