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資料4

今後の学校評価の推進のための主な論点の整理について

平成19年1月29日

学校評価の現状について

 学校評価については、平成14年より、小学校設置基準(中学校、高等学校、幼稚園においても同様の規定あり)において、学校の自己点検・評価(自己評価)と、その結果の公表が努力義務とされている。

 現在、自己評価はほとんどの公立学校で実施されているが、公表率は半分以下である。
 外部評価については、8割弱で実施され、そのうち8割強が公表しているものの、これはいわゆる「外部アンケート」が含まれた数値である。

公立学校の学校評価の実施状況(平成16年度)
  実施率 結果公表率
教職員による「自己評価」 96.5パーセント 42.8パーセント
保護者など関係者による「外部評価」 78.4パーセント 82.9パーセント

 さらに、自己評価に関する各種アンケート調査の結果からは、7割強の保護者が学校の自己評価について知らない状況が浮かび上がってくる。

社団法人日本PTA全国協議会「学校と家庭の教育に関する意識調査報告書」(平成18年3月)
あなたのお子さんが通う学校では、自己評価結果が公表されましたか。
 わからない … 76.3パーセント

内閣府「学校制度に関する保護者アンケート」(平成18年11月24日)
あなたのお子様が通学している学校の自己評価についてどのように認識されていますか。
 学校が自己評価を実施しているかどうかについては全く知らない … 72.0パーセント

財団法人経済広報センター「義務教育に関するアンケート結果報告書」(2006年10月)
学校の自己評価が義務化されていますが、このような自己評価の結果をみたことがありますか。
 見たことも聞いたこともない … 80パーセント

 以上の現状を踏まえ、今後の学校評価の着実な定着と推進のため、主として以下の 1.から 6.に示す論点について検討する必要があるのではないか。

今後検討すべき主な論点について

1. 自己評価の充実と外部評価の導入、及び情報提供の充実について

 現状では、自己評価の実施率は100パーセント近いものの、例えば学期末・年度末の反省会が自己評価と位置づけられ、それゆえ公表も進んでいないのではないか、等の指摘がある。

 本来、学校運営を進めるにあたっては、
1  学力・体力調査や学校評価結果など学校の現状を踏まえた、具体的かつ明確な教育目標等を設定する。
2  その目標の達成に向けて、保護者等と連携協力しつつ、学校は努力する。
3  学校は、目標の達成状況やその過程における取組状況について自己評価を行い、課題や改善策等をとりまとめる。
 その際、必要に応じ、授業の理解度等に関する保護者・児童生徒等を対象としたアンケート調査などを行い、自己評価を行う上での重要な参考資料として活用する。
4  とりまとめた自己評価結果を教職員以外の外部評価者(保護者等)の目で検証し、目標設定の妥当性や達成状況、その過程における学校の取組状況等について評価を受ける。
5  自己評価・外部評価結果に示された課題や改善策等を踏まえ、教職員のみならず、保護者等の意見・要望等を踏まえ、保護者等にもわかりやすい具体的かつ明確な教育目標等の設定を行い、その達成に向けて努力する。
という、いわゆるPDCAサイクルの確立が望まれるが、このような段階に至っている学校は極めて少ないと思われる。

 また、保護者等が、外部評価を実施したり、保護者・児童生徒等を対象としたアンケートに回答する上で、自己評価結果等はもとより、学校に関する基礎的情報を含む多くの情報がわかりやすく保護者等に示されていることが大切である。
 しかし現実には、自己評価の公表率についても、約4割の学校が何らかの方法で公表しているとしているが、それを知らない保護者が多数を占めている現状にある。これは、少なからぬ学校が、自らの良さや努力をアピールし、またその現状や課題を外部に示して理解や支援を得ようとする意欲を持っていないからではないかとも感じられる。

 このような現状のまま、例えば自己評価の実施・公表を法的義務とした場合、PDCAサイクルに基づく評価システムとしての内実を伴わないまま、学校に定着してしまうおそれがある。

 以上を踏まえ、今後、自己評価の充実を図るためには、
1  自己評価に対する学校や教職員自身のモチベーションを高める
2  学校が自らの取組などを積極的にアピールし、保護者等の理解を得る
3  保護者など外部の目を入れて改善を促す
4  教育委員会や専門家等によるアドバイスや評価を受ける
ことが有効ではないかと考えられる。

