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資料2

これまでの議論のまとめ(素案)

平成19年2月27日

1. 学校評価の実施状況と課題について

 自己評価・外部評価の実施・公表の状況については、ほぼ全ての公立学校において自己評価が実施されているなど、年々着実に取組が進められている。

 しかし、自己評価の公表や外部評価の実施、自己評価に対する保護者の理解は進んでいない状況がある。今後、真に実効性のある学校評価システムの構築に向けたさらなる取組が求められる。

自己評価・外部評価の実施・公表状況について
 学校評価については、平成14年度より、小学校設置基準(中学校、高等学校、幼稚園についても、それぞれの設置基準において同様の規定がある。)において、学校の自己点検・評価(自己評価)とその結果の公表が努力義務とされている。

 平成16年度間における学校評価の実施状況をみると、自己評価はほとんどの公立学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲・聾・養護学校)において実施されているが、一方でその公表率は、着実にあがってきてはいるものの、まだ約4割である。

 外部評価については、同じく公立学校の約8割で実施され、そのうち約8割が公表している。

公立学校の学校評価の実施状況(平成16年度間)
  実施率 結果公表率
教職員による「自己評価」 96.5パーセント 42.8パーセント
保護者等による「外部評価・外部アンケート等」 78.4パーセント 82.9パーセント

自己評価の保護者への周知状況について
 しかし、上記に示された学校の自己評価や保護者等による外部評価の実施・公表の状況にもかかわらず、保護者等を対象とした各種のアンケート調査結果からは、8割程度の保護者が学校の自己評価について知らない状況が示されている。

社団法人日本PTA全国協議会「学校と家庭の教育に関する意識調査報告書」(平成18年3月)
  あなたのお子さんが通う学校では、自己評価結果が公表されましたか。
 わからない … 76.3パーセント

財団法人経済広報センター 「義務教育に関するアンケート結果報告書」(2006年10月)
  学校の自己評価が義務化(注)されていますが、このような自己評価の結果をみたことがありますか。
 見たことも聞いたこともない … 80パーセント
(注) なお、小学校設置基準等上は「努力義務」である。

内閣府 「学校制度に関する保護者アンケート」(平成18年11月24日)
  あなたのお子様が通学している学校の自己評価についてどのように認識されていますか。
 学校が自己評価を実施しているかどうかについては全く知らない … 72.0パーセント

学校評価の充実に向けた検討の観点について
 以上の現状を踏まえ、今後、学校評価の着実な定着と推進を図り、真に実効性のある学校評価システムの構築を図るためには、次に示す観点に留意して、さらなる取組が必要と考えられる。
1  学校評価の用語の定義や相互の関連性を整理し、わかりやすく、明確にすること。
2  自己評価の充実を図るとともに、外部評価との有機的な連携を図ること。
3  評価結果を踏まえた支援・改善など、関係諸機関の在り方を明らかにすること。
4  学校の情報の公開の一層の促進を図ること。
5  第三者評価の在り方についてさらに検討を深めること。
6  私立学校、高等学校等における学校評価の在り方について検討を深めること。
7  学校評価と教員評価の関係の在り方について整理すること。

 以下、上記の観点について検討し、その結論の要旨を冒頭のしかく囲みの中に示すとともに、その下に結論に至った理由について説明する。

2. 学校評価の用語の定義について

  学校評価は、以下により行うことを基本とすることが適当。
「自己評価」
校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画等に照らして、その達成状況の把握や取組の適切さを検証し、評価を行う。
「外部評価(学校関係者評価)」
当該学校の自己評価結果を、保護者(PTA役員等)、学校評議員、地域住民等の外部評価者により構成された委員会等が、当該学校の教育活動の観察等を通じて自己評価結果を検証し、評価を行う。
「第三者評価」
当該学校に直接関わりをもたない専門家等が、自己評価及び外部評価(学校関係者評価)結果等を資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的立場から評価を行う。

 児童生徒・保護者等を対象とする「外部アンケート等」については、外部評価(学校関係者評価)ではなく、「自己評価を行う上で、目標の設定・達成状況の把握や取組の適切さを検証する資料とするため、児童生徒、保護者、地域住民を対象に、アンケートの実施や懇談会の開催により、授業の理解度や学校に関する意見・要望等を把握するために行う。」ものと位置付けることが適当。

