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初等中等教育における国際教育推進検討会(第4回)議事録

1.日時   平成16年11月19日(金曜日)14時〜16時

2.場所   経済産業省別館1012会議室(10階)

3. 出席者
(委員)   池上久雄(座長)、佐藤郡衛(副座長)、岩谷栄子、奥村芳和、小野清二、佐藤裕之、紿田英哉、多田孝志、中島和子、根道博、根本かおる、長谷川祐子、船橋力、渡邉寛治 の各委員
(外部有識者)   新谷勝利(全国高校生留学・交流団体連絡協議会事務局長、元財団法人AFS日本協会事務局長)、高木洋子(特定非営利活動法人グローバル・プロジェクト推進機構代表)、宇土泰寛(全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会副会長)
(文部科学省)   井上国際統括官、山中大臣官房審議官(初等中等教育担当)、山脇国際教育課長他関係者

4. 概要
(1) 開会(池上座長)

(2) 配布資料の確認
事務局より配布資料の確認が行われた。

(3) 議事
 新谷氏より高校生留学の現状等、高木氏より国際教育へのインターネットの活用可能性について発表の後、事務局より第3回検討会における主な意見について説明した。その後宇土氏より国際理解教育の実践のあり方について発表があった。

新谷氏】
 新谷といいます。よろしくお願いいたします。
 それでは、早速順番に説明させていただきます。文部科学省の調査を掲載させていただきました。文部科学省は隔年で「高等学校における国際交流等の状況」として、高校生留学者数についても調査を行っていますが、これは国際的にもすばらしいことで、こんな統計をとっている国は世界中にないですね、日本だけだと思います。これは長年にわたり調査しているのですが、近年の傾向では、派遣生は4,000人前後で大体推移し、少し減っているようなイメージです。受入生は1996年は1,280人で、2002年の最近の数字では1,478人となっており、これは確実に増えています。それぞれの調査年度における高校生の生徒数に対し、それぞれ派遣者数、受入者数がどのくらいの割合かと言いますと、2002年度で、派遣者比率は0.1%、受入者比率は0.04%となり、高校生の中における位置づけとしてはあんまり高くはないということです。
 AFSは、世界に50カ国以上置かれているのですが、ここで、それぞれの国が1999年〜2000年の学年度に、何人派遣して、何人受け入れているかという、ランキングをご紹介します。それによると、下から3分の1の37位にJAPANがあります。大体どの国のAFSも、それぞれの国において20%から30%のシェアを占めています。ですから、その国全体の派遣、受入数に直す場合は、その数字を3倍とか、4倍とかすればよいのだろうと思います。
 要するに、日本が下から3分の1にいるということですね。アジアの中において、日本は対人口比という乱暴な言い方ですが、必ずしも国際化にさらされてないということはではないかと思います。片や上位のほうは、ほとんどの先進国やある意味では海外との交流に熱心な国が並んでいます。日本だけの統計を見ても、高校生に対する比率もあまり高くないし、国際的に見ても、対人口比で見てもあまり高くないんじゃないのかということをこれは表している。
 文部科学省では色々な答申が今までに出されてきたと思います。例えばお手元にある、平成14年2月21日中央教育審議会の「新しい時代における教養教育の在り方について」ですね。このように答申レベルにおいては、高校生の段階で国際的な経験を積ませるということは、必要だと言われています。これは国内においても海外においても同じです。この点は皆さんが多分合意しておられるのではないかと思います。
 さらに、日本はすぐれた制度を持っております。海外での1年の経験を日本の1年の経験とみなすというものですが、AFSで調べたところ、世界の中でこのような制度を法律として持っているのは、ほんの数カ国しかありません。この制度が昭和63年に施行されたとき、翌年の留学人数は1,000人ぐらい増えました。しかし、それ以降はほとんど4,000人前後で変わってないというのが現状なのです。答申はある、こういう法律のバックアップもある、だけども、現実の数字は必ずしも高くないということなんです。
 これはなぜなんだろうということで、2002年にAFS日本協会で実際に留学をした生徒に調査をしました。それによると、生徒が留学したいと思ったときに、その情報は学校から得ているということですから、学校が生徒に対して何らかの新しい知的展開を求めるための機会を与えることは非常に大きな意味を持っていると思うんですね。情報源のみならず、生徒は先生を信じています。要するに、子どもは最初は必ず親に相談しますが、必ずしも保護者が明確な考え方を示さないときに、学校の先生に相談しているようです。
 問題は、相談したときに高校の先生が留学に反対するということなんですね。要するに、留学はだめよと言われる生徒が5人のうち1人はいる。海外にもっと出ていくとか、経験を深めるとかということに対して、勇気づける、動機づけるのではなくて、それは大学に行ってからでいいんじゃないのというふうな言い方をされるということです。特に、中南米、アジアといった国に行きたいと言うと、先生は抵抗感を示すようです。生徒が学校の先生に相談することはいいことであるし、学校が情報源になっていることもいいことなんだけども、必ずしも適切なガイダンス、あるいは動機づけがされていないのではないかという思いがあります。
 では、なぜ学校の先生が反対するのかということですが、実際、保護者あるいは生徒自身からAFS事務局にかかってくる電話によると、学校の先生からは、あなたは成績が優秀だから、あなたが留学すると、この学校から大学に行く生徒が減ると、これは困るということを言われるそうです。一般化しちゃいけないと思うんですけれども。もちろん大学は重要であるし、それ自身を何ら否定するものでもないんですけれども、もう少し余裕のある態度ができないのかなというのが、高校生留学を推進している団体としての立場であります。