 このことから、自己評価の実施・公表の内実を伴った充実のために、
1  自己評価・保護者等による外部評価(学校関係者評価)・専門家等による第三者評価の3つを、相互に関連し補完するものとして一体的に検討する必要性がある。
 特に、学校における教職員と保護者等は密接かつ不可分な関係にあり、学校運営にあたっては相互の連携協力が重要である。このことから、教職員による評価と、保護者等による評価は、学校運営の改善を図る上で不可欠のものとして、有機的に関連付けた上で一体的に取り扱われるべき。
2  学校に関する様々な情報を積極的かつわかりやすく提供するよう促す。
3  学校評価結果を学校運営改善の支援等につなげていく仕組みを検討する。
ことが求められるのではないか。

2. 学校評価の用語の定義について

 本年3月に策定した「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」においては、学校評価は自己評価と外部評価にわけられ、外部評価者の例示として、学校評議員、PTA役員(保護者)、地域住民や、学校運営協議会の活用などがあげられている。

 これに対して、
1  例示に挙げられたような者が、学校にとって本当に「外部」なのか。
2  第三者評価も外部評価の一種であり、「外部評価」が何を指すのかわかりにくい、
などの課題が指摘されているところ。
 一方で、自己評価・外部評価などの用語は、学校の立場から見て、長く定着して使われてきたところ。

 これを踏まえ、今後の学校評価の基本的なモデルとして、
1  自己評価(教職員評価または当事者評価)
 =校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加し、予め設定した目標や具体的計画に照らして、自らの取組について評価を行うもの
1'  外部アンケート(児童生徒・保護者等を対象としたアンケート調査)
 =自己評価を行う上で、目標設定・達成状況の把握や取組の適切さの検証のため、児童生徒や保護者等を対象に、授業の理解度や学校への意見・要望等を把握するために行うアンケート
2  外部評価(学校関係者評価)
 =学校の自己評価結果を、学校評議員、PTA役員(保護者)、地域住民等の外部評価者が評価する方法を基本として行うもの
3  第三者評価
 =当該学校に直接関わりをもたない専門家等が、当該学校の自己評価・外部評価(学校関係者評価)結果を基礎資料として活用しながら、学校が設定した教育目標等や自己評価・外部評価の在り方を含む学校運営全般について、専門的・客観的(第三者的)立場から評価を行うもの
の3種類(外部アンケートを含めて4種類)の相互に関連した評価により構成されると定義してはどうか。

 併せて、設置者である教育委員会による、学校の評価の位置付けを検討する必要があるのではないか。

 また、児童生徒による評価の位置付けについて、さらに検討する必要があるのではないか。

3. 第三者評価の在り方について

 基本的に学校の主体性の下で行われる自己評価・外部評価(学校関係者評価)に加え、
1  保護者等による評価では限界がある、学習指導や学校運営等に関する識見を有する専門家等による専門的な評価
2  学校と直接の関係を有しない者により、必要以上に学校独自の事情やしがらみにとらわれず、学校に新たな気づきをもたらすような客観的(第三者的)な評価
として、「第三者評価」を位置づけてはどうか。

 具体的に第三者評価において何を評価すべきかについては、
1  学力の状況を含む様々な基準を満たしているかどうかを検査するチェックリスト型監査、
2  各学校が教育目標その他の教育上達成すべき目標を具体的かつ明確に設定し、その達成に向けて適切に取り組んでいるかどうかの検証、
3  自己評価・外部評価(学校関係者評価)が実施されていることを前提として、それらが適切に実施され、その評価結果が学校運営の改善に適切に結びつけられているかどうかや、学校に関する情報が保護者等に適切に公開されているかどうかなどを含む、学校運営全般の在り方に関する評価、
を行うことが考えられる。

 第三者評価をそもそも何のために行うのかを考えると、最上位の目標として、「学校運営の質を高める」ことにある。そのために学校の取組やその成果を検証するものであり、そのことに鑑みると、
1の広範にわたる諸基準(ex.施設・設備や衛生に関する基準)の適合性について逐一検証することは、人員・日程的に事実上不可能であり、これらについては設置者の各担当部局等において適宜検証すべきではないか。
このため、現実的には、1について基準適合のため取組が妥当かどうかなど監査としての要素(インスペクション)を盛り込みつつも、23の各学校の目標設定の妥当性やその達成に向けた取組状況など学校運営全般の在り方について評価し、その結果を踏まえて、今後の学校運営の改善につなげるための課題点(や、さらに改善への方向性を提示することも考えられる)を提示することを基本とすべきではないか。

 このことを通じて、
1  全国的に波及させることが望ましい優れた取組を広く紹介し、
2  課題の多い学校については、人事権者や設置者による改善支援を促す、
などの役割を果たすことが期待される。