 「外部評価」の用語については、狭義・広義で意味合いが異なること、一方でこの用語が広く定着していることにかんがみ、「学校関係者評価」(略して「関係者評価」)、「保護者等による外部評価」、あるいは、自己評価に対するものとして単に「外部評価」とするなど、趣旨に応じて適宜用語を用いることが適当。

自己評価、外部評価、第三者評価の定義について
 「学校評価ガイドライン」においては、学校評価を「自己評価」「外部評価」「評価結果の説明・公表、設置者への提出及び設置者等による支援や条件整備等の改善」の3つの要素から構成されるものと定義している。

 そのうち自己評価については、「校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画に照らして、自らの取組について評価を行うものである。」と定義している。

 また、外部評価については、「学校の自己評価結果を、学校評議員、PTA役員(保護者)、地域住民等の外部評価者が評価する方法を基本として行うものである。」と定義している。
 あわせて、「設置者は、各学校ごと又は同一地域内の複数の学校ごとに、外部評価者によって構成される委員会等(以下、「外部評価委員会」という。)を設置する。外部評価委員会にかえて、学校評議員や学校運営協議会等の既存の保護者、地域住民等による組織を活用して外部評価を行うことも考えられる。」としている。

 ここに示された考え方は、学校評価を推進する上で今後も重要な理念と考えられることから、引き続きその基本的な考え方に立つことが適当である。しかし、次のような点に留意してさらに検討を深める必要がある。
1  外部評価者の例示として挙げられた者が、学校との関係の中で「外部」と言い切れるのかどうか。むしろ、企業についていわれる「ステークホルダー」(地域社会も含めて学校に利害関係を持つ者)として位置付けて考えることが適当なのではないか。
2  第三者評価も、学校の内部による評価ではないという点で外部評価の一種であるため、「外部評価」が具体的にどの範囲までを指すのかがわかりにくくなっている。
3  設置者等による支援・改善は、学校評価の活用を図る上で極めて重要な要素であるが、厳密な意味での支援・改善そのものは評価とは異なるので、この際、あらためて概念を整理する必要があるのではないか。

 以上を踏まえ、学校評価については、「自己評価」「外部評価」「第三者評価」の3要素で構成し、それぞれ以下により行うことを基本とすることが適当と考えられる。
「自己評価」
校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画等に照らして、その達成状況の把握や取組の適切さを検証し、評価を行う。
「外部評価(学校関係者評価)」
当該学校の自己評価結果を、保護者(PTA役員等)、学校評議員、地域住民等の外部評価者により構成された委員会等が、当該学校の教育活動の観察等を通じて自己評価結果を検証し、評価を行う。
「第三者評価」
当該学校に直接関わりをもたない専門家等が、自己評価及び外部評価(学校関係者評価)結果等を資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的(第三者的)立場から評価を行う。

 このうち、自己評価及び外部評価(学校関係者評価)は、おおむね、学校が主体となって、当該学校の教職員により行う評価(自己評価)であったり、保護者や地域住民、有識者等を招いて行う評価(外部評価)である場合が多い。その観点から、両者は学校が主体となって行う、表裏一体の評価として整理できる。それに対して第三者評価は、学校以外の者が主体となる評価と整理でき、基本的に学校評価の3要素はその2類型に大分することができると考えられる。
 ただし現在、外部評価として、例えば設置者である市町村教育委員会が中心となって中学校区単位程度で外部評価委員会を構成し、校区内の小・中学校の評価を行う例もみられる。この場合、必ずしも学校に主体性があるとは言い難いが、この場合も構成員に学校の保護者や地域住民などが入ることが通例である。このような類型も、外部評価(学校関係者評価)に第三者評価の要素を加えた発展型と考えられ、必ずしも学校が主体であるかどうかが必要条件とまでなるものではないと考えられる。

外部アンケート等の定義について
 また、児童生徒、保護者、地域住民を対象とするアンケートの実施や、その意見・要望等を把握するための懇談会の開催についても、「学校評価ガイドライン」の策定までは、従前、「外部評価」として位置付けて実施されてきた例が多い。
 本来の外部評価は、外部評価委員が実地に授業等を観察したり、学校の教職員と双方向の意見交換を行うことなどによって、自己評価結果に示された学校の教育活動等の検証を行い評価を行う機会が確保されることが重要であると考えられる。このことから、外部評価を単なるアンケートの実施や懇談会での意見・要望等の把握にとどめることは好ましくない。

