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資料5

学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する意見

平成20年6月26日
全国国公立幼稚園長会

はじめに

 子どもたちを取り巻く環境の変化を受けて、教育基本法の改正以降の学校教育に関する様々な法令改正を含めた教育改革の中で、幼児教育の重要性がクローズアップされた。このことは、幼稚園教育を担うものとして大きな喜びであり、その役割の重要性を改めて認識しているところである。
 幼稚園は、子どもにとって初めて学校教育と出会う場であるばかりでなく、保護者にとっても親として初めて学校組織と出会う場でもある。その意味で、幼稚園が地域の幼児教育のセンターとして期待されていることは、本年3月に改訂された幼稚園教育要領に、子育ての支援についての記載が詳細にわたっていることからも分かる。
 幼稚園は、これまでも子育ての支援を行ってきているが、更なる充実を目指して実践し成果を挙げるためには、学校運営上の課題が大きい。とりわけ、小規模な学校組織である幼稚園は、教職員数には限りがあることに配慮し、取組の内容を検討する必要があり、今回の学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討が、実効性のある取組となるよう切に願うものである。
 以下に全国国公立幼稚園長会としての意見を述べる。

1 学校の組織運営について

  • 幼稚園は、小規模で教職員数が少なく、専門の事務職は、ほとんど配置されていない。しかし、学校組織としての事務は、大規模な小学校等と同じようにある。事務的な仕事は園の運営に関するものと学級に関するものとがあるが、一人の教員がいくつも事務を担当している。このことは、教育内容充実に向けた業務に携わる時間を勤務時間内に確保することを難しくしており、学級担任の負担は大きい。
  • 幼稚園においては、子育ての支援の役割が求められており、未就園児の親子登園や保護者の子育て相談、預かり保育などを実施している幼稚園も多い。この預かり保育を教員が中心に担当すると、本来の教育にかかわる業務である保育室の清掃、環境整備、日々の教育計画立案、教材準備等を行う時間が十分とれない。
  • 幼稚園においては、子どもと向き合うことはもとより、保護者と子どもの成長や発達の見通しについて具体的に話し合い、丁寧に対応することが必要である。教育活動の後(降園後)その時間を確保することも重要である。
  • 教育に専念しつつこうした業務に携わる時間を確保するためには、学級担任の補佐的な職員・事務補助の職員の配置が是非とも必要である。
  • 預かり保育や未就園児の親子登園等にかかわる業務は、外部の専門家や地域ボランティアを要請し、補助的な役割を担っていただくことは有効と思われる。

2 教員の勤務とその処遇について

★勤務時間管理と教員の職務遂行への意識のバランス管理が重要と考える。

  • 勤務時間管理を円滑に行うためには、充実した教育内容の推進と効率よい事務処理が求められ、管理職のリーダーシップが必要である。
  • しかし幼稚園の場合、教育時間終了は14時前後であり、その後に休憩時間をとると、残りの業務時間は、2時間程度である。その2時間に保育室の清掃、環境整備、日々の教育計画立案など、毎日行う教育内容にかかわる業務に加え、職員会議などの諸会議への参加や教材準備等を行っており、さらに分掌事務や研修を行っているのが現状である。
  • 教員は、子どもの成長発達を願って常によりよい教育活動を目指して、日々努力している。教員の中には、より充実した保育内容や指導力の向上を自らに求め、勤務時間を過ぎても教材開発にいそしむ者も多い。しかし、時間管理を優先させると、これらの努力をしているものに対しても勤務時間外の業務と認定して退勤を促すことになり、おのずと質の低下につながることが懸念される。管理職としても、一生懸命に頑張っている教員を日々目にしているが、その内容が真に職務遂行に必要不可欠な業務であるか否かの判断ができにくい現状がある。
  • 一人一人の能力実績に応じた給与体系については、必要であると考えており、検討の趣旨は理解できるが、今後下記のような点も踏まえ、実態に即した実施案を策定していく必要があると考える。
    • 1教育活動は、幼稚園全体で行うものであり、教育活動の計画、指導の方針、一人一人異なる子どもへの対応方法等について、教員同士で共通理解が必要であり、そのための時間確保が必要である。
    • 2個人情報の観点からも、業務はできる限り職場で行うように職員に指導しているが、教員の中にはその家庭環境の中で家事を中心的に担っている職員も多い。ワークシェアの発想を浸透させることが是非必要と考えるが、現状では、勤務時間を終えると直ちに退勤し、残った業務を持ち帰ってこなしている状況も受け入れざるを得ない点がある。
    • 3教育にはここまでということはなかなか難しい。たとえば、若い職員はまだ仕事が効率的にはできず時間がかかる。中堅は納得がいくまで環境整備することができる。子育て中の人は遅くまで残れない。朝早く来ることがあったり、土曜日、日曜日に自宅で仕事をしたりする。その時々のライフステージがある。教育には時間管理も大事であるが、教員としての使命感をもっている人材を大事にすべきではないか。

3 教職調整額の見直しについて

  • 教育職員の職務・勤務の特殊性から教職調整額が措置された経緯を踏まえ、一定程度の一律支給は必要と考える。
  • しかし、教員の時間外勤務は、個人によって大きな差が出ている実情はある。そこで以下のような観点を踏まえ、実効性のある改善案を策定されるよう望むものである。
    • 1全くあるいはほとんど時間外勤務をしていない人にも一律に4パーセントを支払う処遇は、適当でないと考える。例えば、病休等、実際に職務についていない場合や、指導力不足と認定されている場合などについて見直すことに異論はない。
    • 2しかし、実際に職務についている職員が時間外に業務を行っている状況について、どこまでを時間外勤務とみなすか、判断が難しく、有効な実施は難しいと考える。
    • 3教材研究など、教育を充実させるためには際限なく時間が必要であり、これで十分ということはなかなか難しい。その努力は教員の指導力向上につながるものであり、学校長としては望ましいものである。この時間は、時間外勤務に相当するのかなど、職員に納得のいく基準が必要となると考える。
    • 4行事の準備のために全体で準備する場合には、時間外勤務の命令を出しやすい。また、災害や事故等が発生して対応の必要性がある場合には、教員に命令を出せる。しかし、学級通信の作成や保育室等の環境を向上させることを職務目標に掲げて遂行しようとしている職員に対し、どこまで時間外勤務と認めて命令を発し、どこまでは自主的な自己研鑽とするか、判断が難しい。また、時間外勤務手当ての予算との関係で、一概に判断基準を当てはめることもできないことが予想される。

4 その他

  • 変形労働時間制を導入し長期休業中の労働時間を学期中に振り分けることについては、現実的な対応のように思われる。しかし、幼稚園においては、夏季保育やプール指導を行っている幼稚園もある。また、認定こども園の実施推進が中教審答申「教育振興基本計画について」にも示されており、長期休業中に預かり保育を実施する幼稚園も漸増している現状から、職員の勤務に支障をきたすことが考えられる。