第2章  高齢者との交流を促す学校施設の整備

第1節  高齢者との交流の現状と今後

  近年,学校教育における児童生徒と高齢者との交流活動の重要性が認識されてきていることに伴い,各学校において,高齢者との交流を実施している事例は数多く見られる。
  しかしながら,現状における高齢者との交流活動は,教育活動の一環として位置付けられているものの,日常の教育活動に支障が生じないことを前提とし,時間や場所に余裕がある範囲で実施されている例が一般的である。
  一方で,積極的に高齢者との交流を実施している事例も見られ,交流内容は,各学校段階や交流対象となる高齢者の備える諸条件により,様々な試みが行われている。
  交流内容としては,各学校段階に共通するものとして,運動会,文化祭等の学校行事への招待や,高齢者福祉施設を訪問してのふれあい活動等が実施されている。
  また,幼稚園では,一緒に遊んだり話をするふれあい活動が中心となり,小学校では,この他に高齢者を学校に招き,授業やクラブ活動において高齢者から豊かな知識や技能を学ぶ事例も多い。さらに,中学校,高校では高齢者福祉施設を訪問してのボランティア活動や介護体験が中心となっている。
  児童生徒は,これらの交流を行うことにより,高齢者を思いやる気持ちやいたわる気持ちとともに,高齢者への感謝や尊敬の気持ちを育むことができる。また,豊かな経験,知識,技能を有する高齢者から様々な生きた知識や人間の生き方を学ぶことは貴重な体験であり,特に,地域における伝統行事などの伝承は地域文化の継承としても大切である。
  他方,これら児童生徒と高齢者の交流は,児童生徒にとって教育上の効果があるばかりでなく,高齢者にとっても,ふれあいや教えることにより,心の充足や生きがいを得ることができ,日々の生活に活力をもたらす重要な機会となっていることが報告されている。
  今後,学校が地域との連携を進め,高齢者との交流をさらに進めていくためには,地域の実情,教職員,児童生徒及び高齢者の要望,学校施設の状況等を勘案して,互いに無理のない計画により継続的な交流が図られるよう配慮することが重要である。
  また,今後の高齢者との交流は,以下のような観点から進めていくことも重要であると考えられる。
・ 学校行事への招待や高齢者福祉施設を訪問してのふれあい活動等の交流を実施する際には,児童会,生徒会を中心とした活動や学年や学級で児童生徒が計画した内容を実施するなど,児童生徒の自主的な活動を促す。
・ 各教科や道徳,特別活動,「総合的な学習の時間」等において,高齢者を地域の教育力として活用することにより,教科や領域等とつながりのある交流を計画する。
・ 高齢者に,学校を支援する地域の人材として,親や教師とともに児童生徒の学校生活を手助け,相談相手になるなどの協力を得る。
・ 学校開放などにより地域の高齢者が自由に学校を訪れる環境を整備し,登下校時や休み時間等に児童生徒と挨拶を交わすなど,日常的に自然な形での交流を図り,児童生徒を見守る存在として地域の高齢者を位置付ける。
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