 このことから、児童生徒、保護者、地域住民を対象とするアンケートの実施や、その意見・要望等を把握するための懇談会の開催については、外部評価(学校関係者評価)としてではなく、「外部アンケート等」と定義し、「自己評価を行う上で、目標の設定・達成状況の把握や取組の適切さを検証する資料とするため、児童生徒、保護者、地域住民を対象に、アンケートの実施や懇談会の開催により、授業の理解度や学校に関する意見・要望等を把握するために行う。」ものと位置付けることが適当と考えられる。

「外部評価」の用語について
 また、従前使われてきた、保護者等による学校の評価を示す「外部評価」の用語については、狭義では保護者・地域住民や有識者等による評価を指すものである一方、広義では学校の教職員などの学校内部の者以外による評価全体を指す用語として使われている。しかし今般、広義の外部評価に含まれる第三者評価の導入の検討が焦眉の急となっている中で、用語の定義を改めて検討する必要があると考えられる。
 一方で、外部評価という用語は、これまで学校において長く定着して使われてきたことから、安易にその名称を変更することは混乱を招くおそれがある。

 このことを踏まえ、従来用いられてきた狭義の「外部評価」の用語については、例えば、「学校関係者評価」や略して「関係者評価」、または「保護者等による外部評価」、あるいは自己評価に対するものとして単に「外部評価」という用語を用いるなど、文脈等に応じて、その趣旨が理解されるよう適宜用語を用いることが適当と考えられる。
 なお、本報告書においては、理解のしやすさを考慮して、「外部評価(学校関係者評価)」と表記する。

改善の在り方を含めた学校評価システムの構築について
 学校評価は、その結果に基づき改善策が講じられることに意義があるものであり、その過程においては、当然に、市町村教育委員会等の設置者をはじめとする関係諸機関による学校の支援・改善のための指導・助言や具体的な改善策が極めて重要である。
 しかし同時に、このような支援・改善(Action)そのものは、評価(Check)とは異なるものであり、「学校評価」の括りの下で「自己評価」等と設置者による改善を同列に並べることには違和感もある。このことから、設置者等による支援・改善については、いわゆるPDCAサイクルのA(Action)に当たる、学校評価をめぐる流れの中の欠かせない一部として、「学校評価システム」(後述)の重要な要素として位置付け、その着実な構築を図ることが適当と考える。

今後の検討課題について
 児童生徒による評価の位置付けについて、アンケートの客体としての位置付けだけではなく、自己評価や外部評価への主体的な参画、あるいは授業評価などのより積極的な活用などが考えられる。一方で、児童生徒による授業や教員の評価が、教員や学校を必要以上に萎縮させ、結果的に学校運営の改善につながらないのではないか、あるいは児童生徒の発達段階により異なるのではないか、等の懸念もある。
 これらを踏まえて、今後さらに検討を深めることが必要がある。

3. 自己評価の充実と外部評価の着実な導入について

 学校の運営にあたっては、教職員と保護者等相互の理解と連携協力が極めて重要であり、このことから教職員による自己評価と保護者等による外部評価は、有機的・一体的に位置付けることが適当。

 学校運営の改善を図る上で学校評価が果たす役割の重要性を踏まえ、その総合的な根拠を法令上位置付けることが適当。

自己評価の課題について
 「1.学校評価の取組の現状と課題について」にあるように、自己評価の実施率は公立学校で既に100パーセント近い。しかし、その実情は、例えば学期末・年度末に開催した教職員による反省会の議事をまとめたものをもって自己評価としたり、また、教職員に対する意識アンケート調査を単に集計したものをもって代えている学校もあることが懸念される。このように、当初から公開することを意識したものではないがゆえに、自己評価結果の公表が十分に進まないのではないか、等も指摘されるところである。

外部評価の課題について
 外部評価(学校関係者評価)については、その評価者の性質上、学校の教育活動について学校の教職員以上の専門性を期待することは非常に困難であるし、学校や教職員が日常的に使用している用語や概念についても、必ずしも十分な理解を持っていない。また、日常的に学校に勤務している教職員とは異なり、保護者等は当然ながら時間的な制約が大きい。

