○ 本懇談会では、これまでの審議内容を整理し、「子どもの徳育の充実に向けた在り方について」として報告する とともに、特に4の内容について、国民の一人一人が早急に取り組むことを提言するものである。子どもの徳育に関する議論はこれにつきるものではない。例えば、宗教と子どもの徳育の在り方については、宗教と徳育は、本質的には切り離すことができない面を有しているという意見があった。一方で、徳育について論じる際には、個々の信教の自由に配慮することが必要であり、必ずしも宗教と徳育を結びつける必要はないといった意見もあった。このように宗教と徳育の関係については、様々な意見があり、広く国民的な議論が求められる内容でもあることから、一定の結論を得ることが難しい面がある。
○ また、今の大人社会が、ともすると、「危ない、汚い、うるさい」と見える、子どもの、いわば子どもたるゆえんとも言える、試行錯誤のある言動に対して、非常に嫌がる傾向があり、そのことが、子どもの心の豊かさを奪うことにつながっているのではないかという意見もあった。子どもの徳育の推進にあたって、我々大人は、子どもの視点に立ち、細心の注意を払うことが必要不可欠である。
○ そのような前提のもとで、子どもの健やかな心身の発達に責任を負うのはひとりひとりの大人であり、すべての大人が、子どもの徳育の当事者であるという意識を有し、子どもの無限の可能性を保障するために、今こそ行動しなければならない。
○ 今、大人ひとりひとりが自らを見つめ直し、子どもを大切にする意識をもって行動することで、我が国は、将来においても、子どもの健やかな心の成長をはぐくむ社会であることが可能になると考えられる。未来において、今の子どもたちが大人になった際に、自他を尊重する心を有し、生き生きと暮らし、そして、日本に生まれて良かったと感じることができる、そのような、明るい未来に向けた、我々大人ひとりひとりの底力の発揮を切に願うものである。
公徳とは、社会生活の中で私たちが守るべき道。
この世の中で生きていくうえで、他者への配慮や思いやりを大切にして、社会の中の自分の在り方、生き方を考えることは当然のことです。
でもいまの世の中、自分だけがよければいいという人が多すぎると思いませんか。
電車やバスの車内での悪いマナー、空き缶やたばこを無頓着にポイ捨てする人、平気で割り込みしてくる人・・・
こういう人たちが「公徳心のない人」と呼ばれるのです。
(文部科学省「心のノート」中学校版より 2002年(平成14年))
ちちははをうやまい、これをしたしみ、そのこころにしたがうべし
ひとをころすべからず
けものをむごくとりあつかいむしけらをむえきにころすべからず
ぬすみすべからず
いつわるべからず
うそをついてひとのじゃまをすべからず
(福沢諭吉が自分の子どもたちに示した教訓 1871年(明治4年))
年長者の言うことに背いてはなりませぬ
虚言をいふ事はなりませぬ
卑怯な振舞をしてはなりませぬ
弱い者をいぢめてはなりませぬ
「ならぬことはならぬものです。」
(会津藩士としての心構えを定めたもので毎日子どもたちが最後に、「ならぬものはならぬものです」で締めくくり誓っていた。 江戸時代)
仁(人に対する思いやり)
義(人としての理(ことわり)、人として正しいことをすること)
礼(礼節を重んじること)
智(善悪を正しく判断する知識・知恵)
信(約束を守り、自他に誠実であること)
(儒教における五つの徳 BC6世紀~5世紀)
父母を敬うこと
殺人をしてはいけないこと
盗んではいけないこと
偽証してはいけないこと
隣人の家をむさぼってはいけないこと
(旧約聖書にある、モーゼが与えられた十の戒律より BC13世紀)
何でもみんなで分け合うこと。
ずるをしないこと。
人をぶたないこと。
使ったものはかならずもとのところに戻すこと。
ちらかしたら自分で後片づけをすること。
人のものに手を出さないこと。
誰かを傷つけたら、ごめんなさい、と言うこと。
食事の前には手を洗うこと。
トイレに行ったらちゃんと水を流すこと。
(「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」 ロバート・フルガム著 池央耿=訳より 1990年(原著1986‐1988))
