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資料2

中央教育審議会義務教育特別部会における今後の教職員配置等に関する議事概要(速報版)[抜粋]

(○:委員、●:事務局)

【第30回】(8月24日)

 「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議「今後の学級編制及び教職員配置について(中間報告)」の報告」についての説明

委員  教職員配置の在り方については、5月10日の本特別部会において審議され、これまで進めてきた少人数教育を推進するために、早急に次期定数改善計画を策定する必要があるとされた。具体的な方策については、文部科学省の方で、専門的な見地から検討するようにとの話があり、それを受けて、調査研究協力者会議が発足した。当会議は5月20日に初会合を持ち、それ以降10回にわたり審議を重ねてきた。それに加えて、関係諸団体からの意見聴取も行った。そういう経緯の中で中間報告の結果に基づいて、その概要を説明させていただく。

委員  基本的には、第7次改善計画によって、子どもたち一人一人を大切にし、子どもたちの学習状況などの実態や地域の実情に合った効果的な指導が求められるよう、学級編制の弾力化や総額裁量制の導入と相まって、全国的に少人数教育(少人数指導、少人数学級)の取組みが進行してきた。ただ、第7次改善計画ではそうした取組を進めてきており、少人数教育は全国的に進んでいるものの、国・都道府県・市町村・学校の関係は従来のままであるため、学校現場の裁量が十分に高まっておらず、機動的な教職員配置ができないことがあるとの指摘もなされた。そうした指摘を受けながら、第8次改善計画つまり次期改善計画では、従来の第7次改善計画の取組を継承し、それを発展させながら、また最近の新しい教育課題にも取り組めるような、具体的な取組ということが、求められているのではないかということで、「2.今後の取組み」の「(1)基本的な考え方」と「(2)具体的方策」とを審議してきた。
 我が国は、個に応じたきめ細かな指導の充実の観点から、教員1人当たりの児童生徒数が欧米水準となることを目指して教育水準の整備を進め、現在では一定の水準に達しているものの、未だ世界水準には達してない状況にあることを踏まえた上で、今後、我が国が世界最高水準の学校教育を国民に提供できるようにするためには、教育内容の充実を図るとともに教育条件の整備を進める必要があり、次期教職員定数改善計画を策定・実施することが必要。
 次期教職員定数改善計画の策定にあたっては、以下の方向で取り組むことが必要。すなわち、1学校現場が抱える教育上の諸課題に対応しつつ、教育活動全般にわたり、きめ細かな指導が徹底されることを可能とする。2特に学習指導においては、学校現場が各実情に合わせ、より多様な指導形態や指導方法を自主的・自律的に判断・展開することを可能とする。3その際、学校が学級や学年を越えて学校全体として教育上の諸課題に柔軟に取り組むとともに、学校の設置者がその取り組みを支援できるようにするという方向で取り組むことが必要。

委員  具体的には、学級編制の仕組みに関わる改善として、学校現場の判断により地域や学校の実情に合わせた指導形態・指導方法や指導組織とするため、学級編制に係る学校や市町村教育委員会の権限と責任を強化することが必要。
 例えば、義務標準法による教職員の標準定数について都道府県ごとの算定から市町村ごとの算定に改めることや、学校現場の判断で学級編制が弾力的に実施できるよう制度を見直すことについて検討すべき。
 これまで例外的な措置とされていた40人を下回る学級編制が自由に選択できる制度とすることについて検討すべき。

委員  義務教育の教育条件整備における連携協力として、学級編制の仕組みの改善でも述べたとおり、学級編制の基準の決定や教職員の配置は、できる限り市町村や学校におろし、市町村や学校現場の裁量拡大をするといっても、もう一方では教員の給与の負担、任免権等々の人事権というのは都道府県が現行制度では保持しているので、1教職員の人事、給与負担、定数管理について責任を有する都道府県との緊密な連携が円滑な学級編制の実施に不可欠、2少人数学級をはじめとした少人数教育の推進が都道府県の努力で行なわれており、都道府県の協力が今後も重要であること、などから、これまで以上に市町村教育委員会と都道府県教育委員会の連携協力が必要。

委員  教職員定数の改善に関わる具体的な方向性は、これまで少人数教育を充実させてきたわけであるが、これをさらに次期改善計画でも進めていくことを踏まえた上で、教育上の諸課題に対応しつつ個に応じたきめ細かな指導が徹底できるような規模であって、学校現場の判断による指導形態・指導方法や指導組織が最大限の効果を発揮できるような規模の教職員定数の改善を図ることが必要。
 教職員定数の改善にあたっては、各学校、各地域ごとに抱える課題や取り組みの進度などが異なっていることなどを踏まえ、これまでと同様の定数改善の方法を基本とすることが適当。

委員  諸課題の対応として、現在、これまでの教職員定数改善計画の策定の時期にはなかった今日的な教育課題が生じている。学校教育の充実を図るためには、これらの課題に迅速かつ的確に対応することが必要(学習指導の充実、特別支援教育の充実、食育の充実、キャリア教育の充実等)。

委員  その他必要な施策として、教員の改善計画の前提として、教員の資質能力の向上というのがより厳しく求められてくる。もう一つは、政策評価・学校評価を進めていくことが指摘されている。中でも、特に少人数教育の推進という点と第8次改善計画の実施に関わって、どのような指導形態・指導方法や指導組織が最も効果的なのかについて専門的見地からしっかり見極め、その結果を次に必要となる教育施策の実現に役立てることが肝要。