 このことから、外部評価(学校関係者評価)を通じて、学校運営の詳細について網羅的な評価を行ったり、詳細かつ専門的な自己評価結果を検証することは、その有する専門性の課題や時間的制約から極めて困難と考えられる。
 むしろ、保護者等にも理解しやすい内容を中心とした評価を通じて、学校に新たな気づきをもたらすとともに、相互の理解を深めて連携を促し、学校運営の改善に協力してあたることを目指すことが求められているのではないかと考えられる。

学校評価の流れについて
 以上を踏まえ、学校運営を進めるにあたって、学校評価は、
1  前回の学校評価や、学力・体力調査の結果などに示された学校の現状を踏まえ、具体的かつ明確な教育目標等を設定する。
2  その目標の達成に向けて、保護者等と連携協力しつつ、教育活動等を行う。
3  学校は、目標の達成状況の把握や取組の適切さを検証し、自己評価を行い、課題やその改善策等をとりまとめる。
 その際、必要に応じ、児童生徒、保護者、地域住民を対象に、授業の理解度や学校に関する意見・要望等を把握するためのアンケートの実施や懇談会を開催し、自己評価を行う際の重要な資料として活用する。
4  学校の教職員以外の外部評価者(保護者(PTA役員等)、学校評議員、地域住民等)により構成された委員会等が、教育活動の観察等を実施し、自己評価結果の検証を行い、評価を実施する。
5  自己評価・外部評価結果に示された課題をもとに、設置者等とも連携しつつ、教職員や保護者等の意見・要望等を踏まえながら、改善策等を講じ、保護者等にもわかりやすい具体的かつ明確な教育目標等の見直し・設定を行い、その達成に向けて努力する。
との、自己評価のみならず、外部評価との有機的な連携を図りながら、いわゆるPDCAサイクルを確立する中で行われることが望まれる。
 このような、学校評価を核として見たPDCA(Plan 目標設定− Do 実行− Check 評価− Action 改善)サイクル全体を、「学校評価システム」と称することとする。

学校評価の位置付けについて
 しかし、学校評価についてはそもそも、小学校設置基準等において自己評価の実施と公表の努力義務が規定されているのみであり、外部評価の位置付けや自己評価との関連、また自己評価・外部評価を含め学校評価そのものについての位置付けを定める規定は法令上存在しない。

学校評価の位置付けの明確化と自己評価・外部評価の一体的推進について
 これらを踏まえ、今後、自己評価・外部評価など学校評価の充実を図るためには、次の観点が重要と考えられる。
1  自己評価・保護者等による外部評価(学校関係者評価)・専門家等による第三者評価の3つを、相互に関連し補完するものとして一体的に検討する必要性がある。
 特に、学校における教職員と保護者等は密接かつ不可分な関係にあり、学校運営にあたっては相互の理解と連携協力が極めて重要である。このことから、教職員による自己評価と、保護者等による外部評価は、学校運営の改善を図る上で不可欠のものとして、有機的・一体的に位置付けるべきである。
2  学校の改善に果たす学校評価の重要性を踏まえて、自己評価・外部評価などの具体の学校評価の取組の促進のために、その総合的な根拠を法令上位置づけるべきである。
3  自己評価について、PDCAサイクルにより行われることを前提に、あまりに網羅的に行うのではなく、課題の重点化を図り、具体的かつ明確な目標を設定して行うことを基本とすることが望まれる。
 しかし、課題を把握するためには、まず網羅的な点検・評価が必要であろう。また、あまりに重点化された課題の設定のみでは、学校運営全体における力点の置き方に均衡を失する可能性もある。このことから、目標の重点化を図る「課題指向型」の評価とともに、必要に応じて、網羅的あるいは一定の範囲で幅広な「全方位型」の評価を適宜使い分けることが適当と考えられる。
 また、外部評価(学校関係者評価)については、具体的かつ明確に設定された目標に関する自己評価をベースとして、その検証を行うことを基本とすることが適当と考えられる。
 これらを踏まえ、自己評価及び外部評価の実施や公表の在り方について、学校評価ガイドラインを改訂するなど、その具体的な内容や位置付けを広く明らかにする必要がある。

→検討課題: 1 自己評価・外部評価について、上記のような考え方に立つかどうか。
2 自己評価・外部評価の実施・公表の義務付けの在り方について
3 学校評価ガイドラインの改定について

