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資料2

学校評価の在り方と今後の推進方策について 中間とりまとめ(案)

平成19年3月28日

学校評価の推進に関する調査研究協力者会議

はじめに

  これまでの経緯について
 学校評価については、平成12年12月の教育改革国民会議報告「教育を変える17の提案」において、外部評価を含む学校の評価制度を導入し、評価結果を親や地域と共有し、学校の改善につなげる必要性について提言がなされた。

 さらに、平成14年度からの新学習指導要領の全面実施や、完全学校週5日制の実施等が迫る中で、学校の自主性・自律性を高めることによって、より質の高い特色ある教育が提供されるよう促すとともに、学校が保護者や地域住民からの信頼に応え、家庭や地域と連携協力して児童生徒の健やかな成長を図る必要性があらためて認識されてきた。
 平成14年4月に施行された小学校設置基準等においては、教育活動その他の学校運営の状況について、自ら評価を実施し、その結果を公表するとともに、それに基づく改善を図ることが重要であることから、自己評価の実施・公表の努力義務や情報提供の義務に関する規定が設けられた。

 また、平成17年10月の中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」においては、「義務教育の構造改革」として、アウトカム(教育の結果)を国の責任で検証し、教育の質を保証する教育システムを構築することの重要性が指摘された。
 あわせて同答申においては、学校の裁量を拡大し主体性を高めていく場合、それぞれの学校の取組の成果を評価していくことは、教育の質を保証する上でますます重要であること、また、学校教育の質に対する保護者・国民の関心の高まりに応えるためにも、学校評価を充実することの必要性が指摘されたところである。

 平成18年3月には、学校評価の目的、方法、評価項目・指標、結果の公表方法など、学校評価を進める上で目安となる事項を示し、各学校や地方自治体の取組の参考に資するよう、文部科学省として「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」(以下「学校評価ガイドライン」と表記する。)を策定したところである。

 このような状況の中、国として、学校評価システムのすみやかな構築と充実に努めることが求められているところであり、平成18年7月に文部科学省初等中等教育局に「学校評価の推進に関する調査研究協力者会議」(以下「本協力者会議」と表記する。)を設け、学校評価の現状と課題、今後の学校評価の推進方策の在り方等について、これまで議論を深めてきたところである。

 また、平成19年1月には、教育再生会議第一次報告「社会総がかりで教育再生を」において、保護者等による実効ある外部評価の導入とその結果公表や、第三者機関による厳格な外部評価・監査システムの導入の検討が提言された。さらに同年3月には、中央教育審議会答申「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」において、学校評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図ることにより教育水準の向上に努めることや、保護者等との連携協力の推進に資するため学校の情報を提供することについて、学校教育法において規定すべきこと、また、自己評価・外部評価の一層の推進や、第三者機関による全国的な外部評価の仕組みを含めた学校評価の充実方策を検討することについての提言がなされた。

  「中間とりまとめ」を踏まえた取組への期待について
 このような状況の下に、本協力者会議において平成18年7月から平成19年3月までの10回にわたり熱心な議論を積み重ねてきた中で、一定の結論が得られたものや、議論の整理の状況について、ここに中間的にとりまとめたものである。

 この「中間とりまとめ」においては、自己評価や学校関係者評価(外部評価)の具体的な在り方や、教育再生会議等においても議論されている第三者評価の在り方など、今後さらに検討すべき課題が残されており、これらについては引き続き議論を深めていくことが重要である。同時に、文部科学省、各教育委員会、各学校においては、この中間とりまとめに示した一定の結論が得られた事項などについて、その趣旨を踏まえた取組を進めることにより、学校評価の質・量両面における充実が図られ、学校運営の改善と教育の水準の保証に資することを期待したい。

総論−学校評価の目指す目的−

  学校評価の必要性について
 学校評価については、自己評価の実施・公表の努力義務が小学校設置基準(文部科学省令)等に定められているところであり、各学校は自己評価に努める法令上の義務が課されている。
 また、以下の「各論」において述べるように、学校運営の改善に果たす学校評価の重要性を踏まえて、その総合的な根拠となる規定を法律に位置付けることを提言しているところであり、これらを踏まえて、各学校は学校評価に取組む法的な責務を負うものである。

 しかし学校評価が、単に法令上の責務が課されているから取組む、と消極的・受動的に捉えられることは、その性格からみて好ましいことではない。何故法令上このような位置付けがなされているのかという、そもそもの趣旨が十分に理解された上で、学校評価が内実を伴ったものとして取組まれることが求められる。

 学校評価を行う最終的な目的は、それを通じて学校運営の改善と発展を目指すことにより、教育水準の向上と保証を図ることにあると考える。そのためには、まず学校こそが学校評価の主役である、という意識を持って、学校の教職員自身が学校運営の状況を把握し、その改善に主体的に取組むことが重要である。このことから、自己評価を学校評価の基本として位置付け、その結果を踏まえて改善を図ることが重要であり、前に述べた学校評価や自己評価に関する法令上の規定は、この趣旨を条文化したものといえよう。

 さらに、自己評価だけでは、どうしても教職員が行うという同質的な視野に限られたり、あるいは当事者ゆえに中立的に自らの取組を評価しにくい側面があることは否定できない。このことから、保護者等による学校関係者評価(外部評価)が重要であり、これにより教職員とは異なる立場からの見方や意見を取り入れることができるとともに、相互理解が深まり、学校と保護者・地域をつないでぎ相互の連携協力を深める良い機会となることが期待できる。

 さらには、学校とは直接の関係のない第三者が学校の状況を観察し、評価を行うことにより、客観的な立場からの新たな気づきを学校にもたらす良い機会となるとともに、学校のみならず設置者である教育委員会等の取組に対する第三者の客観的な立場から見た評価となり、またその結果に基づく支援や改善を講じることを促す効果をもたらすことが期待される。ひいては、これらを通じて、全国的な教育水準の向上を図ることが可能になるものと考えられる。

  学校評価の意義・目的・手法について
 「学校評価ガイドライン」においては、学校評価の目的として次の3つを挙げている。
1  各学校が、自らの教育活動その他の学校運営について、目指すべき成果やそれに向けた取組について目標を設定し、その達成状況を把握・整理し、取組の適切さを検証することにより、組織的・継続的に改善すること。
2  各学校が、自己評価及び外部評価の実施とその結果の説明・公表により、保護者、地域住民から自らの教育活動その他の学校運営に対する理解と参画を得て、信頼される開かれた学校づくりを進めること。
3  各学校の設置者等が、学校評価の結果に応じて、学校に対する支援や条件整備等の必要な措置を講じることにより、一定水準の教育の質を保証し、その向上を図ること。

 また、学校評価の必要性について、
  「学校や地方公共団体の自主性・自律性を強化していく場合、それぞれの学校や地方公共団体の取組の成果を評価していくことは、学校教育の質に対する保護者・国民の関心の高まりに応えるため、ますます重要となる。また、教育の質を保証するため、設置者等が学校に対して必要な支援や条件整備等を行うために学校評価を活用することも必要となる。」
と整理している。

 これらの考え方は今後も妥当するものと考えられることから、このことを踏まえつつ、また、次の「各論」の各項目において述べる学校評価の定義や位置付け等と併せて、学校評価を実施する意義や目的・手法について、以下のように考えることが適当である。

