ここからサイトの主なメニューです

ダウンロード/印刷用(PDF:46KB)]

参考資料

ポスト2005における文部科学省の
IT戦略の基本的な考え方

平成17年10月24日
文部科学省IT戦略本部


【基本的な考え方の位置付け】

 「2005年までに世界最先端のIT国家となる」という目標を掲げた、政府の
e-Japan戦略」に基づき、文部科学省では、教育の情報化等のIT関連施策を戦略的かつ重点的に実施し、その総合的な推進を図ってきた。
 しかしながら、我々が生きる社会を取り巻く環境もめまぐるしく変化している。とりわけ、少子高齢化に代表される社会構造の変化、あるいは、若者の自立支援といった新たな問題も発生しており、文部科学省として、教育・学習という観点からこれらの問題に取り組むことが強く求められている。
 また、情報社会の進展に伴い、IT環境の整備に加え、その利活用に重点を置くことが重要となるとともに、情報モラル教育や有害情報対策等の「情報化の影の部分」への対策も極めて重要となっている。
 政府のIT戦略本部では、2006年度以降の新たな戦略を策定することとしている。上記の状況を踏まえ、文部科学省としての今後中長期的に目指すべき方向性及び具体的な施策を基本的な考え方としてとりまとめ、政府の新たな戦略への反映を図ることとする。


【目指すべき方向性】 

1.学校教育の情報化の一層の推進(初等中等教育段階)

   我が国が最先端のIT国家であり続けるため、新しいIT社会のフロンティアを切り拓く開拓者となることを目指し、学校教育の情報化を推進することとし、速やかにIT環境の整備を行い、教員のIT指導力の向上及びIT教育の 更なる充実を図る。また、校務の情報化を促進し、学校運営の効率化等ITの多面的な活用を促進する。

2.人と人との交流を通じた生涯学習の増進に向けた基盤の形成

   ITを活用した学習コミュニティ(学習とその成果を活用できる場と人のネットワーク)が構成されることによって、人の交流や、知識の蓄積・活用が進み、学習の効果をもたらすような仕組みをつくる。

3.高度情報社会に向けた最先端の「知」の探求と大学づくり

   世界最高水準の科学技術創造立国を実現するため、より一層の科学技術・学術や産業の国際競争力強化、世界に先がけた安全・安心な社会の構築を目指した、先端的な情報通信分野の研究開発及び研究開発の情報化を推進する。
  併せて、高度情報社会に向けた大学づくりなど、高等教育の活性化を図る。

4.心身ともに豊かな活力ある社会の実現に向けた文化芸術の創造と発信・交流 やスポーツの振興

   ITの活用により、文化芸術やスポーツを振興するとともに、それらの情報を国内外に発信することで、国民一人ひとりの文化芸術・スポーツへの関心を高めるとともに、海外における日本文化の理解の向上や我が国の国際競技力の向上を図り、心身ともに豊かな活力ある社会の実現を目指す。

5.情報化の影の部分への対応

   世界最高水準の科学技術創造立国を実現するため、より一層の科学技術・学術や産業の国際競争力強化、世界に先がけた安全・安心な社会の構築を目指した、先端的な情報通信分野の研究開発及び研究開発の情報化を推進する。
 併せて、高度情報社会に向けた大学づくりなど、高等教育の活性化を図る。

【具体的施策】

1.学校教育の情報化の一層の推進(初等中等教育段階)

  (1)IT環境の整備

 
ハード環境整備の速やかな実現
 
概ねすべての公立小中高等学校等が高速インターネットに常時接続できるようにするとともに、各学級の授業においてコンピュータを活用するため、必要な校内LANの整備やIT授業などに対応した「新世代型学習空間」の整備等を推進することにより、すべての教室がインターネットに接続できるよう、IT環境の充実を図る。併せて、教育用PC1台あたり児童・生徒5.4人の割合を達成するよう、IT機器の整備を図る。
ITを活用した教育の効果の明確化
 
ITを活用した教育の効果を明らかにするため、具体的・定量的な評価・分析を行い、その結果を普及する。
地域や学校の特色を活かしたIT環境の整備
 
地域や学校の特色等を活かしたIT環境の整備を促進する。
私立学校のIT環境の整備
 
私立小中高等学校等が、公立学校と同程度の水準の整備を目指して、コンピュータの整備、インターネットへの接続等を行えるようにする。


  (2)教員のIT指導力の向上

 
公立学校教員のIT指導力の向上
 
引き続き、概ねすべての教員がコンピュータ等のITを用いて子どもたちを指導することができるようにする。
「教員のIT指導力」の基準の具体化・明確化
 
「教員のIT指導力」の基準の具体化・明確化を図り、当該基準に基づく具体的目標を設定する。
設定した具体的目標に基づいた研修プログラムを策定し、「教員のIT指導力」の向上を促す。
「教員のIT指導力」の教員評価への反映について、各地方公共団体に検討を促す。
優れたIT指導力を有する「IT指導教員」等認定制度を導入し、2007年度までに各校に配置するように、各地方公共団体に検討を促す。


