人権感覚を育成する基礎となる価値的・態度的側面や技能的側面の学習においては、児童生徒が自ら主体的に、しかも学級の他の児童生徒たちとともに学習活動に参加し、協力的に活動し、体験することが不可欠である。このような能力や資質を育成するためには、児童生徒が自分で「感じ、考え、行動する」することが求められる。こうした学習の取組においては、基本的には個別的活動よりもグループ活動が必要となってくる。
以下に挙げるのは、グループ活動を効果的に進めるために教師が熟練していることが望ましいテクニックである。
ブレーンストーミングは、新しい主題を導入し、創造性を促進し、多くのアイデアをすばやく生み出す方法です。特定の問題を解決したり、ある問いに答えるのに使用できます。
ウォール・ライティングは、ブレーンストーミングの一種です。学習者は、自分たちの意見を小さな紙片に書いて壁に貼ります。この方法の利点は、他の人たちの意見の影響を受けずに、学習者が自分で静かに考えることができること、さらに貼り付けた紙は、意見を分類しやすくするように自由にあちこちに張り替えることができることです。
ディスカッションは、ファシリテータ及び学習者が、当面している問題に対して自分たちがどんな態度でいるかを、自分で発見するのによい方法です。これは人権教育においては、非常に重要なことです。というのは、学習者は事実を知っているだけではなくて、自分自身で問題を調査し、分析することも必要だからです。ニュース、ポスター及び事例研究は、ディスカッションを活性化するのに役立つ手段です。「・・・についてあなたはどのように考えますか?」と問いかけることから、ディスカッションを開始させてください。
これは、全体でのディスカッションで意見が出ないような場合に有効な方法です。学習者に、二人一組になって主題についてそれぞれ1、2分間討議してもらい、その後でそれぞれの間で出た意見を全体会で分かち合いをさせます。すぐに教室が互いに話し合う声でいっぱいになり、様々な意見が飛び交うのを体験することになるでしょう。
小グループ活動は、全体活動と対照的なもので、誰もが参加できるように奨励し、協力的なチームワークを発展させる支援をする方法です。小グループのサイズは、全体の参加者の数とか、使えるスペースの大きさというような、実際的な事情に応じて決めることになります(注)。小グループ活動は、取り組むべき課題によって、15分、1時間、あるいは1日というように、割り当て時間は異なってきます。
学習者に対して、「この問題について討議してください」と言うだけでは生産的な討議になることは困難でしょう。主題が何であれ、活動目的がまず明確に定義され、小グループのメンバーは後で全体会で報告することを求められる活動目標を意識し、それを目指して討議することが必要です。例えば、解決を必要とする問題とか、答えることを要求する問いという形で課題を出すことが必要でしょう。
(注)場合によっては2、3人になるかもしれませんが、6人から8人という規模が最もうまくいくようです。
特定の情報を提供しようとしたり、小グループで焦点化して討議を行うよう促すのに有効な方法です。
それぞれの小グループに声明文カードを1セットずつ準備してください。1セットは、9枚の声明文カードから成ります。学習者に議論してもらいたい話題に関連する、短くて単純な声明文を9つ準備して、各カードに1つずつ書きます。
それぞれのグループは、各声明文について議論し、次に、9つの声明文を重要さの順で並べます。並べ方は、はしご形でも、ダイヤモンド形でもかまいません。また、合意形成のための機会を提供します。
はしご形ランキングの場合には、最も重要な声明文が最上段に置かれ、その下に2番目に重要なもの、3番目にその次に重要なものという順に並べ、最も重要でない声明文が一番下に位置付けられます。
ダイヤモンド・ランキングの場合は、最も重要な声明文はどれであるか、その次に重要な声明文はどれとどれの2つか、中ぐらいの重要性の声明文はどれとどれとどれの3つか、というように選び、9つの声明文をダイヤモンド形に位置付けるのです。どれが重要でどれがそうでないか、というように単純明快に区別できるような問題はほとんどないのですから、ダイヤモンド・ランキングの方が、より適切な方法であるといえるでしょう。これは、それほど意図的な工夫をこらしたものではないので、学習者にとっては受け入れやすいのです。