委員  文部科学省に対しては、本協力者会議の中間報告も踏まえ、次期教職員定数改善計画の策定・実施に速やかに取り組むとともに、その他学校教育の質の向上に必要な諸施策を講じることを強く求める。

委員  30人学級を提言に含めなかった理由は以下の通り。本協力者会議では、少人数教育として少人数指導と少人数学級のどちらが効果的なのか議論があったが、財政的制約が厳しく、効果を判断できるデータを整えることはできなかった。少人数指導はティーム・ティーチングなどそれぞれのニーズにあった授業を展開できるといった点で高い評価があった。一方、少人数学級も生活集団と学習集団の一体化を通して、学習意欲を喚起したり、子ども同士の学びあいが活発化したりするといった意見もあった。とりわけ小学校低学年における少人数学級の効果は高いとの意見もあった。しかしながら、少人数学級に関しては、国・都道府県・市町村・学校の関係が従来と変わらないため、問題に迅速に対応できる教員配置ができていない状況にある。少人数学級の判断を市町村や学校現場が行えるような改革が必要との議論もあった。

委員  少人数学級は莫大な財政負担をもたらす。現在の国・地方の厳しい財政事情等を踏まえ、学級編制の標準を一律に引き下げるのではなく、地域、学校にあわせた取り組みを柔軟に進めながら、これまでの少人数教育を拡充していくことが重要と判断した。

委員  今後の課題としては教員1人当たりの児童生徒数がOECD平均に達するよう条件整備を進めるべきとの意見が強調された。

全体討議
委員  加配に関して現場レベルで使い勝手がよいようにするため、制度改善の道が打ち出されたという点で評価できる。加配に伴い、増額要求をする見通しはあるのか。

事務局  第8次改善計画を実施するとすれば、今後5年間行うことになるが、その際、今後児童数の減少に伴い、今後5年間で教職員定数のマイナス9,000人の自然減が見込まれている。例えば、自然減の中で9,000人の改善増を図るとすれば、概算要求上はプラスの要求にはならず、財政当局の理解が得られるのではないかと考えている。

委員  8月11日に総務大臣から「平成18年度の地方財政措置についての各府省への申入れ概要」が出された。総務省が教職員定数の削減を文部科学省に求めているのは容認できない。日本のGDP比教育支出はOECD加盟国の中でも非常に低い。財政論のみにしばられるのではなく、いかにして教育を改善させるのか、定数改善や教育予算を含め検討すべき。

委員  ともすれば教育に対する義務的経費の予算削減が槍玉にあがっている。教職員定数の削減要求に対しては、文部科学省は総務省や財務省にはっきりした要求を出しているのか。

事務局  公務員数削減の動きがある中でも、必要な教職員数は確保しなければならない。財政に関しても要求すべきところは要求すべきと考えている。
 全体的な状況を申し上げると、教職員のうち小学校の教員の数というのは、ピークが昭和58年ごろに、約70万人がいた。この頃が子どもの数もピークであった。以後、子どもの減少に従い、教職員配置改善を進めてはきたが、教員だけでいうと、61万人に減ってきている。ただ、その減り具合は、平成13年度から第7次定数改善で持ちこたえている。そこで、あまり減らないように、第7次定数改善は随分、文部科学省として諸先輩方にご努力いただいたと感謝している。第8次定数改善でも教育の充実の観点から考えていかなければと思っている。

委員  少人数学級ではなく加配による対応は、現状ではやむをえないと考える。加配に加え、外部人材の活用も重要なポイントとなるが、そのための予算配分が各学校に保障されるべき。
 心のケアとしてスクールカウンセラー等ということで言及しているが、他の分野についてもニーズがあると考える。例えば、学習指導については、学習指導カウンセラーというものが文部科学省の事業として若干実施されている。また、特別支援教育についても、コーディネーターというのが各学校において軽度発達障害の子どもについての対応を決める役で、具体的な指導をしたり、助言にまで十分に踏み込めるだけの専門性は必ずしも持っているとはいえないと思うので、そのような意味で外部の専門家の指導・助言がかなり必要になると考える。
 特に少人数学級にならないとすれば、40人に近い学級の中で、確実に平均的には2人前後いるということになるので、相当深刻な問題になると予想されるのでぜひ考えていただきたい。

委員  少子高齢化は我が国の最も大きな教育問題の1つ。子どもたちを取り巻く環境は、離婚家庭の増加等を背景に悪化している。このような変化に対応するためにも、教育条件の改善を図る必要がある。その点で、教員の質・量の確保は重要だ。子どもが減ったから教員の数を減らすというのは教育条件の低下につながりかねない。教職員配置についての中間報告の説明では、市町村や学校現場の自由度を高めるべきとあったが、これに賛同する。概算要求の際にはこの点を踏まえて欲しい。

