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資料2


ITを活用した教育効果の向上について

独立行政法人メディア教育開発センター 清水康敬


1. はじめに
 ITを活用することによって子ども達の学力が向上することが示されることは、教育の情報化の推進に役立つと考えられる。そこで、今話題になっている学力に関する国際比較の結果を簡単に述べ、英国における調査研究の結果と、日本教育工学会が文部科学省の委託を受けて実施している「ITを活用した教科指導の改善のための調査研究事業」の概要を説明する。

2. 学力に関する国際比較
 経済協力開発機構OECD生徒の学習到達度調査(PISA:Programme for International Assessment)の結果が昨年12月7日に発表され、1週間後の12月15日には国際教育到達度評価学会(IEA)が実施した国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:Trend in International Mathematics and Science Study)の結果が発表された。いずれの結果も我が国の児童生徒の学力が低下していることを示唆する結果であった。そのため、各方面で学力低下問題について議論されている。

(1) PISAの結果
 OECDが2003年に実施したPISAは、約130万人の15歳児を対象にして参加国が共同して国際的に開発した学習到達度問題を作成し、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決能力の4分野について比較調査(40カ国)をした。我が国では、高等学校全日制学科1年生等の約4,700人(144学科)が調査に参加した。この結果、前回(2000年)と比較した順位を下の図に示す。これから、読解力と数学的リテラシーの順位が下がっていることがわかる。ただし、読解力を除き、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決能力については、日本は1位グループに属している。
OECD生徒の学寮到達度調査(PISA)、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)
 
 また、PISAでは学習の背景についても調査されている。これによると学級雰囲気指標は韓国に次いで良好な状態にある。ただし、生徒のモラールは中程度に位置している。教師不足指数、学校施設指数、教育機器・教材指数はOECD平均とほぼ同程度となっている。しかし、我が国の生徒のインターネットやコンピュータの活用頻度はOECD加盟国の中で低い(下の図参照)。このデータは今後の教育の情報化を考える際に気になるデータである。
OECDの調査によるICTの活用
(2) TIMSSの結果
 IEAによるTIMSSの調査は第4学年と第8学年の児童生徒が対象で、日本からは150の小学校4年生約4,500と、146の中学校2年生4,856名が参加した。その結果の例を前ページの図に示す。この図からわかるように日本は順位を下げている。例えば、日本の理科の平均点は46ヶ国の中で6位に位置している。ただし、1970年の理科の成績は18ヶ国の中で第1位、1983年では26ヶ国の中で第2位、1995年には41ヶ国の中で第3位、2000年には38カ国の中で第4位であったから、日本の理科の順位は少しずつ下げていることがわかる。
 また、我が国の児童生徒は、算数・数学、理科の勉強が楽しいとする割合が諸外国に比べて低く、得意な教科だと思う生徒が少ない。一般的には、宿題をする時間が短い、テレビやビデオを見る時間が長い。

3. ICTの活用と学力向上について(英国の調査結果から)
 コンピュータ等のITの活用によって、子どもたちの学習意欲が高まり、学力が向上すれば、教育のIT化の意義は大きい。英国ではICT(Information and Communication Technology,英国ではICTと言っている。)活用による学力の向上について調査結果報告している。

(1) 教員のICT活用による学力の向上
 英国では全国学力テストを実施し、その結果を公表している。たとえば、キーステージ2(日本の小学校高学年に相当)の児童は「レベル4」以上を達成することが目標で、このレベルを越えた児童の割合が、各校毎に公表される。
  指導にICT活用と生徒の成績(KS2)
   そこで、ICTを指導によく活用している学校と、活用していない学校の児童の成績を比較した結果、英語(日本の国語)と数学では25ポイント、理科では22ポイントという大きな差が現れている。このことは、小学校の教科指導において教員がICTを活用することによって、児童の成績が高くなることを示している。
 次に、教員のICTに関する知識が生徒にどのような影響を与えるかを調査した結果、生徒の興味、努力、行動の評価点が、指導する教員のICT知識が豊富な学校ほど高い。ICTに関する教員の知識が豊富であることが、児童生徒の学力が向上することを意味している。単に科目の成績が高まるということではなく、子どもの興味や努力、行動に関しても、教員のICT活用の効果が示されたことは、大きな意味をもっている。