今後の検討課題について
 外部評価(学校関係者評価)を行うにあたり、学校評議員の果たすべき役割について、評価の実施・公表の在り方や、学校評議員と学校との連携をより促進し「学校応援団」としての機能を強化するための在り方など、様々な側面から今後さらに検討を深めることが必要である。

4. 評価に基づく支援・改善など関係機関の役割の在り方について

 学校評価結果に基づく設置者等による学校への支援・改善が重要であり、そのため、評価結果について設置者等への報告を促すことが必要。

 国、都道府県・市区町村教育委員会等の関係諸機関の役割の在り方について、今後さらに検討が必要。

評価結果に基づく設置者等による支援・改善の充実について
 学校評価は、その結果を踏まえて学校運営の改善につながってこそ意味があるものである。このことから、例えば公立小・中学校についていえば設置者である市町村教育委員会を中心に、学校評価結果に基づく学校への支援・改善機能の重要性を強調する必要がある。
 そのためには、学校の自己評価及び外部評価(学校関係者評価)の結果を、学校から設置者等に報告するよう促すことが必要である。

 また、市町村教育委員会などの学校の設置者は、学校評価に示された結果について、その検証を通じて学校に対する指導や支援・改善に努めるとともに、その結果はまさに設置者自身による学校の設置管理状況に対する評価であることを深く自覚することが重要である。すなわち設置者は、学校評価結果について、学校改善のための基礎資料とするとともに、自らのこれまでの設置管理の取組に対する評価と受け止め、その改善を目指すことが重要である。

 また、設置者に限らず、例えば公立小・中学校についていえば、人事権者である都道府県教育委員会による支援・改善のための努力が重要である。さらに、外部機関による改善支援を活用することなども考えられ、今後、学校評価の結果を踏まえた支援・改善において、関係諸機関が果たすべき役割や内容について、今後さらに検討を深める必要がある。

教育委員会による研修等の充実について
 また、各学校における学校評価について、その質を向上させるために、教職員を対象とする研修や、各学校への指導の充実を図るための指導主事等を対象とする研修を、教育委員会など関係諸機関において充実することが重要である。
 あわせて、外部評価(学校関係者評価)の評価者を中心とした保護者や地域住民等を対象に、学校評価に関する情報の提供や研修の機会を充実することも望まれる。

国と教育委員会の役割分担について
 現在、公立の義務教育諸学校においては、設置者あるいは人事権者である教育委員会による学校の評価がおこなれている例があり、また多くの教育委員会においては学校への指導主事訪問による指導が行われている。
 これらと外部評価、特に平成18年度において文部科学省が実施した第三者評価の試行との関係の在り方については、さらに検討を深める必要があるが、おおむね次のような考え方に立つことが望ましいのではないか。
1  国による第三者評価の試行は、限られた人員と時間的制約の中で、学校の課題点や良さを見いだし報告することに力点を置くべきである。そこに示された課題等について、実地に時間をかけて具体的な支援・改善に取り組むのは、本来的に当該学校の設置者や人事権者が指導主事訪問等を通じて果たすべき役割ではないか。
 なお、第三者評価が本格的に実施される際の改善のためのシステムの在り方については、別途検討を要すると考える。
2  設置者自身が実施する学校の評価は、設置者が行っている学校の設置管理行政の改善のために行うものであり、設置者の自己評価の一環あるいは政策評価として考えるべきではないか。
3  設置者ではない人事権者(例えば、公立義務教育諸学校における都道府県教育委員会)が行う学校の評価は、ある面において人事権者の自己評価の一環あるいは政策評価であり、ある面においては第三者的な評価としての側面を有している。これについては、その実施形態や意図により位置付けが決められるべきではないか。
 なお、第三者評価において、誰が主体となるべきか、国、都道府県、市町村がそれぞれどのような役割を果たすべきかについては、別途第三者評価に関する検討の中で引き続き議論が必要である。

5. 学校に関する情報の公開の促進について

 学校の情報については、保護者等の視点に立ち、学校との連携協力が深まるように、広く、十分に公開することが適当。

 学校評価とあわせて、情報の公開の重要性を踏まえた規定の位置付けを行うことが適当。

情報公開の促進について
 学校の情報の公開については、平成14年より、小学校設置基準(中学校、高等学校、幼稚園についても、それぞれの設置基準において同様の規定がある。)において、保護者等に対して積極的に情報を提供する義務が規定されている。

