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以上の説明を受けて、質疑応答及び自由討議が行われた。
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船橋委員】 |
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先ほど新谷さんのほうから生徒の受入先がないというようなお話がありましたが、教員の受入先についての何かデータはお持ちでしょうか。もしあれば教えてください。
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新谷氏】 |
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先生を相手国が受け入れるということに関しては、かなりの余裕はあると思います。そういうことを今までやってきてなかっただけですね。
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紿田委員】 |
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高木さんのお話について、NPOの財源はどうされていますか。
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高木氏】 |
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代表として一番苦労しているところがそこで、やはり他の国を見ますと、政府が主体でやっているところが多いんですね。ITを学校に入れると同時に、こういったヒューマンネットワーク、iEARN(アイアーン)を入れると。iEARN(アイアーン)USAの場合、その財源の3分の1は会員から、それから3分の2は教育庁と幾らか企業のほうから。JEARN(ジェイアーン)の場合は、会員が今のところ100名ぐらいおりまして、それの年会費がベースになっています。やっと会費をつくったわけなんですけれども、今まではずっとボランティアベースでやってまいりました。
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根本委員】 |
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私もコソボで援助活動を行っていたときにインターネットを使ってアルバニア系の方々やその子どもたち、それから、セルビア系の子どもたちをつなぐということをしておりまして、非常に興味深く高木先生のお話を伺いました。
それで、大体把握していらっしゃる限りで日本で何校の学校、あるいは何人の生徒さんがiEARN(アイアーン)、JEARN(ジェイアーン)の活動に参加されているのでしょうか。
また、日本の子どもたちがコミュニケーションをするときの言葉、この言語は日本語なのか、それとも徐々に英語に移っていくのでしょうか。
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高木氏】 |
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まず、JEARN(ジェイアーン)の活動は学校を単位にして入るというケースは非常にまれでございまして、やりたい先生が自分で年会費を払ってやる場合が多いです。テディベアプロジェクトというのが非常に人気で、約100校ぐらいの参加があります。今、動いておりますのが、多分10校ぐらいお互いにテディベアを交換し合って、日記の交換をやっていると思います。
ほかには、Folk Tales Projectsという、民謡とか、神話を集めましょうというプロジェクトで2校、2つのクラスですね。それから、「防災世界子ども会議」というプロジェクトに入っておりますのが、今、全国で20校ぐらいあると思います。
もう一つ、言葉については、これは、とても大事なところなんですが、先生が一人で抱え込まないでくださいと言っているんですね。学校の中でチームをつくって、学校の中だけではなくて、お母さんたち、お父さんたちの英語力を使わせてもらいましょう、大学生も入ってもらいましょうというようにです。最終的には翻訳ソフトを使います。
子どもたちが英語を習いたい、それを通していろんな人と知り合いになりたい、というのが本当だと思うんです。それを英語ができるようになるまで待ってね、というのはおかしいと思うんです。欲しがるときにしっかりと与えたい。
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小野委員】 |
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国際理解教育とか、国際化教育についての重要性とか、そのねらい、指針等についてはもう十分議論されて、共通の理解が図られている頃だろうと思います。実は、中央教育審議会、臨時教育審議会、それから、教育課程審議会、学習指導要領、全部を通じてそこに載せられている、小中高における指針とか、ねらいというのはそのとおりなのですが、それが徹底されていない、というところがまず第1の課題だろうと思っております。
小学校で言えば、学習指導要領の総則の最後の方に国際理解教育について軽く触れられています。ですから、先生方にとってなかなか定着が図られない。次回の改訂においてぜひ、国際理解教育について独立の章を起こすぐらいの提言ができないだろうか。
もう1点、指導者の養成についてですが、例えば東京都では昨年度からキャリアプランに基づく教員の研修講座というのを制度化しております。その中では新規採用教諭の研修とともに、10年目、20年目、30年目のそれぞれの自分のキャリアプランを提出することによって、その中に自分が得意とするものを入れていく。そして、その研修の講座を受けることによって埋めていくというのがあるんですが、そういうキャリアプランの拡充といいますか、制度化に向けた提言も何か盛り込んでいければ、研修の重要性とか、教員養成というのにつながるのではないかなと思っております。
