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カビ対策専門家会合(第4回)議事概要

1. 日時
平成18年7月27日(木曜日)14時30分〜16時30分

2. 場所
文部科学省10F3会議室(10階)

3. 出席者
(委員) 宇田川主査、高鳥委員、岡田委員、佐野委員、園田委員、堀江委員
(文科省) 小坂大臣、吉野大臣政務官、土屋文化財部長、田中大臣官房政策課長、三浦社会教育課長、森学術機関課長、その他関係官

4. 議事等
(1) 小坂大臣から以下のとおり挨拶があった。
 日本に住む限り、カビといかに付き合い、美術品等の保存を的確に行っていくかは永遠の課題であり、文化庁のみならず文部科学省全体で全力を挙げて取り組むべきことだと考え、吉野大臣政務官に指揮をお願いした。
 この会合では専門家の方々だけでなく、学芸員の方々にも御参画いただくなど、現場の方々にとっても広く参考にできるよう、学術的、実践的知見の集約に向けて取り組んでいただいていると伺っている。今日まで着実に議論が進んでおり、委員の方々には感謝を申し上げるとともに、今後もぜひ御協力をお願いしたい。

(2) 吉野大臣政務官から京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター、京都国立博物館文化財保存修理所等の視察について報告があった。

(3) 日光社寺文化財保存会の澤田了司氏、田村洋一氏から日光二社一寺(日光東照宮、二荒山神社、輪王寺)におけるカビ被害の実例と対策の現状について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
委員  外気と直に接しており、よい対策法がなくて困っているのがよく分かった。カビの栄養源となる膠(にかわ)の代わりに樹脂を用いたことがあるとのことだが、効果はどうだったのか。

説明者  カビは発生しなかった。また、膠(にかわ)ほどではないにしろ、固着力に問題はなかった。ただし、20年程度が限界であり、劣化ののちに剥落が起こっている。

委員  色彩や光沢に関しても問題はなかったのか。

説明者  外見上は膠(にかわ)と変わらない。なお、樹脂を用いたのは無地の彩色部分だけであり、複雑な模様の部分には用いていない。また、樹脂を用いたのは十数年前の修理においてであり、現在は用いていない。

委員  膠(にかわ)を塗布してすぐに生えるカビと、1回収まってから数年後に生えるカビとは種類が違うのではないか。ぜひ調べていただきたい。

委員  膠(にかわ)が昔と変わってきたのではないかという話であったが、感覚的なものか。

説明者  30年くらい前は1時間以上煮沸しないと溶けなかったが、今は10分程度で済む。精製技術が進んだのではないか。

委員  カビにとっての栄養源となることに変わりはないか。

説明者  変わりはない。特に群青や緑青などの砂状の顔料は、膠(にかわ)の劣化に伴い半年くらいで剥落してしまう。

委員  膠(にかわ)に防黴剤を入れることを検討したとのことだが、現実には用いているのか。

説明者  以前に防黴剤を入れたことはあるが、膠(にかわ)の質が低下し、2年くらいで剥落が起こってしまった。そのため現在は塗装後に防黴剤を吹き付けている。

委員  キノコによる建造物被害はないか。

説明者  漆が劣化し、木材が剥き出しになったところにキノコが生えている例が多い。

(4) 王塚装飾古墳館の長谷川清之氏から王塚古墳におけるこれまでのカビ対策の流れについて説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
委員  白いカビの写真を拝見したが、単一もしくは数種類のカビのように見える。それが何かを調査して、カビの性質を確認しておくことが重要。

委員  古墳内の温度は年間どのような感じか。

説明者  最近は17度から20度くらいで変化している。地表に比べて4ヶ月遅れており、4月、5月が一番低く、10月くらいが一番高い。ただし、以前は最低温度が14、15度であり、全体的に温度は高くなっている。

委員  福岡県装飾古墳保存連絡協議会を結成され、マニュアル作りに取り組んでいらっしゃるとのことだが、何が一番の課題となっているか。

説明者  保存施設を持つ古墳の場合は入室時の方法をどうするかが一番の課題となっている。一方、保存施設がない古墳の場合はそもそもカビ被害をどう防ぐかが一番の課題となっている。また、カビ対策を定期的に講じるほうがいいのか、カビが生えてから対策を講じるほうがいいのか、意見が割れている。

委員  カビが発生した場合は、直ちに専門家に相談した方がよい。石室周辺に鋼土を埋めているとのことだが、地元のものなのか。

説明者  地元の石灰岩地帯で採れる、密度の大きい粘土状の赤土を用いている。

委員  白カビという言葉を用いているようだが、どのようなカビなのか。

説明者  見た目から用いている用語であり、詳しい菌種は分からない。

委員  一度枯れたあとで何度でも生えたということから、土壌中から供給された窒素源、炭素源を栄養としていたものと考えられる。また、きれいなコロニーを形成していたことから、貧栄養下でも生育できる数種類の菌なのではないかと考えられる。菌種を同定することは微生物制御に欠かせないため、しっかりとした調査が必要。

委員  調査時の報告書を持っていないため、経験でお話するが、九州の装飾古墳におけるカビの生え方には大きなコロニーを形成する場合とポイントで生える場合の2種類がある。後者はさまざまな種類のカビがあるが、前者は大体フザリウムとトリコデルマが多い。
 対策としては、石の上に直接顔料がのっており、筆等で触れないことからホルマリン3パーセントを加えたアルコール水の噴霧を行っている。王塚古墳の場合は大規模な散布は行わなかったが、漏水対策を含めた保存整備がしっかりと行われており、前室における環境管理で今後の微生物制御をある程度行えると考えたからである。今後、大規模なカビ被害が発生した場合は、改めてきちんとした調査を行う必要があるだろう。

委員  前室を清潔に保つなどの取組が重要。エアシャワーを設置すれば高レベルの微生物制御が可能になる。

(5) 佐野委員から文化財の生物被害防止研究の現状と課題について説明があった。

(6) 次回は8月7日(月曜日)14時30分から開催することとなった。

(大臣官房政策課)

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