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3.生涯学習情報の整理

 生涯学習情報を、「人々の自発的な学習活動を活発にし、効率的な学習を進めるために、学習者が学習を進めるに当たって必要とされる各種の情報」として仮に定義するとしても、情報の種類やその情報を保有・管理する組織など、生涯学習情報は極めて多岐にわたる。したがって、全ての生涯学習情報を国が一元的に収集・整理・提供するのではなく、情報の種類や特徴を踏まえた上で、他の組織との役割分担と連携を図りつつ、国が収集・整理・提供する情報を一定の範囲に絞る必要がある。
 そこで以下では、国として提供すべき生涯学習情報について考察を行い、情報の分類を試みた。

3.1 国として提供すべき生涯学習情報についての考察

3.1.1 国と自治体との役割分担及び連携
 
(1) 市町村
   地域住民に最も身近な機関として、地域住民にとって最も役立つ情報を提供可能な行政機関である。また、公民館や図書館等を通じ、地域の生涯学習を振興する主体的な役割を担っていることから、講座情報などの学習機会情報を積極的に提供し、地域住民の生涯学習を支援することが望まれる。

(2) 都道府県
   市町村をサポートする立場から、市町村を跨ぐ都道府県内における広域的な情報収集・提供が可能であり、また、隣県や国の動向について把握することができる行政機関でもある。従って、都道府県内における生涯学習情報ネットワークの構築や改善、国や県の生涯学習に関する各種情報の市町村への提供の他市町村の企画者同士のネットワークづくりを支援することが望まれる。更に、オンライン講座などを開設することなどにより、都道府県内市町村の格差を解消するための取組も望まれる。

(3)
   基本的には、国の生涯学習に関する包括的な全体像を提示するとともに、都道府県をサポートする立場として、都道府県や市町村において、十分な情報提供がなされていない学習テーマや学習情報及び国自身が保有している情報について、重点的に収集・整理・提供する必要がある。
 学習テーマとしては、平成4年の生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」においては、重点を置いて取り組むべき課題として、現代的課題に関する学習機会の充実が挙げられている。ここで、現代的課題とは、社会の急激な変化に対応し、人間性豊かな生活を営むために、人々が学習する必要な課題と定義されており、例として、次のような課題が挙げられている。
 現代的課題:生命、健康、人権、豊かな人間性、家庭・家族、消費者問題、地域の連帯、まちづくり、交通問題、高齢化社会、男女共同参画型社会、科学技術、情報の活用、知的所有権、国際理解、国際貢献・開発援助、人口・食糧、環境、資源・エネルギー等
 こうした学習テーマに関しては、市町村や都道府県において、学習機会を補完する観点から、国としての情報提供が求められている。
 また、上記の現代的な課題に加え、急速に変化する社会状況の変化の中で、国として重点的に取り組んでいる様々な課題についても、国民の新たな学習テーマとなり得ることから重点的に提供する必要がある。例えば、次のような課題が挙げられる。
 国が重点的に取り組んでいる課題:少子化・高齢化対策、ニート・フリーター対策、安心・安全な社会の実現方策など
 更に、地方自治体では提供できない広域的・全国的な情報については、国が率先して情報を提供すべきであると考えられる。例えば、資格情報については、各自治体の生涯学習情報提供システムにおいて提供されている情報に加え、国家資格情報については、国が最新の情報を保有していることから情報提供することが考えられる。
 加えて、広域的な情報収集や提供の観点から、地方自治体の企画者にとって参考となる情報の収集・提供は重要である。具体的には、生涯学習に関する学習プログラムや研修プログラムに関する情報やモデル事業に関する情報、全国の効果的な事例やトピック的な事例等が挙げられる。更に、広域的な情報共有の観点から、地域や地方自治体で作成された教材や学習素材のうち、全国で利活用が可能な教材については、国が所在情報を提供することが考えられる。