 全国高校生留学・交流団体連絡協議会に所属する事務局長で隔月で幹事会というのを開いているんですけれども、その中で皆さんが共通に感じていることは、何のために留学するのかという意識が、子どもたちに必ずしも明確でないということです。印象としては、単に行くとか、学校から逃げるとかそういうのがあるのじゃないのかなと話をしています。これらは統計的な裏づけがあるわけじゃありませんので極めて難しいんですけれども、そのような強い印象を持っています。
 また、高校生留学を促進する上で、問題意識としてその幹事会でもよく話題に上ることは、資料では「しつけ」という言葉で表現しておりますけれども、子どもたち自身が海外に行ったときに、日本のことを知らないので、海外で交流できないというような問題がございます。先ほどのAFSの生徒の調査でも、一番困った問題は、実は自分が日本について何も知らなかったことだと生徒本人も言っています。自分の国に対する知識というんですか、それがあまりついてないのかなと思います。
 それから、他人と交流するということが、どうも最近の子は苦手なようですね。例えば学校から家に帰って、かばんを自分の部屋に置いたら、リビングに出てきてホストファミリーと話をするとか、あるいはディナーが終わった後、ホストファミリーと話をするというのが期待されているんですけども、それをしないで、そのまま自分の部屋に帰ってしまうということを非常に多く聞きます。
 また、単位認定との関係ですが、留学には30単位が認められるわけです。そうすると、高校の先生にしてみれば、かなりまじめに勉強していて欲しいと思うのは当然のことなわけですね。しかし本来あの法律には、異文化での経験というものを評価するという意味があったと思われるんです。ところが、実際には異文化に触れる活動をあまり積極的に行わず、日本の学校に通っていた時の生活を継続しているという場合があります。
 それから、留学をしている時に何かしら問題が起こるというのはある意味では当然のことなんですけれども、すぐに日本の保護者に相談してしまい、現地相談員と留学生自身で共に問題解決する、という機会を生かし切れていない。要するに、保護者の子離れ、子どもの親離れができていないというのを非常に多く聞きますね。
 最後に、高校生留学者数の比率である0.1%が高いのか低いのか。これを客観的に言う方法があるのかどうか、あるいはもし政策論にするならば、何%にもっていこうとするのか、というのが必要ではないかと思うんですね。
 日本から生徒が海外に出るということは、日本の生徒を受け入れる国があるということですが、実は既に海外においては、特に英語圏においては、日本の高校生を受け入れる能力はありません。ですから、日本が幾ら英語圏に生徒を送ろうという政策をつくっても、受入国に余地がないんですね。唯一あるのは私費留学です。オーストラリア、ニュージーランド、カナダは政府が留学を推奨しています。これはキャパシティーはありますよ。政府が貿易として位置づけており、大使館自身がビジネスとして推進している。とはいうものの、僕はそういうところに高校生を送るのがいいのかどうかについては若干疑問です。ですから、ボランティアでの交換留学については、英語圏の受入余地はもうない、という認識を持っておく必要があると思うんです。
 では、英語圏以外の国はというと、キャパシティーはあります。アジア、ヨーロッパ、中南米などは、日本の高校生がどんどん来てほしいと言っています。だけど、それは日本の高校生が行きたい国ではないんですね。その辺でもグローバルな視点を持つ、というのがどういうことなのかをちょっと考えてみる必要があると思います。
 それから、学校教育において国際理解教育を位置づける、どういうふうに留学を位置付けるかということは、考えてみる必要があるのかもしれません。
 3つのことを申し上げます。1つ目は派遣受入についてで、実は学校の先生は派遣したら、出しっ放し、生徒が帰ってきても、彼らの経験を他の在校生に知らしめるということはほとんどされておりません。逆に受入生の場合は、ちゃんと色々なクラスを回ったり、部活をしたりしているわけですから、この辺のところで学校内において、留学に行った生徒、受け入れている生徒を、いかに他の留学経験のない生徒と交流させるかについて、何らかのプログラムが必要だろうと思っています。
 2番目は、せっかく世界に自慢できるような法律が日本にはあるにも関わらず、留年をしないで帰国後そのまま進級する生徒は大体60%です。40%以上の人は1年間留年する、あるいは場合によっては退学というふうになっているので、これが何とかならないのかと思っています。
 3番目は、国際教育、国際理解教育というと、「英語科の先生」というイメージが強くて、英語科の先生にプレッシャーや仕事の比重がかかっているので、それをもう少し広く高校の先生全体に分散することが必要だと思うんですね。と同時に、生徒が先生に相談したときに、先生が自分の経験がないから答えられないということではやっぱりまずいのではないかと思うので、先生自身の留学や海外研修というのはかなり推進しなければいけないと思います。
 3つ目は、交換留学というのは、ボランティアが推進をしておりますので、そのための制度というのは必要だと思います。実は、世界中を探しても高校生留学を法律で明確に定義している国はそんなにないです。3カ国か4カ国ぐらいですね。一番有名で古いのはアメリカですね。これはビザの種類も違います。J1というビザは、そのためにつくられているビザです。ちなみに私費留学はF1というビザです。ですから、交換留学を推進するようなアメリカのような制度が日本でもつくれないかな、という気がします。あとは受入に対するインセンティブ、例えば税金を控除するといった、留学生を受け入れるボランティアが、より活動しやすくなる環境を整備することが必要だと思います。
 最後に、これはぜひ強調したいんですけども、日本はアジアの一員であるという意識を皆が持つようにと言われるんです。先ほど言ったように、アジアに行く、と言った瞬間に先生が反対する、親が反対するという状況が現実にあるわけです。したがって、もっと高校生が単にアメリカだけ見るんじゃなくて、アジア諸国に対しても目を向けるようなことを積極的に進める必要があるんではないかと思います。そのためには必要ならば、奨学金を出してもいいんじゃないかと思います。この点は日本の今後を考えたときぜひご検討いただけたらと思います。以上でございます。

