2.各学校の成果に関する情報の発信

(1)学校への発信・普及

事例31:先進的な取組を推進している学校に対する研究指定

1 目的と概要

 地域で先進的な取組を推進している学校に対し、人権教育推進校としての研究委嘱を行うとともに、その研究内容や成果等に関する情報を域内の学校に発信し、地域全体のレベルアップに役立てる。

2 研究主題の例

1.人権侵害に直接ふれている研究主題
  • 『人権侵害を許さない』実践力・行動力のある子どもの育成
  • 地域に生きる心豊かな子どもの育成 -人権侵害のない社会を目指して-
2.こころに着目した研究主題
  • 豊かな心を持ち、自ら進んで実践できる子どもの育成
  • 豊かな心を持ち、真実を求め、ともに未来を拓く子どもの育成
  • 自他を思いやる心を持ち、共に生きるこころ豊かな子どもの育成 -自尊感情・自己発現に視点を当てて-
  • 思いやりの心を持ち、主体的によりよく生きる子どもの育成 -体験的な活動を生かした人権教育の実践を通して-
  • かかわる 見つめる 自己の確立へ -地域社会とともに進める心の教育-
3.自分自身や自分以外の人とのかかわりに着目した研究主題
  • 自己をみつめ、よりよく生きようとする子どもの育成
  • 自分を大切に 友達を大切にする子どもの育成
  • 認め合い、支え合う豊かな人間関係を育み、人権感覚を高めあう学級づくり -構成的グループエンカウンターの手法を用いて-
  • 自他の違いやよさに気付き、人とのかかわりを大切にする子どもの育成 -認め合い、伝え合い、学び合う活動の工夫-
  • 自分を取り巻く人たちとの共生を目指し積極的に自己実現できる子どもの育成 -交流・体験活動から始まる人権尊重-
  • 人に優しい生き方を身につけ、たくましく生きる子どもの育成
  • 支え合い、共に生きる社会の実現に向け行動できる子どもの育成 -一人一人の人権を大切にして-
  • 自分大好き 友達大好き 人間大好き
4.個別の人権課題を切り口にした研究主題
  • 障害のある人や高齢者とのかかわりを通した人権教育の取組 -様々な人権問題を主体的にとらえる視点を身に付けさせ、共に考え、共に生きようとする心をはぐくむ-
  • 人権問題の正しい理解と日常的な実践 -自らかかわりを求める主体的な子どもの育成-
5.研究にかかわる人々に着目した研究主題
  • 地域・家庭と連携した総合的な人権教育の創造
  • 家庭・学校・地域・行政の四者が一体となった人権教育の推進
6.教科等の指導に着目した研究主題
  • 学びと人権 -学びの価値を実感する授業改革-

事例32:実践事例集・指導資料、学習プログラムの作成・配付

1 目的と概要

 教育委員会が、その年度における域内の学校の取組の中から、他校のモデルとなるすぐれた実践事例を収集し、それらをもとに事例集や指導資料、学習プログラム等を作成する。作成した資料は、各学校に配付してその活用を求めることにより、先進的な取組の普及を図る。

2 資料の構成例

1.実践事例を豊富に収録した指導資料の構成例
1.人権教育について
  1. 子どもたちの現状と課題
  2. 人権教育の推進
    • (1)役割
       人権に対する意識・意欲・態度の形成の基礎として、生命の尊さに気づき、自分自身を大切にするとともに、人の気持ちを思いやる心を育み、お互いを大切にしあう態度や行動を育成するものとして推進する。
    • (2)観点
       次の観点にもとづいて推進する
       「自尊感情」、「生命の尊重」、「善悪の判断・規範意識」、「思いやり」、「コミュニケーション能力」、「共に生きる」、「権利と責任」、「社会貢献」
    • (3)観点別のねらい
2.人権教育に取り組むに当たって
  1. 人権教育の効果的な実施のために
    • (1)子どもと接する姿勢
      • 子どもを、背景を含めて理解する
      • 子どもの思いに共感し、子どもの立場に立って考える
      • 子どもの自立を支援する
      • 子どもの人間関係づくりを進め、仲間づくりを支援する
    • (2)連携と対応の姿勢
      • 保護者、地域社会の人々と連携する
      • 組織として対応する
  2. プログラム化にあたって
    • (1)スキルの習得をめざして
    • (2)効果的な手法を取り入れて
3.人権教育の実践事例