さらに、英語活動については、コミュニケーション能力の育成のためには必要だと思っております。英語の重要性は時代の流れとして見過ごせない問題であります。ですから、国際理解教育の一環として英語教育活動というのは、やはりどこかに盛り込んでいく必要があるのではないかなと考えております。
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山中審議官】 |
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学習指導要領については、教育課程実施状況調査などに基づき、今平成14年から実施している学習指導要領を見直しているところでございます。その次の段階として、じゃあ、トータルとして次の学習指導要領をどういう基本的な考え方でつくっていくのかというところを、教科の共通した部分を審議する教育課程企画特別部会において、議論を始めた段階でございます。そういう各教科ごとの見直しの検討、それから、共通的にどういう形で新しいものをつくっていくか、そのあたりを来年の春か、連休前か、その頃までに議論した上で、またさらに各教科のほうに戻り、次の学習指導要領の改訂をどういう形でやろうかという議論をしていこうという作業になっております。ここでの議論も、ちょうどそういうものに反映できるタイミングでご報告いただくとありがたいなと思っております。
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中島委員】 |
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私、やはりまだ釈然としないのは、いわゆるコミュニケーション能力という英語の技能教育と国際理解教育との関係です。国際理解教育の中での英語教育では、中途半端な語学教育しかできない。しかし、国際社会というのは多言語社会ですので、言語が担っている機能や問題は非常に大きなものです。それから、言語保存というような視点もこれからのグローバルな社会では必要になってきます。文化の伝承伝播においても、言語というのは大変重要な役割をしていますので、言語そのものについての教育を、国際理解教育の中できちんとやらなければないだろうと思います。それがカリキュラムの中にきちんと位置づけられてほしいと思います。それと言語のコミュニケーション能力を伸ばす言語教育、外国語教育というのは別立てしないと、両方が虻蜂取らずになると思います。
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奥村委員】 |
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高等学校の現場から、少し留学生のことについてお話しさせていただきたいと思います。
本校は500人の小さな学校なんですけれども、AFSや財団法人YFU日本国際交流財団とかのプログラムを使って、多いときには十数名海外へ留学生として出ています。現実問題としてどういう生徒が出ていくかというと、女子が約8割男子が約2割という状況です。それから、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールに指定されており、ほとんどが国際科、英語科に特化されてその授業が行われていますが、ここでも国際科、英語科に入ってくる生徒の8割方は、おそらく女子です。なぜ、男女平等に行われるべき英語教育や国際教育、留学といったところが女子にだけ受け入れられているのか。
これは、おそらく大学入試の問題が大きいと思うんです。留学した女子は帰国後にどういう進路を選ぶかといいますと、30単位を認めてもらって戻ってきた者は、大抵慶応大学であるとか、同志社大学といった大学の英語入試を受けて、すばらしい生徒たちがそちらへ全部流れます。国立大学でも九州大学のように21世紀枠という、そういう留学した経験者、意欲のある生徒を積極的にとっている大学もありますが、こういったものは、おそらく九州大学の21世紀枠一つじゃないかなと思います。
そういう点で大学が積極的に、留学した生徒であるとか帰国生であるとか、そういう者に枠を広げていく、それが男子の学生にも門戸を開いていく一番手っ取り早い現実的な方法じゃないかなと思います。ビジネスの世界にも、政治の世界にも、そういう経験を持った優秀な学生を確保できる一つの方法じゃないかなと思います。
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紿田委員】 |
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こういう委員会で提言する場合、何か制度を変えていくという視点が重要だと思います。私も、今年から秋田の国際教養大学の理事を仰せつかっていますが、あそこは英語の能力の高い生徒をとっており、非常にいい人が来ます。それから、いろいろ制度を変えたんですが、例えば暫定入学制度をやってみるとか、これもまた非常におもしろいですね。次点で落ちた生徒を入学させるわけです。1年生で成績がよかったら2年生に入れるから、そのときに入学金を払いなさいと。するとものすごくよく勉強する。そういう今まで考えられなかったようなことをやると、制度がインセンティブになるということがあると思うんですね。
その点では、男子学生が、大学に入りやすくなるような制度はぜひ提言したいと思います。
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根道委員】 |
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海外に行って帰ってきたら、私は日本の学校では1年でも2年でも、どんどん遅れたらいいと思っているんです。要するに、向こうで学んだものがありますが、日本でも海外で学んだことをスキップしないで、もう一回重ねてやると。実は、私は、結果として、全部で2年大学を出るとき遅れているわけですが、それが自分の長い人生とか、社会生活の中で全く何の支障にもなったことはありません。むしろ遅れて日本の教育内容がつながるようにしっかりやることのほうが大事だと思っております。