 しかし、「1.学校評価の取組の現状と課題について」に示されているように、例えば学校が行っている自己評価について、多くの保護者はよく知らない状況にある。このことは同時に、そもそも学校に関する様々な情報が十分に保護者に提供されていない状況にあることをうかがわせる。

 また、保護者や地域住民等が外部評価を実施したり、保護者・児童生徒等を対象とした教育活動など学校運営に関するアンケートに回答する上で、自己評価結果はもとより、学校に関する基礎的情報を含む多くの情報がわかりやすく示されていることが、的確な評価を行う上で重要である。

 あわせて、学校の立場から見たときに、学校の情報を保護者等に公開することは、学校が自らの良さや努力を外に向かってアピールし、あるいは抱えている課題を率直に示して理解や支援を得ることができる絶好の機会となるものである。

 以上を踏まえ、今後、学校の情報の公開を促進するために、
1  自己評価及び外部評価の結果の公表を進める。
2  情報の公開の対象は、当該情報の内容等に鑑みつつも、学校評議員等だけではなく広く一般の保護者や地域住民等を対象とすべきであり、その観点から学校便り等の活用や、ホームページに掲載するなどによる公表を進める。
3  例えば、学校の連絡先など学校をとりまく様々な情報をまとめた冊子を作成するなど、保護者や地域住民の視点に立って必要と思われるような情報を、その提供により保護者や地域との連携協力が一層図られるよう、十分な公表を進める。
4  学校評価及び情報の公開の重要性と、相互の密接な関連性を踏まえて、学校評価に関する総合的な根拠を法令上位置づける際には、それと一体的に、情報の公開の重要性を踏まえた規定の位置付けを行う。
ことが必要と考えられる。
 なお、情報の公開に当たっては、個人情報の保護や、公開に適するか内容かどうかなどに十分に配慮し適切に取り扱うことが重要である。

6. 第三者評価の在り方に関する今後の検討課題について

 第三者評価は、学校の自己評価・外部評価を補い、学校運営の質を高めるために行う専門的・客観的な評価として位置付けることが適当。

 第三者評価の在り方については、その主体、評価手法、評価者の資質、改善策の在り方等について、教育再生会議における議論や、平成18年度における第三者評価の試行事業の状況を踏まえながら、引き続きさらに検討を深めることが必要。

第三者評価の意義について
 自己評価や保護者等による外部評価は、学校運営の改善のために行うものであるが、第三者評価については、これらでは不足する部分を補うものとして位置付け、「学校運営の質を高める」ことを目的として学校の取組やその成果を検証し、評価を行うことが適当と考えられる。

 すなわち、基本的に学校が主体となって行う評価である自己評価・外部評価(学校関係者評価)に対し、第三者評価は、
1  保護者等による評価では、学習指導や学校運営等について教職員を上回る識見は期待しにくいことから、専門性を有する有識者等による「専門的」な評価
2  学校と直接の関係を有しない者により、必要以上に学校・地域の事情やしがらみにとらわれず、学校に新たな気づきをもたらすような「客観的(第三者的)」な評価
として、学校以外の者が主体となって行う専門的・客観的な評価と位置付けることが適当と考える。

第三者評価の在り方について
 具体的に第三者評価において、何をどのように評価すべきかについては、
1  学力の状況を含む様々な基準を満たしているかどうかを検査するチェックリスト型監査、
2  各学校が教育目標その他の教育上達成すべき目標の設定・達成に向けて適切に取り組んでいるかどうかの検証、
3  自己評価・外部評価(学校関係者評価)が実施されていることを前提として、それらが適切に実施され、その評価結果が学校運営の改善に適切に結びつけられているかどうかや、学校に関する情報が保護者等に適切に提供されているかどうかなどを含む、学校運営全般の在り方に関する評価、
を行うことが考えられる。

 このことについて、
  1の広範にわたる諸基準(例えば、施設・設備や衛生に関する基準、など)の適合性について逐一検証することは、人員・日程的に事実上不可能であり、これらについては、本来、設置者の各担当部局等において適宜検証すべきではないか。
 このため、現実的には、1について基準適合のための学校や教育委員会の取組が妥当かどうか等を検証する監査としての要素(インスペクション)を盛り込みつつも、23の各学校の目標の設定・達成に向けた取組状況など学校運営全般の在り方について評価し、その結果を踏まえて、今後の学校運営の改善につなげるための課題点等を提示することを基本とすべきではないか。