市民教育、キャラクターエデュケーション、サービス・ラーニングの3領域の徳育を推進しており、連邦政府においては、各州政府に財政支援を行っている。学校教育においては、こうした財政支援を受け、各学校において、信頼、責任、尊敬、公正、思いやり、市民性などの人格的価値に重点を置いた多様な取組が行われている。また、サービス・ラーニングの領域においては、連邦政府は、教育だけでなく、労働、保健福祉など様々な分野に予算を割り当てており、全国のボランティア団体が、各地域で、学校とも連携しながら子どもたちの奉仕活動を推進しており、まさに国家を挙げての事業となっている。
宗教教育と、参加と行動性ある市民となるためのシティズンシップ教育やPSHE(Personal, social and health education)等を通じて、学校における道徳教育を推進している。こうした内容は、特設時間や教科等の様々な場面で実施されており、特に2002年には、中等学校において、「市民」の育成をさらに推進するため、全国共通カリキュラムにシティズンシップを必修教科として位置づけた。また、このような徳育の推進への取組は、学校教育のみならず、自治体、教会、有志団体などによる若者の自立支援を目指した、ユースワークないしユースサービスと称せられる社会教育活動においても伝統的に幅広く行われている。
学校教育において、「公民教育」という教科で、小学校1年から高校まで、人権宣言に由来する、民主主義社会の構成員たるフランス市民としての必要な行動原理や他者との共生、権利義務、個人の尊厳等を学んでいる。また、社会教育主事に相当するアニマトゥールという有資格者が、子どもの野外活動やスポーツ支援活動を推進している。このほか、自治体レベルでの親の地域教育活動参加も促進しており、自然的・文化的な環境での徳育の推進への取組が行われている。さらには、近年、移民家庭の多い地域における青少年非行が多発している中、子どもの社会化にとって、まずは家庭が重要な場所であるという認識から、親と教師の連携も含め、家庭教育の充実が提唱されてきている。
学校教育において、初等学校1、2学年(6、7歳)までは「正しい生活」、初等学校3学年から高等学校1学年(8~15歳)までは「道徳」という教科を設置するほか、高等学校2、3学年(16、17歳)では「市民倫理」、「倫理と思想」「伝統倫理」という選択科目を教科書を使用しながら実施している。また、市民生活においても、例えば年長者に対する敬語使用の徹底やバス・電車内において高齢者へ座席を譲ること、食事の際には「年長者が箸をつけるまで待つ」といった儒教文化の伝統と風習が社会や一般家庭に強く残っており、韓国の子どもの規範意識形成に大きな影響を与えているとみられる。
・ 親子でつくろう我が家のルール運動推進協議会(文部科学省、社団法人日本PTA全国協議会、独立行政法人国立青少年教育振興機構、独立行政法人国立女性教育会館)においては、社会総がかりで「心をはぐくむ」取組を推進するため、すべての教育の出発点である家庭に対して、「早寝早起き朝ごはん」といった生活習慣づくりや親子の約束など、基本的なルールづくりの大切さについて呼びかけていく「親子でつくろう我が家のルール」運動を推進しており、標語を募集し、応募総数12,564作品から7作品を優秀作品として選定し、7月に表彰を行った。
「まもろうね ちいさなやくそく わすれずに」
「ありがとう 今日は何回 言えるのかな」
「『ねえ、あのね!』 はなす心 きくきもち」
「助け合い家族ではぐくむ思いやり」
「朝が来た!!早起き・お散歩・おいしいごはん」
「9じまでに ふとんにはいるよ あしたもげんき!」
「がんばったね。できたね。よかったね。うれしいたね(種)が集まったね。」
・ 群馬県助産師会のメンバーが県内の小中学校に出向き、頭で理解するのではなく、心で実感できるように工夫した、親子一緒に参加する体験活動型の講座を開催している。
・ 講座を体験した子どもは、尊いいのちであること、家族に望まれて生まれてきたこと、自分自身が生きる力を持って生まれてきたことを実感し、また、保護者は、子どもが生まれてきたときの感動を再確認し、親子のかけがえのなさを認めあい、絆を深めるきっかけとなっている。
・ 平成19年度より「PTAからPTA+A(エリア・地域)へ」をPTA活動のテーマとして掲げ、より地域とPTAが密接に関わり、地域全体で親子の子育てを支援している。
