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学校評価の推進に関する調査研究協力者会議(第5回)議事要旨

1. 日時
  平成18年12月15日(月曜日)13時30分〜15時30分

2. 場所
  東京商工会議所 4階 502会議室

3. 出席委員
  天笠委員、小松委員、青木委員、金子委員、川名委員、久保田委員、竹原委員、千々布委員、中西委員、檜山委員、松尾委員、山口委員、吉村委員

4. 事務局
  布村大臣官房審議官、伯井教育水準向上PTリーダー、岸本学校評価室長 他

 
(1) 松尾委員より、「義務教育改革についての提言」についての説明があった後、フリーディスカッションが行われた。その概要は以下のとおり。
(○は委員からの質問、●は発表者からの回答)

 
委員  学校選択制に関しては、大都市圏か地方かによって相当意識が違ってくる。

委員  学校選択制に実効力があるのは、日本のごくごく一部である都市圏に限られる。実効力のある地域で学校選択制を進めるのは賛成だが、全国的に行うのは難しいと思われる。
 また、学校選択制が進んでいる地域でも、選択の結果、悪い学校は閉鎖されるが、教員は別の学校に移るだけであるなど、教職員に学校を良くするインセンティブが働かない。学校選択が機能するためには、まずは学校が自分の教育に責任を持てるような仕組み作りが必要。
 学校評価に関しても、学校自体が独立した状態であれば結果責任を求めることができるが、学校に裁量権が十分に与えられていない段階で結果責任だけを求めるのは難しい。
 学校選択の参考資料としての学校評価という話だが、保護者の大多数が欲しいのは先生の授業評価であるということに留意すべき。授業評価にしても、学校の実状がわかる仕組みが大切であり、例えば、オープンスクールを通じて敢えて記名式で評価してもらうことで教員に重みをもって受け止めてもらったり、教室に先生のアシスタントとして地域住民に入ってもらうことで実質的に評価をしているというパターンもある。

委員  企業人の立場からの提言ということで興味深く聞かせていただいた。地域の立場としては、企業人のマインドを学校に導入していくと同時に、それを通じて父親不在の日本の地域の現状からの脱却を図れればと思う。義務教育改革の中の視点として、日本の働くバランスを地域社会やまちづくりの方に少し戻せるような提言もしていただきたい。

委員  教育の担い手である教員のやる気を引き出す方法について、ご提案されている教員評価で、果たして教職員のやる気がでるのか。

委員  学校選択制は教育委員会事務局の支援とのセットでないとなかなか機能しない。
 学校選択も学校評価も、学校の自主性・自律性を確立することがその目的であると考えられる。そのためには、受け手の評価を予算に反映する前に、まずは保護者や地域が学校を見る目を育てることが重要。

発表者  学校選択と学校評価、そして学校の裁量権の拡大、この3点をどう実効的に行っていくかが大切。その際、各市町村をマネジメントの単位として、できる市町村から取組を行っていくことが重要。また、父親の地域参加に関しては、企業人が学校経営をサポートしていく形も必要。

(2) 岸本学校評価室長より、「学校の第三者評価に関する実践研究 試行事業について」「今後の学校評価の推進のための主な論点の整理について」「『学校評価の推進に関する調査研究協力者会議』における意見の整理」の3点につき説明があった後、第三者評価試行事業に参加した感想及びフリーディスカッションが行われた。その概要は以下の通り。
(○は委員からの発言、●は事務局からの発言)

 
委員  どこに力点をおいて学校を評価するかが重要。どのような学校教育活動を提供しているかということが評価の中心となってくるが、その際にも、どの程度定量的に評価することができるのか、あるいは、定性的に評価する際にはどのように評価すれば良いのかを検討することが大切である。
 また、僻地校と都会の学校の違いもある。僻地の学校では、保護者も子どもたちも学校教育活動に満足しているが、第三者から見ればもっと切磋琢磨が必要なのではないか、あるいは都市部の学校では、とにかく授業を成立させるので精一杯であるとか、学校の置かれた環境をどう考慮するかというのも、非常に難しい問題である。
 また、今回は試行的に国が主導して学校評価を行っているが、そもそもどのような体制で行うかということも、今後の検討課題であり、本協力者会議で議論していただきたい。

