県費負担教職員の人事権等の在り方に関する協議会(第5回) 配付資料

1.日時

平成20年9月29日(月曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省5階 4会議室

3.議題

  1. 給与負担の在り方について
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

山本委員、中村委員、鈴木委員、高橋委員、西条委員、伊藤委員、井出委員、安谷委員、太宰委員、大久保委員、森長委員、土屋委員

文部科学省

前川大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、常盤初等中等教育企画課長、関財務課長、渡邉財務課専門官

6.議事

 議事に先立ち、本日の会議は特段非公開にする理由もないことから公開とされた。

(1)給与負担の在り方について

 事務局より配付資料について説明があり、資料3に基づいて質疑応答・意見交換が行われた。

[質疑応答・意見交換]

【文部科学省】
 資料3にあげた論点に沿ってご議論頂ければと思っている。まずは(1)人事権者と給与負担者の一致を図るべきか、という問いに対し、ご議論頂きたい。順番にご意見をどうぞ。

【委員】
 都道府県の意見としては、公式的には資料2にあるとおり。まずは政令市へ給与負担を移し、それから中核市へ移す、ということ。ただ、財源保障をしてもらえるのか、ということが市町の思いではないか。今の制度のままでは引き受ける方も心配だと思う。都道府県としては事務量も減るので良いが、資料3の(2)の論点の方が重要だと思う。

【委員】
 まずは政令市に給与負担を移譲してもらって様子を見たい。市町は規模も小さいので、給与負担の移譲の話は大きなものになる。事務処理の問題、人事権の移譲と絡めた問題などいろいろある。

【文部科学省】
 人事権と給与負担は一致すべきという前提でよいか。

【委員】
 その前提であると考えて頂いてよい。

【委員】
 県議会では、なぜ人事権は移譲しているのに給与負担だけ残るのか、口が出せないではないか、人事権と給与負担は一致すべきだ、という議論になる。そうなると、財源保障の問題が大きい。

【委員】
 まず、現在の県費負担教職員制度の中では財源はどうなっているのか伺いたい。

【文部科学省】
 義務教育費国庫負担金の対象のものと対象でないものとがある。共済関係や退職手当など、対象でないものは一般財源であり、交付税と税収で措置されている。それ以外の給与で対象となるものについては、国が3分の1を国庫負担しており、残る3分の2は一般財源となっている。この一般財源の部分について、交付税と税収の割合は各都道府県で異なってくる。税収が多く、交付税の不交付団体であるところもあれば、交付税の割合の大きいところもある。

【委員】
 給与負担の移譲については、政令市にまず移って、それから中核市、さらに特例市、という段階を踏まなければ不安。また、小さな市町村については、広域的な調整は難しい。

【委員】
 総額裁量制のため、県にどれだけの金が何のために入っているのかがブラックボックスになっている。給与負担が移譲され、交付税措置されたとしても、これから財源が厳しくなることが考えられ、今後が不安である。小さいところは本当にできるのか。税源はもらいたい。いきなり交付税措置だけされても耐えられない。

【委員】
 理念としては一致すべきと考えている。ただ、財源の部分が不安。現在のやり方では、制度が末端にいくに従って、どうなっているのかが分からない。来るべきお金がこない、という状況。移譲した場合、一挙に負担が増えることについて、何とかなると安心感がないとだめだ。ただ、中核市までは移譲してよいと考えている。

【委員】
 へき地の話ではなく分からない部分もあるので、意見は控えたい。

【委員】
 人事権と給与負担は一致すべきと考える。給与負担は人事を行う上での源。政令指定都市としては、所要額全額について保障してほしい。例えば税源移譲や交付税措置のように、それぞれに財源が移るとなると、各市間に格差が生じる。税収はそれぞれで異なるので、所要額全額を保障されるのでなければだめだ。各市間に格差があれば広域調整も困難になる。

【文部科学省】
 人事権と給与負担を一致すべき、ということについては異論はないようだが、このような必要性から一致を図るべきだ、ということや、一致することによるメリット、もしくは一致させる上での財源以外の課題についてご意見頂きたい。

【委員】
 平成16年の中教審答申で書かれているように、義務教育の機会均等や教育水準の確保に関しては心配な面もある。県職員と政令市の職員の給与を比較すると、政令市の方が高い所もあり、同じように政令市に給与負担を移譲したら、政令市の給与が高くなることも考えられる。そうなると人材が偏在し、人事の停滞が生じるのではないか。

【委員】
 職員の給与は確かに政令市が高い。一部の市の給与が高いと人事異動がやりづらいため、政令市や中核市は良識を持って都道府県の水準に合わせていくことが必要。現在、ラスパイレスのように市職員については制約があるが、それができないのであれば、県の中で話し合いをもってやっていくぐらいの気持ちがないと格差が生じるのではないか。