委員  今、総務省の申し入れについていろいろな議論があったが、現在の地方財政を取り巻く全体の状況を理解いただきたい。
 我々は、地方交付税等の一般財源総額の必要額を確保するため、独自に定数削減を今までやり、人件費カットもやっている。その行革の取り組みが4.6パーセントの定数削減になっている。
 それを上回る4.6パーセント以上を目標として全地方公共団体で取り組んでいこうとする方針のもと新地方行革指針を決めていこうとすることが、総務省から我々に通知をもって要請されている状況にある。
 4.6パーセントを実現しようとすると、本県の例で知事部局の約3倍以上が教職員、警察官の定数も知事部局の7割方で、少子化の中で教職員定数も一定程度見込んでやらないと出てこない。一般の行政部局も、教育部局にも、警察部局にも、大きな課題はあるが、それを一つ念頭においてみんなでやっていこうという中で、このような総務省の申し入れが出たものと承知している。
 今回の教職員配置についての中間報告の説明にあった教育改善の方法論、すなわち加配で制度を充実させようという方法論には疑問を持つ。文部科学省は加配のばらつきはないというが、実際は2〜3倍のばらつきがあったと承知している。文部科学省が各学校の取り組み、実態をどのように把握するのか。地方公共団体は学校の実態を把握している。このようなことを議論されるなら、やはり国庫負担制度を地方分権という趣旨に沿って思い切って見直すべきと考える。方法論について非常に大きな疑問を持った。

委員  日本の公務員数は他の先進諸国と比較しても少ない。本当に適切な事業やサービスを遂行するためには、どの程度の公務員・教員が必要なのかを、財政事情を踏まえて検討すべき。学校や教育に対する要求がこれまで以上に強まり、学校や教育が抱える問題がますます複雑になる中で、これまで日本の教育レベルは教員一人当たりの子どもの数が諸外国に比べ低い状況の中でも、世界でもトップレベルを誇っている。そのトップの座を何が支えているのか。私は、教職員、あるいは日本の学校の基本的な仕組みが非常にすぐれていると思っているが、これらのことを含めて十分に検討した上で、教職員配置について定数の改善と現場における弾力的適用の2つの柱を中心にした中間報告の内容は適当であると考える。

委員  地方の実態を文部科学省がどのように把握するのかとの指摘があったが、報告書にあるように、義務標準法による教職員の標準定数について都道府県ごとの算定から市町村ごとの算定に改めることや、学校現場の判断で学級編制が弾力的に実施できるよう制度を見直す方向で具体的な案を考えれば解決できると思っている。また、道府県では、義務教育国庫負担法に基づいた加配教員を活用しながらの少人数学級を実施している。これは義務教育国庫負担法により安定した財源が確保されて始めて実現するもの。一般財源化されると、一般教職員の確保を含め、特色ある少人数学級・指導のための教員を確保することは難しくなるのではないかと思う。

委員  なぜ、今少人数なのか。それ一つを考えても様々な要因があるが、一人一人の子どもが難しくなっている。非常に厳しい中ではあるが、減らすことではなく、手当てをしながら力をつけていこうという方向に賛成。

委員  学校現場の裁量については、本部会の議論を小川委員から協力者会議にお伝えいただき、中間報告後の本報告に反映してもらいたい。


【第31、32回】(9月1日)

 平成18年度概算要求について

委員  8月24日の義務教育特別部会の速記録には、総務省から出された新地方行革指針という話題が載っていた。その発言の中で、石井委員が今回の新行革指針で4.6パーセントの定員削減を視野に入れなくてはならない。少子化の中で教職員の定数についても見込んでいかなければならないというような発言をされている。一方、5月25日の第12回の義務教育特別部会では、石井委員は、教育は一番重要だから地方を信用してほしい、国の基準があっても、それ以上の支出を教育の方に我々は向けていくことは間違いないというふうに発言されている。8月24日の議事録を見ると、新行革指針の4.6パーセント定員削減をやっていこうということは、国全体の大きな目標であるので、やはりこれには無視できないからというような発言をされている。それだけ見ると、知事さんのお考えの中で心境の変化があったのか。率直に言うと、非常に矛盾してきたなという印象を持った。やはり、国の大きな流れになってきたときに、地方も場合によっては、国の大きな流れに乗っていってしまうという我々の危惧が現実になるのかと思うがいかがか。

委員  基本的に今までの考え方と変わっていない。基本的な考え方はぶれていない。地方は現在厳しい行財政改革に取り組んでいる。総務省から示された新行革推進指針に則って対応していこうと考えている。総務省はそういう呼びかけをし、4.6パーセント以上を目標にされたいという希望数値が示されているが、それに則ってやるかどうかは地方公共団体それぞれの立場がある。本県独自の立場からすれば、今まで1次、2次、3次と行革をやり、なお厳しいため、そういった財政状況の中で、独自の改革が必要と考えていた。その折、国から指針が出たので、我々独自の改革をこの指針に沿った形で検討したいという思いで申し上げた。したがって、公共団体によって取り組みは違うと思う。
 教育委員会部局は知事部局の3倍強の定員があり、警察は7割方ぐらいの定員がある。したがって、今まで知事部局だけ定員を削減してきたが、それだけではなかなか4.6パーセントは出てこない中で、教育も治安も両方大切にしていくことを念頭に置きながら、4.6パーセントを上回る定数削減ができないか、他県の工夫も参考にしてやっていかなければならない。
 ただし、現場における教育水準や教員の定数というものは、なお配慮をしていくという、そういうギリギリの判断をしながら行革を進めていかないといけないと考えている。具体的なことは今申し上げられないが、姿勢はそういうこと。他の地方公共団体も同様に工夫・苦労されていると思う。