高木氏】
 高木でございます。
 まず、インターネットがコミュニケーションツールとして入ってきたということで、教育の現場で世界的に大きな変化が起きています。具体的にいいますと、子どもたちは、日本にいながら、教室に座り、海外のクラスの子どもたちと協働学習ができるという、こういうグローバル教育が実際に可能な時代になったということです。
 それと当時に、世界各地で色々なプロジェクトチームが立ち上がりました。その中でもiEARNはInternational Education And Resource Networkといい、世界規模の大きな教育ネットワークとして成長してまいりました。そしてJEARN、これが私どもNPOのグローバルプロジェクト推進機構なんですが、ここがiEARNの日本センターとして活動しております。今日はこのiEARN及びJEARNの活動を紹介させていただきたいと思います。それに続きまして、実際に学校でどのような実践事例があるか、また、課題は何かについて触れてみたいと思います。
 まず、情報社会がグローバル化を一気に進めてきておりまして、新しい社会に適応していける人を育てる教育が必要になっております。世界の平和を求めるとか、お友達を作りましょうとか、仲よくしましょうとか、一般的に言われますけれども、これは何か既に形があるものではなくて、子どもたちがいろんな場面を通して、そして、異文化の衝突を経験して、その中からお互いにどんな解決方法があるのかなと探して出していく。探し出していくその過程の中でスキルも身につけますし、それから、お互いの理解のし合い、それから、平和というのはどういう意味なのかというのがわかってくる。つまり協働のプロジェクトを通して、異文化、異なる者への理解、それから、グローバルマインドへ目覚めというものが身につくと思います。
 インターネットは、学校では主に調べ学習に使われておりますが、もう一つの大きな柱として、インターネットの向こうには人がいるんです。この現実をもう少しきちっととらえていきたいと思います。インターネットは、いわゆるコミュニケーションツールとしましても、世界中の教師と教師が結び合い、それから、生徒と生徒が結び合い、地域と地域、学校と学校、国と国というものがつながり合っていく、そういう可能性を秘めたものであるということを前提にお話しさせていただきたいと思います。
 日本では、ICT(Internet Communication Tool)教育はその環境が整いつつあると思います。また、日本には総合的な学習の時間という時間があります。それから日本では、世界で対話できる日本人が育ってほしいという社会に期待感があります。このように私は、もう学校に舞台装置は備わっていると思うわけです。
 ところが、舞台は揃っているんですけれども、実際にパソコンとか、インターネットが国際交流をするわけじゃないんですね。そこで、先生方は困られるわけです。どうやってすればいいんだろう、仲間もいないし。ということで、iEARNのヒューマンネットワークでありますとか、JEARNの提供しているものを使いながらやっていけば、ハードルはグーッと下がっていく。実際にそういうふうな実践例を幾つか紹介したいと思います。
 まず、iEARNなんですけれども、これは3つの大きな特徴がございまして、年に一度どこかの国がホスト国になって、みんなそこに集まります。先生も生徒たちも集まります。大体年間56カ国から300〜500人規模で集まってきます。1週間の合宿生活のようなものを経験いたします。それから、iEARNには毎年130から150のプロジェクトが実施されております。この中には長く歴史のあるプロジェクトや人気のプロジェクトもありますし、3〜6カ月という短いプロジェクトもございます。今あるプロジェクトに参加するという参加型のプロジェクトと、それから、日本で、例えば総合的な学習の時間で子どもたちがつくり出した何か成果物を、iEARNの皆さんのほうに出して、一緒に参加してくださいというふうに呼びかける提案型のプロジェクトもございます。それから、各プロジェクトには一つ一つ掲示板といいますか、オンラインのフォーラムがありまして24時間動いております。統計によると、大体1日に1,000件の意見の書き込みがあると、そのように聞いております。このフォーラムがiEARNの心臓部分になっているんではないかと私は思っております。
 iEARNの魅力は、現在110カ国から、1万5,000校、75万人から100万人の子どもたちが参加をしているということです。ICTも使いますが、あくまでもヒューマンファーストなんです。というよりも、子どもファーストなんですね。それとテクノロジーセカンド。iEARNには大きなリソースが2つございまして、その1つは、先生のヒューマンネットワークという人間のリソースですね。もう一つは、数多くありますプロジェクトのリソースです。
 次に、参加している110カ国のリストをアルバニアからジンバブエまで並べております。まだまだ増えています。残念なことにアジアの国は非常に少ないのですが、iEARNASIAを立ち上げ、iEARNの世界の中にもアジアのプロジェクトをどんどん組み入れていきたいと考えております。
 そのiEARNの日本センターでありますJEARNといいますのは、1996年に私がひょんなことから知りました。そしてこんな世界があるんだってびっくりいたしまして、これはもう絶対日本の先生に紹介しないと損だ、そのためにはどうしたらいいんだろうかと悩みながら、少しずつ広げていき、JEARN(Japan Education And Resource Network)という形で誕生させました。
 JEARNは具体的に何をするかといいますと、iEARNのオンラインフォーラムに入るためのIDとパスワードをお渡しします。それから、iEARNの先生たちにつなぎます。そして、国内の情報を外に、外の情報を中にという情報提供をいたします。また、先生の研修会もやっております。プロジェクト学習用のICTツールといいますのは、例えばJEARNのメンバーになれば、私たちは三種の神器と言っているんですけれども、自動的にメーリングリスト、掲示板、webサイトがもらえます。また、新しくプロジェクトを立ち上げたら、そのたびにまた、これが自動的にもらえるようになっております。また、ヘルプデスクとして、グローバルプロジェクトの指導とか、支援もやっております。