(2) 生徒のICT活用による学力の向上
 児童生徒がコンピュータ等を活用して教科内容を学習したり、課題解決したりすることは効果があると多くの人が主張している。これに関しては、キーステージ2(小学校高学年)の児童の成績を評価した結果、英語(日本の国語)、数学、理科全ての教科で児童のICTの活用が多い学校程、児童の成績が高い。
  生徒のICT活用と成績(KS3)
 また、ICTを活用した学習機会が多くなるほど、児童の態度や行動がよくなっている。
 次に、中学校段階になると、生徒のICTに対する態度やスキルがさらに重要になる。キーステージ3(日本の中学生)のテストの結果から見ると、ICTに対して生徒がポジティブな態度を持つ学校と、そうでない学校では、成績に差が現れている。数学で14ポイント差(80%と66%)、理科で17ポイント差(76%と59%)、英語で14ポイント差(81%と67%)の差である。このことは、生徒のICTスキルの程度が各教科の成績に大きく関係することを意味している。
  2年後の偏差値
   さらに英国では、児童生徒がどのようなICT活用をした場合に学力が向上するかについて、追跡調査が行なわれている。対象となっている学校は、小学校が30校、中等教育校が25校、特殊教育校が5校である。まず、合計2,179名の児童生徒に対して各教科の試験を行い、それから2年後に再び試験を行なっている。この二年間にICTをよく活用した児童生徒とそうでなかった生徒を二群に分けて比較した結果が公表されている。それによると、小学校高学年では、英語で3.6点、算数で1.2点ICTを活用した児童のほうが偏差値が高い。また、日本の中学校段階において、ICTを活用した生徒の偏差値は、理科で2.6点、数学において1.0高い。また、日本の高校段階においては、外国語の偏差値で4.5点、理科で3.3点、技術設計で2.3点、地理で1.9点高い。したがって、ICTをよく活用した児童生徒ほど、科目の試験成績が高くなることを示している。
 尚、この図で示す値は英国における結果を著者が偏差値に変換して、2年後の変化を求めた値である。

(3) 校長の指導力による学力の向上
 学校経営の点からすると、学校長のマネージメント能力によって、その学校の児童生徒の学力に影響されることはあり得る。この点について、英国での調査結果によると、よい校長(Good Headmaster)の学校の児童のほうが、その他(Others)の学校より成績が高い。ここで興味深いのは、学校のICTの整備状況が貧弱であったり、不満足の学校では、校長の能力の違いによる差がほとんどないが、ICT整備状況が満足である場合には、校長のマネージメント能力が児童の成績に大きな差になって現われていることである。これは、学校のICT環境が整備されていれば、校長のマネージメント能力が高いほど児童の試験成績が高いことを意味している。しかし、たとえ校長のマネージメント能力が高くても、ICT環境が不満足であれば、成績は上がらない。インフラ整備が先決であることを示している。
校長の能力と生徒の成績(KS2)
4. IT活用の効果に関する調査研究
 ITを教員が活用して分かる授業を行うことによって児童生徒の学力向上が期待され、また児童生徒がICTを活用して主体的な学習をすることによって学力が向上することになる。我が国においても、ICTを活用した教育の効果について研究レベルと調査する必要があることから、現在日本教育工学会では文部科学省の委託を受けて「ITを活用した教科指導の改善のための調査研究事業」に取り組んでいるところである。
 成果がまとまり次第公表する予定であるが、ここで現時点での概要を簡単に紹介する。

(1) IT活用の効果に関する調査
 この調査では公立小中高校全体で5,000校(全体の約1/8)を調査対象をすることにし、任意抽出して決定した。その結果、表1に示すように、学校単位での回答率はちょうど40%であった。
 また、学年や教科の違いがあるため各学校で複数の回答を求めた結果、合計で7,800名の教員から回答を得ることができた。

表1 調査票の発送数と回答数
  小学校 中学校 高等学校 全体
発送数 3071 1380 549 5000
回答学校数 1187 538 276 2001
回答率 39% 39% 50% 40%
教員回答 4196 2299 1305 7800
 