学校評価を実施する意義
 学校の裁量が拡大し、自主性・自律性が高まる上で、その教育活動等の成果を検証し、必要な支援・改善を行うことにより、学校運営の改善と発展を目指し、教育の水準の向上と保証を図ることが重要である。また、学校運営の質に対する保護者等の関心が高まる中で、学校が適切に説明責任を果たすとともに、学校の状況に関する共通理解を持つことにより相互の連携協力の促進が図られることが期待される。
 これらのことから、学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い、その結果に基づき学校及び設置者等が学校運営の改善を図ること、及び、評価結果等を広く保護者等に公開していくことが求められる。

学校評価の実施手法の3要素
 学校評価の用語の定義や、その具体の在り方については、次の「各論」の2.及び3.において基本的な考え方を整理しているところである。
 それらをまとめると、学校評価については、次の通り「自己評価」「学校関係者評価(外部評価)」「第三者評価」の3つにより行うこととし、特に自己評価をその最も基本として位置付けて行うシステムの確立が求められる。

自己評価
目的: 学校評価の最も基本かつ重要なものであって、学校の教職員自らがその目標等の達成状況や達成に向けた取組の状況を検証することにより、学校の現状と課題について把握し、今後の学校運営の改善に活用することを目的として行うもの。
手法: 校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した具体的かつ明確な目標等に照らして、その達成状況の把握や取組の適切さを検証し、評価を行うことを基本とする。

学校関係者評価(外部評価)
目的: 当該学校の教職員以外の者で当該学校と密接な関係のあるもの(保護者、地域住民、学校評議員、接続する学校の教職員等)が、自己評価結果を検証することを通じて、学校と保護者等が学校の現状と課題について共通理解を深めて関係者の連携を促し、学校運営の改善に協力して当たることを促すことを目的として行うもの。
手法: 保護者(PTA役員等)、学校評議員、地域住民、接続する学校の教職員その他の学校関係者などの外部評価者により構成された委員会等が、当該学校の教育活動の観察等を通じて、具体的かつ明確な目標等に関する自己評価結果を検証し、評価を行うことを基本とする。

第三者評価
目的: 当該学校やそれを設置管理する主体と直接かかわりをもたない機関等が、大学や教育研究機関の職員、有識者などの専門家等による客観的・専門的立場からの評価を行うことにより、自己評価・学校関係者評価(外部評価)では不足する部分を補い、学校やその設置者等による学校運営の改善を促すことを目的として行うもの。
手法: 当該学校に直接かかわりをもたない専門家等が、自己評価及び学校関係者評価(外部評価)結果等を資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的立場から評価を行うことを基本とする。

 なお、これらの学校評価の分類や意義・目的・手法の定義は、学校の設置者や各学校の取組の目安となる標準的な在り方を示すために、学校評価を取り巻く様々な要因を考慮した上で、今後無理なく実効性あるものとしていくために必要と考えられることについて、本協力者会議において議論を深めてきた内容をとりまとめて示したものである。

各論−学校評価の現状と今後の推進方策−

1. 学校評価の実施状況と課題について

 自己評価・外部評価の実施・公表の状況については、ほぼ全ての公立学校において自己評価が実施されているなど、年々着実に取組が進められている。

 しかし、自己評価の公表や外部評価の実施、自己評価結果に関する保護者の認知度が低い状況がある。今後、真に実効性のある学校評価システムの構築に向けた更なる取組が求められる。

  自己評価・外部評価の実施・公表状況について
 学校評価については、平成14年度から、小学校設置基準(中学校、高等学校、幼稚園についても、それぞれの設置基準において同様の規定がある。)において、学校の自己点検・評価(自己評価)とその結果の公表が努力義務とされている。

 平成17年度間における学校評価の実施状況をみると、自己評価はほとんどの公立学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲・聾・養護学校)において実施されているが、一方でその公表率は、年々着実にあがってきてはいるものの、まだ6割弱に留まっている。

 外部評価・外部アンケート等については、同じく公立学校の8割強で実施されている。また、「学校評価ガイドライン」において、「外部アンケート等」が「外部評価」から除かれたが、その除いた後の外部評価の実施状況については、公立学校の約5割で実施されている。

【参考】
公立学校の学校評価の実施状況(平成17年度間)
  実施率 結果公表率
教職員による「自己評価」 97.9パーセント 58.3パーセント
「外部評価」・保護者等対象の「外部アンケート等」 83.7パーセント 87.0パーセント
保護者や地域住民等による「外部評価」 51.9パーセント 69.7パーセント

  自己評価結果の保護者への周知状況について
 しかし、上記に示された学校の自己評価や保護者等による外部評価の実施・公表の状況にもかかわらず、保護者等を対象とした各種のアンケート調査結果からは、8割程度の保護者が学校の自己評価結果について知らないと感じている状況が示されている。
【参考】
社団法人日本PTA全国協議会 「学校と家庭の教育に関する意識調査報告書」(平成18年3月)
  あなたのお子さんが通う学校では、自己評価結果が公表されましたか。
 わからない…76.3パーセント

財団法人経済広報センター 「義務教育に関するアンケート結果報告書」(2006年10月)
  学校の自己評価が義務化(注)されていますが、このような自己評価の結果をみたことがありますか。
 見たことも聞いたこともない…80パーセント
(注) なお、小学校設置基準等上は「努力義務」である。

  学校評価の充実に向けた検討の観点について
 これらの現状を踏まえ、今後、学校評価の着実な定着と充実を図り、真に実効性のある学校評価システムの構築を推進するためには、次に示す観点に留意しながら、更なる取組が必要と考える。
1  学校評価の用語の定義や相互の関連性を整理し、わかりやすく、明確にすること。
2  自己評価の充実を図るとともに、外部評価との有機的な連携を図ること。
3  評価結果を踏まえた支援・改善など、関係諸機関の在り方を明らかにすること。
4  学校の情報の公開の一層の促進を図ること。
5  第三者評価の在り方について更に検討を深めること。
6  私立学校、高等学校等における学校評価の在り方について更に検討を深めること。
7  学校評価と教員評価の関係の在り方について整理すること。

 以下、上記の観点について検討し、その結論の要旨を冒頭のしかく囲みの中に示すとともに、その下に結論に至った理由について説明する。

2. 学校評価の用語の定義について

 「学校評価」の実施手法について、以下の3つの要素により構成されるものとして基本的な考え方を整理することが適当。
「自己評価」
  イコール 校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画等に照らして、その達成状況の把握や取組の適切さを検証し、評価を行う。
「学校関係者評価(外部評価)」
  イコール 保護者(PTA役員等)、学校評議員、地域住民、接続する学校の教職員その他の学校関係者などの外部評価者により構成された委員会等が、当該学校の教育活動の観察等を通じて自己評価結果を検証し、評価を行う。
「第三者評価」
  イコール 当該学校に直接かかわりをもたない専門家等が、自己評価及び学校関係者評価(外部評価)結果等を資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的立場から評価を行う。

 児童生徒・保護者等を対象とする「外部アンケート等」については、学校関係者評価(外部評価)ではなく、「自己評価を行う上で、目標等の設定・達成状況の把握や取組の適切さを検証する資料とするため、児童生徒、保護者、地域住民を対象に、アンケートの実施や懇談会の開催により、授業の理解度や学校に関する意見・要望等を把握するために行う。」ものと位置付けることが適当。

 「外部評価」の用語については、狭義・広義で意味合いが異なること、一方でこの用語が広く定着していることにかんがみ、「学校関係者評価」(略して「関係者評価」)、「保護者等による外部評価」、あるいは、自己評価に対するものとして単に「外部評価」とするなど、趣旨に応じて適宜用語を用いることが適当。