【委員】
 給与負担が移譲されるとそれに伴って条例などを制定し議会を通していくことになるが、今の時勢では給与を高くすることは、よほど議会の理解がないと難しいのではないか。

【文部科学省】
 「負担」という言葉には、「市町村立学校職員給与負担法」における「負担」のように、「財源を持つ」ということと、「給与を支弁する」、「給与の支弁について責任を持つ」という意味を併せ持つ使い方と、「義務教育費国庫負担法」における「負担」のように、「財源を持つ」、「給与の財源を保障する責任を持つ」という意味だけの使い方とがある。
 平成17年の答申の中では、国庫負担については、退職手当なども含めて全額国庫負担が望ましいという結論を出した。そうであれば、政令市と中核市については、100パーセント国が財源保障するということであるから、安心して給与負担を受け入れることができる。今の制度のままでは本当に引き受けて大丈夫なのかという心配が出てくるのではないか。国庫負担金の残り3分の2の部分や国庫負担の対象となっていない部分は税収・交付税頼みとなる。税収が多く、交付税をもらっていない不交付団体について、今の制度のまま給与負担が移譲された場合、それでも税収の方が多ければ交付税はもらえず、給与負担はもらい損。反対に、県も給与負担がなくなると、現在ぎりぎりで交付税をもらっているところはその分がなくなり全て自主財源でまかなえることになりうるので、税源移譲が伴わない場合は不交付団体となり、それがいいかどうかという議論はありうるが、メリットとなる。
 資料2にあるように、指定都市市長会・指定都市議長会からの要望では国庫負担制度を廃止し、所要全額について税源移譲することとある。
 このように給与負担の問題を議論するときには、国庫負担制度をどうするのかは避けて通れない問題になる。全額国庫負担で、という議論も当然出てくる。
 ただ、人事権と給与負担を一緒に議論し始めると、まずは人事権と給与負担を一致させることが先決だ、と主張するところもある。資料3の論点(1)にあるのは、そのように、どちらを先にすべきか、という話。個人的な感覚から言えば、人事権の方が議論しやすい。ただ、移譲すると言っても、現行でも人事権はそっくり政令指定都市にあるわけではない。根っこは県に残っており、給与負担をおろさないと、人事権の根っこもおりていかないことになる。

【委員】
 政令指定都市の中には、市立の高校をもっていて県立高校と人事交流をしているところがある。ただ、交流を続けていてもある時になるとぱったり交流が止まり、そのまま市立高校で退職を迎えるということになる。そうなると、政令指定都市が退職手当を持つことになる。そういった意味も含めて、所要額全額について保障してほしいと言っている。

【委員】
 政令市だけではなく市と県の間でもそのようなことはある。人事交流をしていてもスムーズに戻れない、という現状がある。給与負担を考えるときは、人事権の話とも合わせて、そういった問題がある。

【委員】
 一般的な感覚からすると、人事権と給与負担は一致していて当たり前という気がする。それなのに、なぜ長い間政令市に関して、人事権と給与負担は一致していなかったのか。それは先ほど前川審議官が言っていた理由だけなのか。

【文部科学省】
 給与負担については、検討しなければならない課題が多い。また、文部科学省の立場からすると、国庫負担金を払う対象は、少ない方が事務的な作業としてはやりやすい。
 給与の仕組みと定数は連動しているが、人事権と給与負担を一致しなければならない、とまでは言えない。
 そもそも、政令指定都市という制度ができた当初から人事権を持っていた。それを制度設計の中にもとから組み込んでいた。

【委員】
 給与負担を移譲されることによって、やっと学級編制と、配置基準などの定数を独自に定めることへの道が開ける。単に一致すべきか否か、という理念上の問題ではなく、その先があるので、給与負担についてはぜひ進めていただきたい。

【文部科学省】
 資料1にあるが、平成18年に市町村立学校職員給与負担法を改正し、市町村費負担教職員を解禁し、市町村が独自で教職員を任用できるようになった。また、学級編制についても、都道府県が基準を定めた上で、さらに都道府県の同意は必要だが、市町村が学級編制を行うこととなっている。現状でも、事実上はいくらでも自由に学級編制や定数の配置を行うことができるようになっている。県費負担教職員制度のあり方と、学級編制や定数とは切り離して考えてもいいのではないか。学級編制や給与、定数、人事権などは相互に重なり合ってはいるが、全て一緒に考えないと議論できない、ということではない。それぞれを取り出して議論することは可能である。

【委員】
 資料1にあるが、平成14年の地方分権改革推進会議の提言の中では、人事権と給与負担を一致させるため、県費負担とされている教職員給与を政令指定都市負担とする方向で見直すとある。人事権と給与負担を一致すべきとあるのに、その財源をどうするのか、という議論がない。三位一体改革で市長会や知事会が国とやり合っていたときは、国庫負担金は全額なくす方向でやり合っていたが、結局3分の1が残った。現在はどのような流れの中にあるのか。同じ話をしようとしているのか。