 今年11回目のiEARN国際会議はスロバキアでございました。63カ国から約400名の者が集まりまして、日本からは19名が参加いたしました。第10回目は日本でした。テーマは、At the Crossroads:Finding Futuer Milestonesという、「未来への道しるべ」というようなタイトルにいたしました。参加数は936名で、日本からもたくさんの先生方にご参加いただき、またボランティアの方々がワーッと手伝ってくださいまして、大規模に開催することが出来ました。
 国際会議は1994年から行われてまして、来年はセネガルで開催されます。今年はセネガルから3名の代表が来まして、来年は小さな私たちの国でやりますけれども、どうか参加してくださいといいプレゼンテーションをされました。こんなふうに国際会議をするためには会うのが一番インパクトが強いんですね。お隣で食事をした、それだけでもう何かお友達になりますし、それが1週間も一緒に食事をして、ワークショップして楽しみながら1週間を過ごす。毎年みんなに会うのを楽しみにして行くわけです。iEARNファミリーと言われておりますように、一度参加した者はリピーターになります。その雰囲気はとてもいいものですからみんな大好きになるわけですね。
 ここに日本の先生たちをどんどん参加させる。例えば新潟の地震がございました。あのとき、皆さんにメッセージをお願いしますと言いましたら、39カ国から約300件、日本も含めますと約600件の書き込みがあったと思います。英語ですから、それをjEARNのボランティアのメンバーたちが順次日本語に訳し、どちらでも読めるようになっております。こういうことが瞬時にできる、これがiEARNの世界なんですね。
 プロジェクトには大きく分けてCreative Language Arts、Science Environment、Math Technology、Social Studiesの3つがありまして、今年は138件のプロジェクトがあります。一つ一つにはオンラインのフォーラムがあり、先生も生徒も自在に書き込みができます。特に私がよく使いますのがTeacher's Loungeというところなんですが、これは、例えば地球学校の先生の職員室という趣なんですね。いろんなニュースが入ってきまして、それぞれにレスをしております。Youth Roomというのは、これは子どもたちのお部屋です。Language Diversityといいますのは29カ国語で書き込みができるというフォーラムなんですが、iEARN日本語というのもございます。
 こんなふうに先生のヒューマンネットワークとプロジェクト、それについているフォーラムと、これでもって国際協働学習というのが可能になっているわけですね。お勧めプロジェクトを1番から20番まで選びましたが、これは参加型のプロジェクトです。その中でも11番Children in Space Projectとか、Earthquake Youth Summit2005は日本発のプロジェクトです。
 こういうプロジェクトに参加できる学校は特別に恵まれた学校じゃないのかとよく言われるんですが、答えはノーなんです。例えばインターネットの性質としましては、本当に小さな小島の子どもたちも、山奥の人里離れた生徒数が7人、8人とかいう、そういう学校でもインターネットアクセスさえできれば、都会のすばらしい環境を持った子どもたちと同じレベルで世界とつながり、プロジェクトに参加、そして交流ができるんですね。こういうインターネットの性質がすごく私には魅力的に思えます。
 次に日本で人気のプロジェクトは、今100校ぐらい参加していますテディベアプロジェクトなんですね。それから、先ほど説明しました新潟へのメッセージの分ですね。NEGAIConnectionといいますのは、広島の大須中学校で「NEGAI」という曲を作詞作曲し、これを各30カ国に翻訳しまして、そして、1番から4番まで彼らはつくったんですが、5番は私の提案で、各自が自分の思いで書いてください、としましたら、今それが191番まで集まっております。
 Kids' Guernicaといいますのは、熊本市の弓削小学校の6年生の卒業作品を学校で展示する場所がなかったのですが、その中にすばらしいのがありまして、iEARNのプロジェクトの1つであります、Art Miles Projectのジョアンナ先生にメールでこのことを伝えると、これはぜひウィーンで来週開催されますヨーロッパピースデーに市庁舎に張りたいから送ってくれと返事がきたのです。そして急遽チームづくりをして送りました。倉庫で眠っていた子どもたちの作品は今、世界のあちこちを回っております。
 こういうことが何で素早くできるのか。これは人が人をつなぐというICTの環境であり、iEARN、JEARNのヒューマンネットワークであり、子どもたちの感性、行動力であり、そして、皆の平和への願いであると。思いをつないでいきますと、こういうことが簡単にできちゃうわけですね。鍵はヒューマンネットワークである。
 最後のページですが、こういった活動を通じて、子どもたちのポテンシャルは、日本人だけの学習環境・日本だけの評価内容とは違った刺激を受けます。また、「英語ができるようになるまで待とう」ではなくて、自然に英語という対話の道具が欲しがるような、こういう環境があります。オリジナルな意見を出すために、学び手に主体性が生まれる。それがまた、子どもたちの無限のポテンシャルを引き出すポンプになるということです。ところが、大半の今の日本の学校では、国内のイントラネットになっていてインターネットの働きをしていない。また、教室・学校・地域・国内の世界にクローズしているということがしばしば見られ残念に思っております。時代は既にグローバル教育です。先生のちょっとした英語へのためらいとか、パソコンへのためらいとか、そういうものが子どもたちから学習の機会、さらには、可能性を摘んでいるのではないかと私たちは危惧しております。ですから、その間をつなぐJEARN、または世界のヒューマンネットワークをどんどん使って、また、こういったコーディネーターを育成しながら、子どもたちを世界へきちんと結びつけていきたいというのが私たちの願いであります。