 このことを通じて、
1  全国的に波及させることが望ましい優れた取組を広く紹介し、
2  課題の多い学校については、人事権者や設置者による改善支援を促す、
などの役割を果たすことが期待される。

 実際に評価するにあたっては、
1  定量的評価がどこまで可能か、あるいは、どこまで重視すべきか。
 少なくとも、学力調査の結果や学校の現状で単純にランク付けを行うことは適当ではない。しかし、置かれた条件が異なる学校を、どのようなものさしで図るのか。
2  定性的評価による場合、評価者の経験・知見に左右されることとなるのではないか。
3  学校側が外部にアピールしたい特色や、専門家による評価を求めている部分を適切に把握し、評価することが、その学校の取組水準を測る上でも重要ではないか。
4  第三者評価を行う際に、改善のための方策も提示すべきかどうか
などの課題について検討する必要がある。

 また、第三者評価の主体についても、そもそも誰が実施するのが適当かどうかの検討が必要であるが、その際、
1  評価者となる者が、もともと学校に対して有する権限等との関係で、公正中立な評価が可能かどうか。
2  評価の信頼性・客観性を担保するため、高い独立性を保つ仕組みが必要ではないか。
3  システムの構築・維持に要するコストを誰が負担するのか。
4  誰が最終的に学校改善に責任をもつのか。
5  国・都道府県・市町村は、それぞれ第三者評価においてどのような役割を担うべきか。
等を勘案し、教育行政制度全体を見通した慎重な設計が求められる。

 第三者評価の在り方については、平成18年9月より平成19年1月にかけて、国において試行事業を全国124校を対象に実施したところである。また、教育再生会議においても議論が行われているところである。これらの状況を踏まえながら、引き続きさらに検討を深めることが必要である。

7. 私立学校、高等学校等における学校評価の在り方について

 私立学校や高等学校等においても、学校評価の導入は意義があると考えられるが、各学校種等の特性を踏まえ、その具体の在り方についてはさらに検討を深めることが必要。

私立学校等における学校評価の意義について
 学校評価の必要性については、その設置主体や学校種を問わず、
1  学校評価を通じて行われる授業や学校運営の課題の指摘と改善は、選択的に進学する学校の場合であっても、そのメリットを学校の教職員や児童生徒が享受できる。
2  学校評価結果の公表や、外部評価の導入によって、学校や教職員にとって外部からの意見を取り入れる良い機会になるとともに、保護者等にとっても、選択的に学校に進学するための検討を行う上で重要な資料となりうる。

 このことから、学校種等を問わず、学校評価は導入する意義があると考えられるが、例えば私立学校にはそれぞれの建学の精神など、学校種等によってそれぞれの実情や特性があり、必ずしも全てを同様に取り扱わなければならない必要性はないと考えられる。
 今後、それぞれの学校種等に応じて、具体の在り方についてさらに検討を深める必要がある。

8. 学校評価と教員評価との関連について

 学校評価は、例えば授業評価など、教員評価と共通した面があり、可能な範囲で適切に活用することが期待される。

 しかし、学校評価と教員評価はそもそも目的が異なることから、あくまでも学校評価と教員の人事評価(勤務評定)は切り分けて整理することが適当。

授業評価など学校評価と教員評価との関連についての提言
 平成17年12月の内閣府規制改革・民間開放推進会議の第2次答申を踏まえ、閣議決定された平成18年3月の「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」においては、「授業や学級経営、生徒指導等を含む、学校教育活動に関する児童生徒・保護者による評価をその匿名性の担保に配慮しつつ、学校評価の一環として実施し、その評価結果を適切に取りまとめ、個人情報に配慮した上でホームページ等で公表するよう促す。校長は児童生徒・保護者による具体の評価結果を教育委員会に報告し、教員評価や教員研修を行っている市町村や都道府県の教育委員会が学校教育の改善のため、適切に活用できるよう促すべきである。」
とされている。

