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参考資料2

平成17年5月23日中央教育審議会総会(第48回)資料1

義務教育特別部会における審議経過報告(抜粋)


 国際的に質の高い教育の実現を目指す −義務教育の使命の明確化及び教育内容の改善−

 
(2) 教育内容の改善

  ア 基本的な理念・目標

 現行の学習指導要領の学力観を巡る様々な議論が提起されているが、基礎的な知識・技能の育成(いわゆる習得型の教育)と、自ら学び自ら考える力の育成(いわゆる探究型の教育)とは、対立的あるいは二者択一的にとらえるべきものではなく、この両方を総合的に育成することが必要である。

 したがって、基礎的な知識・技能を徹底して身に付けさせ、それを活用しながら自ら学び自ら考える力などの「確かな学力」を育成し、「生きる力」をはぐくむという基本的な考え方は今後も維持することが適切である。

 子どもたちの学力の現状については、昨年12月に公表された国際的な学力調査の結果から、成績中位層が減り、低位層が増加していることや、読解力、記述式問題に課題があるなど低下傾向が見られたところである。また、先般公表された国立教育政策研究所の教育課程実施状況調査の結果からは、国語の記述式の問題について正答率が低下するなどの課題が見られた。しかし、同調査からは、学校現場における基礎的事項を徹底する努力等により、学力向上に向けての一定の成果も現われ始めている。なお、学習意欲、学習習慣・生活習慣などは、若干の改善は見られるが、引き続きの課題である。

 このような子どもたちの実態等を踏まえ、
 将来の職業や生活への見通しを与えるなど、学ぶことや働くこと、生きることの尊さを実感させる教育を充実し、学ぶ意欲を高めること、
 家庭と連携し、基本的な生活習慣、学習習慣を確立すること、
 「読み・書き・計算」などの基礎・基本を確実に定着させ、教えて考えさせる教育を基本として、自ら学び自ら考え行動する力を育成すること、
 国際社会に生きる日本人としての自覚を育てること、
などを重視する必要がある。

  イ 学習指導要領の見直し

 義務教育の目標を明確化することに連動して、学習指導要領についても、各教科の到達目標を明確に示すことが必要である。
 また、学習の評価についても、目標に照らして子どもたちのより確実な修得に資するようにすることなど、具体的な評価の在り方について今後検討が必要である。

 学習指導要領は、すべての児童生徒に対して指導すべき内容を示す基準であり、学校においては、必要がある場合には、これに加えて指導することができるものである。国民として共通に学ぶべき学習内容を明確に定めた上で、学校ができるだけ創意工夫を生かして教育課程を編成できるようにすることが求められる。

 総合的な学習の時間については、学校によっては大きな成果を上げている一方、当初の趣旨・理念が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる。思考力、表現力、知的好奇心や自分で考える力などを育成する上で総合的な学習の時間の役割は今後とも重要であるが、同時に、授業時数や具体的な在り方については再検討が必要である。また、学習が効果的に行われるよう、学校に対する支援策を充実することが必要である。

 国語力はすべての教科の基本となるものであり、その充実を図ることが重要である。また、科学技術の土台である理数教育の充実が必要である。このため、全体の見直しの中で、それらの授業時数の在り方について検討する必要がある。また、グローバル社会に対応し、小学校段階における外国語教育を充実する必要がある。具体的な実施方法については専門的な検討が必要である。さらに、社会のIT化に対応し、学校の情報環境を整備し、情報リテラシーを高める教育を充実することも重要である。

 学校図書館は、子どもたちの読書活動や主体的な学習を支えるために欠くことのできないものであり、その充実を図る必要がある。その際、司書教諭や学校図書館を担当する職員の役割が更に重要になることから、それらの充実を図る必要がある。司書教諭の専任化が求められるとの意見も出された。

 指導方法については、従来の一斉指導の方法も重視することに加えて、習熟度別指導や少人数指導、発展的な学習や補充的な学習などの個に応じた指導を積極的に実施する必要がある。これらの指導形態における指導方法の確立が望まれる。また、教科書、教材の質、量両面での充実も必要である。

 子どもたちの健やかな心と体の育成も重要な課題である。学校生活を通じて社会性や集団性を育成すること、健康で安全に生活できる能力を身に付けさせること、子どもたちの創造力や体力をはぐくむ教育活動の充実を図ることが必要である。

 教育活動の充実のためには、子どもたちが過ごす学校の規模が適正であることも必要と考えられる。

  オ 教職員配置の改善

 義務教育のナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための諸条件を整備する観点から、国が学級編制及び教職員配置についての基準を明確にすることは重要である。

 義務教育の質を高めるためには、児童生徒へのきめ細かな指導が不可欠であり、これまで進めてきた少人数教育を一層推進するため、早急に次期定数改善計画を策定する必要がある。次期計画においては、少人数学級も含めて少人数教育の充実を図る方策を検討する必要がある。

 検討に当たっては、児童が集団生活になじむまでの指導が重要である小学校低学年で少人数学級のニーズが高いこと、生活集団としての機能を保つためには学級にはある程度の大きさも必要であること、児童生徒数の増減で機械的に学級編制を変えるのではなくより弾力的な運用が望まれること、学級編制については校長の裁量を拡大することが望まれることなどを踏まえ、学校現場の裁量により、柔軟な運用が可能となる制度について検討することが求められる。