・ また、同年、PTAと地域住民の有志が中心となり、「ワクワク子どもクラブ」を設立し、在籍校に関わらず、近隣地域の親子交流を深める活動を開始している。
・ 平成20年度には駒本小学校支援地域本部を開設し、PTAと地域の連携を図りながら、基本的な生活習慣の確立をめざしている。
・ 具体的には、児童生徒の登下校の見守りと声がけによる挨拶習慣の確立をめざしたスクールガード活動や、学校登校後の15分間の読書タイムを実施しているが、1~3年生は週一回、PTAや祖父母を中心としたボランティアによる絵本の読み聞かせも実施している。この他、NPOとの連携による、科学の視点から食生活の見直しを図る子ども料理科学教室活動や、自立心の確立と防災・救護訓練を目的とした防災キャンプ等を実施している。
・ 子どもと保護者が読書を通じてつながり、共に心の健康と成長を促すことを目的に読書活動をPTA活動の取組の中心に据えている。
・ PTA会費で購入した本を、会員が家庭で子どもと一緒に読み、感想を書いて、次の会員に回す「心の玉手箱」の取組を実施している。
・ 毎週木曜日の朝、PTAの会員が、学校で先生、子どもに対して本の読み聞かせを行う「お話の玉手箱」の取組を実施している。PTAの会員が全員参加の活動である。
・ こうした活動を通じて、保護者の生き甲斐づくりになると共に、子どもと大人の距離が縮まっている。
・ 「早寝早起き朝ごはん運動」を実施しており、各家庭において、毎月第二週目の一 週間における「起床時刻」「朝食摂取」「学習時間」「テレビ視聴時間」「ゲーム時間」 「就寝時刻」をチェック項目として調べ、分析・改善している。
・ 「一家庭・一家訓運動」を推進し、各家庭で話し合い、家族みんなで守る約束(ルール)を決めて取り組んでいる。家庭で作るルールの中には、町全体の実践事項である、「話を静かに聞くことができる」「あいさつができる」「正しい言葉づかいができる」「自分のことは自分でできる」「一日に見せるテレビの時間を決める(平日2時間以内、休日4時間以内)」の5項目を含めるとともに、各家庭におけるノーテレビデーまたは、ノーテレビタイムを設けることとしている。
・ こうした取組を通じ、親自身が朝食の重要性を始めとして、生活リズムの育成の重要性を再認識し、家庭生活の向上が図られている。
・ 森と海の学校では、1984年の開校以来、子ども自然体験キャンプ等の野外研修を行い、小学生や中学生が参加し、研修中は異年齢での縦割り編成での共同生活を行い、子どもたちは自然に協力と思いやりの心を学んでいる。
・ 研修の企画・運営は、大学生等の学生指導員が担当しており、学生指導員は、子どもを預かるという活躍の場を与えられることで育つ契機にもなっている。
・ また、「親からの手紙」というプログラムが位置づけられており、子どもたちは、共同生活に慣れ、家族を思い出す頃に手紙を手渡され、一人で読むことで、親の愛情を確認するとともに、翌日には子どもが手紙の感想文を書き、保護者に送られる。手紙の交換を通じて、家族の存在を見つめ直し、絆を深めるきっかけとなっている。
・ 東京都では、親や大人が次代を担う子どもたちに正面から向き合い、責任を持って正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくみ、人が生きていく上で当然の心得を伝えていく取組として「心の東京革命」を進めている。
・ 心の東京ルールとして、子どもたちに伝える7つの呼びかけとして、「毎日きちんとあいさつさせよう」「他人の子どもでも叱ろう」「子どもに手伝いをさせよう」「ねだる子どもにがまんをさせよう」「先人や目上の人を敬う心を育てよう」「体験の中でこどもをきたえよう」「子どもにその日のことを話させよう」を提案している。
・ 「心の東京革命行動プラン」を策定し、以下の取組を実施。
・ 鳥取県では、「鳥取県家庭教育推進協力企業制度」を設け、次代を担う子どもたちをみんなで育てていくという考え方のもと、県全体の家庭教育の向上を進めている。
・ 県教育委員会と、本制度の趣旨に賛同し、従業員の子育てをしやすい職場づくりや、地域の子どもたちを健やかに育てる地域貢献など、次に掲げるプログラムを2つ以上取り組む企業が協定を締結している。
プログラム
・ 県は、家庭教育研修会の講師の派遣や締結した協力企業の取組内容を広くPRする等により協力企業を支援している。
初等中等教育局児童生徒課