  自己評価、外部評価、第三者評価の定義について
 「学校評価ガイドライン」においては、学校評価を「自己評価」「外部評価」「評価結果の説明・公表、設置者への提出及び設置者等による支援や条件整備等の改善」の3つの要素から構成されるものと定義している。

 そのうち自己評価については、「校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画に照らして、自らの取組について評価を行うものである。」と定義している。

 また、外部評価については、「学校の自己評価結果を、学校評議員、PTA役員(保護者)、地域住民等の外部評価者が評価する方法を基本として行うものである。」と定義している。
 あわせて、「設置者は、各学校ごと又は同一地域内の複数の学校ごとに、外部評価者によって構成される委員会等(以下、「外部評価委員会」という。)を設置する。外部評価委員会にかえて、学校評議員や学校運営協議会等の既存の保護者、地域住民等による組織を活用して外部評価を行うことも考えられる。」としている。

 ここに示された考え方は、学校評価を推進する上で今後も重要な理念と考えられることから、引き続きその基本的な考え方に立つことが適当である。しかし、次のような点に留意して更に検討を深めることが必要である。
1  外部評価者の例示として挙げられた者が、学校との関係の中で「外部」と言い切れるのかどうか。むしろ、企業についていわれる「ステークホルダー」(地域社会も含めて学校に利害関係を持つ者)として位置付けて考えることが適当なのではないか。
2  教育再生会議における議論の一つとなるなど、「第三者評価」の在り方が最近になって大きな課題となっているが、これも学校の内部による評価ではないという点で外部評価の一種であるため、従来から用いられてきた「外部評価」の用語が具体的に何を指すのかがわかりにくくなっている。
3  設置者等による支援・改善は、学校評価の活用を図る上で極めて重要な要素であるが、厳密な意味での支援・改善そのものは評価とは異なるのではないか。

 以上を踏まえ、学校評価の実施手法については、次の「自己評価」「学校関係者評価(外部評価)」「第三者評価」の3つの要素により構成されるものとして、改めて基本的な考え方を整理することが適当と考える。
「自己評価」
  イコール 校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画等に照らして、その達成状況の把握や取組の適切さを検証し、評価を行う。
「学校関係者評価(外部評価)」
  イコール 保護者(PTA役員等)、学校評議員、地域住民、接続する学校(小学校に接続する中学校など)の教職員その他の学校関係者などの外部評価者により構成された委員会等が、当該学校の教育活動の観察等を通じて自己評価結果を検証し、評価を行う。
「第三者評価」
  イコール 当該学校に直接かかわりをもたない専門家等が、自己評価及び学校関係者評価(外部評価)結果等を資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的(第三者的)立場から評価を行う。

 このうち、自己評価及び学校関係者評価(外部評価)は、おおむね、学校が主体となって、当該学校の教職員により行う評価(自己評価)であったり、保護者や地域住民、有識者等を招いて行う評価(学校関係者評価(外部評価))である場合が多い。その観点から、両者は学校が主体となって行う、表裏一体の評価として整理できる。それに対して第三者評価は、学校以外の者が主体となる評価と整理でき、基本的に学校評価の3要素はその2類型に大分することができると考える。
 ただし、外部評価として、例えば設置者である市町村教育委員会が中心となって中学校区単位程度で外部評価委員会を構成し、校区内の小・中学校の評価を行う例もみられる。この場合、必ずしも学校に主体性があるとは言い難いが、この場合も構成員に学校の保護者や地域住民などが入ることが通例である。このような類型も、学校関係者評価(外部評価)に第三者評価の要素を加えた発展型と考えられ、必ずしも学校が主体であるかどうかが必要条件とまでなるものではないと考える。

外部アンケート等の定義について
 また、児童生徒、保護者、地域住民を対象とするアンケートの実施や、その意見・要望等を把握するための懇談会の開催についても、「学校評価ガイドライン」の策定までは、従前、「外部評価」として位置付けて実施されてきた例が多い。
 本来の外部評価は、外部評価委員が実地に授業等を観察したり、学校の教職員と双方向の意見交換を行うことなどによって、自己評価結果に示された学校の教育活動等の検証を行い評価を行う機会が確保されることが重要であると考えられる。このことから、外部評価を単なるアンケートの実施や懇談会での意見・要望等の把握にとどめることは好ましくない。

 このことを踏まえ、児童生徒、保護者、地域住民を対象とするアンケートの実施や、その意見・要望等を把握するための懇談会の開催については、学校関係者評価(外部評価)としてではなく、「外部アンケート等」と定義し、「自己評価を行う上で、目標等の設定・達成状況の把握や取組の適切さを検証する資料とするため、児童生徒、保護者、地域住民を対象に、アンケートの実施や懇談会の開催により、授業の理解度や学校に関する意見・要望等を把握するために行う。」ものと位置付けることが適当と考える。

「外部評価」の用語について
 また、従前使われてきた、保護者等による学校の評価を示す「外部評価」の用語については、狭義では保護者・地域住民や有識者等による評価を指すものである一方、広義では学校の教職員などの学校内部の者以外による評価全体を指す用語として使われている。しかし今般、広義の外部評価に含まれる第三者評価の導入の検討が焦眉の急となっている中で、用語の定義を改めて検討することが必要と考える。
 一方で、外部評価という用語は、これまで学校において長く定着して使われてきたことから、安易にその名称を変更することは混乱を招くおそれがある。

 このことを踏まえ、従来用いられてきた狭義の「外部評価」の用語については、例えば、「学校関係者評価」や略して「関係者評価」、または「保護者等による外部評価」、あるいは自己評価に対するものとして単に「外部評価」という用語を用いるなど、文脈等に応じて、その趣旨が理解されるよう適宜用語を用いることが適当と考える。
 なお、本報告書においては、理解のしやすさを考慮して、「学校関係者評価(外部評価)」という用語を基本として用いる。

改善の在り方を含めた学校評価システムの構築について
 学校評価は、その結果に基づき改善策が講じられることに意義があるものであり、その過程においては、当然に、市町村教育委員会等の設置者をはじめとする関係諸機関による学校の支援・改善のための指導・助言や具体的な改善策が極めて重要である。
 しかし同時に、特に評価(Check)としての側面に着目した「学校評価」の定義を構成する3要素である「自己評価」「学校関係者評価(外部評価)」「第三者評価」と、設置者等による「支援・改善」をそのまま同列に並べることは、少し性質が異なるのではないかとの違和感がある。
 このことから、設置者等による支援・改善については、学校評価に関するいわゆるPDCAサイクルのA(Action)に当たる、学校運営の改善を目指す流れの中の欠かせない一部として、「学校評価システム」(後述)の重要な要素として位置付けて、その着実な構築を図ることが適当と考える。

「評価」の在り方について
 学校評価の評価対象としてまず取組むべき重要なものが、日常の授業を始めとする学校の教育活動であることは当然である。同時に、学校の教育活動とマネジメントは一体の関係にあり、適切なマネジメント無くして教育活動の円滑な遂行は期待できないことから、校長を始め管理職等のリーダーシップの在り方や、適切な校務分掌の進め方、また学校運営を進める上で重要な事務・財務等の執行・管理の状況など、学校のすべての教職員を挙げた取組やその状況の把握が重要である。
 このことから、上に述べた定義にもあるように、特に自己評価を行うに当たっては教員や事務職員を始めとする学校の全教職員が参加し、それぞれの立場から目標等の設定や評価にかかわることが当然に望まれるところであり、学校評価の実施にあたっては学校運営全体を見据えた適切な項目設定や、その結果に基づく改善策等が求められる。

