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チリにおいては、全国的なバウチャーを導入した結果、いわゆるソーティングが進み、マイノリティが取り残される形になってしまったとの報告があるが、取り残されてしまった児童生徒の集まった学校に対して、P900というプログラムにおいて、教科書の充実を図ったり、教員を雇用するための追加的な措置を行うなどのケアを行っていたようである。
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チリにおいては、全国的なバウチャー導入の結果、公立学校から私立学校に生徒が移行し、公立学校の規模が小さくなってしまったにもかかわらず、実際につぶれてしまった公立学校はほとんど無かったようである。公立学校においては、在籍者がいる限りなかなか廃校にはできないということであろう。
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全国的なバウチャーを導入することによって得られる効果として、ソーティングが起こることは間違いなさそうである。ソーティングが良くないという意見もあるが、学校内部では、当たり前のようにソーティングが起こっているわけで、学校単位のソーティングが必ずしも悪いものではないという見方もあろう。要は、優秀な者とそうでない者の格差が広がったとしても、平均的にプラスになれば良いのか、それともそのような格差はなるべく少なくした方が良いのか、義務教育の意義をどう考えるかだろう。ただし、少なくともチリやニュージーランドの例からすると、全国的なバウチャーの導入によって、平均的にも教育成果が向上したという結果は出ていない。
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文献を見る限り、チリの私立学校では授業料を徴収していないようだ。ただし、授業料という形を採っていないだけで、他の形で徴収している可能性がある。
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ある学校で生徒が集まらなかった結果教員が減らされるとしても、労働保護法制の関係でその教員の身分が剥奪されるわけではないので、競争のインセンティブがどのように働いているのか。→ チリは軍事政権下であったため、労働三権は制約されていた。ニュージーランドにおいても、教員の給与水準は下がってきたことから、労働保護法制がそれほど強いわけではなかったようだ。
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チリやニュージーランドにおける例からすると、全国的なバウチャーの導入によって得られる政策的な効果というのは、公立学校から私立学校に生徒が移行するということなのか。
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チリにおいても、ニュージーランドにおいても、バウチャー導入後ずいぶん時間が経っているが、文献を調べた限りでは見直し論などはみつかっていない。
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