委員  この間の地方公務員の中で一番減少が激しいのは小中学校の教員数。小中学校の教員数は昭和58年がピークでだいたい70万3,200名だったが、それ以降児童生徒数の減少に伴い教員数も大きく減っており、平成16年度は61万人位に減っている。すなわち、ピーク時から平成16年までの間に13.2パーセント減少している。一方、一般行政職の数は、平成9年がピークで113万人、平成16年は108万人で4.5パーセントの減。また、一律4.6パーセントということで小中学校教員を減らした場合、だいたい3万人減となり、仮にこれを実施したら、第8次の改善計画はほとんど実現できない。小中学校の少人数学級実現という国民的な要望が強い中、厳しい財政事情を考え9,000名の教員を確保することで第8次計画の基本を構築したいということを前回報告した。4.6パーセントで3万人前後の先生を減らすと第8次改善計画は根底から実現できなくなるのでその点に留意してほしい。

委員  4.6パーセントという定員削減を教職員に対して向けるかどうかという話は、石井委員のこれまでの発言と2点矛盾している。まず、石井委員は以前、教職員の標準定数法については堅持する、国庫負担金については一般財源化しても国による標準が保障されるという一貫した地方団体委員のご意見だった。しかし、4.6パーセントの話は標準定数法ではなく、総務省から出ている定数削減の案を考慮するというお話のように聞こえる。これまでのご主張の標準法の話との関係が矛盾しているように聞こえる。
 また、7月13日に全国知事会が要望を出した要望のなかに、次期教職員改善計画の早期策定という項目が入っている。この要望をしながら、4.6パーセントの定員削減を考慮しながらやっていくというのは矛盾しているように聞こえる。地方に任せてほしいという意見と、標準法を守るとか、改善計画を実施してほしいという意見との間の齟齬が見えてきてしまう。

委員  国家公務員であれ地方公務員であれ、適切な効率化や削減は必要と思うが、国際的に見て日本では、先進国において公務員の数が相対的に少ない。地域住民のサービスの多様化が進む中、その質を下げずに豊かな社会を実現するために、公務員の在り方や地方行政の在り方についての政府の基本的な進め方に大きな問題があると感じている。特定の省庁や政府の決まった方針を前提にして近未来の在り方を考えることは、審議会の場においても、それだけでは十分ではない。

委員  概算要求については、次回以降、審議の検討課題として取り上げてもらえると考えているが、学校評価システムあるいは学力評価、それを実施するための機構定員については個人的に種々の疑問を持っている。

委員  石井委員のお答えを聞いていると、4.6パーセントをかなり意識されている。行革は確かに必要であるが、義務教育費国庫負担金が一般財源化されると、行革の名目で教育費が削られていくという不安を払拭できない。行革が必要となったのは、野放図な公共事業といったものが主な原因であり、その付け回しを教育にもってくるのは筋違い。石井委員は、場合によっては4.6パーセントを少し配慮し、義務教育は犠牲になるんだというお考えもあることを確認させてもらった。

委員  勝手な確認はしないでいただきたい。義務教育は一番大事な分野だとする考えは変わっていない。他県の先進的な取組も少し勉強してほしい。標準法を守りながら4.6パーセント以上の定数削減をしている県もある。それを研究して討議をされてはいかがか。現在、地方交付税等の大幅削減の動きに対抗すべく、地方が一団となって行革を行っていく。地方がこれだけ努力しているのに国は何もしていないということを示していかないと、地方は行政や教育などいろんなことができなくなる。そういう大方針のもと地方は真剣に考えて取組を行っている。他県の取組について詳細に調査した上で議論することを提案したい。

委員  小中学校の教職員も県費負担教職員は県の職員なので、鳥取県でも教職員の数は知事部局の数の3倍近くになる。仮に4.6パーセントにこだわるのであれば、教職員を聖域化すると一般職員を多く削減しなければならないことになる。

委員  この問題についてのここまでの議論はバーチャル議論になっている。鳥取県にも総務省から新行革指針がきて、プランをつくれ、目標を定めよ、ヒアリングをするとあるが、これは無効であると思う。というのは、現在、地方分権推進の法律制度が整い、通達行政が廃止され、地方団体に対して義務や制約を課す場合には法律ないし法律に基づく政令により行うことになった。ただし、法定委託事務については、遂行の最小限の範囲で大臣が事務処理基準を定めることができる。これが唯一の例外。今回の行革はまさしく自治義務であり、総務省からそれについてのあれこれ言ってきてはならないはずである。無効なものに振り回されているところが多いということ。県から市町村にも同じ趣旨を伝えよと言うことなので、鳥取県では内容をバージョンアップし、県は自主的な取組を行うことや、市町村も独自の取組が可能ということを示して、違うバージョンで配付した。
 4.6パーセントとは全く意味のない数字である。地方団体それぞれはロケットに例えると発射台が全く違う。行革をしたところも野放図にしてきたところもある。野放図にしてきたところは削る余裕があるが、真剣にやってきたところは削る余地がない。
 両方ひっくるめて一律4.6パーセント削りなさいというのは非科学的な代物。行革は最終的には財政が維持できるかどうかである。財政運営を破綻させないための方策を真剣に考えている。公務員の給料も公共事業も金食い虫である。ハード事業を重視するのか、教育などの対人サービス行政を重視するのかは選択の問題である。したがって、見識があらわれる問題だと思う。
 鳥取県では職員数を切り詰めており、これ以上切り込めない。具体例としては、仕事ができない人については、きちんとした評価を行い、再教育プログラムにかけても改善しない人には辞めてもらった。また、給与単価を世間並みに落としたり、渡り是正も行った。それから、一定の職域について民間に移したり、国への手弁当の職員派遣をカットすることも考えている。このような行革は、それぞれの地方団体がその流儀に従い行うものである。行革は納税者、県民のために行うものなので、国に対する説明責任を果たすものではない。あまり、総務省の通知にとらわれる必要もない。