 (各実践ごとに)

  1. タイトル
  2. 単元名
  3. ねらい
  4. プログラム(指導計画)例
  5. 教材(資料)例
  6. 取組例
2.人権学習プログラム集の構成例
1.人権教育について
  1. 人権教育とは
  2. 人権教育を通じて育てたい資質・能力
  3. 人権教育の目標と重点
  4. 人権教育における課題別目標例一覧
  5. 学校における取組
    • (1)人権教育の自校の目標設定
    • (2)人権教育の推進組織と活動内容
      • 推進組織の例
      • 活動内容の例
    • (3)人権教育の全体計画・年間計画の策定
      • 全体計画の例(各学校種ごとに)
      • 年間計画の例(いくつかの学年を例に)
2.学習をすすめるにあたって

 (1)ねらい・視点・配慮を明確にする

  • ねらい
     幼児期から高校までの系統立てた内容とする(普遍的な視点からのアプローチ、個別的な視点からのアプローチのそれぞれについて系統化)。
  • 視点
     ねらいの達成をめざし、身に付けさせたい知識・態度・技能について、具体的に示す。
  • 配慮
     教育の中立性の確保、個人情報保護の観点等の観点から、教職員間で共通認識を図る。

 (2)学習プログラムの活用についてのポイント

  • 各題材ごとのねらいについて
  • 学習計画について
  • 展開例について
  • 資料等について
3.学習プログラム

 (各題材ごとに)

  1. 題材名
  2. ねらい
  3. 学習計画
  4. 展開
  5. 資料・参考・発展・ワークシート

(2)家庭・地域への発信・普及

事例33:広報誌の人権教育の月別連載記事

1 目的と概要

 教育広報誌等に「人権教育のコーナー」を設け、毎月の連載記事を連載し、その時機に応じた話題・情報を発信することにより、人権教育に関する保護者や地域住民の意識の啓発を行う。

2 月別情報等の掲載例

行事
 記念日等
掲載記事
 テーマ例
掲載記事の内容等
4 新学期 個人の情報を大切に 家庭との連絡票・連絡網に掲載する情報の取り扱い方についての留意点、活用する際のマナーについて情報を伝える。
5 児童福祉週間 子どもを守る様々な機関 教育委員会、教育相談室・児童相談所・警察の相談機関等の内容と連絡先の情報を伝える。
6 人権擁護委員の日 知っていますか?「人権擁護委員」 人権思想を広め,人権侵害が起きないように見守り、人権を擁護する活動に取り組んでいる人権擁護委員や子どもの人権問題を専門的に取り扱う「子どもの人権専門委員」の活動内容と連絡先についての情報を伝える。
7 社会を明るくする運動強調月間 家庭・学校・地域が手を結ぶために すべての国民が犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪のない明るい社会を築くことを目指す“社会を明るくする運動”について、その趣旨や内容を知らせる。
8 夏季休業日中 人権作文に挑戦しよう 法務省と全国人権擁護委員連合会が実施している「全国中学生人権作文コンテスト」を紹介し、作文を書くことを契機に「いじめ」や様々な人権課題等に関して家庭で話し合うことを勧める。
9 敬老の日
 老人の日
 老人週間
敬う心が時代を拓く 9月15日の「老人の日」と21日までの「老人週間」の趣旨を知らせるとともに、敬老の日の取組について知らせる。実際の交流を通して高齢者に対する正しい理解を深めることの意義を伝える。
10 法の日
 法の日週間
法に関する教育の意義と内容について 法に関する教育について、学校等における実践例を紹介し、その取組が、規範意識の育成につながることについて知らせる。
11 児童虐待防止月間 気付いたあなたが知らせほしい 児童虐待が子どもに対する深刻な人権問題であることを知らせ、家庭だけでなく学校や地域等が連携を図り、子供たちを守ることについて知らせる。
12 人権週間
 人権デー
見つめよう「私」の人権感覚 12月4日~10日までの「人権週間」に地域で開催するシンポジウム、講演会、座談会、映画会等の情報を伝え、積極的な参加を求め、人権にかかわる意識啓発を働きかける。
1 防災とボランティアの週間 ボランティアに挑戦しよう 平成7年の阪神・淡路大震災において、その重要性が広く認識された各種のボランティア活動について紹介し、生命の大切さや相互扶助の精神の重要性を訴える。
2 1年のまとめに向けて 人権作文入賞者の紹介 8月に取り上げた「全国中学生人権作文コンテスト」の入選作品を紹介し、人権にかかわる意識啓発を図る。年度末を向かえ当該広報誌に対する感想や意見を募集する。
3 年度末のまとめ 本年度もありがとうございました 4月~2月までの掲載記事に寄せられた感想や意見を紹介し、次年度へとつなげていく。