 また、学校評価に対してそもそもどのような機能を期待するのかについては、様々な考え方がある。例えば、施設・設備や衛生に関する基準などの諸基準の適合性をチェックする監査的な評価機能を持たせるという考え方もありうる。
 これについては、次の3.にあるように自己評価や外部評価を実際に行う上での能力的・時間的な制約や、あるいは学校評価の目的である教育水準の一層の向上を目指すという視点を踏まえる必要がある。そもそも学校の細かな状況の日常的なチェックや、諸法令等に基づく細かな基準適合性など、学校として当然に満たすべき法令上の諸基準を満たしているかどうかという合規性のチェックについては、本来は日々の学校の校務分掌等を通じた学校運営の中や、教育委員会など設置者等による専門的あるいは日常的なチェックにより担保されるべきであり、学校評価の中では、それらのチェックが適切に行われているかを見ることが適当と考える。
 すなわち、学校評価は、学校の校務分掌等の中で行われている個々の取組が、諸基準に適合しているかどうかのチェックを逐一行うことを中心に据えるよりも、学校がより効率的・効果的な成果を収めて教育水準の向上を図ることができるようにするという観点に立つことが重要と考える。このことから、学校という組織全体のマネジメントを評価するという視点にたって、個々の校務分掌が全体の中で適切に整備され機能しているかどうか等を検証するという側面に重点を置くことが適当と考える。

今後の検討課題について
 児童生徒による評価の位置付けについて、アンケートの客体としての位置付けだけではなく、自己評価や外部評価への主体的な参画、あるいは授業評価などのより積極的な活用などが考えられる。一方で、児童生徒による授業や教職員の評価が、教職員や学校を必要以上に萎縮させ、結果的に学校運営の改善につながらないのではないか、あるいは児童生徒の発達段階により異なるのではないか、等の懸念もある。
 これらを踏まえて、今後更に検討を深めることが必要である。

3. 自己評価の充実と学校関係者評価(外部評価)の着実な導入について

 今後、自己評価・外部評価など学校評価の充実を図るために、以下の観点が重要。
 自己評価、学校関係者評価(外部評価)、第三者評価の3つを一体的に検討することが必要。特に、学校の運営にあたっては、教職員と保護者等相互の理解と連携協力が極めて重要であり、このことから教職員による自己評価と保護者等による学校関係者評価(外部評価)は、有機的・一体的に位置付けることが適当。
 自己評価について、課題の重点化を図り、具体的かつ明確な目標を設定して行うことを基本とすることが望まれる。
 学校関係者評価(外部評価)について、具体的かつ明確に設定された目標等に関する自己評価結果の検証を行うことを基本とすることが適当。
 学校運営の改善を図る上で学校評価が果たす役割の重要性を踏まえ、その総合的な根拠となる規定を法律(学校教育法)に位置付けることが適当。

 中央教育審議会答申においては、学校評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図ることにより、その教育水準の向上に努める旨の学校教育法の改正を行うこととあわせて、自己評価や保護者等による外部評価の一層の推進に留意すべき旨が提言されている。
 この中央教育審議会答申の趣旨や、本協力者会議における議論を踏まえて、学校評価に関する根拠規定を学校教育法に位置付ける際には、自己評価・学校関係者評価(外部評価)の実施・公表の在り方等についても明確化を図ることが重要。

 ただし、その際には、学校評価に関する法律上の規定に関する国民的な議論を踏まえるとともに、自己評価・学校関係者評価(外部評価)に関する趣旨・目的の周知や定着・充実の促進が重要であることから、これらを踏まえて、法令上の具体的な内容の在り方や、学校評価ガイドラインの改訂など、その詳細について検討が必要。

自己評価の課題について
 「1.学校評価の取組の現状と課題について」にあるように、自己評価の実施率は公立学校で既に100パーセント近い。しかし、その実情は、例えば学期末・年度末に開催した教職員による反省会など職員会議等の議事をまとめたものをもって自己評価としたり、また、教職員に対する意識アンケート調査を単に集計したものをもって代えている学校もあることが懸念される。このように、当初から公開することを意識したものではないがゆえに、自己評価結果の公表が十分に進まないのではないか、等も指摘されるところである。

学校関係者評価(外部評価)の課題について
 学校関係者評価(外部評価)については、その評価者の性質上、学校の教育活動について学校の教職員を上回る専門性を評価者の多くに期待することは非常に困難であるし、学校や教職員が日常的に使用している用語や概念についても、必ずしも十分な理解を持っていない。また、保護者等は当然ながら時間的な制約が大きい。

 このことから、学校関係者評価(外部評価)を通じて、改めて学校運営の詳細について一項目ずつその在り方を問うていくなどの網羅的な評価を行ったり、また非常に詳細かつ高度に専門的な内容の自己評価結果を検証することは、その有する専門性の課題や時間的制約から極めて困難であり、適切な評価結果とはならないことが予想される。
 むしろ、保護者等にも理解しやすい内容を中心とした評価を通じて、学校に新たな気づきをもたらすとともに、相互の理解を深めて連携を促し、学校運営の改善に協力してあたることを目指すことが求められているのではないかと考える。

学校評価の流れについて
 以上を踏まえ、学校運営を進めるにあたって、学校評価は、
1  前回の学校評価や、学力・体力調査の結果などに示された学校の現状を踏まえ、具体的かつ明確な教育目標等を設定する。
2  その目標等の達成に向けて、保護者等と連携協力しつつ、教育活動等を行う。
3  学校は、目標等の達成状況の把握や取組の適切さを検証し、自己評価を行い、課題やその改善策等をとりまとめる。
 その際、必要に応じ、児童生徒、保護者、地域住民を対象に、授業の理解度や学校に関する意見・要望等を把握するためのアンケートの実施や懇談会を開催し、自己評価を行う際の重要な資料として活用する。
4  当該学校の教職員以外の学校関係者などの外部評価者により構成された委員会等が、教育活動の観察等を実施し、自己評価結果の検証を行い、評価を実施する。
5  自己評価・学校関係者評価(外部評価)結果に示された課題をもとに、設置者等と連携しつつ、教職員や保護者等の意見・要望等を踏まえながら、改善策等を講じ、保護者等にもわかりやすい具体的かつ明確な教育目標等の見直し・設定を行い、その達成に向けて努力する。
との、自己評価のみならず、学校関係者評価(外部評価)との有機的な連携を図りながらPDCAサイクルを確立する中で行われることが望まれる。
 このような、学校評価を核として見たPDCA(Plan 目標設定− Do 実行− Check 評価− Action 改善)サイクル全体や、それを実施するための体制など、学校評価をとりまく様々な要素を総称して、「学校評価システム」と称する。

学校評価の位置付けについて
 しかし、学校評価についてはそもそも、小学校設置基準等において自己評価の実施と公表の努力義務が規定されているのみであり、外部評価の位置付けや自己評価との関連、また自己評価・外部評価を含む学校評価そのものについての位置付けを定める規定は法令上存在しない。