【第35、36回】(9月9日)

 「義務教育における地方分権の推進に関する基本的考え方(提言)について説明

委員  わが国の社会が成熟し、国民の価値観が多様化する中、教育に対する国民のニーズも多様化している。こうした社会の変化に対応し、都市自治体が、創意工夫や地域の教育力を活かしながら義務教育の活性化を図り、地域の実情にあわせて自主・自立的に教育行政を展開できるよう、地方分権時代にふさわしい新たな地方教育行政の確立に向けて、制度改革を推進していく必要があると考える。市長会では、本年3月に義務教育制度検討会議を設置し、財政論だけでなく、教育論や制度論についても幅広く議論してきた。これらの改革は、国庫補助負担金の廃止、税源移譲を基本とする三位一体改革と併せて推進していくことが重要と考えている。

委員  1.「国と地方の責務を法律上明記」について、分権時代にふさわしい地方教育システムに改革していくためには、まず国と地方の責務を法律上明記する必要がある。その際、国の役割は、義務教育標準法の制定、学習指導要領の策定、教科書検定の実施、教員免許制の維持など、教育の分権化を踏まえた学校制度の基本的な枠組みの制定や、教育内容に関する全国的な基準の設定を基本とすべきである。
 また、国は、地方が義務教育を実施していくために必要な財源を確実に確保する必要がある。地方は全国基準を踏まえながら、主体的にそれぞれの地域の実情に応じ、教育内容の充実、特色ある教育の推進に切磋琢磨し、創意工夫を凝らしていく必要がある。こうした義務教育における国と地方の役割、基本的責務を法律で明確にする必要があると考える。

委員  2.「教育水準の維持向上のための法令上の措置―地域間格差を生じさせないため」について、義務教育は国家の基本的政策であり、国にも重い責任があることから、義務教育の水準を維持する責務がある。このため、義務教育費国庫負担金を税源移譲する場合、国はその全額を移譲するとともに、個々の地方自治体が義務教育を適切に実施できるよう、地方財政全体としても、個々の地方自治体に対しても確実な税源移譲と地方交付税により、万全の措置を講ずる必要がある。地方自治体においては、学校教育予算は特に重視されており、こうした国の責任が果たされれば、より一層地方の創意工夫による教育の実施が可能となり、地方の教育水準は確実に維持され、地域格差は生じないものと考える。
 具体的な法令上の措置としては、まず、都道府県等ごとの教職員定数について、警察職員の例や公立高等学校教職員の例により標準数を法令に明記し、地方はそれに基づいて定数を定めることとする。そして、必要な教職員給与の財源を確実に担保するため、その財源について標準数に基づいて、地方交付税上においても確実に措置を講じることを法律上明記する必要がある。
 また、2.の(3)にあるように、地域の実態に即した義務教育推進のために、義務教育標準法の見直しを行う必要がある。特に加配定数については算出基準が極めて不明確であり、透明性を高める必要がある。
 加えて少人数学級編制への対応、不登校児童・生徒対策にかかる人員配置や特別支援教育にかかる人員配置などについて、義務教育制度上明確に位置づけ、あわせて財源措置を講じる必要がある。

委員  3.「市町村の義務教育に関する権限と役割を拡大、自立性の向上」について、小中学校の設置主体は、市町村であることから、市町村の義務教育に関する権限と役割を拡大し、自立性の向上を図る必要がある。
 第1に、人事権については、広域的な人事交流の仕組みも講じながら、中核市をはじめとする都市自治体に所要の税財源措置とあわせて早期に移譲する必要がある。
  また、学級編制と教職員定数とは密接にかかわりがあることから、これらは一括して扱うことが合理的である。学級編制権と定数決定権を一括して中核市をはじめとする都市自治体に移譲し、自主・自立性の向上を図る必要がある。
 第2に、都市自治体における教育行政の実施については、教育委員会を設置して行うか、市長の責任のもとで行うか、選択可能な制度とすべきである。
 第3に、社会教育を含めた生涯学習等の事務は教育委員会という枠を超えて、総合行政の中で、市長主導で、その責任のもとに行うことを原則とすべきである。
  第4に、教育課程の編成、少人数学級、少人数指導についても、市町村の自立とその向上を図っていく必要がある。
 第5に、公立文教施設整備については、負担金・補助金を廃止し、税源移譲と地方交付税による確実な税財源措置により一般財源化を行い、地方の自主的・計画的な取り組みが推進できるようにする必要がある。

委員  4.「市町村の意向を十分尊重」について、地域の実態に即した義務教育の推進のため、義務教育行政の全般について、小中学校の設置者である市町村の意向を十分に尊重するような仕組みとする必要がある。

委員  教育課程の編成においては、都道府県教育委員会との間で、届出、報告或いは承認が必要となっている場合が多いとあるが、小中学校の教育課程の承認、届出は設置者である市町村教育委員会が行っており、都道府県教育委員会に行うというのはあり得ず、いかがなものか。