 ITを活用することによって子供達に分かる授業を行うことができると考えられている。そこで各教科におけるITを活用した指導場面を示し、その授業は子供達の学力向上に役立つかどうかを調査した。例えば小学校の理科の場合、以下の質問に対して4段階(たいへん、少し、あまり、まったく)で評価してもらった。
【理科】
 
(1) 理科の授業で,ITを活用した実験や観察を進めることで,自然に親しみ,意欲をもって調べる態度をより高めることができると思う.〔関心・意欲・態度〕   4 たいへん、3 少し、2 あまり、1 まったく
(2) 実際に動植物を観察した後,図書資料だけではなく,インターネットで情報を検索することで,観察したり調べたりする学習に広がりが出てくると思う.〔思考・判断〕   4 たいへん、3 少し、2 あまり、1 まったく
(3) デジタルカメラやコンテンツなどを活用して,実験や観察を進めることで,器具や機器を目的に応じた工夫して扱うようになると思う.〔技能・表現〕   4 たいへん、3 少し、2 あまり、1 まったく
(4) 理科の授業で,シミュレーションやアニメーションを活用して提示することで,直接観察できない現象をより理解させることができると思う.〔知識・理解〕   4 たいへん、3 少し、2 あまり、1 まったく
 
 
 このような質問項目は小学校の場合は全部で52項目設定した。そして、小学校教員には全ての質問に回答してもらった。
 その結果、50%以上の教員が最も高い評価点「たいへんそう思う」と回答した項目を以下に示す。例えば、以下の最初に示すように、77%の教員が社会科の関心・意欲・態度の向上に役立つと考えている。

【社会】 社会科の授業で,産業や地理,歴史などについて調べる際に、子どもたちにインターネットを活用させることで,より意欲的に調べるようになると思う。〔関心・意欲・態度〕
77%
【理科】 理科の授業で,シミュレーションやアニメーションを活用して提示することで,直接観察できない現象をより理解させることができると思う。〔知識・理解〕
60%
【体育】 体育の授業で,ビデオカメラやコンテンツを活用して,子どもの運動の様子や模範となる演技を提示することで,子どもが課題や改善点を見つけることができると思う。〔思考・判断〕
54%
【理科】 実際に動植:物を観察した後,図書資料だけではなく,インターネットで情報を検索することで,観察したり調べたりする学習に広がりが出てくると思う。〔思考・判断〕
50%
 
 このようにここに示した指導場面でITを活用することは、子供達の学力向上に寄与できると小学校の教員は考えている。したがって、今後このような指導場面におけるIT活用を進めることが考えられる。

 中学校の教員を対象にした質問として60項目(共通項目23,教科別項目37)を作成し、自分の担当する教科についてだけ回答してもらった。その結果を付録1に示す。この結果から分かるように中学校では理科、社会、数学、技術・家庭、保健体育、外国語の指導において効果がある例が示されている。

 これに対して高等学校の場合は、共通の全体的な質問項目として23項目の他。20の各教科別に4〜5個目、合計で109項目の学力向上の支援を作成した。中学校と同様に担当している教科と共通項目について回答していただいた。その結果、50名以上の高等学校の教員が「たいへん思う」と回答した項目を付録1に示す。この結果分かるように、理科(物理、化学、生物、地学)社会等においてIT活用の効果を認めている教員が多い。この結果も、付録1に示す。 

 次に、この調査の最後に質問として、以下に示すように教科指導に場面を想定しないで全体として、興味関心、表現力などについて4段階評価をしていただいている。ただし、この質問関しては、小学校、中学校、高等学校の全てに共通項目とした。

全体として,授業の中でITを積極的に活用することで,児童・生徒のどのような力を育成することができると思いますか。以下の各項目についてあてはまるものを選択して下さい。