学校評価の位置付けの明確化と自己評価・外部評価の一体的推進について
 これらを踏まえ、今後、自己評価・外部評価など学校評価の充実を図るためには、次の観点が重要と考える。
1  教職員による自己評価・保護者等による学校関係者評価(外部評価)・専門家等による第三者評価の3つを、相互に関連し補完するものとして一体的に検討することが必要である。
 特に、学校における教職員と保護者等は密接かつ不可分な関係にあり、学校運営にあたっては相互の理解と連携協力が極めて重要である。このことから、教職員による自己評価と、保護者等による学校関係者評価(外部評価)は、学校運営の改善を図る上で不可欠のものとして、有機的・一体的に位置付けるべきである。
2  自己評価については、PDCAサイクルに基づき学校評価を通じた学校運営の改善を図る上で、最も基本かつ重要であることが意識されることが必要である。同時に、自己評価が学校の教職員により実効性ある取組として行われるためには、あまりに網羅的に行うのではなく、課題の重点化を図り、具体的かつ明確な目標を設定して行うことを基本とすることが望まれる。
 しかし、課題を把握するためには、同時に全方位的な点検・評価が重要である。更に、あまりに重点化された課題を指向するのみでは、学校運営全体における力点の置き方に均衡を失することになる可能性もある。このことから、目標の重点化を図る「課題指向型」の学校評価とともに、日々の学校運営の中で、必要に応じて幅広な「全方位型」のチェック等を適宜行うことが大切であり、例えば一定の時期に学校の取組の状況について全方位的なチェックを行うことなどが考えられる。あるいは、第三者評価制度の構築・活用を図り、その機会をとらえて改めて学校運営全般の状況を学校が自ら見直し、評価することなどが考えられる。
3  学校関係者評価(外部評価)については、具体的かつ明確に設定された目標等に関する自己評価をベースとして、その結果の検証を行うことを基本とすることが適当と考える。
4  学校運営の改善に果たす学校評価の重要性を踏まえて、自己評価・学校関係者評価(外部評価)などの具体の学校評価の取組の促進のために、その総合的な根拠となる規定を法律に位置付けるべきである。

 学校評価の在り方については、本協力者会議とは別に、中央教育審議会においても教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について検討する中で、その課題の一つとして議論が進められてきた。
 その議論を踏まえ、平成19年3月に答申がとりまとめられたところであり、そこにおいては、学校評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図ることにより、その教育水準の向上に努める旨の学校教育法の改正を行うことが提言されている。
 あわせて、留意事項として、自己評価や保護者等による外部評価の一層の推進が提言されている。

 この答申の趣旨や、本協力者会議における議論を踏まえて、学校評価に関する総合的な根拠となる規定を学校教育法に位置付ける際には、学校評価の具体的な内容である自己評価・学校関係者評価(外部評価)の実施・公表の在り方等についても、あわせてその内容等について明確化を図っていくことが重要である。

 ただし、その際には、今後予想される国会における学校評価に関する法律上の規定についての議論など、国民的な議論を踏まえることが重要である。さらに、単に形式的に自己評価や学校関係者評価(外部評価)を行えばいいというものではなく、それらの評価を行う目的が周知され、その趣旨に則って定着し、充実したものとなるよう促すことが重要である。これらを踏まえて、法令上の具体的な内容の在り方や、学校評価ガイドラインの改訂など、その詳細について更に検討することが必要である。

今後の検討課題について
 学校関係者評価(外部評価)を行うにあたり、学校評議員の果たすべき役割について、評価の実施・公表におけるかかわりの在り方や、学校評議員と学校との連携をより促進し「学校応援団」としての機能を強化するための在り方など、様々な側面から今後更に検討を深めることが必要である。

4. 評価に基づく支援・改善など関係機関の役割の在り方について

 学校評価結果に基づく設置者等による学校への支援・改善が重要であり、そのため、評価結果を報告書にとりまとめた上で、設置者等への報告を促すことが適当。

 設置者等は、評価結果の報告を受けて、それを学校運営の改善に活用するとともに、自らのこれまでの学校の設置管理等に対する評価と受け止め、その改善を目指すことが必要。

 教育委員会等が、学校の管理職や一般の教職員を対象として、それぞれに期待される役割を踏まえた研修や、指導主事等を対象とした研修等を充実することが必要。

 学校評価システムの充実を考える上で、学校経営に関する専門性を有する教職員の育成が重要であり、学校評価や学校全体のマネジメントの在り方などに関して、大学のカリキュラム等の中で一層取組が進むことが期待される。

評価結果に基づく設置者等による支援・改善などの機能の充実について
 学校評価の結果は、単に学校の教職員の取組に関する評価に留まるものではなく、その学校を設置し、あるいは人事権を有する教育委員会等の取組についての評価でもある。

 このことを踏まえ、学校評価は、その結果を踏まえて学校運営の改善につながってこそ意味があることから、評価結果に基づき学校が改善に取組むことはもちろん、例えば公立小・中学校については設置者である市町村教育委員会を中心に、設置者等による学校評価結果に基づく学校への支援・改善機能の重要性を強調することが必要である。
 そのための前提として、まず、学校の自己評価及び学校関係者評価(外部評価)について、特に自己評価を単なる反省会に終わらせることなく、それらの結果を報告書にとりまとめた上で、学校から設置者等に報告するよう促すことが適当である。

【参考】
公立学校の学校評価結果の設置者への提出状況(平成17年度間)
  提出率
 自己評価結果 36.1パーセント
 外部評価結果 33.3パーセント

 市町村教育委員会などの学校の設置者は、学校から報告を受けた当該学校の自己評価などの評価結果について、その内容をよく把握・検証した上で、それを活用して学校に対する指導や支援・改善に努めることが重要である。さらに、その評価結果はまさに設置者自身による学校の設置管理状況を反映するものであることを深く自覚し、自らの取組を振り返ることが重要である。
 すなわち、設置者は、学校評価結果について、学校運営の改善のための基礎資料とするとともに、自らのこれまでの設置管理の取組に対する評価と受け止め、その改善を目指すことが必要である。

 また、実際に設置者が支援・改善策を講じる際には、自らの判断において改善策を講じることだけではなく、学校が自律的に改善に向けて取組むことを支援するための施策を講じることが求められる。例えば、学校が評価結果等を踏まえた改善策を講じるために、事業等の提案を設置者に対して行い、設置者はそれを踏まえて予算編成・配分を行うことが考えられる。また、学校裁量予算の導入や、その裁量の余地を更に拡大するなど、学校の裁量を高め改善策を講じやすくする施策なども期待される。
 さらに、設置者としての判断により、あるいは学校の求めに応じて、単に教科単位での指導に留まらず、学校全体のマネジメントの在り方に関する指導主事等による指導・助言の機会を充実することも考えられる。
 このように、学校が自らの裁量と責任において学校運営の改善に取組むよう、その動機づけを設置者が提供することが、学校評価を通じた実効性ある改善を図る上で重要と考える。

 同時に、設置者である市町村教育委員会等においては、学校評価、とりわけ教職員による自己評価が、学校内部での取組であるがゆえに、どうしても他校との比較の中でその在り方を見直したり、その手法等について新たな知見を得にくいことに留意する必要がある。特に、アンケート調査のみに偏った評価を行っている場合、その内容が主観的・恣意的になる傾向が強いとの指摘もある。
 学校評価やそれに基づく改善は、いわば馴れ合いにならず、他との比較においてより良い方策等を見いだすことができるようになることが望まれる。しかし他校との比較は、学校単位での取組では困難な面がある。そのために教育委員会等として工夫する必要があり、例えば、各学校が行う学校評価のうち一定部分については共通項目を設定するなどにより、地域内の各学校が学校評価の基本的な部分について相互に比較検討できるようにすることなども考えられる。

 このことを踏まえ、教育委員会等として、学校から報告された評価結果について適切に把握・検証し、必要な支援・改善策を講じるとともに、学校評価システムの具体的な進め方について教育委員会規則等により定めたり、学校間での情報交換の機会を設けるなど、学校評価を通じた学校運営の改善が実効性あるものとなるよう促すためにリーダーシップを発揮することが期待される。
 あわせて、教育委員会等が自らの取組を振り返り、その改善を図ることも重要である。