委員  学校としては資料作りも大変。また、条件をよく把握した上での評価とあるが、訪問地域の教育に関する考え方や、組合活動の状況、知事部局による教育委員会への予算配分など、様々な要素を予め理解するのは非常に大変な作業である。
 なお、松尾委員の発表にあった、学校選択のための学校評価となると、これは受け手のための資料ということで、自己診断、自己改革のための評価と目的が変わってくる。そうすると、評価項目なども変わってこなくてはいけなくなる。

委員  教職員のモチベーションを上げるための評価では、納得性が必要である。即ち、学校自体が納得しない部分の評価というのはあまり意味がない。納得性を高めるには、評価者の資質の向上が不可欠であり、また、客観性を高める評価指標も大切。
 また、学校評価をこれから推進していくためには、学校の中にそれを実施できる組織体制を確立することが非常に重要である。

委員  試行に行った印象だと、訪問の日数は1日で十分である。半日授業を見ると、学校の雰囲気、個々の教師のレベルまでわかる。訪問の日数については様々な意見があると思うので、アンケートの分析が必要。
 また、今回の試行で学校に指摘した点は、その学校が指導主事訪問で受けた指摘と共通しており、即ち、第三者評価で指摘されるような内容は、ステイクホルダー評価としての指導主事訪問でも指摘ができるということ。ただし、教育委員会の指導主事と学校が問題の把握をしていても、それに対して改善策が示せていない場合も多い。いずれにしても、ステイクホルダー評価と第三者評価の関連については、少し検討する必要がある。
 なお、評価の納得性については、問題のある教員はそもそも聞く耳を持っていないので、納得させるのは非常に難しい。そのような教員への対処法としては、納得してもらう評価結果の提示とは別の戦略を考えるべき。

委員  日本の教育システムは画一的だといわれているが、実際には日本全国多様であることを感じた。例えば、校舎や施設の設備などにも地域性がある。一方で、日本のどの学校にも校務分掌というシステムがあるなど、日本全国で共通する部分というものもあることを実感した。
 訪問の日程に関しては、移動に時間がとられるということが課題として挙げられる。また、学校で聞く質問はだいたい共通したものなので、時間の節減のためにも予めフォーマット化し、訪問前に文字で共有できる仕組みにすべき。
 また、予算管理や施設設備の維持等のマネジメント的な内容は、教育活動に比べて話題にのぼらなかったように感じた。

委員  ヒアリングの時間が非常に重要だと感じた。校長、教頭、主任、PTA等の方々から別個にヒアリングを行う機会は非常に貴重であり、授業参観や資料による評価以上に重要である。個別に話を聞くことで見えない部分も見えてくるので、これからの第三者評価でも大事な要素として残していただきたい。
 また、本校では生徒が教師の授業を評価するという取組も行っている。これを生徒につけてもらった通知表ということでとりまとめ、マニフェストとして、この授業評価を得て自分としてはどのように授業の改善を行っていくかを一人一人が表明するかたちにしている。

委員  第三者評価に参加して気づいた点が4点ある。
 まず1点目として、設置者の心構えに違いが見られた。教育委員会が第三者評価の訪問校に推薦してくるのは、まずは附属学校に匹敵するくらいしっかりした学校か、校内改革が進まないために校長があえて手を挙げ、第三者評価を受けることで改革を進めようとする学校。第三者評価をどう活用するのか設置者、学校の考え方が重要。
 2点目として、定量的なデータが学校にはたくさんあることを感じた。その一方で、データの集積があるにも関わらず、その分析ができていないこと、改善へつなげられないことを実感した。
 3点目として、評価項目はなるべく少ない方がいいということが考えられる。ただし、共通部分は残さなければいけない。問題は、学力調査等の定量的な結果、成果を、プロセス面でどのように評価、検証するかという点である。
 4点目として、授業見学については、全部の授業を見てもあまり意味がないと感じた。ただ、一人の授業を見て、それから学校全体を評価するのもまた難しいので日程と中身の充実をどのようにバランスをとるか、工夫がいる。

委員  外部評価と第三者評価は、いずれも学校を観察して評価するものであり、同様の内容に対して2度準備することは、学校にとっては負担となる。外部評価は地域の方による観察・評価、第三者評価は管理職を育てるという意味合いからヒアリングに重点を置いて行う、という棲み分けが必要。
 また、第三者評価で、学校の中身について具体的に見ていく場合には、評価結果を受けて設置者が学校に対してどこまで支援を行っているか、という設置者の評価も必要になってくる。