 実際に評価するにあたっては、
1  定量的評価がどこまで可能か、あるいは、どこまで重視すべきか。
ex. 学力調査の結果や学校の現状で単純にランク付けするのか。
置かれた条件が異なる学校を、どのようなものさしで図るのか。
2  定性的評価による場合、評価者の経験・知見に左右されることとなるのではないか。
3  学校側が外部にアピールしたい特色や、専門家による評価を求めている部分を適切に把握し、評価することが、その学校の取組水準を測る上でも重要ではないか、
などの課題について検討する必要がある。

 また、第三者評価を行う基礎資料として、全国規模での学力調査の分析結果の活用が重要と考えられる。

4. 学校評価における国・都道府県・市町村の役割分担

 都道府県・市町村教育委員会による、学校評価結果に基づく学校への改善支援機能を強調する必要がある。

 第三者評価について、誰が主体となって実施すべきか検討が必要であるが、その際、
1  評価者となる者が、もともと学校に対して有する権限等との関係で、公正中立な評価が可能か、
2  評価の信頼性・客観性を担保するため、高い独立性を保つ仕組みが必要ではないか、
3  システムの構築・維持に要するコストを誰が負担するのか、
4  誰が最終的に学校改善に責任をもつのか、
等を勘案し、教育行政制度全体を見通したシステム設計が求められるのではないか。

5. 私立学校、高等学校・幼稚園・特別支援学校における学校評価の在り方について

 学校評価の必要性については、いずれの学校種においても、
1  学校評価を通じた授業や学校運営の評価による課題の指摘と改善は、選択的に進学する学校の場合であっても、そのメリットを学校の教職員や児童生徒が享受できる。
2  学校評価結果の公表により、学校や教職員にとって外部からの意見を取り入れる良い機会になるとともに、保護者等にとっても、選択的に学校に進学するための検討を行う上で重要な資料となりうる。
ことから、学校種を問わず、学校評価は意義があることと考えられるのではないか。

 ただし、例えば私立学校にはそれぞれの建学の精神など、学校毎に様々な実情等があり、必ずしも全てを同様に取り扱わなければならない必要性はないことから、それぞれの学校種に応じて具体の手法等は検討することが必要ではないか。

6. 学校評価と教員評価との関連について

 昨年12月の内閣府規制改革・民間開放推進会議の第2次答申を踏まえ、閣議決定がなされた本年3月の「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」においては、
「授業や学級経営、生徒指導等を含む、学校教育活動に関する児童生徒・保護者による評価をその匿名性の担保に配慮しつつ、学校評価の一環として実施し、その評価結果を適切に取りまとめ、個人情報に配慮した上でホームページ等で公表するよう促す。校長は児童生徒・保護者による具体の評価結果を教育委員会に報告し、教員評価や教員研修を行っている市町村や都道府県の教育委員会が学校教育の改善のため、適切に活用できるよう促すべきである。」
とされているところ。

 本年3月策定の「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」においては、
「○  一般に、教員評価では、各学校の目標等をもとに、教員一人一人が目標設定を行い、その目標の達成度を評価する目標管理型の評価制度を目指すものが多い。各学校の目標設定を出発点とする点で、このような教員評価は学校評価と共通している。
 しかしながら、教員評価が適切な人事管理や個々の教員の職能の開発を目的とし、その結果は公表になじまないものであるのに対し、学校評価では、組織的活動としての学校運営の改善を目的とし、その結果を公表し、説明責任を果たすこととしているため、両者は、その目的が大きく異なる。」
とされている。

 そもそも「教員評価」の用語は非常に多義的であり、例えば、
1  地方公務員法等に基づき法律上の義務として行われる教員の勤務評定であって、その評定の結果に基づき人事・給与等の処遇が行われるような教員評価や、
2  教員がわかりやすい授業に取り組んでいるかどうかや、割り当てられた校務分掌を適切に処理しているかなどの教員の取組を検証することにより、教員が抱える課題の発見や今後の改善につなげるための教員評価、
など、様々な評価があり得る。

 学校評価は、教職員の意識を喚起し学校の運営改善を促すために行うものであり、その一環として授業の理解度等について児童生徒等の状況を把握し、その結果を踏まえ、学校全体として授業法に関する研修等の取組や適切な校務分掌等を促すことは重要である。さらに、場合によっては特定された個々の教員の取組の改善を促すこともありうるものと考える。

 また、教育実践に顕著な成果を挙げている優秀な教員を見いだしたり、いわゆる指導力不足教員など大きな問題のある教職員について適切な措置をとる上で、活用することも考えられる。しかし、学校評価を通じて、すべての教員一人一人に至るまで保護者・児童生徒による授業評価等を行い、その結果を教員の勤務評定として用いることは、学校評価制度の趣旨になじむものかどうか。


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