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資料5

<平成17年度 文部科学省委託事業(委託先:株式会社丹青研究所)>

「博物館制度の実態に関する調査研究報告書」(概要)

1  博物館法の博物館について

  「博物館法上における博物館の望ましい範囲」の調査結果
拡大するのが望ましい
 
「博物館」の種類・活動が多様化している現在において、より多くの館園を「博物館」として取り込んでいく必要がある。
博物館という施設自体の社会的認知を広めるため。
ネットワーク化が広がり、相互補完が可能になる。
文化財の散逸を防ぎ、保存・継承しやすい体制を整えるため。
ICOMでは、非営利、永続性を博物館の要件としており、株式会社立や個人立を登録の対象とする場合、これらの点が問題になる。
「科学の振興」、「自然保護」、「環境保護」に関して自然史博物館は貢献しているので、そういった物事に関しても博物館法の定義に読み込める内容がよいのではないか。

縮小するのが望ましい
 
博物館の定義を厳格化し、教育的施設のみ指定すべき
厳しい財政状況で市民に満足してもらえる施設を維持するには、少ないところに経費を集中して掛けたほうがよい
博物館としての範囲を拡大すると、博物館そのものの概念が不明確になる

現状並が適当である
 
博物館として一定レベルを維持する上で、現状の範囲が適当と思われる。
博物館数より、個々の質を高めるべき
要件を厳格化することが必要だが、縮小する必要はない

博物館法上における博物館の望ましい範囲に関するアンケート結果
  問:博物館法上における博物館の望ましい範囲について
 
回答項目 回答結果
拡大する 23.8パーセント
縮小する 9.6パーセント
現状並が適当 66.6パーセント

2  博物館登録制度の在り方について

  登録制度の意義、必要性は何か
問題・課題
 
一般の人に登録制度が認知されていない。登録、相当、類似の違いについても理解度が低い。
規模や学芸員数でのみ判断され、財政的に厳しい小規模館への配慮がなされていない。
国立博物館が博物館相当施設に分類されるなど、実態に即していない。
価値観の多様化に伴い、博物館かミュージアムか区別がつかない状況が懸念される。教育的視点に立った基準に沿って、登録の必要がある。
登録の可否の基準がどのような立場からの観点であるか、博物館にどのような役割や質的レベルを求めているのか明確でない。数的なハードルをクリアしていても質的にどうなのかレベルチェックされていない。
公立の場合、優遇措置がないため登録博物館である意義に対して、意識が薄い。
形式的な審査をなくすため、博物館業界で登録業務を行う方がよい。
各県により基準に差が出る可能性が高いのが課題である。
相当施設にもある程度の優遇措置がひつよう。類似施設との差別化を図ることができない。
一端登録されれば現状維持で満足してしまう傾向にあり、日本の博物館全体のレベルアップにつながらない。

新たな提案
 
登録することによって、一般市民にもわかりやすいメリットがあること。
登録に際しては、展示活動のみならず、公開・活用に関してどれだけ実績を残すことができるかといった点を判断の基準として重視してはどうか。
5年ごとの更新、段階的な登録制度への移行も検討すべき。
登録博物館かどうかが一目でわかる表示法を考えたらどうか。

  名称独占について
新たな提案
 
登録博物館に対する正式名称を定めるなど、「博物館相当施設」を含めて、言葉と実体との関係を整理する必要があると思われる。

  博物館の設置主体を現行法のように限定する必要があるか
現状認識
 
設置主体を限定したり、公私立や登録・相当の区分は不要
ここ10年で知事部局側で設置博物館が増加している。県立博物館では先発で設置された教育委員会所管の博物館は登録博物館だが、後発でできたところは登録博物館に登録しないままのところもある。
地方博物館では施設の複合化や観光施設としての役割などを求められている。

新たな提案
 
任意団体運営の博物館でも実績があり、社会的評価があるものについては登録を受け付けてほしい。

  現行法のように公立博物館、私立博物館と区分した規定の仕方でよいか
肯定的な意見
 
何を展示していても博物館を名乗れる状況は不自然である。国として少なくとも公立の美術館のあるべき姿を示す必要がある。

否定的な意見
 
指定管理者制度の発足により、博物館法上の公立博物館の位置付けが不明確になった。

新たな提案
 
博物館を分類・区分する際の指標についてのアンケート結果
  館種<58.8パーセント>、事業等運営の評価結果<45.3パーセント>、施設規模<32.4パーセント>、設置主体<25.3パーセント>、法令等の適用の有無<10.4パーセント>

  登録博物館と博物館相当施設の区分は必要か
肯定的な意見
 
相当施設も何年か実績をつむことによって、ステップアップして登録博物館になれると励みになる。
登録、相当という2段階の基準は設置者のインセンティブを高める意味で現在も有意義であると考える。

否定的な意見
 
登録博物館と相当施設との明確な差異がつけ難い

  第三者による評価制度の創設について
新たな提案
 
形式的な審査をなくすため、博物館業界で登録業務を行う方がよい。
公的性格をもった組織を作り、日本の実情に即した登録基準を制定し、そのための研修会などを学協会などが支援することが必要
広報や情報処理、ミュージアムマネジメントの能力は、今後ますます必要とされる大事なことであるが、従来の学芸員の職務にプラスして求めることは、学芸員にとってはかなり負担となる。評価基準を検討するのであれば、この分野の専門的知識をもつ職員の配置について配慮がなされるように、登録基準に反映できないか。