このランキング法を変形して、声明文を8つにしておいて、残りの1つは学習者たちが自分たちで考えて書くようにさせる、というものがあります。
ロールプレイングは、学習者によって演技される短いドラマです。人々は状況をロールプレイングで演出するために自分の生活経験を活用しますが、ほとんどは即興的に演じられます。ロールプレイングは、学習者になじみがないような環境や出来事を経験できるようにすることを目標とします。ロールプレーは、状況についての理解を改善し、その状況にかかわっている人々への感情移入を促進することができます。
ロールプレイングとシミュレーションとの違いは、シミュレーションが同じく短いドラマから成っていながらも、通常は台本が書かれていて、ロールプレイングほどには即興性を含んでいない、という点にあります。
ロールプレイングの価値は、現実の生活を模倣するところにあります。ロールプレイングは、登場人物の行動が正しいか間違っているかというような、単純な答えは出ないような問いを突きつけるかもしれません。学習者に役割を入れ替えて演じてもらえば、より大きな洞察が得られるでしょう。
ロールプレイングは、感受性を働かせながら使用する必要があります。第一に、ロールプレイングが終わった時点で、演じた人がその役割を抜け出すのに必要な時間がきちんと確保されることが不可欠です。第二に、学習者のそれぞれが、個々人の感情やグループの社会的構成を尊重する必要があります。例えば、障害のある人々に関するロールプレイングの場合、学習者の中に障害のある人が(もしかしたら見えない形ででも)いるかもしれないこと、あるいは、障害のある親戚や友人がいる学習者もいるかもしれないということを、しっかり考慮に入れるべきです。そんな人々が心を傷つけられたり、他の人々から注目されたり、周辺に追いやられたりするようなことがあってはならないのです。もしそんなことが起こってしまった場合には深刻な事態として受け止め、謝ることはもちろん、その問題を一つの事例として、同様のことが二度と起きないよう再度検討しなければなりません。また、ステレオタイプ化することがないように、十分気を付ける必要があります。
ロールプレイングは、演じたり、模倣したりする「能力」を通して、学習者が他の人々についてどんなことを考えているか、その中身を引き出すものです。これこそが、こうしたアクティビティを大いに興味深いものにするのです。「あなたが演じた人々は、実際生活でも、あなたが演じた通りにふるまうでしょうか?」と報告会で尋ね返しながら問題に取り組むことは有用でしょう。情報を常に批判的に考察することが必要であることに気付いてもらうことは、いつも教育的には有用です。
さらに、自分たちの性格形成の土台となっている情報をどこで入手したかを学習者に尋ねることもできるでしょう。
シミュレーションは、学習者全員を巻き込んだ、いわば拡張型のロールプレイングと見なすことができるでしょう。シミュレーションは、安全な環境の中で、学習者が挑戦的な経験ができるようにするものです。シミュレーションは、しばしば、一定程度の情緒的な関与を要求しますが、この情緒的関与のおかげで、シミュレーションは非常に強力な手段となるのです。人々は自分たちの頭と体で学習するだけでなく、自分たちの心も使って学習するのです。
シミュレーションの後で報告会をすることは、特に重要です。シミュレーションを演じた人たちは、自分たちの感情について議論すべきでしょう。例えば、なぜ自分がある行動を選び取って演じたのか、どんな不公正に気付いたか、そして達成された解決法がどれくらい自分たちにとって受け入れうるものであると考えるか、等々を議論するのです。指導者は、学習者が、自分たちが経験したことと、世界における現実の状況とを比較してみることができるよう、必要な支援を行っていきます。
「一枚の写真は、一千語の文章に匹敵する。」視覚的なイメージは、情報を提供し、興味関心を刺激する強力な手段です。視覚的な思考様式を好む人々にとってばかりでなく、言語を使って自己表現をするのが苦手の人々にとっても、図画は、自己表現とコミュニケーションの重要な手段であることを記憶しておいてください。