委員  しかし、これらの過程で、地教行法第48条により、文科大臣及び都道府県教育委員会は、市町村教育委員会に指導、助言を行っており、市町村段階での自由度は極めて低いのが現状であるとあるが、市町村教育委員会では、そのように考えていない。市町村段階での自由度が極めて低いとする事例を示してほしい。

委員  これら負担金・補助金を廃止し、地方が自立的・自主的また計画的に事業を実施できるようにすればとあるが、補助金待ちなどが問題というよりも、地方公共団体の自主財源がなかなか教育費に回ってこないことが問題。一般財源化によって、公立学校施設の整備に目的が特定された国の財源がなくなれば、財政当局に対する教育委員会の要望がますますとおりにくくなるのではないかと心配。子どもたちの生命の安全を考えると、早急に学校施設の耐震化を図るべきであり、なかなか進まない現状で、特定財源として使える負担金・補助金を廃止すべきではない。

委員  全体的にみれば、市町村が責任を持って学校教育に取り組むことが重要であるとされ、本部会の議論の方向と同じ。

委員  しかし、義務教育費国庫負担金を一般財源化するという制約がある中での議論は、非常に残念。通常、義務教育の制度設計が先にあって、その制度を前提にして、それから財源保障の必要性を議論するのが議論の順番。全国市長会の提言はこの順番が逆になっている。
 都道府県等ごとにきちんと教職員定数を法令に明記すべきというところで、その後で、特に加配定数の配分基準があいまいであり、この際、警察方式や高校方式におさめるべきというようなご主張であるが、定数は現行制度で加配定数を含めすべて、都道府県の申請に基づき、都道府県の現状を踏まえた上で都道府県別に算定されており、国が一方的に決定しているわけではないということは、これまでの議論でも明らか。

委員  警察方式では、A県では何人と、極めて硬直的な制度であり、せっかく弾力的な制度がかえって硬直的になり問題だと思う。公立高等学校教職員の例による方法についても、現行制度では小中学校教職員の定数算定方法と同じなので事実認識が違っている。

委員  教職員標準数を確保するために財源措置を法令上に明記すべきとあったが、地方交付税による措置が何を意味するのか分からない。交付税が一般財源である以上、それを制約する規定は考えられないのではないか。それを制約するのは、特定財源となってしまう。特定財源と同じ効果を期待するのであれば、現行の国庫負担金制度でいいのではないか。

委員  全国市町村会の提言について若干認識は異なるが、現場に近いところに権限を下ろすという点は基本的方向としては賛成だ。しかし、それを国庫負担金制度の廃止と結びつけなくてもこういったことが議論可能だと明らかになった印象を持つ。

委員  不登校児との関連で、就学していない外国人の子どもの問題をこの場で一度は議論すべきだと思う。

委員  地方が権限を持ち教育をするという方向性は当部会でも確認されている。提言にあった教育委員会の選択制の導入は気になる。分権化して権限移譲した場合、教育委員会の意味は本格化する。教育委員会は必置とすべき。

委員   4の不登校児対策の明確な位置付けであるが、この中で、全国的に対応する必要があることから、義務教育制度に明確に位置付けるための法整備を行うとあるが、どういう考えか教えて欲しい。

委員  国は何ら不登校児対策を講じていない。われわれは、学校外に施設を設置し特別な先生を雇っているが、これを国として財源的にどう位置付けるのか、財源的にどう保障するのか。教員免許を持った者が携わっており、こういった施設の教員も定数に含めて欲しい。

委員  財源について、現在は県に不登校児対策として申請して、県からおりてくる形になっているのか。

委員  その点は詳しく知らないが、それはないと思う。

事務局  教職員の加配の教員で今の不登校対策について説明すると、現在国は、児童生徒支援加配という仕組みがあり、市町村の要望を県で取りまとめてもらい文部科学省に申請していただいている。文部科学省では、不登校の実態とか客観的指標に従って、各県に予算の範囲で児童生徒支援加配を配分している。トータルで6,377名。各県に数だけ示して、あとは各県が配分をしていく。

事務局  構造改革特区では、不登校児のための特別な教育課程が認められている。教員も配置されており、国庫負担の対象となっている。審議経過報告でも、一定の要件のもとでフリースクールなど学校外の教育施設での学習を就学義務の履行とみなす仕組み等について検討するとされており、この部会でも是非議論いただきたい。

事務局  先ほどの構造改革特区は全国展開する予定。その場合も加配教員は国庫負担の対象となる。

委員  つまり現行で十分対応できるということか。

事務局  現在の仕組みの中で市町村の取り組みとして可能だと思う。

委員  市長が責任をもって教育行政を行うという考え方は評価できる。しかし財源がどこから来るかが明らかでない。地方交付税が削られていっている中で、その上に施設設備費の負担金・補助金も廃止すれば、ここに書かれていることの実現は非常に難しいと思う。むしろ、義務教育の財源はきちんとした国庫で確保すべきとの原則を確立すべき。教材費や旅費が流用される実態に歯止めをかけるために法令化しようという考え方だと思うが、それは市の問題というよりは、都道府県の問題であると感じる。少人数学級も法令化するというアイデアはいいと思う。財源がきちんと確保されることを前提に考えた方がよい。使い勝手を良くするためには、公立文教施設整備費についても総額裁量制のようなかたちにできれば非常にいいと思う。