 そこでこれらの項目に対する回答を点数化(たいへん:4点、少し:3点、あまり:2点、まったく:1点)してその平均値を求めた。その結果を表2に示す。
 
表2 共通項目に対する平均値
  小学校 中学校 高等学校
興味・関心 3.63 3.51 3.49
表現力 2.96 2.82 2.87
思考力 2.67 2.62 2.55
判断力 2.67 2.60 2.56
知識・理解 3.23 3.15 3.20
問題快活能力 2.75 2.68 2.66
情報活用能力 3.61 3.50 3.47
コミュニケーション能力 2.63 2.47 2.46
情報モラル 3.03 2.88 2.87
 
 この表からわかるように、IT活用による効果は「興味関心」、「情報活用能力」、「知識理解」に関して大きいことを示している。また、小学校から高等学校になるにしたがって少し減少しているが、校種による違いはそれほどではなかった。

(2) IT活用の実証授業による評価
 ITを活用した実証授業を実践していただき学習指導要領に書かれている評価の視点に沿って評価してもらっている。そして、その実証授業の結果を同一のフォーマットで登録してもらっている。
 例えば、小学校総合科で登録された例を表3に示す。この例では、以下の授業の評価に関する研究報告が添付されている。
 
表3 小学校社会科における実証授業の事例
実施校 熊本県相良村立相良南小学校・熊本県人吉市立東間小学校
授業者 溝口博史・山本朋弘
記入者 山本朋弘
校種・学年 小学校 3年
教科 社会
単元(題材)名 わたしたちの市をしょうかいします
実施した日・時限 2004年7月4日・3時限目
本時の目標 完成した地図を見て、地形や土地利用の特徴について調べることができる。
授業の概要 NICERにおける交流学習支援システムやテレビ会議システムを活用して、小学校社会科学習における地理的事象を交流させ、比較して考えたり、討論したりする授業実践を行った。
交流を支援するシステム(Co-LAB)を用いて、交流ノートを作成し、情報交換を行うとともに、テレビ会議システムを併用して、校区などの地域に関する継続的な調査活動を行った。
このような交流ノートやテレビ会議を組み合わせた交流学習の中での児童の活動や発言、交流内容、意識の変化について分析をした。
活用機器 コンピュータ・プロジェクタ・インターネット
その他  
WEBコンテンツ 交流学習支援システムCo−LAB
e-交流(NICERテレビ会議システム)
ITを活用する場面 グループ学習、展開
ITを主に活用する者 学習者
ITを活用する目的 比較、地図作成
ITおよびコンテンツの活用意義(意図)・活用状況 NICERにおける交流学習支援システムやテレビ会議システムを活用して、市の地形や土地利用の様子を調べ、市の様子は場所によって違いがあると考えさせることをねらった。
テレビ会議システムをはじめ、webを利用した交流学習は、その双方向性を活かし、コミュニケーション能力を高めるとともに、多様な考え方から学習を深め合うなど多くの利点があり、テレビ会議と交流支援システムを併用することで、お互いの調査結果や考えを比較する活動を支援できるようにした。
自ら調べたことを交流ノートにまとめるようにし、作成した交流ノートをもとに、テレビ会議を通して、意見交換を行うようにした。
 
