都道府県と政令指定都市間の県費負担教職員制度の見直し・学級編制の基準の設定権限の移譲【平成15年度中に結論】
市町村立小中学校等の教職員給与は都道府県が負担する一方、教職員の任命権は、既に都道府県から政令指定都市に移譲されている。その結果、政令指定都市においては、教職員の任命権は有するものの給与負担者ではないという歪みが生じており、任命権者であるにもかかわらず給与関係事務処理は、常に都道府県を介して行わなければならない。
教職員の任命権と給与支払い権の所在を一致させ、事務の合理化を図るとともに、義務教育経費全額負担を政令指定都市において実現するために、県費負担とされている教職員給与を政令指定都市負担とする方向で見直す。
それとともに、義務教育に関する権限の政令指定都市への移譲も行うこととし、具体的には学級編制の基準や教職員定数の設定に関する都道府県の権限を政令指定都市に移譲する方向で検討する。
これらについては、平成14年度から検討を開始し、関係道府県及び政令指定都市の教育委員会等関係各方面の理解を得つつ、平成15年度内に意見を集約し、その結果を踏まえ直ちに見直しに着手する。
政令指定都市は、財政的に見ても、児童生徒数や学校数などの面から見ても、都道府県と同等の規模を有しているが、現行制度上は、教職員の給与を道府県の負担としつつ、その任命権は政令指定都市が行うこととされており、給与を負担する者と任命権を行使する者が異なるという制度の「ねじれ」により弊害が生じているとの指摘がある。
この問題について制度の見直しを行うため、当作業部会では、関係の道府県及び政令指定都市から意見を聴取した。(政令指定都市及び関係道府県の意見について、表3(略)及び表4(略)参照)その結果、多くの意見は、次のとおりであった。
一方、域内に政令指定都市が存在する道府県の中には、道府県内の義務教育の機会均等や教育水準の確保に果たしている道府県の役割にかんがみ、給与負担と権限の移譲については慎重に対処すべきであるとの反対意見もあった。意見聴取の結果、方向性としては、給与を負担する者と任命権を行使する者を一致させる方向で見直すべきとの意見が大半であったが、この問題については関係者間でも必ずしも意見が一致していないところもあり、また、政令指定都市が負担する給与費の財源問題の解決なしに結論を得ることは困難な問題である。
当作業部会としては、給与負担と権限をあわせて移譲する方向で取り組むべきものと考えるが、その円滑な移譲のためには政令指定都市に対する国庫負担が必要であると考える。財源問題について、関係省間で協議の上、方向性が示されることを期待するとともに、権限と負担の移譲に伴う政令指定都市の事務体制の整備に向けた具体的な検討が進められることを期待する。
なお、中核市など一定規模以上の市についても、政令指定都市と同様、任命権や給与負担などの移譲について、市町村の権限と責任を拡大する観点から、引き続き検討することとしたい。
県費負担教職員の人事権については、平成17年10月の中央教育審議会の答申において、既に、より教育現場に近いところに権限を下ろす方向が望ましいとの考え方の下、「当面、中核市をはじめとする一定の自治体に人事権を移譲し、その状況や市町村合併の進展等を踏まえつつ、その他の市区町村への人事権移譲について検討することが適当」との考え方を示したところである。
しかしながら、人事権を全面的に移譲することについては、依然として関係者間での意見の隔たりが大きく、全ての市町村において一定水準の人材確保を図る上で支障が生ずるという懸念が大きい。このため、今回は前記のとおり、同一市町村内における転任については、市町村教育委員会の意向に基づいて都道府県教育委員会が行うこととし、人事権全体の移譲については、小規模市町村の教育行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担の在り方などとともに、引き続き検討していく必要がある。
現在、県費負担教職員の人事権と給与負担は、基本的に都道府県となっているが、例外的に政令指定都市については人事権が、中核市については人事権のうち研修に関する実施義務のみが、都道府県から移譲されている。
こうした状況に対しては、小・中学校は、市町村が設置し教職員も市町村の職員でありながら、人事権と給与負担が都道府県となっているため、地域に根ざす意識を持ちにくくなっていること、また、より教育現場に近いところに権限を下ろすべきであることなどから、人事権を市町村に移譲すべきである。あわせて、人材確保のための広域での人事調整の仕組みや財源の確実な確保にも留意したうえで、人事権者と給与負担者が一致するように人事権移譲に伴う給与負担のあり方も適切に見直すことが必要である。特に既に人事権が移譲されている政令指定都市については、早急に人事権と給与負担の一致をはかるべきである。
県費負担教職員の人事権を移譲することについて、すべての市町村において一定水準の人材確保を図ることができるよう、小規模市町村の行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担、学級編制、教職員定数の在り方などとともに、引き続き検討する。
初等中等教育局初等中等教育企画課