 また、設置者に限らず、例えば公立小・中学校についていえば、人事権者である都道府県教育委員会による支援・改善のための努力が重要である。更に、外部機関による改善支援を活用することなども考えられ、今後、学校評価の結果を踏まえた支援・改善において、関係諸機関が果たすべき役割や内容について、更に検討を深めることが必要である。

教育委員会による研修等の充実について
 また、各学校における学校評価について、その質を向上させるために、校長・教頭などの管理職や教務主任等、さらに一般の教員や事務職員等を対象として、PDCAサイクルを基礎とした目標管理や学校のマネジメントの在り方、評価手法など、それぞれに期待される役割分担を踏まえて重点化を図った研修の充実が必要である。また、各学校への学校全体のマネジメントも含めた指導の充実を図る上で、指導主事が果たす役割への期待は非常に大きく、このため、その資質を高めるための研修等が重要であり、教育委員会など関係諸機関において充実することが必要である。
 あわせて、学校関係者評価(外部評価)の評価者を中心とした保護者や地域住民等を対象に、学校評価に関する情報の提供や研修の機会を充実することも望まれる。

 また、国においても、既存の研修制度・講習会や研修機関の活用等により、指導主事を中心とした教育委員会職員や、学校の教職員を対象として、学校評価の意義・目的や在り方等に関する研修、意識啓発のためのパンフレットの作成・配付などに取組むことを期待したい。

学校経営等に関する大学のカリキュラム等の充実について
 また、学校評価は、本来、学校経営システム全体の中の一つに位置付けられるものであり、学校評価システムの充実を考える上で、学校経営に関する専門性を持った教職員の育成が非常に重要となる。このため、現職教員の再教育に大きな役割を果たす大学(特に大学院レベル)における学校経営に関する教育の充実が求められるところである。
 例えば、学校評価の取組の好事例・失敗事例も含めた事例分析や、学年・学級経営にとどまらず学校全体のマネジメントの在り方などについて、このたび制度が創設された教職大学院をはじめ、教育学・教員養成に関する高等教育レベルにおけるカリキュラム等の中で一層取組が進むことが期待される。

国と教育委員会の役割分担について
 公立の義務教育諸学校においては、設置者あるいは人事権者である教育委員会が、評価のための委員会を構成するなどにより、学校の評価等が行われている例があり、また多くの教育委員会においては学校への指導主事訪問による教科等の指導が行われている。
 これらと外部評価、特に平成18年度において文部科学省が実施した第三者評価の試行との関係の在り方については、更に検討を深める必要があるが、おおむね次のような考え方に立つことが望ましいのではないかと考える。
1  国による第三者評価の試行は、限られた人員と時間的制約の中で、学校の課題点や良さを見いだし報告することに力点を置くべきである。そこに示された課題等について、実地に時間をかけて具体的な支援・改善に取り組むのは、本来的に当該学校の設置者や人事権者が指導主事訪問等を通じて果たすべき役割ではないか。
 なお、第三者評価が本格的に実施される際の改善のためのシステムの在り方については、別途検討を要すると考える。
2  設置者自身が実施する学校の評価は、設置者が行っている学校の設置管理行政の改善のために行うものであり、設置者の自己評価の一環あるいは政策評価として考えるべきではないか。
3  設置者ではない人事権者(例えば、公立義務教育諸学校における都道府県教育委員会)が行う学校の評価は、ある面において人事権者の自己評価の一環あるいは政策評価であり、ある面においては第三者的な評価としての側面を有している。これについては、その実施形態や意図により位置付けが決められるべきではないか。
 なお、第三者評価において、だれが主体となるべきか、国、都道府県、市町村がそれぞれどのような役割を果たすべきかについては、別途第三者評価に関する検討の中で引き続き議論が必要である。

5. 学校の情報の公開の促進について

 保護者や地域住民は学校運営の能動的・主体的な存在であるとの認識に立ち、保護者等が学校の諸活動について理解し、的確に参画でき、学校との連携協力が深まるように、保護者等の視点から学校の情報を広く、十分に公開することが適当。
 学校評価とあわせて、情報の公開の重要性を踏まえた規定の位置付けを行うことが適当。

情報公開の促進について
 学校の情報の公開については、平成14年より、小学校設置基準(中学校、高等学校、幼稚園についても、それぞれの設置基準において同様の規定がある。)において、自己評価についてその結果を公表する努力義務と、学校運営の状況について保護者等に対し積極的に情報を提供する義務が規定されている。

【参考】
公立学校の情報提供の実施方法(平成17年度間)
  実施率
学校便りを配付 86.4パーセント
学校評議員・学校運営協議会に説明 63.2パーセント
保護者を対象に説明会を実施 54.0パーセント
ホームページに掲載 45.9パーセント
学校要覧の配付 27.4パーセント
地域の広報誌に掲載 11.2パーセント
地域住民や関係機関等を対象に対象に説明会を実施 10.1パーセント
その他 7.0パーセント

 しかし、「1.学校評価の取組の現状と課題について」に示されているように、例えば学校が行っている自己評価結果について、多くの保護者はよく知らない状況にある。
 一方で、学校としての自己評価結果の公表の努力は着実に進められているところである。この両者の認識の乖離は、一つには学校が自己評価結果を公表する際に、「自己評価」というタイトルではなく、例えば「保護者アンケート結果」や「学校活動の振り返り」などのタイトルを付けて提供しているために、保護者等がそれを「自己評価」として認識していない可能性も考えられる。

 しかしながら、同時に、自己評価・学校関係者評価(外部評価)への保護者のかかわりの少なさなど学校評価に関する保護者の理解や周知に向けた努力の不足や、そもそも学校に関する様々な情報が、保護者等に十分にわかりやすい内容で、かつ適切な分量が提供されていない状況にあることをうかがわせる。

 そもそも保護者や地域住民は、学校から見て単なる受動的・客体的な立場ではなく、児童生徒を通じて、あるいは同じ地域の一員として、学校の諸活動と日々関わり、参画している能動的・主体的な存在である。しかし、その参画の一つの形である学校関係者評価(外部評価)の実施や、あるいは保護者・児童生徒等を対象とした教育活動など学校運営に関するアンケートに回答する場合を考えると、現状では学校に関する十分な情報がないため、評価を行うことが難しいとの声が聞かれるところである。

 このことから、自己評価結果はもとより、学校に関する基礎的情報を含む多くの情報がわかりやすく示され、その学校がどのような学校であり、どのような状況にあるのかなど、学校全体の状況が把握できるような情報が提供されていることが、保護者等が的確な評価を行うなどの学校の諸活動に参画していく上で重要である。

 あわせて、学校の立場から見たときに、学校の情報の公開は、自らの良さや努力を外に向かってアピールし、あるいは抱えている課題を率直に示して保護者や地域住民の理解や支援を得ることができる絶好の機会となるものである。