委員  評価者の資質が重要なポイント。私が参加したケースの場合、5人の評価者のコミュニケーションが密にでき、最終的に評価があまりぶれなかった。
 課題として、受け入れ側の第三者評価に対する姿勢がある。例えばヒアリングが個別で行える体制でなかったり、保護者からのヒアリングが文部科学省に意見を言う場になったりした。
 また、すでに保護者・教員・管理職が同じ問題を把握しながらも、改善に向けて話し合ったことがないということで、評価の後の課題が感じられた。

委員  同業者である教員経験のある評価者は、学校に対して非常に厳しく評価を行っていた。住民参加は外部評価を通じてできているので、やはり第三者評価は専門性がなければ意味がないが、専門性の捉え方は難しい。
 また、文部科学省は間接的に学校に対して権限を持っている。その文部科学省が、市教委や県教委ではなく学校を直接評価するというのでは、評価の実施主体と対象者の関係が分かりにくい。学校を評価するのであれば、まずは設置者を評価しなければならないのではないか。
 今後の方向性としては、独立の評価機関を設立するか、あるいは、教育委員会の指導主事主体の学校評価にするか、のどちらかであると考えられる。ただし、指導主事型の場合は同業者であるために評価が辛くなりがちなので、客観性の担保に関しては検討しなければならない。

委員  教員経験者とともに学校を訪問したが、専門家は評価が厳しいと感じた。また、第三者機関をつくって全国の学校を評価しなければならないほど、日本の学校は荒れていないのではないかという印象を抱いた。ガバナンスの問題であるならば、いわば親会社である設置者が、中小企業である学校に、まずは責任を持つべきである。その上で問題があるならば、別の手段を講じていくことが大切だ。

委員  第三者評価は専門家が中心となるが、専門家に加えてどのような人間が評価者になるべきか、これについては検討の余地がある。
 また、5段階で評価すると、どうしても「3」が増えてしまうので大変難しい。もう少し刻みを多くした方が評価しやすいのではないか。

委員  地域の学校に対する信頼感が残っている地域に訪問した。非常に安定感がある学校であったが、それで評価が5になるかといえば、逆に学校による地域へのアピールの仕方などの課題が浮き彫りになってくる。ただし、やはり各地域の特性があるので、学校がどのような環境に置かれているかを丁寧に見る必要があり、その場合は評価者の見る目が非常に問われてくる。今回の試行では、評価者がどの程度評価できたのかや、受け入れ校の受け止め方についても分析すべき。
 次に、評価の仕方については、評価者に求められることとして、診断・評価に留めるのか、それに加えて処方もするのかという点を明確にすべき。
 続いて、評価チームの構成が第三者評価を行う上でのポイント。私のチームは、研究者と教員経験者が揃っており、それぞれに補完的な役割を担えていた。
 最後に授業の評価法について、半日授業を見れば先生方の力量は相当評価することができるが、学校は、先生個人の力量に留まらず、それが組織としてどう機能しているかを評価することが大切。

委員  今回の試行では、評価委員のほとんどが教員関係者であり、PTAと民間は評価委員全体の10パーセント程度である。同業者の評価は厳しいという話もあり、評価委員のバランスは考えた方がいい。
 なお私立学校は、週刊誌も含め様々な場面で既に評価されており、これが学校選択に使われている。公立学校でも、全国の学力調査の結果が公表されれば、学校を選択するには十分なデータとなるのではないか。

委員  試行開始当初の学校で、評価結果を受けて既に何か改善策を講じた学校はあるか。これだけの労力を使った事業なので、評価結果を受けて、学校の改善やモチベーションの向上につながらないと、評価のための評価に終わってしまう。

事務局  現時点での改善状況についてはまだ把握していないが、学校評価もある程度経年的に見ないと成果が見えない。この事業は来年度も行うので、今年と全く同じ学校で行うのはともかくとして、何らかのかたちで比較していくことは考えていく必要がある。

委員  本試行事業を受け入れた市町村は、受け入れたこと自体が既に一つの刺激となっているように感じる。

(3) 事務局より、今後の開催予定について説明があった。

(初等中等教育局学校評価室(教育水準向上プロジェクトチーム))


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