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5.調査結果の公表及び返却について

(1) 教育課程実施状況調査や都道府県等で独自に実施されている学力調査における調査結果の公表及び返却にかかる現状
  教育課程実施状況調査については、1教科1冊子当たり約1万6千人の児童生徒を対象に抽出により実施しており、国全体の傾向を把握するにとどまっている。したがって、調査結果の公表については、国全体の状況に加え、地域の規模等に応じたまとまりごと(大都市(政令指定都市及び東京23区)、都市政令指定都市以外の市)、町村)の調査結果となっている。また、調査結果の返却はなされていない。

  都道府県や政令指定都市において独自に実施されている学力調査については、平成17年度に調査を実施した自治体数は50(38都道府県及び12政令指定都市)となっており、2年おきあるいは3年おきに調査を実施している自治体まで含めるとほとんどの自治体で学力調査が実施されている。また、全児童生徒を対象とした調査を実施している自治体は、平成17年度において33(24都道府県・9政令指定都市)となっており、前年と比べ増加している。

  調査結果の公表については、都道府県の調査における公表レベルに関して、平成17年度までに2年おきあるいは3年おきに学力調査を実施しているものも含めた44都道府県を対象に見てみると、都道府県全体の調査結果を公表する自治体数が35、市区町村単位までの調査結果を公表する自治体数が8、学校単位までの調査結果を公表する自治体数が1となっている。

(2) 調査結果の公表の具体的方法
  昨年10月の中央教育審議会答申においては、「実施に当たっては、子どもたちに学習意欲の向上に向けた動機付けを与える観点も考慮しながら、学校間の序列化や過度な競争等につながらないよう十分な配慮が必要である」、「具体的な実施の方法、実施体制、結果の扱い等について更に検討する必要がある」などの指摘がなされている。

  国が公表する調査結果については、都道府県は、教職員の給与費を負担するとともに広域で人事を行うなどの役割と責任を有していることなどに鑑み、国全体の状況に加えて、基本的に都道府県単位の状況とする。

  国において公表する市区町村の状況については、現在都道府県において独自に実施されている学力調査においても市区町村単位まで調査結果を公表する自治体数が8にとどまっていることや、現時点において個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度な競争につながるおそれがありその影響は大きいと予想されることなどを考慮し、個々の単位の状況を公表するのではなく、地域の規模等に応じたまとまりごとに、例えば、大都市(政令指定都市及び東京23区)、中核市、その他の市、町村の状況を公表する。また、へき地における学校全体の状況を公表する。

  国語及び算数・数学の結果の示し方については、測定すべき学力を複数の視点から把握する必要があること、児童生徒の学習到達度を客観的に把握する必要があることなどから、それぞれの教科ごとに主として知識に関する問題と主として活用に関する問題に分け、4つの区分ごとに公表する。
   
国語
(知識に関する問題)
国語
(活用に関する問題)
算数・数学
(知識に関する問題)
算数・数学
(活用に関する問題)

  具体的な調査結果の示し方については、国民にとって分かりやすく示すことが必要であることや、全国的な学力調査における調査問題の出題範囲・内容に照らし、その到達の度合いに応じた児童生徒の割合を把握する必要があることから、以下の内容を基本とする。
   
  分布の中心を把握するため、4つの区分ごとの平均正答値や中央値など
分布の状況を把握するため、4つの区分ごとの標準偏差や四分位偏差など
全国的な学力の状況を把握するため、学力に関する分布の状態をあらわすグラフ等(具体的には、国全体における都道府県・市区町村・学校・児童生徒ごとの分布や、各都道府県における域内の市区町村・学校・児童生徒ごとの分布等について、その形状が分かるもの)

  何らかの形で期待される到達水準の達成状況を公表することについては、現時点においては技術的な課題等があるため、試行などを行いながら、更なる研究や検討が必要である。

  質問紙調査の結果については、学習意欲や生活習慣に関する結果に加え、各学校等における教育条件の整備状況等と学力調査との分析や、児童生徒の生活の諸側面や学習習慣等と学力との相関関係の分析などについて公表する。

  また、公表に当たっては、全国的な学力調査により測定できるのは学力の特定の一部分であることを示したり、数値により示される調査結果についての解釈を併せて示すなどの配慮が必要である。

(3) 調査結果の返却の具体的方法
  国は、教育委員会及び学校等が広い視野で教育施策の改善や教育指導等の改善を図る機会を提供するため、原則として都道府県等に対して調査結果を返却する。その際に、それぞれの役割と責任に応じた調査結果を返却することにより、調査結果に基づいた教育条件の整備や教育指導の改善方策など具体的な実践に結びつくことが重要であることから、以下の考え方を基本とする。
   
  各都道府県に対しては、域内の市区町村単位及び学校単位の状況が把握できる調査結果を返却する。
各市区町村に対しては、域内の学校単位の状況が把握できる調査結果を返却する。
具体的な教育活動を実施する各学校に対しては、学級単位及び児童生徒ごとの状況が把握できる調査結果を返却する。

  また、返却に当たっては、以下のような留意点を併せて示すなどの配慮が必要である。
   
  全国的な学力調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること。
数値により示される調査結果については、分かりやすい反面、一面的な解釈がなされるおそれがあるため、その数値の解釈と併せて返却すること。
学校評価や児童生徒の学習状況の評価など学校教育にかかわる評価に際して、この調査結果を有用な情報の一つとして活用できるものの、この調査結果は多面的な評価のための一側面にすぎないこと。

  個々の児童生徒に対する調査結果の返却については、学習改善や学習意欲の向上につながるとの観点を考慮した上で返却することが適当である。

  都道府県等が国から返却された調査結果を独自に公表することについては、国としては都道府県等に対して一定の考え方を示して都道府県等の判断に委ねるべきとの意見もあったが、都道府県等が域内の市区町村等の状況を個々の市区町村名等を出して公表することによる序列化や過度な競争につながるおそれは払拭できないと考えられる。このため、都道府県等に対して、原則として、国における公表レベルや内容と同様の対応を求めることが適当である。
 一方、都道府県等が、域内における学力に関する分布の状況を明らかにするために、個々の市区町村名等を出さないで市区町村、学校、児童生徒の分布の状態を示すことはあり得るものと考えられる。
 また、個々の市区町村、学校が自己の結果を公表することについては、むしろ市区町村等が地域や保護者等に説明責任を果たすこととなるため、これを一概には否定できない面があることから、関係者の意見を聴取しながら引き続き検討していく必要がある。



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