映画、ビデオ及びラジオドラマは人権教育のための強力な手段であり、青少年にも人気があります。映画鑑賞後のディスカッションは、さらに進んだ学習活動にとってのよい出発点となるべきものです。映画の中の「現実的生活」はどれくらい真実味があったか、登場人物が現実的に描写されていたか、あるいは登場人物がある特定の道徳的観点などを促進しようとしていたかなど、映画に対し学習者が最初に感じたことの中に、話し合うべきことがらがあるはずです。
メディアからはすぐれたディスカッション用資料を得ることができます。メディアの内容及びそれが提示される方法について討議し、そこに含まれる不均衡やステレオタイプを分析することはいつも興味深いものです。
携帯型のカメラやビデオカメラの技術は、写真撮影や映画制作を誰にでもできるようにしてくれました。青少年の写真や映画は、その観点が態度を生き生きと示していて、すぐれた展示資料となります。ビデオ便りは障壁と偏見を取り除くための方法として有効であることが証明されています。ビデオ便りは、おそらくは出会うことがないと思われるような人々が「語り合う」こと、お互いにどんな生き方をしているか、またどんなことが自分たちにとって重要であるかということについての洞察を分かち合うことなどをできるようにするのです。
ディスカッションは、聴き方や順に発言する仕方、あるいは他人の権利を尊重するために重要な他のグループ技能などを実践する機会でもあります。誰もが参加できるようにするためには、グループは適切な規模であることが重要です。例えば15人から20人くらいというように、グループが大きすぎる場合、ディスカッションのためには小グループに分割する方がよいでしょう。相互作用や参加を促すためには、メンバーが相互に見えるように円形ないしは半円形に着席するのが好ましいのです。グループで討議して合意されるべき一般的原則には、次のようなことがらが含まれるでしょう。
他人の話すのをきちんと聴く習慣をつけるための活動です。
円形に着席させます。テープレコーダーのマイクロフォンとかそれに似た形のものを順番に回していきます。マイクロフォンを持っている人だけが発言を許されます。
他の人たちは話し手に耳を傾け、また話し手に注目します。その人の発言が終わったら、次の発言したい人にマイクロフォンを渡します。
自分自身の意見を発表し、他人の意見を傾聴し、新たな理解に照らして意見を交換するように促すための方法です。様々な変形が可能です。
教科の学習を通して活動の動機付けと課題設定を行った上で、子どもたち自身が計画して聞き取り学習を行い、その成果を新たな行動へと発展させる取組事例である。
人にやさしいまちづくり
地域の歴史について学習し、自分たちのまちを振り返る活動に対する動機付けと課題設定を行う。その上で、人にやさしいまちづくりのために活動している人々の生き方に触れ、聞き取りや活動の中で分かったことや学んだことを自分たちの生活に結び付けて考えるとともに、自分たちの住む地域に愛着を持つ。さらに、地域の一員として何ができるかを考える。
長(事前・事後学習を含む)/社会、総合的な学習の時間、特別活動 等
インタビューカード
自分を見つめ、自分の夢や希望は何かを考えた上で、個々の児童生徒が、その夢や希望を実現した人を探して、フィールドワークを行い、自分の考えた方法で発表する活動についての取組事例である。
見つめよう自分 広げよう出会い・ふれあい
身近な大人への聞き取りや職場へのフィールドワークを行い、人との豊かなかかわりを通して、夢や希望を持ち、自己実現への意欲を高め、自分のできることを考えて行動することができるようにする。また、共に活動することを通して、他者の思いや願いに触れながら、互いに違いを認め、生き方に共感することができるようにする。
長(事前・事後学習を含む)/総合的な学習の時間、特別活動 等
インタビューカード、まとめるのに必要な紙等の材料
最近の子どもたちについては人間関係をうまくつくれず、友だちとの関係に疲れているとの指摘も多い。クラスで起きている問題について児童生徒どうしで解決法を話し合い、クラスのルールを作る取組事例である。
仲間を知ろう!自分を知ろう!
