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4.調査問題及び質問紙調査について

(1)調査問題の出題範囲・内容に関する基本的な視点

 昨年10月の中央教育審議会答申や、本年2月の中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の審議経過報告においては、現行の学習指導要領の学力観について、基礎的・基本的な知識・技能の育成と、自ら学び自ら考える力の育成の両方を総合的に育成することが必要であるとされている。

 また、審議経過報告においては、学校教育の目標を整理し、教育課程の構造を明確化する作業の進捗も報告されており、国際的な通用性という視点として、「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA調査)の概念的な枠組みの基本であるOECDの主要能力(キーコンピテンシー)という考え方などが、作業の参考として示されている。全国的な学力調査においても、これらの作業の進捗を踏まえ、測定すべき学力を構造的に捉えるとともに複数の視点から把握する必要がある。

 このことなどを踏まえ、全国的な学力調査における調査問題の出題範囲・内容については、各学校段階における各教科などの土台となる基盤的な事項に絞った上で、以下のように問題作成の基本理念を整理することが適当である。
身につけておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や、実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能など(主として「知識」に関する問題)
知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や、様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などにかかわる内容
(主として「活用」に関する問題)

 このような調査問題により調査を実施することによって、各教育委員会や各学校に対して、学習指導要領に示される内容等を正しく理解するよう促すとともに重視される力を子どもたちに身に付けさせるといった国としての具体的なメッセージを示すこととなる。

 各教科の具体的な調査問題の作成に当たっては、調査問題自体が学校の教員や児童生徒に対して土台となる基盤的な事項を具体的に示すものであり、教員による指導改善や、児童生徒の学習改善・学習意欲の向上などに役立つとの視点が重要である。例えば、以下のような観点を盛り込むことや工夫をすることが考えられるが、具体的には調査問題の作成過程における検討に委ねることとする。
1 国語
国語における主として「知識」に関する問題については、描写、要約、紹介、説明、記録、報告、対話、討論などの基礎的な言語活動に関すること、表現したり理解したりするための言語事項の基礎的な知識技能、我が国の言語文化に親しむ内容に関すること など
国語における主として「活用」に関する問題については、日常生活や社会生活で必要とされる読書・鑑賞・創作などの言語の活動の活用に関すること、文章を読んで筆者の主張の内容やその表現方法などを評価すること、伝えたい内容をまとめ表現すること、様々なメディアを活用することによって課題を多角的に探求すること など

2 算数・数学
算数・数学における主として「知識」に関する問題については、整数、小数、分数等の四則計算をすること、身の回りにある量の単位と測定がわかること、図形の性質がわかること、数量の関係を表すこと、変化の様子を調べること、確率の意味を理解し確率を求めること など
算数・数学における主として「活用」に関する問題については、物事を数・量・図形などに着目して観察し的確にとらえること、与えられた情報を分類整理したり必要なものを適切に選択したりすること、筋道を立てて考えたり振り返って考えたりすること、事象を数学的に解釈したり自分の考えを数学的に表現したりすること など

3 各教科における内容や形式などの工夫
学習指導の上で特に重要な点や課題となっている点に焦点を当てること。
個々の児童生徒への助言につながる点や課題解決の過程において違いが見られやすい点に焦点を当てること。
児童生徒が自分自身の学習改善や問題解決に役立つ点に配慮すること。
読解力向上プログラムなどと連動させた問題を考慮すること。

 なお、平成17年に公表された義務教育に関する意識調査において、保護者の6割強が全国学力テストの実施に賛成するなど、子どもたちの学力に対する社会的な関心や要請が高まりつつある中で、義務教育における土台となる基盤的な事項について、全国的な視野から義務教育の機会均等や一定の教育水準の達成状況を把握することや我が国において学校教育で達成されていることを明らかにすることは、保護者や社会に対して客観的で正しい情報を提供する意義があると考えられる。

(2)調査問題の形式など

 義務教育における機会均等や一定以上の教育水準を確保するために、各学校段階において土台となる基盤的な事項に絞った内容とするなど出題範囲・内容を絞る観点から、対象となる児童生徒に対して共通の問題冊子により学力調査を実施する。

 主として「活用」に関する問題については、迅速かつ客観的な採点を考慮しつつ記述式の問題を一定割合で導入する。

 国語、算数・数学に関する調査の時間配分については、児童生徒や学校の負担や多くの児童生徒が時間的余裕を持って取り組むことができる程度の問題量等を考慮して、質問紙調査に要する時間を除き小学校第6学年は3単位時間、中学校第3学年は4単位時間程度までとする。

 各学校における指導改善や児童生徒自身の学習改善に役立てるため、調査問題や採点基準、さらには問題を出題するねらいなどを公開する。

 なお、毎年同じ部分に焦点を当てるのではなく視点を変えて何年かのサイクルで考えるということも有効と考えられるが、その具体的な方策については問題作成の過程で検討することが適当である。

(3)質問紙調査に関する基本的な視点

 質問紙調査については、児童生徒の関心や意欲など、国語及び算数・数学に関する調査を補完して学力を把握する内容や、児童生徒の授業での取組方や学習方法など、国語及び算数・数学に関する調査では把握が困難な内容について、質問紙を用いることにより把握する必要がある。

 また、児童生徒の学習環境や家庭における生活状況等の生活の諸側面、教育条件、教育施策など、国語及び算数・数学に関する調査結果との結びつきが強いと考えられる内容について、それらを把握するとともにその相関関係等を分析する必要がある。

 これらを踏まえ、以下の2つの視点、すなわち、
国語及び算数・数学に関する調査を補完して学力を把握する視点
国語及び算数・数学に関する調査結果との相関等を検証することにより学力の規定要因を分析するための視点
から質問紙調査を実施することが適当であり、最低限盛り込む質問項目の具体例としては、別紙2及び別紙3とする。

 さらに、地域の特色ある教育活動を尊重しつつ、体力調査の結果などの学校教育の様々な成果についても把握に努めるとともに、学力との相関関係を分析することが重要である。

(4)質問紙調査の形式など

 質問紙調査の形式などについては、有効な回答が得られるとともに意味ある調査結果が得られるよう、適切な質問形式や質問項目数に配慮する。

 質問紙調査の対象については、その有効性や負担等を考慮し、児童生徒への調査と、学校全体としての取組や人的・物的な整備の状況を問う調査を基本とする。

 児童生徒への質問紙調査の時間配分については、児童生徒等への負担等を考慮すると1単位時間程度までとする。

 なお、毎年継続して質問する項目のほか、年によってテーマを絞って質問する項目を設けることも有効と考えられるが、その具体的な方策については質問項目作成の過程で検討することが適当である。


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