3.1.2 行政機関と民間等の生涯学習機関との役割分担及び連携
 
(1) 民間のカルチャースクール等
   趣味・教養・スポーツといった生涯学習活動に関する情報は、民間のカルチャースクール等を中心として、広く提供されている。こうした民間企業の提供する生涯学習情報については、国としてどのような連携を行うかは今後の課題である。

(2) 大学等の高等教育機関等
   大学等のホームページにおいても、近年、公開講座の開催案内や、eラーニングによる専門的な講座の提供など、様々な生涯学習情報が提供されている。こうした大学等の提供する専門的な情報については、国としても収集・提供することが考えられるが、独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)が運営しているNIME−gladにおいて、各種の専門的な情報が蓄積されていることから、NIMEと連携を図る必要がある。

3.1.3 情報収集・整理・提供にあたっての留意事項
 
(1) 学習者向けの情報と企画者向けの情報
   国や自治体においては、従来は、学習者向けの生涯学習情報の提供が中心であったが、学習者が企画者となるようなインターネット市民塾型の学習や、学習者と企画者の間に入って学習者を支援する生涯学習コーディネータのような第三者に対しての情報提供を考慮すると、現状では企画者が必要とする情報が不足していることから、今後は、学習者向けの情報に加えて、企画者向けの情報の充実が望まれる。

(2) 一次情報と二次情報
   国や自治体が、学習者や企画者に生涯学習情報を提供する際に、講座情報や学習情報そのもの(一次情報)と、一次情報の所在を示す情報(二次情報:リンク情報のこと)を提供する二つの方法があり得る。特に国自身が情報を保有し、インターネットで提供している場合は、一次情報での提供も可能であるが、自治体が保有している情報や、国の他の機関が保有している情報の提供については二次情報となる。
 したがって、情報提供にあたっては、この一次情報と二次情報を上手く利用することにより、効率的な情報提供を図る必要がある。
 その方法の一つとして、LOM(Learning Object Metadata)と呼ばれるメタデータ情報を付与することにより、一次情報と二次情報について統合的にデータベース化を図ることが可能である。LOMには、著作権情報やキーワードなどのデータが付与されていることから、学習者がその情報を利用する際にも有効である。

(3) 人から人、横から横への情報提供
   従来は、国・都道府県・市町村という縦の組織間での情報流通が主であったが、学習活動の多様化に伴い、今後は、人から人、横から横への情報がますます増加するものと考えられる。従って、今後、関係者や関係機関が連携を図り、情報の円滑な流通を確保する必要がある。

3.2 国として提供すべき生涯学習情報の分類例
   上記の検討を踏まえ、以下では、国の提供すべき生涯学習情報の範囲を明確化する際の考え方として、情報の保有者を横軸に、情報提供の対象者を縦軸に整理することとした。(表3-1(PDF:127KB)参照)

3.2.1 生涯学習情報の保有者による分類
 
 生涯学習情報の一次情報としては、大きく分けて
 
(1) 国が保有する生涯学習情報
(2) 自治体が保有する生涯学習情報
(3) 国も自治体も保有しておらず、情報収集・加工によってできる生涯学習情報
 に分けられる。
 更に、「(1)国が現在保有する生涯学習情報」については、
 
  1 現在、インターネットで提供されている情報
  2 現在、インターネットで提供されてはいないが、保有している情報に分けることができる。
 同様に、「(2)自治体が現在保有する生涯学習情報」についても、
 
  1 現在、インターネットで提供されている情報
  2 現在、インターネットで提供されてはいないが、保有している情報
 に分けることができる。

3.2.2 生涯学習情報の利用者による分類
   生涯学習情報を提供する対象は主として学習者と企画者に分けられるが、インターネット市民塾のように学習者が学習活動の中で企画者にもなりうる形態を考慮し、学習者と企画者の間に学習者兼企画者を設け、対象を三種類に分けることとする。

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