言われるとうれしくなる言葉・悲しくなる言葉を出し合い、確認し合った上で、現にそのクラスで起きている問題を取り上げ、その解決方法について考えさせる。クラスの人間関係を良好にすることに通じる文化を育み、技能を身に付けられるようにする。
短/道徳、特別活動 等
特になし
児童生徒の自主性を尊重するためには、学習プログラムの計画立案から導入、展開、評価に至るまで、一連の流れを持つように組み立てるべきである。そのためには、学習計画の立案・実施・振り返りのそれぞれの段階で次のような点に留意することが求められる。
学習の計画や実施に先立って、学習をよい形で成立させるための様々な条件の整備が不可欠である。条件のなかには、教室をきれいに保つことや学校図書館を充実させることなどの他、児童生徒の基本的な人間関係づくりの力を育み、豊かな集団を形成することが含まれている。例えば、児童生徒が互いに異なるものを受け容れ、相互理解を図っていけるようにコミュニケーション能力を育成する。その際、異なる意見の存在に気付き、お互いの考えを交換し合うために、基礎学力の育成、思考の源としての言葉を運用する力、話す力・聞く力の育成、カウンセリング的な技法を生かしたコミュニケーション能力の育成に努め、誰もが自分の考えを臆することなく発表できる温かい集団を作っておく。そのため、日頃から国語科をはじめ各教科等における言語活動の指導を充実させるとともに、学校を挙げて、教職員がカウンセリング的な技法を身に付け、児童生徒の声に耳を傾ける学校文化をつくること求められる。
計画を立てる前提として、教員が指導者として目的を明確に持ち、事前に支援体制について共通理解を図っておくことが求められる。今日では、家庭における子育ての実態も多様化しており、養育の放棄・怠慢などの児童虐待が見受けられる一方、過保護や過干渉と思われるケースも見られるが、いずれにしても、家庭への支援を抜きには、人権教育や人権学習を成立させることも困難となる。他の機関や団体とも連携しつつ、学校として様々な課題に教職員が足並みをそろえていかに積極的に取り組むのかが社会的に問われている。
学習計画のテーマ設定に当たっては、日常生活の延長線上に学習を位置付け、身近な課題設定をする。特に、解決を迫られている課題や成長が期待される課題であることが望ましい。これらの具体的な課題解決を通して、自尊感情を高め、より合理的なものの見方を培い、共に考え・生きることの自覚を深める。さらに、課題が一部の子どものためではなく全員のためであるよう考慮することが大切である。そのためには、児童生徒一人一人の関心をつかむように日頃より努め、とくに焦点を当てるべき子どもの興味や関心を活かしつつ、全ての児童生徒が入り込みやすい広がりのある課題設定を行うことも考えられる。
学習計画の導入については、児童生徒が学習テーマに強い関心を寄せ、学習計画の道筋をある程度イメージできるように、特に工夫を凝らす必要がある。そのような視点から、児童生徒が意欲を持って学習集団として課題解決に集中できるような導入法を工夫する。学習課題の内容や性格を踏まえて、ゲーム的な学習活動、擬似体験的な学習活動、あるいはフィールドワーク的な学習活動などを適宜選択する。導入の学習活動が効果的に展開されたときには、次の自主的な話し合いや小集団活動へのつながりがはっきり見えてくるものである。
導入を受けての自主的な話し合いや小集団活動においては、児童生徒の疑問や関心を積極的に伸ばしてやることが望ましい。学習活動全体の大テーマに応じて、小グループで活動する小テーマが浮かび上がることを期待するわけだが、計画段階で主な小テーマを準備しつつも、児童生徒からその範囲をはみ出た小テーマが出てくることも期待したい。一方的な指導に偏ることのないように工夫し、児童生徒一人一人の声が、活動を通して反映されていると実感されるように配慮することが大切である。
