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カビ対策専門家会合(第5回)議事概要

1. 日時
  平成18年8月7日(月曜日)14時30分〜16時30分

2. 場所
  文部科学省宇宙開発委員会会議室(4階)

3. 出席者
 
(委員) 宇田川主査、高鳥委員、岡田委員、佐野委員、細矢委員、堀江委員
(文科省) 田中大臣官房政策課長、三浦社会教育課長、その他関係官

4. 議事等
 
(1) 石川県立大学名誉教授の横山理雄氏から食品の殺菌と無菌化包装技術について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
 
委員  これまでの経験の中で、制御が難しい細菌やカビはあるか。

説明者  耐酸性菌や耐熱性菌は制御が難しい。カビについては、アルコール噴霧によりアスペルギルスを抑えたと思ったら、代わりにクロカビが生えるなど、食品の専門家でもメカニズムが分からない事例が起こる。また、砂糖の入った清涼飲料水にクラドスポリウムが繁殖する事故が年に1、2回程度ある。

委員  包装材料自体の無菌化はどのように行っているのか。

説明者  バイオクリーンルームの中で包装材料をつくる方法と無菌充填包装に用いる包装容器を過酢酸と過酸化水素水の混合薬剤で殺菌する方法の2通りがある。

委員  バイオクリーンルーム自体の信頼性はどの程度か。

説明者  バイオクリーンルームだからといって確実に信頼できるものではない。HEPAフィルターを使って空調を行っている間はよいが、実際に人間が出入りすると汚れてしまう。そのため、使用に際しては3日間程度、浮遊菌や付着菌の測定を行っている。

委員  主要な殺菌方法が色々と挙げられているが、文化財を劣化させる可能性が小さいと思われる方法はどのようなものか。

説明者  熱を加えられれば一番よい。そのほかにはアルコール噴霧とともに紫外線を照射する方法、過酸化水素のような殺菌剤をガス化させて静電気により吸着させる方法などが考えられるのではないか。

委員  文化財への使用ということでは一般に酸化性のあるもの、還元性のあるものは用いづらい。また、熱も形態変化を引き起こしやすいため避けることが望ましい。水没した多量の書籍に対してガンマ線を照射することがあるが、資料に与える影響を知りつつ、やむを得ず行う処置であり、定常的に用いる手法ではない。

説明者  ガンマ線や電子線など、食品分野では安全性の問題等により使用できない技術であっても、可能性があるのではないか。

委員  文化財にも色々とあるし、ケースによっても違う。一概に使える、使えないと決めてしまうのはよくないのではないか。

委員  レトルト食品の充填など、実際に無菌包装を行う部屋で事故が起こった場合、食品分野ではどのような対応を行っているのか。

説明者  レトルト食品の場合は前処理と充填の工程のみクリーンルームで行っているが、クラス10,000程度であり、洗浄・殺菌は普通の施設と変わらない。
 ハムやソーセージについては、特に包装過程はクラス1,000のクリーンルームで行っており、厳しく管理されていると言える。その場合でも人間が出入りする関係から、通常は次亜塩素酸ソーダのような一般的な殺菌剤を用いてスチーム殺菌を行っている。発表では温度30度以上、湿度70パーセント以上という高温多湿の条件下でホルマリンによる殺菌を行うと説明したが、これは年に1、2回行う程度である。

(2) 東京海洋大学助教授の木村凡氏から気相による食品微生物制御について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
 
委員  バイオフィルムは細菌で重視されている概念だが、真菌であるカビにもあてはまるものなのか。

説明者  バイオフィルムは複数の細菌が作り出す1つのエコシステムであり、酸素と接触する表面などにおいては、カビも定着しうるのではないか。

委員  最近ではカビを含むバイオフィルムについても報告がある。

委員  手洗いは推奨したほうがいいと思うが、どのようにお考えか。

説明者  手洗いは絶対である。発表において、手洗いはあまり効果がないと申し上げたが、それは細菌をゼロにするという観点では効果がなく、手袋の着用が必要だということを強調するためであり、食中毒菌を落として菌相を変えるという意味では有効である。

委員  二酸化炭素の殺菌作用について説明があったが、窒素には特段そのような作用はないと考えてよいか。

説明者  窒素は生物にとっては不活性ガスであり、充填した場合には、酸素がないために静菌的に作用すると考えればよい。食品業界では窒素充填は真空と同義で扱われている。

委員  二酸化炭素を充填する場合と窒素を充填する場合の使い分けはどうか。

説明者  食品業界では二酸化炭素の使用は限定的であり、基本は窒素を用いる。例えば、スーパーの裏まで大きな肉や魚の塊を運ぶ際に二酸化炭素を用いることはあるが、小売の際に充填することは我が国ではほとんどない。二酸化炭素濃度を40〜60パーセント程度まで上げると、食品を食べたときに炭酸飲料を飲んだときのような刺激が伴うようになるからだ。

委員  シュードモナスに対しては二酸化炭素の殺菌効果が及ばないということだが、カビに対する殺菌効果はどうか。

委員  カビの種類にもよるが、全体的には効果がある。

委員  文化財に関しては、一時的に二酸化炭素を高濃度に封入することがあるが、数週間という処置期間に限定して用いている。これは窒素の場合も同様で、文化財の自己分解により生じる劣化ガスが蓄積し、自己分解が促進されてしまうからである。

(3) 日本食品分析センター課長の土屋禎氏から施設・設備面を中心とした食品工場における衛生管理について説明があった。

(4) 次回は8月29日(火曜日)13時30分から開催することとなった。

(大臣官房政策課)

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