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資料8

学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する意見

全国都道府県教育長協議会

1 学校の組織運営について

  • (1)学校が組織として問題解決に当たる体制の構築のために、具体的にどのような条件整備等が必要と考えますか。
    •  学校を取り巻く環境の複雑化に伴い、学校運営に係る業務が増大してきている。校長を補佐する副校長の配置、教頭の複数配置、校長等を補佐する主幹教諭等の配置を必要に応じて進めることが求められる。加えて、学校事務体制の強化を図ることなどが求められるが、いずれにしても、教職員の定数改善が不可欠である。また、研修等を通じて、一般教職員の組織マネージメント能力の育成・向上を図ることなども考えられる。
    •  あわせて、教育委員会や外部の専門家による学校支援機能の強化も不可欠である。
  • (2)教員の子どもと向き合う時間を確保し、教育に専念できるようにするため、教員が現在行っている業務のうち、具体的にどのような業務については、外部の専門家や地域のボランティア、他の組織等に委ねることができるかと考えますか。
    •  教員には対応困難な専門性が求められる業務
      • 児童生徒の悩み相談等を専門的な立場からカウンセリングするスクールカウンセラー
      • 保護者や児童生徒の状況に応じて関係機関の協力などを仲介し、専門的な立場から助言を行うスクールソーシャルワーカー
      • 社会変化に伴う進路指導上の問題に対応できるキャリア・アドバイザー
      • 日本語が理解できない外国人の児童生徒・保護者に対応できる、母語に通じた相談員
      • 特別支援学校、小中学校において常時医療行為を必要とする児童生徒のための看護師等専門性を有する外部人材
      • 過度な負担を強いる保護者へ対応するための弁護士等を含む、支援チーム
      • 部活動の指導に当たる専門的な外部指導者
      • 学校の安全管理体制を確立するため、防犯に関する専門的知識を有する人材
      • 電子掲示板等への誹謗・中傷の書込情報の監視及び削除等の対応にあたる人・組織
      • PCやHPの管理、学習支援を行うITアドバイザー
    •  個々の指導が必要な児童生徒に対応する補助業務
      • 学習指導の補助業務。具体的には、英語・数学など習熟の差の著しい教科や、水泳など専門的な技術や安全管理を必要とする種目、特別支援教育や外国人児童生徒支援のための非常勤職員・ボランティア等
    •  児童生徒の指導に直接かかわらない業務
      • 教材の印刷や配付物の回収・整理・実験、実習の準備・後片付け等、定型的な業務に対応する非常勤職員
      • 学校図書館内に常駐し、図書の整理や管理、子どもへの図書の推薦から貸出業務等を行う図書館ボランティア
      • 学校の施設管理等の民間等への外部委託。
      • 学校の安全確保に係る地域ボランティア、警察OB、警備員など通学路の安全指導ボランティア
      • 総合的な学習の時間、各教科、部活動などで学校の必要とする人材を紹介、相互の連絡・調整、円滑な活動を支援する(仮称)学校教育コーディネーター

このほか事務的業務の一部を事務職員が担当することも考えられる。

2 教員の勤務とその処遇について

  • (1)労働法制上、公立学校の教員についても他の労働者と同様に勤務時間管理を適正に行うことが求められております。時間外勤務を縮減するため、教員の勤務時間管理を適正に行うことについて、どのようなことが課題であると考えますか。また、その課題の解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。
    •  学校を取り巻く環境が多様化・複雑化し、家庭・地域から様々な要望が学校に寄せられていることなどを背景に、教員の勤務時間が増大している。
    •  解決のための対応として、教員の本来業務を改めて明確にするとともに、教員の業務の軽減・効率化を図る必要がある。また、教員の定数改善を図るなど、人的・財政的支援も不可欠である。
  • (2)教員の処遇について、一人ひとりの能力実績に応じたものとすることや、メリハリある給与体系を実現して頑張る教員の処遇の充実を図ることについて、どう考えますか。
    •  子どもたちの心身の発達に関わり、その人格形成に大きな影響を与える教員に優れた人材を確保するとともに、その資質・能力を絶えず向上させていくためには、教員の処遇を充実していくことが重要である。
    •  教員の士気を高め、教育活動の活性化を図っていくためには、教員個々の能力・実績に見合った処遇を行うとともに、職務内容や職責、職務の困難度に見合ったメリハリのある給与体系を実現することが必要である。
  • (3)部活動指導について、教員の勤務負担を改善するために、どのような対応が必要であると考えますか。
    •  生徒のニーズに対応できる技術的な指導が可能な外部指導者の導入促進が考えられるが、その前提として、1部活動の学校教育活動における位置付け、2外部人材の確保の見通しについて検討する必要がある。あわせて、外部人材を導入する場合は、外部指導者が指導責任、施設管理責任を負わなければ、教員の負担改善にはつながらないことも考慮する必要がある。
    •  中体連・高体連の試合等について、一部で認められている学校間連携による学校枠を超えた合同運動部活動の参加条件の緩和が必要である。このことにより、顧問の確保や個々の教員の負担が軽減される。
    •  部活動については、教育活動上の位置付けを明確にした上で,勤務時間制度の中にどのように組み込んでいくか検討すべきである。
  • (4)いわゆる持ち帰り業務については、適正な情報管理や教員の勤務負担の軽減という観点から、これを改善するために、どのような対応が必要であると考えますか。
    •  教材研究の時間を勤務時間内に充分確保するためには、教員の業務の軽減・効率化を図るととともに、定数改善等による人的・財政的支援が必要である。