個々の児童生徒の顔が見える活動を継続させることは、一人一人の児童生徒の人権を保障することにもつながる。また、自主的な話し合いを通して、1学習課題について最初の共通認識が生まれる、2意見対立や疑問が浮き彫りとなり、学習集団に自覚される、3学習課題の中の小テーマが浮かび上がり、関心に応じてグループが形成される、というような成果が期待できる。この段階では特に、児童生徒から何かが産み出されることをじっくりと待つ姿勢を教員が持つことと、方向性を見い出せるよう支援することが重要である。
児童生徒が自分たちの話し合いや自主活動を通して、何らかの疑問を抱いたり、自分たちなりの結論的な考えに至ったり、問題意識が拡散してしまったりしている場合は、人物、事象、統計的データ等の提示により児童生徒を新たな問題に出会わせることが有効である。
これにより、児童生徒はそれまでの共通認識をさらに深めたり、再検討したり、新たな疑問を抱いたりする。そして、新たな課題に意欲を持って取り組むことになる。
出会いを踏まえて話し合いをさせ、児童生徒の探求活動を具体的に計画させる。探求活動としては、「図書館などで情報を探索する」、「インターネットに発信して多くの人からの反応を探る」、「新しく人と出会う」、「フィールドワークを行う」、「インタビューを重ねる」、「質問紙調査等により幅広い意見を収集する」等が考えられる。これらの活動は、中学校を卒業する頃までにはある程度の基礎知識を得て、実際に行って技能を習得できるよう、小・中学校で連携して計画を組むことが望ましい。
考察を深めるための探求活動を進める際には、結論を急がず、失敗を生かし、結果よりも過程を尊重する指導を心がけることが大切である。児童生徒一人一人が、自由にかつ安心して意見交換が行えるように配慮したい。ここでいう多様な物の見方や考え方を受容するとは、何でも許容することを意味するのではない。
探求活動でもう一つ大切にするべきは、一人一人の活躍の場を保障することである。児童生徒の主体性や自主性は、一人一人の児童生徒が学習活動の過程においてその当事者としての自覚を持つことから可能となる。そのためには、一人一人の児童生徒の得意な学習スタイルや知的プロフィールなどの個性を踏まえつつ、目的を共有し、自尊感情と参画意識を持って意欲的に活動できる場を保障することが求められる。教師は児童生徒の探求活動に臨機応変に適切なヒントを与える。
学年を超えた縦割り集団を活用するなどして、異年齢集団による取組を設定することも、成就感を持たせ意欲を育てることにつながる。
これまでの学習では、知識が習得されたらそれで終わる傾向が強かった。技能や態度、行動力の育成をめざす人権学習にあっては、特に自分たちが学んだことを発信する活動を大切にしたい。とりわけ、最終段階では、自分たちの学んだことが本当に社会的に役に立つのか、実際に活用できるのかを確かめる活動が位置付けられなければならない。学習形態に応じて「調査結果や実験結果をまとめて報告する」又は「芸術作品を完成させて発表する」等の成果を発表できる機会と場を設定する。その際、校内だけに止まらず、広く保護者や地域社会へと発信の場を広げることが効果的である。
また、発表内容に関連して、実際に社会的に活動している人たち、問題の当事者、解決のために活動している人等を対象に発表を行うことが有益である。もちろん、このような発信の活動は、最終段階だけではなく、取組のあらゆる過程で位置付けられてよい。
高齢者をはじめ、地域の様々な人たちに体験的活動における指導的役割を担ってもらい、これらの人々との交流を通じて、活動の成果を高め、コミュニケーション能力の育成を図る取組事例である。
