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初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第6回)議事要旨

1.日時

平成20年3月26日(金曜日)10時〜12時

2.場所

文部科学省ビル11階 省議室

3.議題

  • (1)文化庁文化部国語課からのヒアリング
  • (2)論点整理
  • (3)その他

4.配付資料

資料1
 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第5回)議事要旨(案)
資料2
 文化庁文化部国語課提出資料
資料3
 外国人児童生徒の適応指導・日本語指導に関する検討の方向について
資料4
 報告に盛り込むべき提言事項の例(第5回検討会配付資料)

5.出席者

(協力者)

逢坂委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、木場委員、佐藤委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

(文部科学省)

前川初等中等教育局担当審議官、大森国際教育課長、小串初等中等教育局視学官、その他関係官

6.議事概要

(1)文化庁文化部国語課からのヒアリング

 町田文化庁文化部国語課長より、資料2に基づき説明があった後、以下の質疑が行われた。

【委員】

 最近、韓国でも外国人に対する韓国語教育プログラムの開発というのが進んでいるようだが、文化庁では、そういった諸外国の動向に関しても参考にされているのか。また、この報告書の中に「国は日本語教育の政策的な位置づけを明確にし」とあるが、いつごろこうしたものが出るのか、伺いたい。

【文化庁】

 外国の動向については、必ずしも文化庁が直接指導ということはないが、やはり外国にもいろいろな動きがあるということは研究する必要があるんだろうということで、専門家の方にヒアリングに来ていただくなり、それに関する資料を集めてるとかといったことは考えている。それから、この政策的な位置づけについては、今後審議していき、何らかの結論を来年の2月には取りまとめたいと考えている。

【委員】

 文化庁の日本語教育に関する検討と、この検討会の関係というのはどういうふうに絡んでくるのか。

【委員】

 かなり積極的な議論をしていると思う。それは、文化庁の方では、今まで年少者の日本語教育の話は必ずしもメーンになっていなかった。それをメーンにしてきたということだと思う。そして、政策的な位置づけ、特に参加のための日本語教育をどうするかということの視点が明確に出てきているということと、この検討会とつながっていく話だと思いますけれども、学校だけでは対応しきれない、地域日本語教育の専門性をどう考えていくかということ。もう1つは、連携連携って、これは何十年も言われ続けていて、何も実現していない。その具体策をどうしていくのかということをここで1つモデルケースにしながらやってみようじゃないかということで、多分地域の側から学校に対してどういう支援策を講じられるかということをこの小委員会のほうでは、多分そういう議論になっていくんじゃないかというふうに思う。

【委員】

 退職教員の活用ということで、幾つかもう実際に動いているケースというのはあるのか。

【文化庁】

 まだ今年1年目の事業なので、成果報告というのは来ていないが、幾つかの地域に委嘱をして取り組んでいる。

【委員】

 地域の方々が積極的に学校教育、学習内容を視野に入れた日本語指導をしてくださるということは非常にありがたいというふうに考えている。したがって、特に退職教員を対象にした研修会が非常に充実していくことはいいことである。

【委員】

 文化庁で、日本語教育の推進のために何を一番中心にやりたいと考えておられるのか。

【文化庁】

 1つはやはり日本語教育コーディネーター、そういう方々を養成する研修というのが必要、また、そういう方々がボランティアではなく正規に職員として活躍できるような環境をつくることがまず必要だろうと考えている。あとは、日本に幾つかでも日本語教育のリソースセンターのような拠点があるとよいのではないかと考えている。

【委員】

 文化庁のほうの施策の対象範囲の中で、児童生徒というものに対して特化したような方針を何かお持ちかどうか。それから、そういうものに対するアクションプランをお持ちかどうか。もう1つは、私も今文化庁で日本の文化を世界に発信するのにどうするかというような研究会に出ていて、中国の孔子学院に対抗するために、世界100カ所に日本語教育拠点をつくろうというような構想まで出てきている。そうすると足りなくなるのが正規な教育を受けた、正規のシステムを知っておる日本語教師、これが今の時点で必ずしもそうとなっていないのではないかと思うが、そういう日本語教師を育成していくという点で何かお考えはあるか。

【文化庁】

 まず児童生徒に特化したものということになると、文化庁の所掌からは外れると思う。ただし、関連する事項については、児童生徒であろうと文化庁としても検討の対象にしていくということにはなると思う。それから、日本語教師の養成ということになると、国内では大学や日本語学校で養成しているということなので、直接それに予算をつけて何か事業を行うというようなことはおそらく文化庁ではやらないと思う。ただ対象別の日本語教育のあり方とか現在ニーズの高い地域の日本語教育を指導する人間をどういうふうに養成するか、そういった養成のためのカリキュラムのあり方とか、そういったことについては文化庁としては検討の対象になるものと考えている。

