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資料2

博物館登録制度の見直しについて(論点)

1. これまでに指摘された博物館登録制度の問題点
 
メリットが薄い(特に公立館)
一般に知られていない
国立博物館が「相当施設」である、多数の「類似施設」の存在等、実態に即していない
小規模館の努力に応えられる制度になっていない
登録審査を行う都道府県教委で十分な態勢が取られていない
登録基準が少なすぎる
博物館概念が多様化しており、単一のものさしでは評価できない 等

2. 今後の博物館登録制度の在り方(検討の視点)
 
1) 何のための登録制度なのか(各当事者が登録制度に期待するもの)
 
来館者(若しくは国民、市民)にとって
 
学習という観点で優れた(一定基準を満たした)博物館かどうか見極められる
制度により博物館全体の質的向上が図られる。
博物館にとって
 
登録を受けることが一定のステイタスとなり、広報等に活用できる。
地域の声を運営に反映する等改革を図る契機となる。
登録を受けるために課される諸業務を実施する正当性が得られる(設置者への予算や人員確保要求に根拠が得られる)
博物館の表に見えない部分の活動が明らかになり,博物館活動に対し正しい理解を得ることができる。
博物館設置者にとって
 
所管する博物館のステイタスとなる。
ともすれば見失いがちな博物館運営に一定の指針が与えられる
登録更新の確保を指定管理者に課すことによって博物館の質の維持が図れる
地域住民・国民に対する施設設置の説明責任を果たすことができる。
国、都道府県(博物館行政主体)にとって
 
国民,住民の博物館に対する関心が高められる。
全国の博物館に対して、一定基準の確保を促すことができ、博物館全体の質の向上につながる。(国)
一定基準を示すことで都道府県の審査のバラツキを抑制できる。(国)
運用によっては、独自の博物館行政展開のツールとして活用できる(地方自治体)

(参考)
英国MLAの博物館基準認定制度の利点(MLAのホームページより)
 
1) 運営、利用者サービス、来館者用施設、収蔵品管理において博物館が必要最低限の基準を満たす事を促す
2) 博物館の定義を満たす全ての機関に対して、共通の倫理基盤を提供する
3) 社会のために委託されたコレクションを持ち、現在と未来の世代のために責任を持って公共の資産を管理する機関として、博物館に対する信頼を育てる
4) 博物館を支援しようとする助成金決定機関、スポンサー、寄贈者に指標を与える。

2) そのためにどのような基準にすべきか
 
基準の高さ(最低基準か、望ましい基準か)
規模、館種ごとの基準設定の必要性

3) そのために必要な制度上の工夫は何か
 
名称独占制
更新制 等

4) そのために審査主体はどうあるべきか
 
都道府県の場合
 
現在、都道府県教委の登録審査事務は、機関委任事務や法定受託事務ではなく、「自治事務」

第三者機関の場合
 
法律に基づく制度か、自主的措置か



参考

平成10年〜12年度文部省委嘱調査研究事業(委嘱先:日本博物館協会)
「対話と連携」の博物館 関係部分

4 新しい博物館の「機能」と「条件」
1. 機能
 
2) 各論(換言)
 
(8) 運営・管理
 
1  博物館を担当する部局を一元化一本化し、できれば博物館を専門に担当する部局を、国や地方公共団体に設置し、博物館の主体性を確立していく必要がある。現状の博物館は、都道府県教育委員会所管の有無により登録制度が行われているが、所管による位置付けは廃止するべきである
2  登録審査等は、これまで都道府県教育委員会にその事務が機関委任されており、運用の基準に差異が生じてきており、また、平成12年4月からは、都道府県の自治事務とされている。博物館のレベルの向上を図るため、全国的に機能する博物館登録審査委員会のような組織を設置すべきである。
3  博物館の登録・相当施設などの審査は、主として所管の違いや、施設の規模・学芸員数・収蔵資料数などによる定数・定量な方法によりその評価が行われているが、今後はこうした方法ではなく、博物館の理念に基づく機能や条件を、どれだけ実践しているかという活動内容を重視した審査を行うべきである。
4  博物館の独立行政法人化が今後進められていくことが予想され、すでに法人化された博物館も多く見られるが、法人化を行う場合、社会教育機関としての地域社会に果たす役割を明確にうたい、博物館の機能を十分に発揮できる条件を整えたうえで行うべきである。
5  博物館のマネージメントは、経済的な視点もさることながら、地域社会の人々にどれだけ満足して受け入れられるかを考える経営そのものであることを忘れてはならない。

2. 条件
 
1) 望ましい博物館の条件(総論)
 
(1) 関連法規の見直し
    多様化する各種博物館を博物館法に定める登録認可条件で区別することは困難であり、法第19条に定める所管条件などを見直す必要がある。しかし多様化する博物館に求める、望ましい姿を規定する条件を現状のみで定めるのも問題であり、今後も博物館が時代とともに更に多様化する可能性が大きいため、「望ましい博物館」が如何に在るべきかについての統一認識の下に新たな基準を定めることが望ましいが、法的には最低の規範にとどめるべきである。しかし、博物館が教育分野において果たすべき社会的役割の重大さを考えれば、博物館の登録実務と登録原簿の保管は第10条に規定するように教育委員会が行うのがよいと考えられる。

(5) 新たな基準の策定
    博物館施設の設置主体や管理運営の所管は、現状では多くの省庁・部局に及んでいるが、新たな基準に基づく各種資格の認定は、生涯学習・社会教育施策の統一的かつ継続的な実施という観点からすれば文部省が一括して担当すべきである。付随する多くの課題を遅滞なく処理するためには財団法人日本博物館協会の様な全国組織を強化するかまたは新たに設立する事が必要であろうと思われる。


平成15年度文部省委託調査研究事業(委託先:日本博物館協会)
「評価の在り方に関する調査研究委員会 体制・税制委員会の審議状況(報告)」関係部分

4  博物館法の見直しの視点
 
(2) 新しい博物館の登録制度の導入
   博物館の設置・運営の現状からみて,法に規定する「博物館」,「公立博物館」,「私立博物館」の定義は実態に合わない状況にあり,その定義を見直す。
 また,設置者(国,地方自治体,公益法人,宗教法人,学校法人,国立大学法人,独立行政法人,企業,個人など)に係わらず,その施設が行う活動を促進する視点から,優遇措置とは分離して,一定の要件(公益性,非営利性,安定した管理運営体制など)を沿うものについて,博物館として登録する新しい制度の導入を検討する。その際,「博物館の名称独占」についても検討する。


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