 以上を踏まえ、今後、学校の情報の公開を促進するために、
1  学校評価及び情報の公開の重要性と、相互の密接な関連性を踏まえて、学校評価に関する総合的な根拠となる規定を法令上位置付ける際には、それと一体的に、情報の公開の重要性を踏まえた規定の位置付けを行う。
2  その際には、自己評価及び外部評価の結果について、特に保護者等の立場から見てわかりやすい内容や、適切な分量の公表を進めることが必要であり、その在り方について法令上の取扱も含めた位置付けの明確化を図る。
3  情報の公開の対象は、当該情報の内容等に鑑みつつも、学校評議員等だけではなく広く一般の保護者や地域住民等を対象とすべきであり、その観点から学校便り等の活用や、ホームページに掲載するなどによる公表を進める。
 なお、情報提供先として想定している対象に合わせて、その内容や方法について工夫することが必要である。
4  例えば、学校の連絡先など学校をとりまく様々な情報をまとめた冊子を作成するなど、保護者や地域住民の視点に立って必要と思われるような情報を、その提供により保護者や地域との連携協力が一層図られるよう、十分な公表を進める。
ことが必要と考える。
 また、情報の公開に当たっては、情報を適切に収集・分析・保管し、また提供するための体制づくりが重要である。そのため、教員や事務職員などによる適切な役割分担・連携協力など責任体制の明確化を図ることにより、円滑かつ適切な情報の管理・公表が行われるよう十分に配慮する必要がある。
 なお、情報の公開に当たっては、個人情報の保護や、公開に適するか内容かどうかなどに十分に配慮し適切に取り扱うことが重要である。

6. 第三者評価の在り方に関する今後の検討課題について

 第三者評価は、学校の自己評価・外部評価を補い、学校運営の質を高めるために行う専門的・客観的な評価として位置付けることが適当。

 第三者評価の在り方については、その主体、評価手法、評価者の資質、改善策の在り方等について、以下のような今後検討すべき課題を整理。
 実施主体となる評価機関の独立性の担保、国と教育委員会の役割分担の在り方
 学力調査の結果等の活用や諸基準の適合性の検証の在り方など、定量的、定性的な評価手法の在り方
 定性的評価を行う場合の評価者の質の担保や、独立性を有する専門的な評価者の確保など、評価者の資質の在り方
 だれが改善策を提供すべきか、だれが改善の責任を負うのかなど、評価結果を踏まえた改善策の在り方

 第三者評価の在り方については、教育再生会議における議論や、平成18年度における第三者評価の試行事業の状況を踏まえながら、引き続き更に検討を深めることが必要。

第三者評価の意義について
 第三者評価の在り方については、平成18年9月より平成19年1月にかけて、文部科学省において全国124校の小・中学校を対象として試行事業を実施したところである。今後の議論の参考とするため、本協力者会議の委員も多数、この試行事業に評価者の一員として参加したところである。
 この試行事業により得られた成果については、文部科学省において別途報告書をとりまとめることとしているところであるが、本協力者会議の参加した委員が実地に体験して得た第三者評価の今後の在り方に関する印象として、例えば以下のものがある。
 学校運営の改善に活かすためには、評価について学校の納得性を高めることが重要であり、その点で評価者の資質や客観性を高める評価指標が重要。
 学校の抱える課題については、教育委員会や校長も概ね把握しているが、手をこまぬいている場合も多く、このままではいけないという発想を持っていない。その点で、第三者評価を行う意義がある。
 どうしても授業を中心とした評価となり、予算や施設維持などを含めた学校のマネジメントに関する部分が手薄になった。
 保護者等による外部評価との切り分けが課題。住民参加を達成するためには学校関係者評価で可能であることから、第三者評価は専門性を打ち出すべき。

 これらを踏まえ、第三者評価については、自己評価や保護者等による学校関係者評価(外部評価)では不足する部分を補うものとして位置付け、学校運営の質を高めることを目的として学校の取組やその成果を検証し、評価を行うことが適当と考える。

 すなわち、基本的に学校が主体となって行う評価である自己評価・学校関係者評価(外部評価)に対し、第三者評価は、
1  保護者等による評価では、学習指導や学校のマネジメント等について教職員を上回る識見は期待しにくいことから、専門性を有する有識者等による「専門的」な評価
2  学校と直接の関係を有しない者により、必要以上に学校・地域の事情やしがらみにとらわれず、学校に新たな気づきをもたらすような「客観的(第三者的)」な評価
として、学校以外の主体が評価機関となって行う専門的・客観的な評価と位置付けることが適当と考える。

第三者評価の在り方について
 具体的に第三者評価において、何をどのように評価すべきかについては、
1  教育活動を実施する上での様々な基準を満たしているかどうかを検査するチェックリスト型監査、
2  各学校が教育目標その他の教育上達成すべき目標の設定・達成に向けて適切に取り組んでいるかどうかの検証、
3  自己評価・学校関係者評価(外部評価)が実施されていることを前提として、それらが適切に実施され、その評価結果が学校運営の改善に適切に結びつけられているかどうかや、学校に関する情報が保護者等に適切に提供されているかどうかなどを含む、学校運営全般の在り方に関する評価、
を行うことが考えられる。

 このことについて、
  1の広範にわたる諸基準(例えば、施設・設備や衛生に関する基準、など)の適合性などの合規性について逐一検証することは、人員・日程的にも不可能であるし、そもそもこれらについては、本来、学校の日常的な取組や、設置者の各担当部局等において適宜検証すべきものと考える。
 このため、現実的には、1について基準適合のための学校や教育委員会の体制等が妥当かどうかを検証する監査的な要素(インスペクション)も盛り込みつつ、23の各学校の目標の設定・達成に向けた取組状況など学校運営全般の在り方について評価し、その結果を踏まえて、今後の学校運営の改善につなげるための課題点等を提示することを基本とすべきものと考える。

 このことを通じて、
1  全国的に波及させることが望ましい優れた取組を広く紹介し、
2  課題の多い学校については、人事権者や設置者による改善支援を促す、
などの役割を果たすことが期待される。

 実際に評価するにあたっては、
1  定量的評価がどこまで可能か、あるいは、どこまで重視すべきか。
 少なくとも、学力調査の結果や学校の現状で単純にランク付けを行うことは適当ではない。しかし、置かれた条件が異なる学校を、どのようなものさしで図るのか。
2  定性的評価による場合、評価者の経験・知見などの質に左右されることとなるのではないか。
3  学校側が外部にアピールしたい特色や、専門家による評価を求めている部分を適切に把握し、評価することが、その学校の取組水準を測る上でも重要ではないか。
4  第三者評価を行う際に、改善のための方策も提示すべきかどうか。
5  評価結果について、設置者等との間に考え方の乖離がある場合に、だれがどのようにして調整すべきか。
6  評価結果を設置者等が受け止め、指導主事等が実際の学校の指導にあたるという流れが円滑に流れるようにするためには、どのようなシステム構築や関係者の研修等が必要か。
などの課題について検討することが必要である。

 また、第三者評価の評価機関等となる実施主体についても、そもそもだれが実施するのが適当かどうかの検討が必要であるが、その際、
1  評価の主体となる者が、もともと学校に対して有する権限等との関係で、公正中立な評価が可能かどうか。
2  評価の信頼性・客観性を担保するため、高い独立性を保つ仕組みが必要ではないか。
3  国・都道府県・市町村は、それぞれ第三者評価のシステム全体においてどのような位置付けとすべきか。特に、教育委員会が実施している評価や指導主事訪問等との関係をどう整理すべきか。
4  システムの構築・維持に要する膨大なコストをだれが負担するのか。特に、上記3と関連した役割分担なども考慮すべきかどうか。
5  だれが最終的に学校運営の改善に責任をもつのか。
等を勘案し、大学や研究機関の活用の在り方も含めて教育行政制度全体を見通した慎重な設計が求められる。