  (3)IT教育の充実

 
学校段階に応じた体系的な情報活用能力の育成
 
小中高等学校段階を通じた体系的な情報活用能力の育成を図る
教科指導における学力の向上等のためのIT活用の推進
 
子どもたちの学習に対する興味・関心・理解を促し、個に応じた学習を支援するために、教科指導におけるIT活用を推進する。
英語教育・国際教育のために、教科指導におけるIT活用を推進する。
教科指導で活用するためのコンテンツの普及・促進(ネットワーク上での配信を含む)を図る。
障害のある児童生徒の学習の支援のためにITを活用する。
不登校児童生徒の学習の支援のためにITを活用する。
高度なIT人材の育成
 
高等学校段階において、将来、IT分野の最先端で活躍する高度なIT人材の育成を推進する。


  (4)校務の情報化の促進

 
教員のコンピュータの整備
 
すべての公立学校教員にコンピュータを配備することができるよう、IT環境の整備の促進を図る。その際、児童・生徒の個人情報の外部漏洩等を防止するためのセキュリティの確保に十分配慮する。



2.人と人との交流を通じた生涯学習の増進に向けた基盤の形成

 多様な個人のニーズに応じた的確な学習機会の充実や社会的課題の解決に資するため、ITを活用した生涯学習の振興を図る。
具体的施策は以下のとおり。

 

(1)相互に支え合う共同体に参加する生涯学習の実現

 個人の様々な学習成果が発信され、他の人と共有されることで、新たな学習の動機付けに結びつくなど、学習者がコミュニティに主体的に参加し、互いに協力し合うような、学び合いによる課題解決型の生涯学習の振興を促進する。

 
自律的に学習を展開する持続的な学習コミュニティの形成支援
 
ITを活用したバーチャルな学習の場の形成など、学習課題に関する情報の集約や学習者同士の連絡を密にする体制整備を支援することにより、地域の相互扶助(学び合い)による学習活動への参加を促進し、地域住民が社会の形成に主体的に参画する環境の整備を図る。


 

(2)生涯学習に関する体系的な情報の整理・提供

 情報を整理・集約して付加価値を高めることにより、地域の学習活動や課題解決への支援を行う生涯学習に関する情報提供機能の向上を図る。


 
生涯学習情報や学習コンテンツ検索及び学習の成果を活用できるシステムの構築支援
 
学習者のニーズに応じた学習機会の提供に資するため、講座・指導者・施設等の生涯学習情報及び学習コンテンツの検索システムの充実を図る。
学習者の動機付けを高めるよう、学習の成果が蓄積・整理され、今後の活動に活かすことができるシステムの構築を支援する。


 

(3)ITの活用による社会教育施設の活性化


 
公立図書館の地域の情報拠点としての機能の充実
 
公立図書館の地域の情報拠点化や連携・協力の方策等をはじめとする、これからの図書館の在り方に関する調査研究を実施し、その成果を広く普及する。
地域住民の学習活動に資する情報を必要に応じて適切に提供できる環境の整備を促進する。
図書館の利用者を助けるため、司書の情報技術等に関する能力の向上を図る。
図書館の所蔵する資料に関する情報や、電子化された情報等の公開・発信を進める。
図書館ネットワーク整備の促進により、図書館間での情報の共有が行われる環境の普及を図る。

公民館や博物館等の社会教育施設においてIT環境整備を促進し、多様な学習機会・学習情報を提供することにより、国民の学習活動の促進につながる施設の機能向上を図る


 

(4)社会構造の変化に対応した「IT利活用」の推進

 めまぐるしく変化する経済・社会の中で、多様な個人のニーズに応じた学習を支援する。


 
少子高齢化・核家族化等の社会の変化や、個人の生活スタイルの変化に対応した生涯学習環境の整備を推進する(携帯電話を活用した学習や自宅における学習の推進など)

若者の「学び直し」の機会の提供
 
フリーターや若年人材等が、職業意識や職業能力を向上できるよう、e-Learningを活用した学習支援システムの開発やコンテンツの作成を行う。

高齢者をはじめとした、ITになじみの薄い人たちへの普及啓発活動を推進する


 