事例34:「家庭教育の手引き」における人権教育の視点の反映

1 目的と概要

 人権教育を効果的に推進していくためには、家庭との連携が重要なポイントとなる。教育委員会が、家庭教育についての保護者等向け手引き書を発行する際に、人権教育の視点からその内容を検討し、人権教育の視点を踏まえた家庭教育の重要性について保護者等の意識を高める。

 ※ 活用方法

 学校等の教育機関を通して保護者等に配付し、日常の子育てはもとより、保護者会や公開講座等で資料として活用することを求めていく。教育委員会のホームページにも掲載し、必要に応じて、どのような立場からも資料として活用できるように工夫する。
 また、社会教育においても、この冊子をテキストとする講座を設け多様な視点から地域住民への啓発を図る。

2 手引き書の内容例

(1)手引き書作成の視点

 手引き書の内容を検討するに当たり、人権感覚の育成等につながる7つの視点から、内容を整理する。

《人権感覚等を育む家庭教育のための7つの視点》
  1. 家庭教育の果たす役割とは(それぞれの発達段階ごとに)
  2. 「基本的な生活習慣」の確立のために
  3. 「豊かなこころ」をはぐくむために
  4. 「対人関係」の確立のために
  5. 適正な「集団関係」のために
  6. 「規範意識」をはぐくむために
  7. 望ましい「社会生活」を送るために
(2)手引き書に盛り込む内容
【例】<親と子の心の対話>家庭教育の手引書