 第三者評価の在り方については、平成18年9月より平成19年1月にかけて、国において試行事業を全国124校を対象に実施したところである。また、教育再生会議においても議論が行われているところである。これらの状況を踏まえながら、学校の第三者評価が日本の風土になじみつつ活きる在り方について、引き続き更に検討を深めることが必要である。

7. 私立学校、高等学校等における学校評価の在り方について

 私立学校や高等学校等においても、学校評価の導入は意義があると考えられるが、例えば私立学校にはそれぞれの建学の精神など、学校種等に応じて特性等があることから、その具体の在り方については更に検討を深めることが適当。

私立学校、高等学校等における学校評価の意義について
 学校評価の必要性については、公立の義務教育諸学校に限らず、私立学校や高等学校などの選択的に進学する学校など、その設置主体や学校種を問わず、
1  学校評価を通じて行われる授業を始め学校運営の課題の指摘と改善は、選択的に進学する学校の場合であっても、そのメリットを学校の教職員や児童生徒が享受できる。
2  学校評価結果の公表や、外部評価の導入によって、学校や教職員にとって外部からの意見を取り入れる良い機会になるとともに、保護者等にとっても、選択的に学校に進学するための検討を行う上で重要な資料となりうる。

 このことから、学校種等を問わず、学校評価は導入する意義があると考えられるが、例えば私立学校にはそれぞれの建学の精神など、学校種等によってそれぞれの実情や特性があり、必ずしも全てを同様に取り扱わなければならない必要性はないと考えられる。
 今後、それぞれの学校種等に応じて、具体の在り方について更に検討を深めることが適当である。

8. 学校評価と教員評価との関連について

 学校評価は、例えば授業観察を通じた評価など、教員評価と手法や内容において共通した面があり、学校全体としての授業研究や、個々の教職員の取組の改善などに可能な範囲で適切に活用することが期待される。
 しかし、学校評価と教員評価はそもそも目的が異なることから、学校評価と教職員の人事評価(勤務評定)は切り分けて整理することが適当。

授業評価など学校評価と教員評価との関連についての提言
 平成17年12月の内閣府規制改革・民間開放推進会議の第2次答申を踏まえ、閣議決定された平成18年3月の「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」においては、
「授業や学級経営、生徒指導等を含む、学校教育活動に関する児童生徒・保護者による評価をその匿名性の担保に配慮しつつ、学校評価の一環として実施し、その評価結果を適切に取りまとめ、個人情報に配慮した上でホームページ等で公表するよう促す。校長は児童生徒・保護者による具体の評価結果を教育委員会に報告し、教員評価や教員研修を行っている市町村や都道府県の教育委員会が学校教育の改善のため、適切に活用できるよう促すべきである。」
とされている。

 平成18年3月策定の「学校評価ガイドライン」においては、
「○ 一般に、教員評価では、各学校の目標等をもとに、教員一人一人が目標設定を行い、その目標の達成度を評価する目標管理型の評価制度を目指すものが多い。各学校の目標設定を出発点とする点で、このような教員評価は学校評価と共通している。
○ しかしながら、教員評価が適切な人事管理や個々の教員の職能の開発を目的とし、その結果は公表になじまないものであるのに対し、学校評価では、組織的活動としての学校運営の改善を目的とし、その結果を公表し、説明責任を果たすこととしているため、両者は、その目的が大きく異なる。」
とされている。

学校評価と教員評価との関連の在り方について
 そもそも「教員評価」の用語は多義的であるが、例えば、
1  地方公務員法等に基づき法律上の義務として行われる教員の勤務評定であって、その評定の結果に基づき人事・給与等の処遇が行われるような教員評価、
2  授業観察を通じて教員がわかりやすい授業に取り組んでいるかどうかや、割り当てられた校務分掌を適切に処理しているかなどの教員の取組を検証することにより、教員が抱える課題の発見や今後の改善につなげるための教員評価、
など、様々な類型があり得る。

 学校評価は、学校という機関の、組織としての教育活動やマネジメントの状況を評価して、教職員の気づきを喚起し学校運営の改善を促すために行うものである。その一環として、授業の理解度等について児童生徒等の状況を把握し、その結果を踏まえ、学校全体として授業法に関する研修等の取組や適切な校務分掌等を促すなど、評価結果を適切に活用することが期待される。更に、場合によっては特定された個々の教職員の取組の改善を促すこともありうるものと考える。
 同時に、この点において、学校評価と教員評価はその手法や内容において共通する面を有している。

 しかし一方、勤務評定としての教員評価は、個々の教職員について多面的な評価を行い、その結果を日ごろの服務監督や人事権者による人事・給与などの処遇に反映することを目的としており、学校の組織としての状況の把握や改善を目指すものではない。

 このことから、例えば、学校評価の一環として行われた外部アンケート等の結果について、前に述べた学校における取組のみならず、学校から報告を受けた教育委員会が、教育実践に顕著な成果を挙げている優秀な教職員を見いだしたり、いわゆる指導力不足教員など大きな問題のある教職員について適切な措置をとる際などに、可能な範囲で活用することが考えられる。しかし、学校評価と教員評価はそもそも目的が異なっていることから、教職員の勤務評定として用いることを前提にその一人一人に至るまで保護者・児童生徒による厳密な授業評価を行うことは、それは教職員の人事評価(勤務評定)として行うものと切り分けて整理することが適当である。

おわりに−学校評価の目的の達成のために−

 これまで、今後の学校評価の着実な定着と一層の充実を図るための、学校評価の推進方策やそのための課題について検討を行ってきた。

 推進を図る上で何よりも大切なことは、学校評価が学校運営の改善と発展を目的とするものであるとの認識に立ち、その本来の目的を達成するために、学校評価を行うことが学校にとって最終的にメリットがあるものとなるようなシステムの構築を図ることである。そのためには、単なる評価のための評価にならないよう十分に留意する必要があるとともに、特に次に示す観点に十分に配慮しながら、今後、学校評価システムの構築を図ることが必要と考える。
1  学校評価の結果が、学校や教育委員会等の関係諸機関による改善につながるような評価内容やシステムであること。
2  学校評価のための事務等が、得られるメリットに比べて膨大になり、教育活動等に支障を来すものとならないようにすること。
3  自己評価結果の公表と、自己評価結果を踏まえた学校関係者評価(外部評価)の実施や、学校に関する情報の積極的な公開は、学校と保護者・地域を結ぶ重要なコミュニケーションツールであり、学校にとって保護者や地域住民からの理解や支援を得る貴重な機会であることが意識されること。
4  学校評価が、学校や一人一人の教職員のやる気を高め、より良い教育活動を実践していこうとする意欲につながるものになること。
5  学校が活用できる人材や予算、時間などには自ずから限界がある。教育活動を始めとする学校運営においては、限られた予算等の適切かつ効率的な活用を図る視点から、メリハリを付けて学校運営の改善を図ることが重要であり、学校評価を行う上でもそのような視点が意識されることが望まれること。

 また、真に学校運営の改善を目指すためには、これまでの実践や成功体験を改めて振り返り、そこに潜む課題や達成感に気づくことが重要である。
 その際、評価を行う者は、常に、評価される側の良さやこれまでの努力をしっかりと見て、中立・公正に評価する心構えと資質が重要である。
 そして、評価を受ける者は、たとえ耳に痛い内容や、あるいは自らの思いに反するものであったとしても、それを厳粛に受け止めて検討し、できる限り今後の改善につなげていくだけの意欲と度量を持つことが必要である。
 学校評価をめぐる両者が、ともに自らのなすべきことを自覚し、そして謙虚であることが、学校評価を真に意味のあるものとする上で極めて重要と考える。


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