委員  市長会の提言は、非常に望ましい方向性であるが、現実に交付税について政府の保障は今までの対応では考えられなかった。公立文教施設やその他の財源まで一般財源化すると、市町村を含め都道府県の格差が広がることは、図書費等についてのこれまでの討議などから考えても明らか。こうした問題の担保がどのように保障されるのか疑問。

委員  地方分権の動きをどう捉えるかが問題だ。市町村の職員が義務教育を行っているのに、なぜ人事権もない、財源もない、名目だけでやっているのか。このような例は他にない。教育だけ、治外法権的に首長の総合行政の外に出ているのかというのが基本的にあるが、この提言はそもそも、一般財源化による教育費の削減・流用、あるいは格差拡大への懸念を受けてまとめられた。提言の内容は努力して担保しなくてはならないと考えている。おそれ論よりも、具体的にこれでやれば、これまで皆さんがおっしゃったことが改善されるのではないかということで議論した。


【第37回】(9月30日)

 「教職員人事の在り方等について」の説明・質疑応答

委員  人事権を市町村に移譲する場合の給与負担の移譲についてと、学級編制について学校現場の裁量によって柔軟な運用が可能になる制度の検討についてのこの点についてのご意見を出して頂きたい。また、教員の広域人事、管理職の登用について事務局から資料の提出があるので参照頂きたい。藤田委員から資料の提出があるので、ご説明頂きたい。

委員  「日本の教育を考える10人委員会」は、昨年発足し、同年5月には、義務教育の在り方について、特に財政面を中心に提言をまとめ公表してきた。今回は、教育面を含めた義務教育の在り方について検討をし、2回目の提言をまとめた。義務教育の在り方については、本部会での審議の骨格と基本的には同じ。本日は主として、全国市区町村の教育長と市区町村長を対象に実施したアンケート結果を報告したい。

委員  本アンケート調査の回収率は教育長の方は有効回答が1,125で46.9パーセント、市区町村長は975で、40.6パーセントである。この種の調査方法での回収率では非常に高いといえる。回収率は政令指定都市と特別区がやや低めであるが、大きな偏りはないといえる。

委員  義務教育について国が最小限のことをしなければならないのものは何かを質問した。回答としては、1公立学校として国民の費用負担なく教育の機会を提供すること2国民に対して均等に教育を行うことといったことが極めて重要であるといった回答がでている。ほぼ8割である。

委員  国庫負担が一般財源化の賛否を質問した。一般財源化に反対するが90パーセントであった。

委員  国庫負担で地域格差の拡大が懸念されているが、81パーセント近くが地域格差があってはならないと回答している。

委員  学級編制について質問した。「学級編制基準は都道府県が定め市区町村の要望により特例を認めるようにするべきである、基本的には市区町村が弾力的に実施することができるようにすべき」という回答が76.2パーセントで最も多くなっている。「市区町村が直接基準を設けるべき」が5.7パーセントである。8割以上が市区町村での弾力的運用できるようにと望んでいると言っていい。

委員  学校予算について質問した。学校(校長)の裁量権を拡大すべきとの教育長からの回答が76.6パーセントを占めた。

委員  教職員の人事権について市町村に移譲することについて、賛成・条件つき賛成が39パーセント、反対が38.6パーセントであった。大規模な政令指定都市や特別区には賛成が、小規模な市町村にいけばいくほど反対意見が多くなった。

委員  人事権を市町村に移譲した場合の給与負担については、市区町村長のアンケート調査結果では、都道府県負担が824、割合で86.6パーセントを占めた。基本的には多くの市町村長は給与負担は従前どおり都道府県負担や国庫負担すべきと考えている。

委員  学級編制基準について理想の規模を質問した。35人が232で20.9パーセント、30人が624で56.2パーセント、25人がよいというのが111で10パーセントで圧倒的多数の教育長が現状より小規模が理想と考えていることが分かった。

委員  教育長へのアンケート結果。教育予算が充足しているか、不足しているかを質問した。回答の内685人、61.0パーセントが不足している、291人、25.9パーセントがかなり不足していると回答した結果となった。

委員  市区町村長への質問。市町村に人事権とともに給与負担を移譲した場合にどのような方向がより確実に財源確保ができるかということで選択肢を設けて質問した。市区町村長の784名が割合で82.5パーセントが国庫負担金が最も望ましいと答えた。

委員  教育長と市区町村長へのアンケートでは人事権を含め、地方の裁量権は拡大して欲しい、財源は国庫負担金や都道府県負担で安定的に確保すべきとの結果が現れた。換言するならば、人事権と財源を切り離し、義務教育の全国的な水準を保ちながら地方の裁量・創意工夫を活かすべきとの結論が導きだされる。今回のアンケート結果を踏まえた義務教育の改善充実を進めるべきというのが提言の趣旨である。回収率は郵送法による調査としては非常に高く、信頼性がある。

委員  また、今回の回収率は郵送法では非常に高い(教育長:47パーセント、市区町村長:41パーセント)。これは関心率と重要性を反映している。「10人委員会」は、文部科学省や地方6団体のように、権限や利害に絡まない団体なので、今回の調査結果は、対象者の代表性を的確に反映しているもの。民意を反映するのならば、今回の調査結果を十分に踏まえて欲しい。