それから、もう一つは、宇土先生の大変、立派な視点を伺ってとても心強く思ったんですが、海外から帰られた日本人の先生の活用ができないのはなぜかという問題に関して、一般的にはまだ隠すという傾向があるのは疑いのないところであります。ですから海外子女教育をやってきた先生が評価され、あるいは人事的にもそういう経験を生かせる制度をつくらないと、いけないと思います。
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多田委員】 |
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やはり私は、教員養成の問題を申し上げておきたいと思います。実は、現状でいいますと、異文化の会とか、国際理解教育学会に実に優秀な若手の研究者がいるんですが、なかなか職を得ることができず、育っていかないですね。私は、この教育の重要性に鑑みたときに、教員養成大学の中にしっかりとした指導ができる教官がいるということは根本的に重要なことだと思います。ぜひ教員養成大学の中にそうした力を持った先生方がどんどん入っていけるようなシステムづくりが望まれると思います。
それから、宇土先生がおっしゃった3点は全く共感するところです。後は、そういう力を一般の先生方にどう広げていくか。今のところ、あれは何々先生だからできるという状況にとどまっているわけですね。それを全体に広げるための手だては研修制度のあり方ということだと思うんですね。それは単に上から知識を授けるだけの研修では育たない。やはり実際にカリキュラムを作る体験が重要だと思います。
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山中審議官】 |
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カリキュラムが変更されればおそらく教員養成の科目をどうするのかという話にもなると思います。それから、今後、教員についても専門職大学院のシステムを導入したいということがございます。これは、今までも大学院、教員養成大学がございましたが、不十分だというのが一般的なとらえ方でございまして、実践的な教育力をつける、専門職大学院が作れないか、ということでございます。そういう場合に、一体どういう部門の実践的な力をつけるべきかという議論の中で、国際理解教育を大きなテーマにしたカリキュラムをつくるということになれば、大きく取り上げられるんじゃないかと思います。
それは、平成18年度ごろまでには基本的設計をやろう、ということで今作っております。ロースクールをつくるときにもそのプログラムをつくるまでには、大学、法曹界、裁判所、それから、弁護士、学者、こういうところとあわせてどういう形で実践的なプログラムをつくるのか、ということを外国の例も使いながら一生懸命検討しましたから、教員養成プログラムについても、実践的なプログラムをプロフェッショナルスクールでつくろうということであれば、しっかりしたものをぜひ大学の先生、それから、現場の先生、教員養成をやっているいろんな教育センターの方、一緒になって作っていただきたいと思っていますし、そういうのを作らなきゃならないと思っております。
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佐藤(郡)副座長】 |
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実は、昨日私どもの大学で日本教育大学協会の会議が開催され、幹事をやらせていただきました。その中で専門職大学院構想がやっぱり議論になりました。これは実は、学部教育にかなり影響するものですから、私どもの大学でも何かやらざるを得ないということになり、国際にかかわる専門職大学院を立ち上げようというような話になっております。多分そういう形で実現していくのではないかと思っております。
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【 |
佐藤(裕)委員】 |
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国際理解に関しては、取り組みの提案はたくさんされるのですが、それをやった結果、子どもがどう変わったというところが大変見えにくいところが、国際理解が広まらない理由なのかなということを私は感じております。
研究を推進している方から相談を受け、子どもの育ち、学びをどういうふうに見たらいいんですかといわれたときに、私自身が即答できない。難しい。やはりこういうふうにすると子どもはこういう力がついていくんですよという、その一連のところまでの取り組みを提示して国際理解を考えていかないと、よく言われるイベント主義というか、活動のみというような形になってしまうのかなと私は感じております。
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(ここで池上座長が退席。)
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渡邉委員】 |
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今後国際教育をどうやって推進していったらいいのかといったときに、制度の問題に関しては、研修のあり方のところで一つやっていくきっかけがあるかなと思います。つまり、例えば今度の学習指導要領の改訂のときに、国として重大視するような形で明記していただくと、教育委員会やセンターは必ず動きます。それが学習指導要領の後ろの方に記述されてあると、ついつい優先順位でおろそかになってしまう。教育委員会もどうしても文言や予算との絡みで動いていきますから、実質的にそれを動かしていくためには、具体的に動けるようにするということが、重要じゃないかなと思います。ぜひ国と地域と一体化できるような形で頑張っていただきたいと思っております。
