附属資料2
平成8年(1996年)7月19日 中央教育審議会
冷戦が終焉し、交通手段の発達や情報化が進む中で、経済、社会、文化等の様々な面で国際交流が進展し、国際的な相互依存関係はますます深まっている。そのような状況の下で、経済面では、東アジアの諸国が急速に成長を遂げつつあり、さらには、我が国や欧米諸国を含めて、世界的規模で競争が激化し、その結果、種々の摩擦も生じている。地域レベルの紛争もやむことがない。また、地球環境問題、エネルギー問題、人口問題、難民問題など地球規模の問題が深刻化しつつあり、これらの問題の解決に当たっては、国際的な協調が不可欠となっている。こうした国際関係の緊密化や複雑化などを背景にして、国際化はさらに進展し、今後ますます加速していくものと思われる。
このように国際化が急速に進展する中で、絶えず国際社会に生きているという広い視野を持つとともに、国を越えて相互に理解し合うことは、ますます重要な課題となりつつある。加えて、経済大国となった我が国は、地球環境問題への対応や科学技術や文化の面などで、今後一層積極的に国際社会に対して貢献し、世界の安定と発展に寄与していくことが必要である。
いずれにせよ、国際化の進展は、人と人との相互理解・相互交流が基本となるものであり、その意味で、教育の果たす役割は、ますます重要なものとなると言わなければならない。
このような国際化の状況に対応し、我々は特に次のような点に留意して、教育を進めていく必要があると考えた。
国際化が進展する中にあって、広い視野とともに、異文化に対する理解や、異なる文化を持つ人々と共に協調して生きていく態度などを育成することは、子どもたちにとって極めて重要なことである。こうした教育は、既にこれまでにも、各学校において、各教科、道徳、特別活動などの指導において、あるいは学校独自の行事などを通して、様々な形で取り組まれてきたところである。しかし、相互依存の関係が深まるこれからの国際社会を考えるとき、このような教育はますます重要なものとなってきており、これからの学校教育においては、国際理解教育の推進についての明確な理念を持ってこの面での教育を充実させていく必要があると考える。
国際理解教育を進めていくに当たって、特に重要と考えられることは、多様な異文化の生活・習慣・価値観などについて、「どちらが正しく、どちらが誤っている」ということではなく、「違い」を「違い」として認識していく態度や相互に共通している点を見つけていく態度、相互の歴史的伝統・多元的な価値観を尊重し合う態度などを育成していくことである。
一つのものの見方や考え方にとらわれて、異なる文化・生活・習慣などを断定的に評価するようなことは、子どもたちをいたずらに偏見や誤った理解に陥らせる基になりかねず、決してあってはならないことである。
また、国際理解教育を進めていくに当たっては、自分自身が何ものであるのかを知ること、すなわち自分自身の座標軸を明確に持つことが極めて重要である。このことなくしては、相手からも理解されず、また、相手を理解することもできないと言わなければならない。日本人として、また、個人としての自己の確立があいまいで、自らのよって立つ位置が不明確なままでは、国際的にも評価されないのである。
こうしたことを考えると、広い視野を持ち、異文化を理解し、これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく態度などを育成するためには、子どもたちに我が国の歴史や伝統文化などについての理解を深めさせることが極めて重要なことになる。先人達によってどのような歴史が展開され、どのようにして現代の社会が築かれてきたか、また、先達の努力によって、どのような芸術や文学などが創造され、我々の社会に継承され、我々の生活を豊かなものにしてくれているか等について、広く世界の歴史を背景に、子どもたちにしっかりと理解させることは、我々大人の極めて重要な責務なのである。そしてまた、日本人としての自己の確立の前提には、まず、子どもたち一人一人の個の確立がなければならないのであり、その意味で、国際理解教育の推進は、一人一人の子どもたちの個の確立ということと同心円をなしていると言うことができる。
また、我が国は、あらゆる面において、これまでとかく欧米先進諸国に目を向けがちであった。しかし、今日、様々な面でアジア諸国やオセアニア諸国などとの交流が深まる中、地理的にもアジアにあり、アジアを離れては存在し得ない我が国としては、今後は、アジア諸国やオセアニア諸国など様々な国々にも一層目を向けていく必要があり、このことは、国際理解教育を進めるに当たっても、十分に踏まえなければならない視点であると思われる。
平成15年(2003年)3月20日 中央教育審議会
グローバル化の中で、自らが国際社会の一員であることを自覚し、自分とは異なる文化や歴史に立脚する人々と共生していくことが重要な課題となっている。このためには、自らの国や地域の伝統・文化についての理解を深め、尊重する態度を身に付けることにより、人間としての教養の基盤を培い、日本人であることの自覚や、郷土や国を愛し、誇りに思う心をはぐくむことが重要である。こうした自覚や意識があって初めて、他の国や地域の伝統・文化に接した時に、自他の相違を理解し、多様な伝統・文化に敬意を払う態度も身に付けることができる。このような資質を基盤として、国際社会の責任ある構成員としての自覚を持ち、世界を舞台に活躍し、信頼され、世界に貢献できる日本人の育成を目指す必要がある。
平成12年(2000年)3月28日 社団法人経済団体連合会
指導的立場の人材については、哲学を含む幅広い教養を前提とした、以下のような人材が求められている。産学官の人材交流を通じて、こうした人材の能力をさらに高めることも一案である。
平成16年(2004年)4月19日 社団法人日本経済団体連合会
日本人が世界の舞台で活躍しこの競争を勝ち抜いていくためには、これまでわが国社会が誇ってきた倫理観を改めて身につけ、あわせて自国の文化や歴史などの教養をしっかり持つことが重要である。その上で、与えられた知識だけに頼るのではなく、ものごとの本質をつかみ、課題を設定し、自ら行動することによってその課題を解決していける人材を育成することが急がれる。また、教養を備えた各界におけるリーダーの養成も必要である。
総合教育政策局国際教育課