 ※ 子どもの発達段階に応じて、乳幼児編・小学校編・中学校編・青年編の4分冊を作成。

視点 乳幼児編 小学校編 中学校編 青年編
1 家庭教育の果たす役割とは(それぞれの発達段階ごとに) 家庭教育の始まりは育児 家庭は支え合い、思いやる心を育てる場 揺れる思春期を過ごすために 現代の若者の実態
親だからこそできること 家庭は生活習慣や社会性を身に付ける場 成長期の食事 自分勝手と自己主張
目をかけ、手をかけ、声をかけ 親は子どもをまず受け止めて 思春期におこる身体の変化 時代を担う頼もしい存在
子どもの居場所 安全と人に対する配慮だけはしっかりと 個性や長所を見付けるために 今もう一度、家庭教育
親としての楽しみ 子どものやる気と自主性の芽を育てよう 将来の目標に向かって 最後の拠り所は家庭
親として育つ ほめ上手は育て上手 高校受験に向けて どの家庭にもある青年期の悩み
こうなりそう、だからこうしよう 親子で学校や街のできごとを共有しよう 放課後の過ごし方 親の願い子どもの願い
2 基本的な生活習慣の確立のために みんなで食べるとおいしいね(食事) 最近の子どもたち 親子であいさつをかわすために 子どもと積極的にかかわり合う
おしっこ・うんち一人でできるよ(排泄) 基本的な生活習慣(規則正しい生活) 中学生の生活リズム 親離れ、子離れ一人前になること
こころも体もゆったり休もう(睡眠) 基本的な生活習慣(あいさつ・言葉遣い) 中学生の言葉遣い 自立の基準
きれいだと気持ちがいいね(清潔) じょうぶなからだ 安心できる家に帰りたい 男女の自立
子は親の鏡です   互いに分かり合いたい  
3 豊かなこころをはぐくむために 子どもに「大好きよ!」のスキンシップ 親の感動を子どもへ 人としてやってはいけないこと許せないこと 人として大切なことを教える
愛情はこころの栄養 一緒に楽しむ 育てよう豊かな心 いのちの大切さ
子どもをよく見て話を聞いて 季節の行事を作ろう 心を育てる読書活動 健康が第一
親子で散歩「自然」と仲良しに 長い休みだからできること 大いに活用、公共施設 余暇を楽しむ
絵本に親しみ心の財産を増やす 子どもを本好きにする 芸術との出会い いつまでも学ぶ姿勢を大切に
祖父母との触れ合い 物より体験 人や自然とのかかわり 読書・芸術で心豊かに
4 対人関係の確立のために あいさつができる子どもに 「短所」は「長所」 「いじめ」早期発見 子どものよさと可能性
しっかり返事ができる子どもに 個性は光る・個性は伸びる いじめを許さない環境づくり 友人関係を大切に
自分の思いをはっきり言える子どもに 自分をコントロールする方法 学校・学級における居場所づくり 親として必要なこと
親子のコミュニケーション 相談してみようかな 学校不適応・不登校への対応 成長するこころと体
他の人とのかかわりのある遊び あいさつは心の窓 学校生活に占める部活動の果たす役割 互いの人格を尊重する
子どものこころに共感を 子どものサインが見えますか? 専門家の力を借りて 誇りを育て、生きがいをもたせる
しつけはその場で それでも一番つらいのは「子ども」 一人一人が愛され期待される存在 常に学び続ける親の姿
5 適正な集団関係のために 子どもの仕事は遊ぶこと 地域の遊び場スポット それぞれの家庭のルールの確立 社会が求める人材に
自己主張する・我慢する たくさんある遊びの効能 家族の一員として果たす役割 地域社会の役割と協力
友達づくりと集団遊び 身に付けさせたいものは何? 職場体験・ボランティア活動で身に付ける力 社会貢献の心をはぐくむボランティア活動
親は聞き上手に   明日の社会の担い手を育てる 次世代のために
6 規範意識をはぐくむために 親がお手本! きまりを守って気持ちよく 自由と責任 親の果たす役割
ルールを守る-良いこと・悪いこと- 物の貸し借りは考えもの 中学生の身だしなみ 若者を取り巻く危険
手始めは、簡単な手伝いから お金の使い方を身に付けさせよう 社会の中で守るルール 我慢をすることの大切さ
テレビっ子にしない   身の回りに潜む危機  
7 望ましい社会生活を送るために 地域や自然に親しむ 友達づくりはまず大人から 自分の周りにいる人たち 親子であっても別人格-違って当たり前-
物づくりを通したふれあい 子どもに見せよう地域で活躍する姿 みんなまとめて自分の子ども 自信と愛情をもって社会へ送り出す
みんなで楽しむ子育て 地域の行事に参加しよう 安全な地域を作る 地域の一員として活躍する
野外活動のすすめ 地域の子どもは地域で育てる 地域で夢をはぐくむ  
共同作業の効果 便利だけれども危険がいっぱい 地域づくりは家庭から  

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初等中等教育局児童生徒課