宇土氏】
 それでは、発表させていただきます。小学校に今、勤めておりまして、本当に現場の感覚からお話をさせていただきたいなと思っています。実感として感じますのは、プログラムやいろんな研修会など様々なものがある中で、学校の教師はどういう感覚かなというときに、どうしても国際理解教育は広がっていかないものがあるんですね。そして、教師たち自身が体ですごいプレッシャーを感じているというのがあるんです。今、学校が非常にプレッシャーを受けております。そして、先生方も相当な不安感を持っています。
 今まででしたら、自分がその教科の体系をきちんと身につけて、そして、それを指導していくということの中で学校教育ができてきたと思うんですけど、学校の制度自体が今後どう変わっていくかわからない上に、教科も従来自分たちが教えていた方法と全く違う方法だと。せっかく総合的な学習の時間が始まって、やろうと思った瞬間、今度は学力が下がるというので、一気に百ます計算のほうに走る。そういうところで大変揺れ動いてはいるんです。でも、そのような時代だからこそ、ここで私が言いたいのは、国際理解教育が実は大事なんだということです。ただし、国際理解教育という場合に、外国を理解する国際理解教育、あるいは英語をやる国際理解教育、そういう旧来の国際理解教育の観念ではないのです。国際理解教育は、そういう教科と同じようなカリキュラム、そして、内容を持つと同時に一つの視点を持っているんですね。その視点というのは、まさに教育原理に値する、要するに、21世紀のこの多文化共生社会という中では非常に重要な役割を持つ、そういう視点を持っているのが実は国際理解教育ではないかと思うんです。
 教員研修等に関しましても、国際理解教育で何ができる、どういうものであるということを言っても、先生方はやはりその方法論に関心を示す。その方法論を身につけない限り実は実践できない。しかし、方法論ではなくて、国際理解教育が持っている視点を身につけると、目の前の子どもたちの様子やあらゆることが見えてくるんです。
 例えば国際理解教育の視点からの実践として、資料には「学校崩壊の危機から、地球を物語る教室へ」と書いています。これは私の体験談なのですが、簡単にお話します。
 日本中で今、小学校低学年の学級崩壊が起こっている。それは明治以来の教育の中では考えられないものです。今まで先生が「前へならえ」と言えばちゃんと並んでくれたし、授業が始まったらちゃんと席に座る。それが1、2年生であったんですけれども、それが今、成立してない。色んな形で低学年に問題が出ているんですね。
 あるとき校長から、1年のときそういう状況になった学級を持ってくれって言われました。そのときは途方もない感じでした。これはもう異文化な社会だと思ったほうが理解できたんです。最初は、従来の手法で色んなことを試しましたけど、全くうまくいきません。「前へならえ」もすぐおしくらまんじゅうになっちゃうし、親が来ていようとも、席を立ち動き回る子どももいるわけですね。ここで、国際理解教育をやっていて本当によかったなと思ったのですが、国際理解教育の中では判断留保の視点というのがとても重要なんですね。自分と違った文化の、あるいは自分の考えと違った現象に対して即判断してしまうんじゃなくて、ちょっと待てよと、これは一体何だという、そういう視点ですね。これを身につけていたがゆえに、いや、こんなに荒れている学級でも何かがあるはずだと思い、見ていきました。すると従来は幼児教育では、遊びの中で社会性を身につけ、小学校に入って、知識の世界に入っていた。ところが今はそれが逆転していたんですね。早期教育で社会性よりも知的な世界が大きくあって、そして、小学校に入って知的な世界に入ろうと思っても、もうそんなの知っているよと言う。でも、知っているといっても計算と字が書けるだけなんですけど、それでもう勉強は済んでいるという思いを家族が植えつけていたんですよね。
 それならば、それをうまく使おうということで、私は彼らはすばらしい知的な世界を持っていると親に言いました。そうしましたら、親も喜んでくれるわけですよね。そういうふうに視点を変えるだけで見え方が全く違ってきた。そういう中で2年生から子どもたちに色んな研究をやらせました。宇宙のこと、地球のこと、動物のこと、そしたらやれるんですね。今まで親が担任に対して不信感を持っていたんですけど、だんだん回復してきた。最後には、2学期に「地球の真ん中で出会ったペットとボトルの物語」を作りました。地球の真ん中でウミガメがペットボトルを飲んで死んでいる、それを子どもたちが提起しまして、それを本当に助けようと思った。すると日本の中心とオーストラリアの中心は近いんですよね。そしたら、「オーストラリアの人って何語で話している?」「英語だって」という風に、2年生の英語で自分たちでやり合っている。オーストラリアから帰国した子どもがいたというのもあったんですけど、そういうふうにして、その劇化を通して、そのクラスは完全に立ち直りました。親だって喜びますよね。1学期の授業参観ではすごく期待していた子どもたちがこんな状態で何だと思った。ところが、2学期の劇になりましたら、英語も交えて見事にやり抜いた。
 このように国際理解教育の視点を持っていると、あらゆる状況に対して教師が次々と対応を考えられるんですね。色の三原色というのがありますよね。三原色を通していろんな色が生まれると同じように、国際理解教育の視点、それを教師が持つことによってその状況に対していろんな形で対応できる。そういう意味で、教員養成段階からそういうのも具体的にやるべきだと思います。どんなに講義で理論的に話してもおそらく身につかないと思うんです。講義を否定するわけではないが、それと同時に、本当に体験的に自分が異文化に接した、そういう研修をやっていけば、いろんな形が見えてきます。さらに、教科学習、算数などの教科の中でも、実は国際理解教育ができるんですね。従来の観念ですと、算数で国際理解というのはなかなか考えられない。ただ、柔軟な国際理解教育の視点を持つとそれができる。このような形で、国際理解教育の視点を重視しながら、研修制度や内容、それをつくっていくというのがこれから非常に重要じゃないか。特に21世紀のこれからの教育、そして、世界の中で色んな形で子どもたちが出会う、そういう未知の世界に出会う学習、未知の世界の中で子どもたちが自分でやっていけるような学習、というのが国際理解教育の非常に重要な側面ですので、従来の内容と同時にそこを考えてはどうでしょうか。これが第1点です。
 第2点目は、教師が国際理解教育を実際にやるときに、自分が住んでいる世界と違う世界ですから、どうしてもメディアとか、映像とかが必要ですよね。ところが基本的な資料すら簡単に集まってこない。これは大きなギャップだと感じておりまして、国際理解教育の特質を踏まえた支援システム、これをどうしてもつくっていかなきゃいけないんじゃないだろうかと思います。
 そこで、全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会(以下「全海研」)で今、考えておりますのは、世界教育メディアネットワークというものです。要するに、海外の日本人学校へたくさんの先生方が行っていらっしゃる。その先生方は自分で授業をなさっているわけですから、どんな映像、どういうメディア、どういう資料があるのかを非常におわかりになると思うんですよね。そういう先生方の情報をデータバンク、あるいはホームページとして自由に使えるような形でできないだろうか。そして、もう一つは、国際交流とか、テレビ会議とか、外国の学校との協働プロジェクトとか、それは絶対に必要なことではないか。そういう意味で、その支援システムをとにかく作っていかない限り、本当に実践の場で生かすまでには至らないだろうと思います。
 次は、国際化の中で外国の子どもたちが非常に増えてきております。そういうときにやはり日本の先生方も、そして、保護者たちもそうですが、外国人児童生徒教育へ見方を転換していかなきゃいけないんじゃないだろうか。一番大事なのは、そういう子どもたちが入ってくること自体が、実はマイナスではなくて、色んな違いがあるというのはもう当然であり、多様性こそこれからの豊かな教育、人間性を生んでいくんだという考えへの転換が必要であると思っております。ところが、学校選択制と関係しますけど、外国の子どもたちが多く行くような学校をむしろ選ばない、という傾向もあるとか聞いておりますし、実感で感じる面もあるんですね。ですから、多文化共生というこれからの社会づくりの根幹につながる学校づくりの中に、多文化共生への視点を入れていかなきゃいけないと思うんですね。
 そうすると、教科書とか、カリキュラム、こういうところまで踏み込むしかないんじゃないか。本校でも国際理解教育の研修に交代で出ておりますけれども、じゃあ、その先生が研修会に行って何か新しい変化があったかというと、あんまり感じられない。お話を聞いてきたという感じで終わっているんですね。ただ、日本の先生方は、授業に関して非常に熱心ですので、そういう視点をカリキュラムとか教科書レベルに入れていくと、普段の授業の中に、あっ、こういう点が国際理解教育と関係しているな、ということを先生方に訴えることもできるし、やっていけるんじゃないかなと思っております。
 そして、それをつくり出すという点では、日本人学校、海外子女教育という形で関係している全海研も発想の転換をしていかなければいけないんじゃないか。もしこの発想の転換ができると、非常に有効な力になるんじゃないかなと思っているんです。今までは日本の教育を海外の日本人学校へ、という発想だったんですね。ですから、日本人学校に行かれる先生たちも、今まで日本でやってきた教育をそのままやるという感じになると思うんです。ところが、今、日本の学校が大いに改革をしなければいけない。色んな点で学んでいかなければならない。そういうことを考えた場合、海外での取り組みを日本の学校改革に生かせないだろうか。
 逆転の発想といいますか、考えてみれば、例えば日本の学校で学校評議員制度が広がりましたけど、海外の日本人学校は学校運営委員会という形で30年前からやっている。日本で小学校に英語活動が入りましたけど、これにしても日本人学校では英語や現地語の学習はかなりのレベルまで進んでいる。国際交流は現地交流を通して行っていると。
 このように海外で行っていることをもっと大胆に行いながら、日本の学校改革に生かすというふうな視点に立てば、海外に行かれる先生方も非常にいろんな取り組みができるんじゃないか。そして、現地の学校といろんなレベルで交流ができるんじゃないかと思います。そういう意味で今、日本人学校の教育自体も大きく発想を変えて見てみれば、非常に有効な力になる。また、海外から帰った先生たちは、今まで自分の学校で海外での経験を言えなかった。そういう雰囲気があったんですね。でも、海外に行かれたそのチャレンジが日本の学校を変えていく、その大きなエネルギーになるとなれば、どんどん力を発揮できるんじゃないかと考えています。
 最後の最後ですけど、英語に関しては一つだけ危機を感じています。英語をやれば国際理解教育はオーケーという風潮が、また再び強まってきているのを感じております。そういう時期もありましたけれども、それからいろんな形で乗り越えて、多文化教育、グローバル教育、いろんなものを受け入れながら新しい段階にきているにもかかわらず、一気にまたその風潮が出てきている。この危機に対してどうするかは、国際理解教育の立場からしっかり考えないといけないんではないかなと思っています。