委員  中核市が人事権の移譲を求める理由には、中核市には教職員の研修義務がある、研修で育てた教職員が周辺部にでるのは不合理だという話があるのは承知している。改めてお願いしたいのは、中核市と周辺部の人事交流を閉ざさないことを確保して欲しい。周辺部に教員が異動するといっても、中核市の周辺の町村に異動するわけで、周辺の教育力が高まれば中核市の教育力も高まる。周辺部での勤務が1つの研修となって、中核市に戻ってくるときに教員は一回り大きくなって返ってくる。中核市もその周辺の両方にとっていいことである。その意味でも、中核市に人事権を与える際には、交流の道を閉ざさないで欲しい。条件を付けた上で人事権を与えないと問題があると強く思っている。

委員  中核市の考え方で、人事権を中核市に移譲する点では統一意見になっていると思うが、給与負担については中核市の中でも意見が異なる。この点をつめる必要がある。中核市以外の人事については、小さな町村から大きな都市まで一律に人事権を移譲するのは、人事権を行使する上で困難がある。資料2の2ページを見て欲しい。福島県の例だが、採用でも異動でも、広域人事を行わないと教職員が確保できない、一旦都市部に入った教員は動かない等の弊害を解消するために、教職生活の間に2管内・3地区を必ず経験しなさいという条件を示さないと人事が停滞する。このような条件付けを行わないと人事が動かなくなる。大都市への人事権移譲と小規模市町村への人事権移譲は分けて考えるべき。

委員  藤田委員のアンケート調査で学級編制を県が行うか、市町村が行うかという点について。都道府県が基準を定め市町村の要望によりこれを認めるようにするという回答が圧倒的意見であることを踏まえた上でお願い。

委員  少人数学級と学級編制基準をどうするかということで、協力者会議の報告をした。学級編制基準の権限は市町村や学校に下ろすべきとの方向がある。ただ、学級編制決定基準を市町村の権限としたとしても、特区で認められている市町村で教員を採用することを全国化され、独自に学級編制をすることができるという可能性が高まることもあるが、市町村で実際にできることは、財政的面からも限られている。

委員  したがって県の少人数指導加配を市町村がどの程度自由に活用できるかにかかっている。ただ、ご承知のように加配をどのように活用するかを決定する権限は給与を負担している県がもっているので、県がその権限をどう使うかの方針が重要となる。

委員  藤田委員のアンケートにあるとおり、市町村が学級編制基準を決定できるようにして欲しいということはあるが、基本的にはその責任というのは給与負担を行っている都道府県がどうするかということを踏まえながら、都道府県の基準を超える独自の市町村の学級編制基準をやりたい場合には最大限可能にするような制度設計を文部科学省には考えて欲しい。

委員  実際には市町村へ権限を移譲していく方向とそれを可能にしていくような給与負担、人事権は、今の制度では乖離している。運用次第では市町村への権限委譲をしても実態が変わらない場合も出てくるのでその辺の制度デザインを文部科学省にしっかり対応して欲しい。

委員  これによると、財源と人事権は離して考えるべきと解釈した。この点は賛成。ただし、義務教育の根幹を維持して、義務教育の質的向上を図るには、優れた教職員の確保が不可欠であり、とりわけ教職員の人件費は全額国庫負担として全国格差が生じないようにすべきと考える。

委員  合併の結果中核市になる市町村が多い。合併は行財政が逼迫しているから行うのが現状。人事権を移譲する場合も、全部を移譲するのではなく、1つのラインを決めるべき。中核市と周辺市町村との連携、すなわち広域人事を周辺市町村は重視している。合併の結果、中核市になると教職員の囲い込みが行われることが懸念される。周辺市町村の声にもしっかりと耳を傾けるべき。

委員  2つの観点がある。1つは、現場に近いところに人事権を移すと現場が活性化する。ただ、人事が固定化していくのは問題。東京都はどう考えるのか。現在は人事権は都が一括で持っている。都と区の関係はどうするのか、大規模な市との関係はどうするのか。中核市が人事権を求める背景には、研修権を持つようになり、金をかけて研修をした優秀な教員が流れることの懸念があった。

委員  もう一つは、人事権を持つ複数のグループが県内でてきて、各グループで利害関係がでてきたら困る。とりわけ待遇で格差が生まれると人事の固定化は必至。同一労働、同一賃金・同一待遇を確保しない限りスムーズな人事異動は難しい。

委員  中核市に人事権を移譲する点については良いと思う。現場に近いところに人事権を移譲するのも望まれているところ。広域人事を確保することが重要。資料2を見ると、福島県や香川県の例があるが、これまでも広域人事に関してはさまざまな工夫がなされてきた。人材育成の面からも偏りが生じないようにする規定を具体的に検討する必要がある。

委員  小川委員の意見に原則賛成。アンケート結果は、「市区町村が基準を設けて実施すべき」と言うのは5.7パーセントと少なく、むしろ「都道府県が基準を設定して市区町村の様々な要望を実現できる特例を認めるべき」というのが76.2パーセントと大多数を占めている。これらの結果をみて、財政事情や行政の現状を反映しながら、現実に教育を運営する上で直面している課題をどう改善するかという点で、適切な意見が反映されていると思う。人事交流も重要だと思うが、人事権移譲の条件として人事交流を付すことは必要だと思う。

委員  学級編制について政令指定都市・特別区では、「市区町村が基準を設けて実施すべき」という回答が比較的高く、それ以外の市町村とではまったく別の回答結果となっている。この点を考慮に入れて制度設計すべき。


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