 平成18年3月策定の「学校評価ガイドライン」においては、
「○  一般に、教員評価では、各学校の目標等をもとに、教員一人一人が目標設定を行い、その目標の達成度を評価する目標管理型の評価制度を目指すものが多い。各学校の目標設定を出発点とする点で、このような教員評価は学校評価と共通している。
 しかしながら、教員評価が適切な人事管理や個々の教員の職能の開発を目的とし、その結果は公表になじまないものであるのに対し、学校評価では、組織的活動としての学校運営の改善を目的とし、その結果を公表し、説明責任を果たすこととしているため、両者は、その目的が大きく異なる。」
とされている。

学校評価と教員評価との関連の在り方について
 そもそも「教員評価」の用語は多義的であるが、例えば、
1  地方公務員法等に基づき法律上の義務として行われる教員の勤務評定であって、その評定の結果に基づき人事・給与等の処遇が行われるような教員評価、
2  教員がわかりやすい授業に取り組んでいるかどうかや、割り当てられた校務分掌を適切に処理しているかなどの教員の取組を検証することにより、教員が抱える課題の発見や今後の改善につなげるための教員評価、
など、様々な類型があり得る。

 学校評価は、学校という機関の、組織としての教育活動やマネジメントの状況を評価して、教職員の意識を喚起し学校運営の改善を促すために行うものである。その一環として、授業の理解度等について児童生徒等の状況を把握し、その結果を踏まえ、学校全体として授業法に関する研修等の取組や適切な校務分掌等を促すことは重要である。さらに、場合によっては特定された個々の教員の取組の改善を促すこともありうるものと考える。

 一方、勤務評定としての教員評価は、個々の教員について多面的な評価を行い、その結果を日頃の服務監督や人事権者による人事・給与などの処遇に反映することを目的としており、学校の組織としての状況の把握や改善を目指すものではない。

 このことから、例えば、学校評価の一環として行われた外部アンケート等の結果を、教育実践に顕著な成果を挙げている優秀な教員を見いだしたり、いわゆる指導力不足教員など大きな問題のある教職員について適切な措置をとる上で、活用することが考えられる。しかし、学校評価と教員評価はそもそも目的が異なっていることから、教員の勤務評定として用いることを前提に教員一人一人に至るまで保護者・児童生徒による厳密な授業評価を行うことは、それは教員の人事評価(勤務評定)として行うものと切り分けて整理することが適当である。

9. 学校評価の目的の達成のために

 これまで、今後の学校評価の着実な定着と一層の充実を図るための、学校評価の推進方策やそのための課題について検討を行ってきた。

 推進を図る上で何よりも大切なことは、学校評価が学校運営改善を最終目的とするものであるとの認識に立ち、その本来の目的を達成するために、学校評価を行うことが学校にとって最終的にメリットがあるものとなるようなシステムの構築を図ることである。そのためには、単なる評価のための評価にならないよう十分に留意する必要があるとともに、特に次に示す観点に十分に配慮しながら、今後、学校評価制度の構築を図ることが必要と考える。
1  学校評価の結果が、学校や教育委員会等の関係諸機関による改善につながるような評価内容やシステムであること。
2  自己評価の公表と、自己評価結果を踏まえた外部評価(学校関係者評価)の実施や、学校に関する情報の積極的な公開は、学校と保護者・地域を結ぶ重要なコミュニケーションツールであり、学校にとって保護者や地域からの理解や協力を得る貴重な機会であることが意識されること。
3  学校評価が、学校や一人一人の教職員のやる気を高め、より良い教育活動を実践していこうとする意欲につながるものになること。
4  学校評価のための事務等が過剰になり、教育活動等に支障を来すものとならないようにすること。

 ただし、このことは、単に評価の結果を甘い言葉でくるみ、課題を美辞麗句で覆い隠して表面的な心地よさに酔うことを意味するものではない。真に改善を目指すためには、これまでの実践や成功体験を改めて振り返り、そこに潜む課題点を見いだすことが欠かせないものであり、評価を行う者も受ける側も、その厳しさを常に意識する必要がある。
 ただし、評価を行う者は、常に、評価される側の良さやこれまでの努力をしっかりと見て、中立・公正に評価する心構えと資質が重要である。
 そして、評価を受ける者は、たとえ耳に痛い内容や、あるいは自らの思いに反するものであったとしても、それを厳粛に受け止めて検討し、できる限り今後の改善につなげていくだけの意欲と度量を持つことが必要である。
 学校評価をめぐる両者が、ともに自らのなすべきことを自覚し、そして謙虚であることが、学校評価を真に意味のあるものとする上で極めて重要と考える。


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