 以上の説明を受けて、質疑応答及び自由討議が行われた。

船橋委員】
 先ほど新谷さんのほうから生徒の受入先がないというようなお話がありましたが、教員の受入先についての何かデータはお持ちでしょうか。もしあれば教えてください。

新谷氏】
 先生を相手国が受け入れるということに関しては、かなりの余裕はあると思います。そういうことを今までやってきてなかっただけですね。

紿田委員】
 高木さんのお話について、NPOの財源はどうされていますか。

高木氏】
 代表として一番苦労しているところがそこで、やはり他の国を見ますと、政府が主体でやっているところが多いんですね。ITを学校に入れると同時に、こういったヒューマンネットワーク、iEARNを入れると。iEARN USAの場合、その財源の3分の1は会員から、それから3分の2は教育庁と幾らか企業のほうから。JEARNの場合は、会員が今のところ100名ぐらいおりまして、それの年会費がベースになっています。やっと会費をつくったわけなんですけれども、今まではずっとボランティアベースでやってまいりました。

根本委員】
 私もコソボで援助活動を行っていたときにインターネットを使ってアルバニア系の方々やその子どもたち、それから、セルビア系の子どもたちをつなぐということをしておりまして、非常に興味深く高木先生のお話を伺いました。
 それで、大体把握していらっしゃる限りで日本で何校の学校、あるいは何人の生徒さんがiEARN、JEARNの活動に参加されているのでしょうか。
 また、日本の子どもたちがコミュニケーションをするときの言葉、この言語は日本語なのか、それとも徐々に英語に移っていくのでしょうか。

高木氏】
 まず、JEARNの活動は学校を単位にして入るというケースは非常にまれでございまして、やりたい先生が自分で年会費を払ってやる場合が多いです。テディベアプロジェクトというのが非常に人気で、約100校ぐらいの参加があります。今、動いておりますのが、多分10校ぐらいお互いにテディベアを交換し合って、日記の交換をやっていると思います。
 ほかには、Folk Tales Projectsという、民謡とか、神話を集めましょうというプロジェクトで2校、2つのクラスですね。それから、「防災世界子ども会議」というプロジェクトに入っておりますのが、今、全国で20校ぐらいあると思います。
 もう一つ、言葉については、これは、とても大事なところなんですが、先生が一人で抱え込まないでくださいと言っているんですね。学校の中でチームをつくって、学校の中だけではなくて、お母さんたち、お父さんたちの英語力を使わせてもらいましょう、大学生も入ってもらいましょうというようにです。最終的には翻訳ソフトを使います。
 子どもたちが英語を習いたい、それを通していろんな人と知り合いになりたい、というのが本当だと思うんです。それを英語ができるようになるまで待ってね、というのはおかしいと思うんです。欲しがるときにしっかりと与えたい。

小野委員】
 国際理解教育とか、国際化教育についての重要性とか、そのねらい、指針等についてはもう十分議論されて、共通の理解が図られている頃だろうと思います。実は、中央教育審議会、臨時教育審議会、それから、教育課程審議会、学習指導要領、全部を通じてそこに載せられている、小中高における指針とか、ねらいというのはそのとおりなのですが、それが徹底されていない、というところがまず第1の課題だろうと思っております。
 小学校で言えば、学習指導要領の総則の最後の方に国際理解教育について軽く触れられています。ですから、先生方にとってなかなか定着が図られない。次回の改訂においてぜひ、国際理解教育について独立の章を起こすぐらいの提言ができないだろうか。
 もう1点、指導者の養成についてですが、例えば東京都では昨年度からキャリアプランに基づく教員の研修講座というのを制度化しております。その中では新規採用教諭の研修とともに、10年目、20年目、30年目のそれぞれの自分のキャリアプランを提出することによって、その中に自分が得意とするものを入れていく。そして、その研修の講座を受けることによって埋めていくというのがあるんですが、そういうキャリアプランの拡充といいますか、制度化に向けた提言も何か盛り込んでいければ、研修の重要性とか、教員養成というのにつながるのではないかなと思っております。
 さらに、英語活動については、コミュニケーション能力の育成のためには必要だと思っております。英語の重要性は時代の流れとして見過ごせない問題であります。ですから、国際理解教育の一環として英語教育活動というのは、やはりどこかに盛り込んでいく必要があるのではないかなと考えております。

山中審議官】
 学習指導要領については、教育課程実施状況調査などに基づき、今平成14年から実施している学習指導要領を見直しているところでございます。その次の段階として、じゃあ、トータルとして次の学習指導要領をどういう基本的な考え方でつくっていくのかというところを、教科の共通した部分を審議する教育課程企画特別部会において、議論を始めた段階でございます。そういう各教科ごとの見直しの検討、それから、共通的にどういう形で新しいものをつくっていくか、そのあたりを来年の春か、連休前か、その頃までに議論した上で、またさらに各教科のほうに戻り、次の学習指導要領の改訂をどういう形でやろうかという議論をしていこうという作業になっております。ここでの議論も、ちょうどそういうものに反映できるタイミングでご報告いただくとありがたいなと思っております。