表3(続き)授業への評価
評価した日・時限  
関心・意欲・態度 評価の視点 社会科の授業で、産業や地理、歴史などについて調べる際に、子どもたちにインターネットを活用させることで、より意欲的に調べるようになった。
評価の方法 質問紙・行動観察・ビデオ分析
実践の結果 コンテンツの活用前後において、学習意欲などに関する意識調査を行った。意識調査結果を、t-検定を用いて分析を行った。t-検定の結果、学習手段の違いの中で、学習の楽しさや学習の意欲、内容面での整理のしやすさ、制作物としての学習のまとめ方という点において、交流ノート(Co-LAB)を活用した場合が高い値を示した。
これは、3年生段階においても、Co-LABを活用することで、文章作成や画像選択という学習課題を明確に持ち、意欲的に活動に取り組むことができた成果であると考えられる。
テレビ会議活用時をビデオで記録したものを分析した結果、普段の授業ではなかなか発表しない子どもが進んで発表している様子があり、意欲的に参加していたことがわかった。
4段階評価 たいへん
思考・判断 評価の視点
インターネットによる情報収集や交流学習を行うことで、生活の工夫、産業や地理についての考え方をより高めることができた。
評価の方法 評価記録・ノート分析
実践の結果 交流ノートの記述内容から、地域の地理的特徴や生活の工夫への気づきについて分析を行った。
交流ノートやテレビ会議を通して、お互いの校区の情報を交換することで、場所によって違いがあることに気づくことができた。方角によって、平地や山地の割合が違うこと、平地には住宅地や田畑が多いことに気づいた児童は、全体の79%を占めた。
4段階評価 少し
技能・表現 評価の視点
ITを活用して、情報を収集したり整理したりする学習を行うことで、的確に調査し、資料を効果的に活用する能力をより高めることができた。
評価の方法 評価記録・ノート分析
実践の結果 地域の紹介として、病院や公共施設などの写真を収集したり、校区の航空写真から、山地や平地の様子・使われ方を考察したりして、的確に調査していることがわかった。これは、交流ノートを活用して、相手校にわかりやすく伝えるという目的意識が働き、資料を効果的に活用することにつながったと考えられる。
4段階評価 たいへん
知識・理解 評価の視点
ITを活用して、産業や地理、歴史などの情報を提示し、調べ学習を行うことで、社会生活への理解をより深めることができた。
評価の方法 ペーパーテスト
実践の結果 村の地理的特徴についての理解において、単元内で3回のペーパーテストを実施した。テスト内容は、全く同一でなく、問題記述を若干変えることとした。
交流ノート(Co-Lab)の活用前と後では、活用後が、1%水準で有意に高い結果となった。また、テレビ会議前後では5%水準で有意に高い結果がみられた。さらに、交流ノートとテレビ会議を併用した場合が最も高く、活用前と比較すると、1%水準で有意に高い結果となった。
これらのことから、相良村の土地の様子や土地の使われ方に対して、テレビ会議と併用したCo-LAB活用の十分な意義をみることができた。
4段階評価 たいへん
活用有無の比較
(ITを活用していなかった時との比較)
活用有無の比較活用の有無について、活用有りの学級と活用無しの学級で、地域の特色(ITを活用してへの理解度を測定するペーパーテストを実施した。その結果、学習前にいなかった時とのは、有意な差が見られなかったが、学習後(活用後)には、活用有りが比較)有意に高い結果となった。
交流ノートやテレビ会議を通して、交流校へわかりやすく伝えるという相手意識を明確に持たせることができ、的確な資料収集につながった。このような相手意識を持たせる工夫は、ITを活用していなかった場合では、なかなか難しく、IT活用の大きな意義ともいえる。
4段階評価:たいへん向上した
 
 このように、ITを活用した実証授業の概要と共に、評価した観点が示されている。現在、このような実証授業の成果が113登録されている。そこで、実証授業の評価の観点で整理した結果が表4である。このように、現在の時点では「関心・意欲・態度」の観点で評価した授業が最も多く登録されている。
 
表4 現在登録されている実証授業と評価された観点の数
学校種 教科 評価の観点
関心・意欲・態度 思考・判断 表現・技能・処理 知識・理解
小学校 国語 8   5 7
社会 16 10 10 12
算数 11 2 9 5
理科 13 11 5 12
体育 3 7 5 1
音楽 3   2 1
図工       1
家庭   2    
小学校 合計 54 32 36 39
中学校 社会 4 2 2 1
理科 3 3 2 2
美術 1     1
技術・家庭 3 2 2 1
保健体育 2 1 2 1
外国語 1      
中学校 合計 14 8 8 6
高等学校 数学 2 2 2 2
情報 1 1 1 1
高等学校 合計 3 3 3 3
全体 合計 71 43 47 48
 
 尚、ここに示した日本教育工学会が実施している調査研究は現時点での概要であり、まとまり次第報告する予定である。
 
5. おわりに
 以上ここでは、OECDのPISAとTIMSSが公表した学力に関する国際比較について簡単に紹介し、英国におけるICT活用による学力向上に関する調査結果、ならびに現在日本教育工学会が文部科学省から委託を受けて実施しているITを活用した教科教育の改善に関する研究の途中経過の概要を説明した。
 協力いただいている学会関係者に感謝する。


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