 現場の主体性と創意工夫で教育の質を高める −学校・教育委員会の改革−

 
(1) 学校の組織運営の見直し

  ア 学校の自主性・自律性の確立

 学校が主体的に教育活動を行い、保護者や地域住民に直接説明責任を果たしていくためには、学校に権限を与え、自主的な学校運営を行えるようにすることが必要である。
 現状でも、校長の裁量で創意工夫を発揮した特色ある教育活動を実施することが可能であるが、人事面、予算面では不十分な面がある。
  権限がない状態で責任を果たすことは困難であり、人事、学級編制、予算、教育内容等に関し学校・校長の裁量権限を拡大することが不可欠である。

 教職員の人事について校長の権限を拡大することが必要である。例えば、教員の公募制やFA(フリー・エージェント)制などを更に推進することが求められる。

 学級編制を含めた指導方法の工夫改善については、各学校がそれぞれの実情に応じて個別に判断することが適当である。このため、各学校が個別に学級編制を行うなど学校現場の判断が尊重されるよう現行の学級編制の仕組みを見直す必要がある。

 教育内容に関する学校の裁量を拡大するとともに、予算面で、学校の企画や提案に基づいた予算の配分や、使途を特定しない裁量的経費の措置など、学校裁量の拡大を更に進めることが必要である。

  学校運営を支える機能の充実のため、教頭の複数配置を引き続き推進したり、主任が機能するよう更にその定着を図るとともに、今後、管理職を補佐して担当する校務をつかさどるなど一定の権限を持つ主幹などの職をおくことができる仕組みについて検討する必要がある。
 また、事務の共同実施や共同実施組織に事務長を置くことを検討するなど、学校への権限移譲を更に進めるための事務処理体制の整備を進めることが必要である。

 機動的な学校運営のため、前述の教頭の複数配置や主任制、主幹制なども活用しつつ校長がその権限と責任において決定すべき事項と、職員会議の有効な活用により広く教職員が参加して行われることがふさわしい事項とを区別して学校運営に当たることが重要である。
 これによって、学校の意思決定が、校長のリーダーシップの下に、高い透明性を確保し、公平・公正に行われることが重要である。また、決定した事項についての教育委員会や校長等の説明責任が常に意識されることが重要である。

 教師が以前に比べ多忙になり、子どもと触れ合う時間が確保できないという指摘がある。今後、学校が処理する事務・業務の見直しや、国・都道府県・市町村が行う調査等の精選により、学校の負担軽減を図ることが必要である。

(3) 国と地方、都道府県と市町村の関係・役割

  ア 国、都道府県、市町村それぞれの役割と関係

 義務教育の実施にあたって、ナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための諸条件を担保する観点から、国は、学校制度の基本的な枠組みの制定や教育内容に関する全国的な基準の設定を行い、その上で、地方は、それぞれの地域の実情に応じ、主体的に教育の質を高め、ローカル・オプティマム(それぞれの地域において最適な状態)を実現するとともに、国、都道府県、市町村それぞれが必要な財源措置を行っていくことが必要である。

 教育行政における国、都道府県、市町村の関係・役割については、平成10年の本審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」において整理がなされ、それをもとに、教育長の任命承認制度の廃止や国や都道府県の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し等が行われたところである。

 今後さらに、国の定める教育内容、教職員配置、学級編制などに関する基準は、できる限り大綱化・弾力化したり、最低基準性を明確にしたりして、地方の裁量を拡大することが必要である。

 また、地方の中でも、義務教育の直接の実施主体である市町村や学校に権限の移譲を進めるとともに、市町村が設置者としてその地域の状況に応じて独自の教育方針や基準を設定するなど、地域の実情に応じた教育を実現できるようにしていくことが必要である。

  イ 市町村への教職員人事権の移譲

 現在、県費負担教職員の給与負担(給与の支出責任)と人事(任命)権は、基本的に都道府県にあるが、例外的に政令指定都市については人事権が、中核市については人事権のうち研修に関する実施義務のみが、都道府県から移譲されている。

 これについて、義務教育諸学校は、市町村が設置し教職員も市町村の職員でありながら、給与負担と人事権が県にあるのは制度の不統一であり好ましくないとの意見や、県費負担教職員が地域に根ざす意識を持ちにくくなっているとの意見、また、より現場に近いところに権限をおろすべきであり、人事権についても県から市町村にできる限り移譲すべきとの意見、さらに、人事権は基本的に義務教育の実施主体である市町村にあるべきものであり早期に移譲すべきとの意見などがあった。

 とりわけ、中核市については、既に研修実施義務が移譲されており、これに加えて人事権全体についての移譲を求める意見が強くあるとともに、一部の都道府県の県庁所在地や大都市周辺部には、中核市の要件(人口30万人以上)には届かないものの、それに準ずる規模を有する市も多いことなど、一定の規模を有する市町村についても人事権の移譲を求める意見が多かった。

 一方、とりわけ町村には小規模なところも多く、給与や人事権の行使に伴う負担には耐えられないとの意見や、中核市など大規模な市町村抜きでの広域の人事異動は考えられないなどの意見、また、県内に一又は複数の人口30万人以上の広域組織を作るなどの意見があった。

 これらの意見を踏まえ、教職員の人事権については、市町村に移譲する方向で見直すことを検討することが適当である。
 一方、現在の市町村の事務体制で人事関係事務を処理できるか、離島・山間の市町村を含め県域で人材が確保できるかにも留意する必要がある。
 このため、当面,全ての中核市に移譲し、その状況を踏まえつつ、特例市などその他の市町村への人事権移譲について検討することが適当である。
 また、人事権の移譲に伴い、都市部と離島・山間部等が採用や異動において協力し、広域で一定水準の人材が確保されるような仕組みを新たに設けることが不可欠である。
 なお、教職員人事権を市町村に移譲する場合には、その給与負担についても併せて市町村に移譲すべきとの意見も出された。これについては、今後、義務教育に係る費用負担の在り方について議論する中で検討することとする。


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