中島委員】
 私、やはりまだ釈然としないのは、いわゆるコミュニケーション能力という英語の技能教育と国際理解教育との関係です。国際理解教育の中での英語教育では、中途半端な語学教育しかできない。しかし、国際社会というのは多言語社会ですので、言語が担っている機能や問題は非常に大きなものです。それから、言語保存というような視点もこれからのグローバルな社会では必要になってきます。文化の伝承伝播においても、言語というのは大変重要な役割をしていますので、言語そのものについての教育を、国際理解教育の中できちんとやらなければないだろうと思います。それがカリキュラムの中にきちんと位置づけられてほしいと思います。それと言語のコミュニケーション能力を伸ばす言語教育、外国語教育というのは別立てしないと、両方が虻蜂取らずになると思います。

奥村委員】
 高等学校の現場から、少し留学生のことについてお話しさせていただきたいと思います。
 本校は500人の小さな学校なんですけれども、AFSや財団法人YFU日本国際交流財団とかのプログラムを使って、多いときには十数名海外へ留学生として出ています。現実問題としてどういう生徒が出ていくかというと、女子が約8割男子が約2割という状況です。それから、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールに指定されており、ほとんどが国際科、英語科に特化されてその授業が行われていますが、ここでも国際科、英語科に入ってくる生徒の8割方は、おそらく女子です。なぜ、男女平等に行われるべき英語教育や国際教育、留学といったところが女子にだけ受け入れられているのか。
 これは、おそらく大学入試の問題が大きいと思うんです。留学した女子は帰国後にどういう進路を選ぶかといいますと、30単位を認めてもらって戻ってきた者は、大抵慶応大学であるとか、同志社大学といった大学の英語入試を受けて、すばらしい生徒たちがそちらへ全部流れます。国立大学でも九州大学のように21世紀枠という、そういう留学した経験者、意欲のある生徒を積極的にとっている大学もありますが、こういったものは、おそらく九州大学の21世紀枠一つじゃないかなと思います。
 そういう点で大学が積極的に、留学した生徒であるとか帰国生であるとか、そういう者に枠を広げていく、それが男子の学生にも門戸を開いていく一番手っ取り早い現実的な方法じゃないかなと思います。ビジネスの世界にも、政治の世界にも、そういう経験を持った優秀な学生を確保できる一つの方法じゃないかなと思います。

紿田委員】
 こういう委員会で提言する場合、何か制度を変えていくという視点が重要だと思います。私も、今年から秋田の国際教養大学の理事を仰せつかっていますが、あそこは英語の能力の高い生徒をとっており、非常にいい人が来ます。それから、いろいろ制度を変えたんですが、例えば暫定入学制度をやってみるとか、これもまた非常におもしろいですね。次点で落ちた生徒を入学させるわけです。1年生で成績がよかったら2年生に入れるから、そのときに入学金を払いなさいと。するとものすごくよく勉強する。そういう今まで考えられなかったようなことをやると、制度がインセンティブになるということがあると思うんですね。
 その点では、男子学生が、大学に入りやすくなるような制度はぜひ提言したいと思います。

根道委員】
 海外に行って帰ってきたら、私は日本の学校では1年でも2年でも、どんどん遅れたらいいと思っているんです。要するに、向こうで学んだものがありますが、日本でも海外で学んだことをスキップしないで、もう一回重ねてやると。実は、私は、結果として、全部で2年大学を出るとき遅れているわけですが、それが自分の長い人生とか、社会生活の中で全く何の支障にもなったことはありません。むしろ遅れて日本の教育内容がつながるようにしっかりやることのほうが大事だと思っております。
 それから、もう一つは、宇土先生の大変、立派な視点を伺ってとても心強く思ったんですが、海外から帰られた日本人の先生の活用ができないのはなぜかという問題に関して、一般的にはまだ隠すという傾向があるのは疑いのないところであります。ですから海外子女教育をやってきた先生が評価され、あるいは人事的にもそういう経験を生かせる制度をつくらないと、いけないと思います。

多田委員】
 やはり私は、教員養成の問題を申し上げておきたいと思います。実は、現状でいいますと、異文化の会とか、国際理解教育学会に実に優秀な若手の研究者がいるんですが、なかなか職を得ることができず、育っていかないですね。私は、この教育の重要性に鑑みたときに、教員養成大学の中にしっかりとした指導ができる教官がいるということは根本的に重要なことだと思います。ぜひ教員養成大学の中にそうした力を持った先生方がどんどん入っていけるようなシステムづくりが望まれると思います。
 それから、宇土先生がおっしゃった3点は全く共感するところです。後は、そういう力を一般の先生方にどう広げていくか。今のところ、あれは何々先生だからできるという状況にとどまっているわけですね。それを全体に広げるための手だては研修制度のあり方ということだと思うんですね。それは単に上から知識を授けるだけの研修では育たない。やはり実際にカリキュラムを作る体験が重要だと思います。

山中審議官】
 カリキュラムが変更されればおそらく教員養成の科目をどうするのかという話にもなると思います。それから、今後、教員についても専門職大学院のシステムを導入したいということがございます。これは、今までも大学院、教員養成大学がございましたが、不十分だというのが一般的なとらえ方でございまして、実践的な教育力をつける、専門職大学院が作れないか、ということでございます。そういう場合に、一体どういう部門の実践的な力をつけるべきかという議論の中で、国際理解教育を大きなテーマにしたカリキュラムをつくるということになれば、大きく取り上げられるんじゃないかと思います。
 それは、平成18年度ごろまでには基本的設計をやろう、ということで今作っております。ロースクールをつくるときにもそのプログラムをつくるまでには、大学、法曹界、裁判所、それから、弁護士、学者、こういうところとあわせてどういう形で実践的なプログラムをつくるのか、ということを外国の例も使いながら一生懸命検討しましたから、教員養成プログラムについても、実践的なプログラムをプロフェッショナルスクールでつくろうということであれば、しっかりしたものをぜひ大学の先生、それから、現場の先生、教員養成をやっているいろんな教育センターの方、一緒になって作っていただきたいと思っていますし、そういうのを作らなきゃならないと思っております。