(2)論点整理

 事務局より、資料3及び資料4について説明があった後、以下の質疑が行われた。

【委員】

 資料3を見ると日本語指導に特化されている。しかし本検討会は、もともと外国人児童生徒教育の充実ということだったと思うが、どうか。

【事務局】

 報告をまとめていくに当たっては、就学支援や日本語指導・適応指導、また、進路の問題とかを総合的に扱っていくつもりである。ただし、この提言の中心は、おそらく日本語指導・適応指導ということで、今回、そのような資料を作成し、具体的な施策、方向性などについて、ご意見をいただきたいと考えている。

【委員】

 資料3の中に「日本語指導加配教員や外国人児童生徒支援員の配置をより一層進めることが必要」との表現があるが、「一層進めることが必要」といった客観的な書き方が「こうやるんだぞ。必要だぞ」というように受け取ってくれるものなのか。

【委員】

 例えば「より一層進めることが必要」という、日本語指導加配教員や外国人児童生徒支援員の配置をとにかく進めるという方針をここでは確認するというような議論でいいのではないか。

【事務局】

 この提言をまとめるに当たって、様々に調整しないといけない部分もあるので、ある程度方向性がにじみ出ていれば、十分ではないかと思っている。

【委員】

 今の点に関連して、加配教員は国が3分の1で県のほうが3分の2、教員の給与を手当するとなっていると思うが、外国人児童生徒数に基本的に応じて加配をするような仕組みかと思う。その場合、対象の児童生徒を外国籍に限っているのか、あるいは日本国籍の児童生徒も含めて考えていいのか。

【事務局】

 個々の学校にどれだけのどういう基準で配置をするかというのは各都道府県の教育委員会が行うが、都道府県ごとに考えが違うので少しずつ基準が違うと思う。その中で、日本国籍を持っている者も含めて見ていくかいかないかというのは、第一義的には都道府県の教育委員会がどういう方針でするかということだと思う。文部科学省は、その方針を踏まえて、予算の範囲内で児童生徒支援加配という袋の中でお出しするので、外国人児童生徒に限らず日本国籍を持っている子どもでも、ほんとうにニーズがあれば加配要件に当たるものと考える。

【委員】

 提言としては、こういうふうに増やす、一層進めることが大切だということで、文言としてはいいと思うが、もう少し具体的なことを考えると、在籍者数が1人、2人という学校が非常に多くなっており、そういう学校全てへの加配措置はほぼ不可能に近い。だから、群馬県太田市の例のように、ブロック分けでセンター校をつくって、学区を弾力的に運用して、ここのセンター校ならそういう教員も指導者もいるよというような取り組みをどこもがやれば、1人、2人の在籍校が救われるんじゃないかと考える。また、文部科学省が学区の弾力的な運用ということを言っても、教育委員会レベルに落ちていくと、「文科省はそう言うかもしれないけれども、うちの教育委員会はこうなんだ」という体制があちらこちらであって、学区の弾力的なということがなかなかうまくいっていないので、そういう点について触れてもらってもいいのではないか。

【委員】

 学校現場は、教員の頑張りが、その学校、その個人の頑張りに期待しているという状況が実際あって、ふうふう言っている状態である。本県の場合、地域によっては、学年の半分ぐらい、外国人児童生徒が全体の50パーセント近く在籍しているところもある。そういう市町村とか学校の要望というのは、学習言語を何とか達成したいというのがある。この検討の方向として、学習言語の達成というようなことの具体的な道筋があったほうがいいのではないかと感じる。

【委員】

 いくら加配教員や支援員を配置したとしても、その人が実際に力を発揮できるような研修というものがセットされないと、支援員を雇ったものの、その人が取り出しをして指導するような場合に、何も研修も受けないで、ぽいと放り出されているようなところが現状としては非常に多い。したがって、採用した人については必ずフォローとしての研修をセットにして考えなければいけないと思っている。文部科学省では、毎年、夏休みに中央研修を企画されているが、あまり実際の現場のほうに生かされていないということを感じている。つまり、毎年100人程度、全国から集まって研修を受けているが、集まった人たちだけに提供されるような研修になってしまっている。研修受講者が帰った現場で、あるいは県だとか市町だとかで還流されるような措置がとられていればいいが、なかなかできない。せっかくしっかりとした研修がなされても、記録として残されていないこともある。例えば、DVD等で研修内容を記録すれば、それをリソースルームのようなところで誰でも活用できればいいと思う。

【委員】

 例えば、教育課程とかでは、国で研修をして都道府県でその伝達講習をし、さらに都道府県でその伝達講習を受けた者が市町村で伝達講習のような形で下ろしているが、そういうラインに乗せることはできないのか。

【事務局】

 外国人児童生徒の指導という形でそういう伝達講習的なシステムがまだ整備されていないものと思われる。したがって、国や都道府県・市町村においてそういう専門的職員の配置の促進みたいなことについてもやっていき、ラインの整備もしていかないといけないと考えている。

【委員】

 JSLカリキュラムの定着を図るということがアプリオリに書かれているのに疑問を持っている。文科省が開発されたカリキュラムなので定着を図るという方向性を出されるというのはわかるが、なぜ定着しないのかということについてはどのように考えているのか。

