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教育バウチャーに関する研究会(第2回)議事要旨

1. 日時
  平成18年2月16日(木曜日)10時〜11時30分

2. 場所
  三菱ビル地下1階M3会議室

3. 出席者
 
有識者: 小川正人委員,金子郁容委員,金子元久委員,新見一正委員(50音順)
文部科学省: 久保生涯学習総括官,大槻生涯学習政策課長,吉田調査企画課長,前川初等中等教育企画課長,清木高等教育企画課長,樋口政策評価審議官,その他関係官

議事については、以下の通り

 事務局より「規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申」について説明があった。
 新見委員からニュージーランドとチリの制度に関するプレゼンテーションがあった。
 事務局より海外調査結果(イギリス、オランダ、スウェーデン)についての報告があった。

【主な発言は以下の通り】

ニュージーランド及びチリの制度について

 チリにおいては、全国的なバウチャーを導入した結果、いわゆるソーティングが進み、マイノリティが取り残される形になってしまったとの報告があるが、取り残されてしまった児童生徒の集まった学校に対して、P900というプログラムにおいて、教科書の充実を図ったり、教員を雇用するための追加的な措置を行うなどのケアを行っていたようである。

 チリにおいては、全国的なバウチャー導入の結果、公立学校から私立学校に生徒が移行し、公立学校の規模が小さくなってしまったにもかかわらず、実際につぶれてしまった公立学校はほとんど無かったようである。公立学校においては、在籍者がいる限りなかなか廃校にはできないということであろう。

 全国的なバウチャーを導入することによって得られる効果として、ソーティングが起こることは間違いなさそうである。ソーティングが良くないという意見もあるが、学校内部では、当たり前のようにソーティングが起こっているわけで、学校単位のソーティングが必ずしも悪いものではないという見方もあろう。要は、優秀な者とそうでない者の格差が広がったとしても、平均的にプラスになれば良いのか、それともそのような格差はなるべく少なくした方が良いのか、義務教育の意義をどう考えるかだろう。ただし、少なくともチリやニュージーランドの例からすると、全国的なバウチャーの導入によって、平均的にも教育成果が向上したという結果は出ていない。

 文献を見る限り、チリの私立学校では授業料を徴収していないようだ。ただし、授業料という形を採っていないだけで、他の形で徴収している可能性がある。

 ある学校で生徒が集まらなかった結果教員が減らされるとしても、労働保護法制の関係でその教員の身分が剥奪されるわけではないので、競争のインセンティブがどのように働いているのか。→ チリは軍事政権下であったため、労働三権は制約されていた。ニュージーランドにおいても、教員の給与水準は下がってきたことから、労働保護法制がそれほど強いわけではなかったようだ。

 チリやニュージーランドにおける例からすると、全国的なバウチャーの導入によって得られる政策的な効果というのは、公立学校から私立学校に生徒が移行するということなのか。

 チリにおいても、ニュージーランドにおいても、バウチャー導入後ずいぶん時間が経っているが、文献を調べた限りでは見直し論などはみつかっていない。


イギリス、オランダ、スウェーデンの制度について

 (スウェーデンにおいて)学校選択の方法は各コミューンにより様々である。なお、バウチャーを導入している自治体として有名なナッカ市に訪問したところ、ナッカ市のようなシステムを採っているのは290あるコミューンのうち10コミューンほどであるとのこと。また、そのようなコミューンと他のコミューンとの一番の制度の違いは、ナッカ市などにおいては、保護者がはじめから学校を選択するのに対して、他のコミューンは、原則的には通学すべき学校が決まっているが、保護者はそれを変更することができるということであった。

 イギリスの公営私立は、ほとんどがカトリックや国教会系の学校である。また、オランダの公営私立もそのほとんどが、宗教系の学校である。ただし、近年、スウェーデンやオランダにおいては、宗教と関係のない団体が設立する学校も設立されつつあるとのこと。また、イギリスにおいてもオランダにおいても、公営私立においては、授業料を徴収していない。

 (イギリスにおいて)教会立の学校は元々国が作ったようなものであるから、公営私立はほとんど公立と変わらないと聞いている。

 (イギリスにおいて)独立私立には補助が無い代わりに、国の定めた教育課程に従う必要もないし、入学者も選抜できることになっている。

 今回報告のあったイギリスやオランダなどの例は、単なる公費配分制度のしくみの話であり、これをもってバウチャーとは言えないのではないか。

 オランダの公立、公営私立は原則的に入学者を選抜しないことになっているが、定員超過した場合には、近くに住んでいる入学希望者を優先するとのこと。また、オランダでは、誰でも簡単に学校が設立できると勘違いされているところがあるが、実際には初等学校の場合児童生徒が原則200人以上で、近くに同じような学校が無いことが条件になっている。


その他

 我が国の私学助成においても、生徒数に応じて積算される部分があるため、見方によってはこれもバウチャーであると考えることができるのではないか。

 昔からバウチャーの話がある割には、その経済的な効果などの研究はあまり進んでないように思われる。

 例えば、奨学金も個人に対して支払われるものであるが、その額は少額であり、授業料など教育に関する負担の大部分は自己負担である。バウチャーは、教育に関する負担の大部分が支給される。これらの差は効果に大きく現れるという議論もある。

 我が国に全国的なバウチャーを導入するというのは、乱暴な話であり、チリやニュージーランドの例からも、あまり望ましい結果にならないということがわかった。

以上

(生涯学習政策局政策課)

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