【文部科学省】
 当時は、とにかく国庫負担金を減らして税源移譲をするんだ、ということが目的となっていた。平成17年の中教審答申で義務教育費国庫負担金は全額負担が望ましい、と結論が出ているが、それにも関わらず3分の1となった。交付税が都道府県にいくことが前提だったが、結局財政が厳しいためにだんだんと削減されている。
 財源保障については、全額国が責任を持った上で、地方の自由度を高めるべきだと考えているが、政令指定都市市長会のように、第2期三位一体改革とも言えるものをやろう、というところもある。そうした場合、今の国庫負担制度のままでは、税収格差の問題が生じてくる。

【委員】
 今の国庫負担制度を前提とすれば、現実的には負担が増えただけだと思う。一部を除けば、他はマイナスとなった。

【委員】
 三位一体改革の時代は、全体のパイが限られている中で、それをどうするか、という時代だった。その時代に、税制度がどうなっているのかを考えるべきだった。政令指定都市といっても、有効な税源があるわけではない。それが、今だんだんと露わになってきている。

【委員】
 権限も税源も、というと議論が大きくなるので絞った方がいいのではないか。

【委員】
 政令指定都市に給与負担を移譲すると、どういう方法があって、どういう財源で行うことになるのか、地方交付税がいいのか、国庫負担がいいのか、具体的に話をした方がいいのではないか。

【委員】
 詳細な数字を持っているわけではないが、市内約3,000人の教職員がいて、260億円程度が給与負担となる。さらに、共済関係の経費や退職手当や事務経費などすべて整わないと給与負担が移っても厳しい。へき地を抱えているところもあり、かなりの額が必要になるのは間違いがない。

【委員】
 それだけの額が必要となる場合でも、やり方によっては、安定的に財源が供給されるのか分からないのではないか。

【委員】
 ただ、増税には国民は慣れていない。全体の財政も厳しい中で、あの税源をくれ、とは簡単には言えない。

【委員】
 財源をどうするのか、というと国庫負担金の話になる。税源移譲なども含め、これだけの額は国が保障しますよ、というコンセンサスがとれないと引き受けきれない。国の財政当局や教育長、首長などとも議論して納得してもらうことが必要。

【文部科学省】
 国庫負担金や税収、地方交付税の割合をどう考えるか、ということでもあり、総務省も入った形でないと結論は出せない。

【委員】
 現在、義務教育費国庫負担金は総額裁量制になっており、本来何のために、どれだけの額がくるはずなのかがわからず、ブラックボックスとなっている。このような状況の中で問題になっていることはないのか。

【文部科学省】
 今の制度は各都道府県ごとになっている。国と県の間では、基礎定数というものが標準法で決まっていて、それに加配定数を、都道府県の申請を踏まえて決めているが、その基礎定数と加配定数をどうするかは都道府県の専権事項である。県と市の間では、全て加配のようなもの。都道府県が市町村への配当基準を定めることを法律上求められているわけではない。

【文部科学省】
 充足率はほとんどの県でカバーしている。給与カットをそれぞれの県でやっていることによって、実額が国の限度額を下回っている県もある。

【委員】
 人事権移譲の話だけならば簡単。今の状況は、給与を上げていく、という発想ではない。給与負担を移譲すると、平均化されたものになるのではないか。
 特にうちの市長は、給与負担が移譲された場合、国庫負担をなくしたとしても、給与を急に下げるとか、上げるということはないと考えている。

【文部科学省】
 自治体の自由度、裁量は増やすべき。ただ、国庫負担金という義務教育へのお金が、税源移譲という形で何でも使える、ということになるのはどうか。義務教育へのお金を増やす自由というものはもともとあるのだから、減らす自由が増えるだけである。財政が厳しいところは、背に腹は代えられない、ということで、金を減らすことになりうる。全国的な、義務教育の機会均等や、教育水準の確保、ということはどうなるのか。

【委員】
 うちの市長は、学校の耐震化や、子どもの健康のためなど、必要なところにはそれなりの額を確保しているし、不安にならなくても大丈夫ではないか。

【委員】
 ただ、制度の持つ欠陥を、属人的な能力で補っていく、ということになる。

【文部科学省】
 次回は、私どもで論点をさらに具体的に整理をし、次回お示しをしてご意見を伺うような形にしたい。人事権の移譲の在り方をどのように考えていくのか、またそれにより給与負担が関わってくる。一律で考えるのかあるいは地域の事情を考えて行うのかといったようにいろいろな議論がこれまであったが、色々な視点から次回以降引き続きご議論をいただきたい。

(2)その他

 また、次回(10月27日(月曜日)13時~15時)は学級編制及び教職員定数について議論を行うこととなった。また、次回も今回と同様、公開とすることで了承された。

(3)閉会

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初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)