【委員】

 JSLカリキュラムは、基本的には、それを使うことによって先生方の実践的力量を高めたいという思いがあったので、もともと研修と一体化させないと使えないものである。これまで、国においては、カリキュラムの開発はするけれども普及するまでのお金はなかなか出て来なっかった。ようやく今年度から普及事業が始まり、各地域の中でJSLカリキュラムに関して、「ようやくわかった。要はこういうなんだということがわかった」ということが出てきている状況である。ただし、JSLカリキュラムがオールマイティーではなく、きちっとした日本語指導も必要だし、きちっとした教科指導も必要だし、そして、それをつなぐためにJSLカリキュラムも必要であるということである。

【委員】

 JSLの普及率が今何パーセントぐらいなのかということと、それが普及していないとすれば、その原因、理由については、文科省はどのようにとらえているということを伺いたい。

【事務局】

 正確なデータはないが、これまで確かに、外国人児童生徒の受入校においてほとんど活用されていなかった状況にあったものと思う。その後、JSLカリキュラム完成後の平成19年度、20年度にかけて、全国を6ブロックに分けて外国人の指導に当たっている現職の教員の方を主な対象にして研修会をやってきている。JSLカリキュラムそのものは、各学年、全教科についてまとめており、かなりの大部なので、一読しただけですぐに活用できるというものではなく、やはり研修とセットじゃないとなかなかわからないというところが現場の声としても高いように思う。

【委員】

 前回、プレクラスというのが、プレスクールとの違いとか、インパクトのある名称にしたらどうかという話があったと思うが、資料上でプレクラスになったということで、その経緯を確認したい。このプレクラスはどう定義されるかというと、就学前の外国人児童生徒への初期教室だけではなくて、編入前というのもあったと思うが。

【事務局】

 前回の議論の中で、プレクラスと言ったときに、就学前の子どものための直前の日本語指導・適応指導のためのクラスというだけのみならず、途中編入もカバーしていくべきというご意見だったと思うので、位置づけ的にはそういう形で両方対応するように用いたいと考えている。あとは用語の問題として、就学前と途中編入学とかそれ以外の場合とで明確に切り分けたほうがわかりやすいとかということがあれば、例えばプレクラスの前に就学前の子どもを対象にしてここは使っているんだという場合には「就学前プレクラス」とかの用い方もあると思っている。

【委員】

 明確に分けてもらったほうが現場は混乱しないと思う。途中編入学の場合は、入学前ではなくて、もう編入した時点でその学校の在籍児になるので、在籍しながらそのクラスへ通うというスタイルでないとその子どもに対する責任があいまいになってしまう。

【委員】

 プレスクールやプレクラスは和製英語のようなものであり、プレスクールは、英語では幼稚園や保育園という意味になる。誤解を招きやすい言葉なので文科省がそれにお墨つきを与えてしまうのはよくないのではと思う。

【委員】

 我々が提言する幾つかの大事なことについて、国が直接何をやるのか、教育委員会も含めて、国が地方自治体を指導してこういうことをやってもらうんだというかなり強制力を持つ、それから、自治体任せなんだけれどもこういうふうな視点でやってもらったらいいなという3種類ぐらいがあると思う。大事な提言の施策についてこのものについては国がやるんだと、それから、これは自治体を指導してはっきりやってもらうんだというようなジャンル分けが必要であると考える。

【委員】

 国がいくらいい方針を出したって教育委員会の意識が変わらなければ進まないということがあるわけで、「教育委員会、この点はあなたたちで責任を持ってやってくださいよ」ということをクリアなメッセージにしたほうが、この会としての意味があるような気がする。

【委員】

 企業に対してもアプローチしたいと思う。例えば、ある自治体に居住する外国人の保護者が別の自治体の企業に勤務している場合、企業への就学の啓発もしづらいという問題がある。学校や教育委員会だけではうまく解決できない大変深い広い問題もあるので、その辺は文科省のほうで指導いただきたいと思う。

【委員】

 資料3において「国際理解教育」が何回も出てくるが、国際理解教育というのはとても広い概念で、「外国理解教育」のようになってしまう場合も多いと思う。ここでの趣旨としては、先ほど多文化共生社会という視点が出されたが、そういった視点に立った国際理解教育でなければずれてしまうと思うのだが、どうか。

【事務局】

 もし触れるとしてどういうような文案でまとめていくのかというところは少し検討をさせていただきたいと思う。一方で、学校現場の中で全国一般的には「国際理解教育」というような形で理解されている学校が比較的多いこともあると思う。

【委員】

 提言の中に都道府県によって対応が違うという部分で、学区の弾力的な運用などの問題について、都道府県によって対応が全然まちまちだというのはやはりまずいので、その辺も検討していただけるとありがたい。

【事務局】

 こう取り扱えということを自治体に強制することは難しいと思うが、こういう制度になっているということを、何らかの形で自治体関係者にも周知するというようなことはあり得るかと思う。

―了―

(初等中等教育局国際教育課)