評価の実施状況
  問1:博物館の評価活動の実施状況( nイコール183 )
 

  問2:評価活動の実施体制( nイコール77 )
 

  評価の基準・指標の設定について
新たな提案
 
教育、研究、文化的価値の観点の重要度を高めた基準を制定してほしい。特に、市町村立の博物館・資料館においては、経営的観点を重要視されても限界がある。
公共性・公益性をどのような評価基準で判断してくか(あるいはどのように担保していくか)。
資料収集、調査研究に関する評価はもとより、経営やいかに地域に開かれた博物館であるという評価基準が重要と考える。
設置主体の規模(国・県・市)によって基準設定を分けてほしい。
現在の評価基準は、行政評価であり、博物館の評価に適っているとはいえないので、ガイドライン的なものを示してもらいたい。
住民の意見や要望を取り入れいるシステムがあるか等、独善的にならない評価基準が必要。

  問:博物館を評価する際に基準にしている内容( nイコール14 )
 

3  学芸員資格制度の在り方について

  最近の博物館活動の中で博物館職員に求められる資質・能力は何か。学芸員資格に何を求めるか。
現状認識
  問1:学芸系職員に必要と考える資質、能力のうち1位に選ばれた項目
 
回答項目 学芸系職員
( nイコール1,905 )
館長・園長
( nイコール1,529 )
設置者
( nイコール172 )
資料収集、整理、保存の具体的技術、方法 26.5パーセント 24.9パーセント 16.3パーセント
展示の構成、企画に関する知識ノウハウ 14.6パーセント 17.8パーセント 9.3パーセント
資料に関する学術的知識、調査研究 44.4パーセント 36.0パーセント 58.1パーセント
教育普及活動に関する実践的知識、ノウハウ 4.8パーセント 6.1パーセント 4.1パーセント
広報や情報処理の実践的知識、ノウハウ 0.6パーセント 2.3パーセント 0.6パーセント
営業的能力、マネージメントの実践的知識、ノウハウ 3.0パーセント 8.0パーセント 5.2パーセント
学芸庶務に関する基本的な事務処理 1.7パーセント 3.0パーセント 5.2パーセント

  問2:学芸員制度全般に関する課題
 
回答項目 学芸系職員
( nイコール1,875 )
館長・園長
( nイコール1,232 )
設置者
( nイコール167 )
大学における学芸員養成課程のカリキュラムを改善・充実 43.6パーセント 38.3パーセント 43.7パーセント
大学における学芸員養成課程を高度化・専門化 37.5パーセント 36.5パーセント 40.1パーセント
学芸員の研修・経歴などを評価し、学芸員に職階制を導入すること 22.1パーセント 29.5パーセント 24.6パーセント
学芸員制度に職種による区分を導入 55.1パーセント 45.5パーセント 49.7パーセント

  資料に関する学問的知識・技術、博物館の運営などに係る幅広い専門性・資質を備えた学芸員を大学院レベルで養成する必要があるか。
現状認識
 
専門分野で学芸員の資格を取得している人が少なく、館職員の採用に苦労している。
学芸員の募集において修士修了以上という条件がつくことが多く、教職と同様なシステムが望ましい。
大学での専門課程が大学院に移行しつつあるので、学芸員としての学術的資質・能力を取得するためにも大学院修了を最低条件とするのがよい。
科学技術の高度化とともに学問の学際化、専門化が急速に進展している。
国際的基準としての「キュレーター」資格を創設して、グローバル化を図る。

  学芸員の資格について、専門分野毎の資格の細分化や上級資格が必要か
現状認識
 
経験や経歴などを評価し、学芸員としての自覚と競争意識をもっと持たせることが今後の活性化につながる。
歴史博物館でも美術館でも動物園でも水族館でも資格が博物館学芸員一つでは現実離れしているため、改善が必要。

  学芸員資格の更新制度は必要か
現状認識
 
特段意見なし

  学芸員の履修科目や指導体制として、どのようなものが必要か
現状認識
 
人文系も自然系も一括りにした学芸員制度は問題がある。特に大学が専門的な実習施設を持たないのに養成課程を設けていること
文化財の取り扱いを含め、保存科学もカリキュラムに導入すべき
知識重視で、各種資料の取り扱いや保存技術・拓本技術、実測技術、展示の構成方法、館内環境の整備などといった実践的な技術の習得はあまりできない。
博物館経営、企画などのマネージメント能力の育成。
コンピュータにより資料を整理・分析し、情報を発信できる能力の付与。

  その他
現状認識
 
学芸員として就職できる数が少なすぎる。例えば、教職や修士、博士等の資格等との読み替えなど、他職種(小中高教員、大学教員、研究職員等)との交流が可能なように制度を整える必要がある。
保存修復、教育普及、作品登記(レジストラー)、美術専門の司書など、一般の学芸員ではない専門職種の必要性


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