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カビ対策専門家会合(第3回)議事概要

1. 日時
平成18年7月18日(火曜日)14時30分〜17時5分

2. 場所
文部科学省宇宙開発委員会会議室(4階)

3. 出席者
(委員) 宇田川主査、高鳥委員、岡田委員、佐野委員、園田委員、
細矢委員、堀江委員
(文科省) 吉野大臣政務官、田中大臣官房政策課長、三浦社会教育課長、
小松伝統文化課長、その他関係官

4. 議事等
(1) 吉野大臣政務官から東京文化財研究所の視察について報告があった。

(2) 大阪市立自然史博物館の佐久間大輔氏から自然史標本に関するカビ被害の実例と対策の現状について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
委員  自然史標本にカビが発生する場合、博物館に収蔵される前の原因による場合と博物館に収蔵された後の原因による場合のどちらが多いのか。

説明者  一度博物館に収蔵されれば、被害はケタ違いに小さくなる。野外採集をして標本を作ってから博物館に収蔵されるまで、実際にはかなり長く空いてしまうことが多く、一番危険なポイントだと思っている。

委員  だとすれば、予め標本と菌相との関係を把握しておくことが重要だろう。

説明者  家庭で管理されている場合にどんなカビが被害を及ぼしているのか、知っておきたいと考えている。なお、老朽化した博物館やランニングコストの乏しい博物館においては収蔵後もカビ発生の危険性が伴うところもあるのが現状である。

委員  一番問題なのはアマチュアの方や大学からカビ被害を受けている標本が寄贈されるときに博物館がどういう処理をして収蔵庫に入れているかだろう。貸出に伴い、収蔵庫を出入するときも同様である。ここを改善できれば効果は大きいのではないか。

委員  冷凍燻蒸のお話があったが、低温に置くだけでなく、その際に何らかの化学薬品処理を行うのか。

説明者  マイナス40度の環境にさらすことによる効果を期待するものであり、薬品処理は行わない。昆虫に関しては効果が確認されている。

委員  菌相の把握については大阪市立環境科学研究所との連携はどのようになされているのか。

説明者  現時点では取り組んでいない。今回の発表が契機となって、問題意識をもち始めたのが現状である。本格的に取り組む際には、大阪市立環境科学研究所と連携して進めていくのがベストだろう。

委員  臭化メチルの使用全廃の影響は大きいか。

説明者  当館はもともと二硫化炭素による個別燻蒸を行っており、不安に思っているというのが現状である。

委員  24時間空調、20度、湿度50パーセントというのは展示場もあてはまるのか。

説明者  収蔵庫のみであるが、施設全体として乾燥はしている。20度にキープする主眼はカビよりも昆虫の発生を防ぐことにある。

委員  文化財保護の観点からは一括してガス燻蒸を行うのが望ましいが、燻蒸剤によってはDNAが破壊され、利用できなくなると聞いている。燻蒸に関する情報提供の在り方については、どのような形態が望ましいと考えるか。

説明者  燻蒸剤については、価格やDNAへの影響等を含めた情報が一覧となって提供されることが望ましい。どの燻蒸剤を使うかについては、各博物館が実情に応じて判断することになる。

委員  エキボン燻蒸をやった標本からはDNAは抽出できない。私はかねてからジーンバンクの作成を推奨してきたが、これまでの分類学は形態による分類が重視され、DNA利用はあまり認識されてこなかった。近年その重要性が明らかになってきており、カビ被害標本に対する個別燻蒸などのやむを得ない場合を除き、燻蒸を行うべきではないと考える。


(3) 土浦市立博物館の中澤達也氏から土浦市立博物館における有害生物対策の取組状況について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
委員  二酸化炭素燻蒸にはカビを完全に殺す力はあるのか。カビを生えさせないようにする力はあると思うが。

説明者  カビの専門家ではないので分からない。当館では例えば漁労具などでカビが生えたものを収蔵することが多い。その際は、自然乾燥後、ドライクロスやウエットタオルによる清掃を行い、二酸化炭素燻蒸をして収蔵するという手順を取っている。始めて2、3年の取組であり、効果は今後見極めていくことになるが、もともとカビが生えていたものは要観察品にしており、夏場においては収蔵庫に入るたびに確認を行っている。

委員  トラップ等を工夫されているようであるが、粘着マットの使用は行っているのか。また、空調フィルターの交換はどの程度の頻度で行っているのか。

説明者  粘着マットの使用は検討したことがあるが、消耗が大きく予算的な面から使用していない。収蔵庫前室でスリッパに履き替えることとし、前室は定期的に除菌清掃を行っている。また、空調については外部委託しており、業者が来たときには私も立ち会って、フィルターの汚れを確認した上で交換を行っている。

委員  二酸化炭素は大量に吸引すると死亡することもある。現場で二酸化炭素燻蒸を行うにあたり、その点をどのように解決されたのか。

説明者  当館で二酸化炭素燻蒸に用いている製品は、もともと学芸員でも手軽にできるという点が売りとなっている。とはいえ、作業については外部に委託し、空調機も最大限稼動させるようにしている。


(4) 愛知県美術館の長屋菜津子氏から近代美術館におけるカビ対策を含めた美術品管理の現状と課題について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
委員  取組内容には非常に感心した。カビの発見にブラックランプを用いるという手法はどこで情報を手に入れられたのか。

説明者  ヨーロッパで美術品修復の勉強をしていた方から伺った。また、婦人雑誌で着物の手入れにブラックランプを用いると有効だと載っていたのを参考にした。


(5) 園田委員から博物館資料の保管・管理システム及び現在の取組状況について説明があり、その後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下のとおり。(●説明者、○委員)
委員  目視でカビを確認しているとのことだが、ルーペを用いて確認するようにするとよい。慣れれば効率的にできる作業であり、そういった技術はしっかりと引き継ぐようにしていただきたい。
 また、奥にある資料を調査する際に別の資料を移動させることになるが、しっかりと手袋を用いるべき。

説明者  調査者が入る際には、手袋を着用した収蔵庫の係の者が資料の移動を行うようになっている。

委員  カビの生えやすい材質について、後ほどご教示いただきたい。

委員  美術品のカビ対策の一環として、絵の具そのものに防黴加工を施すことはあるのか。

説明者  TBZを用いる事例があるとは聞いている。

委員  絵の具自体に防黴剤を入れることは、長期的に絵画自体への影響がないとは言い切れず、極めて悪い環境下へ移す場合など、特別な場合にしか行われていない。

説明者  TBZなどの防黴剤を用いる場合でも、オリジナルの絵の具層ではなく、画面保護や光沢調整等のために絵の具層の上に塗られるワニス層に混ぜて用いられる。


(6) 事務局及び宇田川主査から「カビ制御技術検討ワーキング・グループの設置について(案)」について説明があり、特段の意見なく了承された。

(7) 次回は7月27日(木曜日)14時30分から開催することとなった。

(大臣官房政策課)

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