(5)情報化に対応した著作権に関する知識・意識の普及・啓発

 
国民一般のための著作権に関する知識・意識の普及

 
学校における著作権教育を推進するため、教員向けの講習会の開催、学習教材の開発等を実施する
セミナーの開催、ホームページを活用した情報提供等を総合的に展開する。




3.高度情報社会に向けた最先端の「知」の探求と大学づくり

 

(1)情報通信分野における研究開発の推進及び研究情報基盤の形成

 情報通信技術は安全・安心で快適な個人生活や社会・経済活動に不可欠な基盤的役割を果たしており、継続的な技術革新が重要である。我が国がこれまで培ってきた世界に誇れる強い技術を強化する一方、重要性の高まる技術の研究開発の一層の強化と実証等を推進する。また、研究開発活動の生命線としての性格を有する研究情報基盤の整備を行う。
 具体的施策は以下のとおり。


 
知的ものづくりや科学的未来設計、科学の未到領域へのブレークスルーを可能とする高度コンピューティング技術
 
世界最先端・最高性能のスーパーコンピュータシステムの開発・整備及び利用技術の開発・普及を推進する。
超小型大容量ハードディスク、高機能・超低消費電力メモリの開発など我が国が優位なモバイル、光、デバイス技術等を核にした研究開発を推進する。

安心・安全・元気・感動・便利社会を実現するための、強固・大規模・高信頼・高安全な社会を支える基盤的ソフトウェア技術や、豊かさ・快適さ・楽しさを育む人に優しいソフトウェア技術
 
高い生産性を持つ高信頼ソフトウェア作成技術や情報の高信頼蓄積・検索技術など基盤ソフトウェアの開発を推進する。
3次元映像・超高品質画像等のコンテンツの生成・編集支援に関わる技術開発を推進する。

加速的に増大し続ける情報を高効率に分析・処理・蓄積・検索する技術と、価値ある知的資産の創成と価値の発揮を容易にする学術的・科学工学的知的基盤や高品位なデータベースの整備・運用
 
科学技術に関するデータベースの整備・高度化や研究情報の収集・発信体制の強化を推進する。

誰もが時間と場所を問わず、生き生きとした社会・文化活動を思いのまま安全に展開することのできるユニバーサルコミュニケーション技術
 
高機能電子タグ、組込みソフトウェア等ユビキタスネット社会を支える基盤技術の研究開発を行う。
人にとってより使いやすいITシステムを実現するための研究開発を推進する。
大学や研究機関等における研究活動に不可欠な情報ネットワークやコンテンツ等の学術情報基盤の整備を推進する。

上記を支える、基礎研究の着実な推進、国際性豊かな研究者・技術者の産学官における戦略的育成及び人材が能力に応じて活躍できる環境の醸成
 
大学や研究機関を拠点にした高度なIT人材の育成を推進する。
情報通信分野の研究開発プロジェクトにおいて、OJTによる人材育成を推進する。
材料科学、生命科学、宇宙開発、海洋開発、製造技術等との融合領域の研究開発を推進する。



 

(2)高度情報社会に対応した高等教育の活性化

 高等教育の活性化を図るため、大学等におけるITを活用した教育の普及・促進を図るなど、特色ある取組を支援する。また、世界で通用するトップレベルの高度なIT人材を育成する。
 具体的施策は以下のとおり。

 
高度情報社会に対応した大学づくり(環境の整備)
 
教育環境の充実を図るため、大学が所蔵する学位論文、学術論文、データ等の原情報や大学図書館の所蔵資料に関する目録、所蔵情報等について電子化して、いつでも、どこでも利用できる環境を整備する。
大学における外部データベースの利用環境の整備を図る。
学術情報ネットワークの整備を推進する。
各学生が専門分野ごとに必要なIT活用能力を習得するため、大学における情報に関する教育体制の整備を促す。

世界をリードする創造的な人材の育成
 
産学官連携による高度なIT専門人材の育成を推進する
質、量ともに不足している我が国の国際競争力向上のために必要な高度なIT専門人材を広範に育成するため、産業界、大学等の高等教育機関が共通の問題認識を持ち、必要に応じて連携を促進し産学官が一体となった取組を推進する。

高等教育機関等におけるe-LearningをはじめとするITを活用した教育の普及・促進
 
幅広い知識の習得や最先端の講義を受講するため、e-Learningの活用の促進により教育機関間の単位互換を促進するとともに、社会人等を含む学生への継続的な教育機会の提供を図る。
各大学等におけるe-Learningを活用した教育の取組の推進を図るため、国公私を通じた競争的環境の下で特色ある取組を支援する。



4.心身ともに豊かな活力ある社会の実現に向けた文化芸術の創造と発信・交流やスポーツの振興

 