佐藤(郡)副座長】
 実は、昨日私どもの大学で日本教育大学協会の会議が開催され、幹事をやらせていただきました。その中で専門職大学院構想がやっぱり議論になりました。これは実は、学部教育にかなり影響するものですから、私どもの大学でも何かやらざるを得ないということになり、国際にかかわる専門職大学院を立ち上げようというような話になっております。多分そういう形で実現していくのではないかと思っております。

佐藤(裕)委員】
 国際理解に関しては、取り組みの提案はたくさんされるのですが、それをやった結果、子どもがどう変わったというところが大変見えにくいところが、国際理解が広まらない理由なのかなということを私は感じております。
 研究を推進している方から相談を受け、子どもの育ち、学びをどういうふうに見たらいいんですかといわれたときに、私自身が即答できない。難しい。やはりこういうふうにすると子どもはこういう力がついていくんですよという、その一連のところまでの取り組みを提示して国際理解を考えていかないと、よく言われるイベント主義というか、活動のみというような形になってしまうのかなと私は感じております。

  (ここで池上座長が退席。)

渡邉委員】
 今後国際教育をどうやって推進していったらいいのかといったときに、制度の問題に関しては、研修のあり方のところで一つやっていくきっかけがあるかなと思います。つまり、例えば今度の学習指導要領の改訂のときに、国として重大視するような形で明記していただくと、教育委員会やセンターは必ず動きます。それが学習指導要領の後ろの方に記述されてあると、ついつい優先順位でおろそかになってしまう。教育委員会もどうしても文言や予算との絡みで動いていきますから、実質的にそれを動かしていくためには、具体的に動けるようにするということが、重要じゃないかなと思います。ぜひ国と地域と一体化できるような形で頑張っていただきたいと思っております。

長谷川委員】
 宇土先生の先ほどのご意見、ご提案について、本当に私もそのとおりだなと思いました。特に学校現場では、外国だけが異文化ではないって本当にそのとおりです。子ども同士、自分でない他の者というのは本当に異文化の世界です。先生にとっては、やはり外国云々ではなくて、まず、教室にいる子どもたちをどう把握していくのか、そしてここで1つの視点を持つということについて、とても共感いたしました。私は今、行政の立場におりまして、これをどういうふうに広げて拡充していくのかということを考えると、教員養成、あるいは教員研修というのが非常に大きなところになるのかなと思いました。
 先ほど東京都の研修の中でキャリアプランというんですか、そういうものも拡充していくというようなお話がありましたけれども、理論とかではなくて、教員が体験的に、自分の個性や良さを生かしながらそれを研修の中で積み上げていけるような、研修のあり方を考えていかなきゃいけないと感じました。

岩谷委員】
 国際理解教育に携わる人は女性が多い。確かにユニセフ協会でも、職員の8割以上は女性、テストを通過するのは女性が圧倒的に多い。これについては日常的な小学校、中学校、高等学校の教育の中で、カリキュラムの中にまず国際理解教育はどうあるべきかの部分が盛り込まれていけば、男の子もそういうところに興味、関心も持つようになるのではないかなと思います。
 私ども、各学校に学習会のために出かけて行くのですが、ビデオ等々を通して感想をもらうと、男の子にも気づきがあり、彼らも感動するんですね。だから、まずわからせる材料、知らせる材料を提供していくというのはとても大事なことだなと思いました。
 それから、実践例等々の整備、教材の共有化も含めていくことになるかと思いますが、それも非常に大事であるのと同時に、やはり最後にくる評価基準も見据えたカリキュラム等々の提示、そして、評価基準までのサイクルをしっかり見据えた提言をしていくことの大事さを感じました。

船橋委員】
 私の会社で社会人の教育をやっていまして、60社6,000人の新入社員に研修をやっています。そこで明確にわかるのが就職観とその後のキャリア観なんです。先ほど男性、女性の問題がありましたが、圧倒的にまず新入社員のレベルでは女性の方が優秀です。特に就職までは危機意識が女性のほうが高いと思います。そういうところが先ほどの留学の話に出ていたんじゃないかと思います。男性はその後、働いて5、6年するとMBAを取りに行こうとかちょっと考え始めますけども、そういう社会的な背景が一つ原因ではないかと個人的には思います。
 あと1つ、提言に関しては、私は、多田先生がおっしゃった意見とぼほ一緒なんですが、教員の育成のところは特に大事ではないかと思います。そこでやっぱり体験してないことを教えるのは非常に困難なことだと思いますし、一人の先生が留学することは、学校において圧倒的に効果があると思いますので、留学生と同比率ぐらい先生方に留学の機会が与えられるようになっていくと、よいのではないかと思います。

佐藤(郡)副座長】
 今日も4つぐらいの柱が議論されております。国際理解教育をどう位置づけていくのか。政策的にも明確に位置づけてほしいということ。要するに、これからの教育のあり方自体が多文化共生という視点を欠いてはもう成立し得ないだろうということです。ですから学習指導要領の総則の部分にぜひ、そうした視点を盛り込んでいただくことのご検討をお願いしたいということ。
 それから、2番目はカリキュラムをどうしたらいいのかということです。国際理解教育とは教科の中だけで実践できない固有性を持っていると思うんですが、その固有性を強調し過ぎると学校の中に入り込めないという問題もある。その辺をどうしたらいいかというときに、宇土先生のほうから視点が提供されました。各教科を構成する際の視点として国際理解教育を生かしていくことが可能なのではないかということ。
 3番目に教員養成や現職の先生方の研修の問題をどうやって深めていったらいいのか。総論は皆さん賛成だと思う。各論になりますと、なかなか非常に難しくなってくるかもしれませんね。総論から具体的にどう実施していくのか。
 そのための4つ目の柱として、推進体制という制度、つまり先生を支え、先生が動きやすいような、あるいは先生の成長を支えるような体制づくりを含めた議論がどうしても必要なのではないか。研修が必要だという議論の後に、それをどういう形で進めるのか、と具体策を考える必要があるんじゃないか。そのようなところを視点として深めていきたいと思った次第でございます。

(5) 今後の日程について
 事務局より、今後の日程について説明した。

(6) 閉会

(了)


(初等中等教育局国際教育課)

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