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長谷川委員】 |
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宇土先生の先ほどのご意見、ご提案について、本当に私もそのとおりだなと思いました。特に学校現場では、外国だけが異文化ではないって本当にそのとおりです。子ども同士、自分でない他の者というのは本当に異文化の世界です。先生にとっては、やはり外国云々ではなくて、まず、教室にいる子どもたちをどう把握していくのか、そしてここで1つの視点を持つということについて、とても共感いたしました。私は今、行政の立場におりまして、これをどういうふうに広げて拡充していくのかということを考えると、教員養成、あるいは教員研修というのが非常に大きなところになるのかなと思いました。
先ほど東京都の研修の中でキャリアプランというんですか、そういうものも拡充していくというようなお話がありましたけれども、理論とかではなくて、教員が体験的に、自分の個性や良さを生かしながらそれを研修の中で積み上げていけるような、研修のあり方を考えていかなきゃいけないと感じました。
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岩谷委員】 |
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国際理解教育に携わる人は女性が多い。確かにユニセフ協会でも、職員の8割以上は女性、テストを通過するのは女性が圧倒的に多い。これについては日常的な小学校、中学校、高等学校の教育の中で、カリキュラムの中にまず国際理解教育はどうあるべきかの部分が盛り込まれていけば、男の子もそういうところに興味、関心も持つようになるのではないかなと思います。
私ども、各学校に学習会のために出かけて行くのですが、ビデオ等々を通して感想をもらうと、男の子にも気づきがあり、彼らも感動するんですね。だから、まずわからせる材料、知らせる材料を提供していくというのはとても大事なことだなと思いました。
それから、実践例等々の整備、教材の共有化も含めていくことになるかと思いますが、それも非常に大事であるのと同時に、やはり最後にくる評価基準も見据えたカリキュラム等々の提示、そして、評価基準までのサイクルをしっかり見据えた提言をしていくことの大事さを感じました。
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船橋委員】 |
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私の会社で社会人の教育をやっていまして、60社6,000人の新入社員に研修をやっています。そこで明確にわかるのが就職観とその後のキャリア観なんです。先ほど男性、女性の問題がありましたが、圧倒的にまず新入社員のレベルでは女性の方が優秀です。特に就職までは危機意識が女性のほうが高いと思います。そういうところが先ほどの留学の話に出ていたんじゃないかと思います。男性はその後、働いて5、6年するとMBAを取りに行こうとかちょっと考え始めますけども、そういう社会的な背景が一つ原因ではないかと個人的には思います。
あと1つ、提言に関しては、私は、多田先生がおっしゃった意見とぼほ一緒なんですが、教員の育成のところは特に大事ではないかと思います。そこでやっぱり体験してないことを教えるのは非常に困難なことだと思いますし、一人の先生が留学することは、学校において圧倒的に効果があると思いますので、留学生と同比率ぐらい先生方に留学の機会が与えられるようになっていくと、よいのではないかと思います。
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佐藤(郡)副座長】 |
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今日も4つぐらいの柱が議論されております。国際理解教育をどう位置づけていくのか。政策的にも明確に位置づけてほしいということ。要するに、これからの教育のあり方自体が多文化共生という視点を欠いてはもう成立し得ないだろうということです。ですから学習指導要領の総則の部分にぜひ、そうした視点を盛り込んでいただくことのご検討をお願いしたいということ。
それから、2番目はカリキュラムをどうしたらいいのかということです。国際理解教育とは教科の中だけで実践できない固有性を持っていると思うんですが、その固有性を強調し過ぎると学校の中に入り込めないという問題もある。その辺をどうしたらいいかというときに、宇土先生のほうから視点が提供されました。各教科を構成する際の視点として国際理解教育を生かしていくことが可能なのではないかということ。
3番目に教員養成や現職の先生方の研修の問題をどうやって深めていったらいいのか。総論は皆さん賛成だと思う。各論になりますと、なかなか非常に難しくなってくるかもしれませんね。総論から具体的にどう実施していくのか。
そのための4つ目の柱として、推進体制という制度、つまり先生を支え、先生が動きやすいような、あるいは先生の成長を支えるような体制づくりを含めた議論がどうしても必要なのではないか。研修が必要だという議論の後に、それをどういう形で進めるのか、と具体策を考える必要があるんじゃないか。そのようなところを視点として深めていきたいと思った次第でございます。
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(4) |
今後の日程について |
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事務局より、今後の日程について説明した。
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(5) |
閉会
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(了) |