(1)ITを活用した文化芸術の創造と発信・交流

 我が国の文化芸術のデジタルアーカイブ化やITを活用したメディア芸術の振興を図るとともに、それらを発信するための取組を進める。また、コンテンツの円滑な流通を促進するための取組を行う。
 具体的施策は以下のとおり。


 
文化遺産のデジタルアーカイブ化と情報発信
 
我が国の誇る国宝、重要文化財をはじめとする文化遺産のデジタルアーカイブ化を推進し、これをインターネット等を通じて広く発信することにより、日本の歴史や伝統等に対する国民の理解と親しみを深める。

地域文化芸術活動の情報収集・発信による地域社会の振興
 
地域における文化芸術活動の活性化を図るため、地域文化の振興に資する全国的な情報データベースの作成や、各地域の特色ある文化芸術活動に関 する情報のポータルサイト機能の整備を図る。

日本文化の情報発信
 
日本文化の海外発信を促進するウェブサイトを構築するなど、日本の文化を世界に向けて総合的に情報発信することにより、日本への認知度の向上や、人材交流、社会交流等の推進など、日本と諸外国の文化の発展、相互理解の推進を図る。
海外における我が国の著作物の海賊版対策を強化する。

メディア芸術の振興
 
映画、アニメーションやコンピュータ・グラフィック等、ITを活用したメディア芸術の振興のため、これらの制作活動の支援や発表の場の提供等の取り組みを推進する。

コンテンツの円滑な流通の促進
 
コンテンツを安心して利用するためのシステムとして、利用できる範囲を権利者があらかじめ意思表示する「自由利用マーク」の普及を進めるとともに、インターネット上のコンテンツの利用等に係る関係者間の合意を形成するため、著作権管理団体と利用者団体の協議を奨励する等、コンテンツに係る権利者を適切に保護しつつ、円滑な流通を促進する。



 

(2)ITを活用したスポーツの振興

 明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に必要不可欠なスポーツの振興を図るため、スポーツ分野の情報を活用した以下の具体的施策に取り組む。


 
国際競技力の向上のためのスポーツ情報の活用
 
国民に夢と希望を与え、世界で活躍するトップレベルの選手を育成するために有効な、各種情報の収集・加工・蓄積やIT技術を活用した情報提供を行う。

生涯スポーツの普及・振興のためのスポーツ情報の活用
 
国民の誰もがいつでもどこでもスポーツに親しむことができるよう、国民がスポーツ施設の利用、各種スポーツ事業、質の高いスポーツ指導者等に関する情報を得やすい環境を整備する。




5.情報社会の進展に伴う課題への対応

 

 近年急激に進展する情報社会を子どもたちが生き抜くためには、情報モラル教育の充実や有害情報対策の推進は極めて重要となっている。今後は、学校、家庭、地域における取組を相互に連携させて、これらの課題解決に取り組んでいくとともに、子どもが身近に接する情報等を提供する各関係業界においては、有害情報について実効性ある自主規制を確実に行うことが重要である。
なお、パソコンに加え、携帯電話の急速な普及等の情報通信技術の進展を踏 まえた取組も行う必要がある。
 具体的な施策は以下のとおり。

 
調査研究の実施、成果の普及
 
子どもの発達段階に応じた対策を適切に実施するため、子どもの情動の科学的解明や教育等への応用に関する調査研究を推進する。
諸外国における対策や、先進的な取組等について調査・研究し、その成果 に関する情報提供等を幅広く行うなど、関係省庁と連携しインターネット上の有害情報対策の推進を図る。

学校における情報モラル教育の推進
 
インターネット等の利用に起因したトラブルや、インターネット上で人格形成に悪影響を及ぼすおそれのある有害情報が増えている現状を踏まえ、学校において、「情報社会で適正な活動を行うための基となる考え方と態度」を育成する情報モラル教育の充実を図る。

家庭や地域における取組への支援
 
公共機関や家庭等へのフィルタリングソフトの普及・促進を図る。
社会教育行政担当者に対する、情報活用能力向上のための研修を実施し、研修受講者が各地域において研修成果を還元することによって、保護者や地域の大人が情報活用能力の向上を図ることができる環境の整備に資する。
携帯電話やパソコンの利用等について家庭教育上留意すべき点等について、保護者に対する理解・啓発を図る取組を推進し、家庭における子どもへの教育活動を支援する。
地域における情報活用能力及び情報モラル学習や有害情報対策を推進するため、地域での推進体制の整備を支援する。

関係者団体等への要請
 
青少年を有害情報から守る観点から、情報発信等にかかる実効性のある自主的措置を確実に行うよう関係業界団体等へ要請を行う。





ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