3 教職調整額の見直し方策について

  • (1)教員の時間外勤務については、個々人によりその実態には大きな差があります。一律の処遇を見直し、長時間の時間外勤務には、それにふさわしい手当を支払うべきとの意見がありますが、どのように考えますか。
  • (2)また、逆に、全くあるいは殆ど時間外勤務をしていない人には、4パーセント支払うことは適当でないという意見もありますが、どのように考えますか。
    • 3−(1)、(2)
      •  教員の勤務は、自発性・創造性に基づく勤務が期待される面が大きく、また、修学旅行や遠足、家庭訪問など学校外で行われる職務も多いという特殊性があり、一般の公務員と同様に時間外勤務手当を支給するという考え方にはなじまないものとされてきた。
         しかし、学校現場においては、様々な要因から教員の多忙化の実態があり、現行の教職調整額と教員の勤務実態との乖離を踏まえ、「教員にも時間外勤務手当を支給することとしてはどうか」という意見も出てきている。
         教員には、時間外勤務手当の支給がなじまないというこれまでの考え方があるものの、労基法の趣旨を踏まえ、教職調整額との関係を整理した上で、その内容に応じた手当の措置(時間外勤務手当も視野に入れた措置)を検討すべき時期に来ていると考える。
      •  併せて、休職者や指導が不適切と認定され校外で研修を受けている者に対しても、現在の教職調整額が一律に支給されていることに関して批判があるところであり、こうした者などについては、支給対象外とする等の措置を検討するべきと考える。
  • (3)仮に、教職調整額を廃止し、時間外勤務手当を導入する場合、具体的にどのような課題がありますか。また、その課題の解決のためには、どうような対応が必要であると考えますか。
    •  教職調整額を廃止し、時間外勤務手当を導入する場合の課題としては、大きくは3つの課題(1「勤務に対する考え方の整理」、2「勤務時間の管理」、3「財源の確保」)が挙げられる。
      • 1「勤務に対する考え方の整理」
        • 課題
          教員に対して時間外勤務手当を支給するとすれば、自発性・創造性に基づく勤務の考え方と労基法の趣旨との関係を整理した上で、教材研究、部活動指導など、どこまでの範囲を支給対象と考えるのか、また、支給対象外とできるのかを明確にする必要がある。
        • 対応
          教員の勤務実態を分析し、時間外勤務手当を支給する業務を限定する。また、この場合、依然、自発性・創造性に基づく業務が残ると思われるため、教職調整額との併用も法的に可能か検討すべきである。あるいは、全ての業務を時間外勤務手当の支給対象とすることも考えられる。
      • 2「勤務時間の管理」
        • 課題
          教員には、学校外で行われる業務も少なくなく、校長・教頭などの管理・監督者が各教員の勤務の実態をいかに把握し、管理していくのかが課題である。
        • 対応
          学校外における業務は、出張と同様、証明のあるものを除き、正規の勤務時間中勤務したものとみなすものとする。
          あわせて、学校内において出退勤時間を管理する手法や時間外命令簿に代わるシステムを整備する。
      • 3「財源の確保」
        • 課題
          時間外勤務手当を支給する場合、「財源措置」が必要となる。
        • 対応
          義務教育費国庫負担法等の趣旨に基づき、国において確実な財源措置を行うことが前提となる。
  • (4)仮に、同様に時間外勤務手当を導入する場合、どのような準備が必要であり、また、どれぐらいの準備期間が必要であると考えますか。
    •  必要な準備としては、国において、「勤務に対する考え方」の整理や予算確保、給特法の改正等が行われた上で、各都道府県においては、勤務時間の管理方法の整備など条件整備を行うとともに、関係機関・職員団体との協議、条例改正、予算措置等の手続きが必要である。このため、相当の準備期間が必要と考える。
  • (5)いわゆる超勤4項目(「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」第2号に掲げる業務)があることにより、学校の運営において支障となっている事例がありますか。また、仮に超勤4項目を拡大する場合、どのような項目を追加すべきと考えますか。
    •  たとえば、保護者の強い要望による時間外の保護者会や、朝の登校指導などは、超勤4項目に該当しないので、時間外勤務として命じることができない。
    •  具体的な項目については、自発的・創造性に基づく業務や部活動指導などの扱いも含め、今後十分な議論が必要である。

4 その他

  • (1)仮に、1年単位の変形労働時間制を導入する場合、具体的にどのような課題がありますか。また、その課題の解決のためには、どうような対応が必要であると考えますか。
    •  変形労働時間制は、休業期間を活用できる等効果がある。しかし、教員の業務は、予測できないことが多い。そのため、調整期間が長期に及ぶことが、かえって多忙な教員が休養をとれない状況をもたらすことが危惧される。
       このため、実施する場合は、定期的な休養を確実にとれるようにする等十分配慮することが必要である。
  • (2)その他、教員給与や勤務条件の見直しに関して、ご意見等がございましたら、お願いいたします。