交通安全ウォーキングを楽しむ
地域の高齢者との交流体験を通して、地域や高齢者に対する親愛の情、尊敬の念が育つことを主なねらいとしている。自己の感情や意志を素直に表現しながら、楽しく交流し、共感し合う体験を通して、人とかかわることの楽しさや喜びなどを味わわせたい。
※ 高齢者と交通安全に気を付けながら歩き、親しみや信頼感を持ちながら会話を楽しむ。
短/生活、特別活動 等
黄色の横断旗
校区内にある保育所や幼稚園を訪ね、幼い子どもたちと接し、世話をすること等を通じて、自分の成長も多くの人々に支えられたことを理解し、自己肯定感を高める等のための取組事例である。
ふれあい
校区の保育所・幼稚園へ出かけ、保育実習の体験活動を行う。幼児とふれあい、その世話をしたり遊び相手になったりすることを通じて、自分が必要とされる存在であることを確認し、自己肯定感を高める、保育実習を通して自分自身の幼少の頃を振り返り、自分の成長を支えた様々な方の支援があったことに気付く、労働の苦労や責任、喜びについて実感する、自分が親になる時の子育てのイメージを養う等の効果を期待できる。
中(事前・事後学習を含む)/技術・家庭、特別活動 等
一人暮らしや体の不自由な高齢者を地域のコミュニティセンターに招いて交流し、ボランティア活動を体験する取組事例である。
ふれあいリハビリの方との交流会
地域のコミュニティセンターに一人暮らしの高齢者や体の不自由な高齢者を招き、手品や紙芝居、音楽の発表などの活動を通して交流を図る。高齢者との交流を通して福祉に関する関心や意欲を高め、人権課題への自覚を深めるとともに、ボランティア活動の中でのさわやかな心のふれあいを通して、人をいたわる気持ちや親切にするやさしい気持ち、相手の立場に立って考える想像力やそれを行動に移せる実践力を育てる。
短/特別活動 等
カルタなど一緒にできるゲーム
地域の伝統芸能や文化の達人・名人に弟子入りして修行を行う体験学習を通して、勤労を尊ぶ態度を養うとともに、社会における人とのつながりの大切さを実感し、人間関係を調整できるための力を身に付けさせる事例である。
地域の伝統芸能・文化を生かして
地域に在住するその道の達人・名人を探し出し、その家に出かけて弟子入りをして師匠に学ぶ。達人・名人と交流する中で、職人気質や技のすばらしさに触れ、生き方を考える体験をするとともに、地域の伝統芸術や文化に理解を深め、人とかかわる力を高める。
長(事前・事後学習を含む)/総合的な学習の時間、特別活動 等
地域の伝統芸能・文化に関する資料
体験的な活動には、高齢者や障害のある人との交流活動や奉仕活動、擬似障害体験活動、地域清掃などの公共性の高い奉仕活動等々の様々な形態がある。これを、各教科等との関連を踏まえ、人権教育の目的を明確に意識して計画・実施する。
体験的な活動においては、その内容の精査と指導過程の工夫が求められる。まず、事前・事後の指導を整え、体験的な活動が効果的にねらいに迫るものとなるように工夫すること、次いで、交流活動や奉仕活動において、児童生徒が何をどのように体験するのかについて、訪問先の機関と事前に協議・整理しておくことが大切である。過度の体験的な活動の設定は、児童生徒に負担を負わせるだけでなく、交流する相手に大きな損失を与えることにもなる。
奉仕的な活動は、自発的な形で行われることが望ましいが、体験がない場合は自発性を期待することは難しい。児童生徒にまず体験させて、学習の中から、自発性を育てていく指導過程が求められてくる。その際、発達段階を踏まえ、指導として一方的に押し付けるのでなく、児童生徒一人一人が自らの生活体験や教科等における学習を通して、主体的に参加していけるような指導計画や工夫が必要である。そのためにも、児童生徒に目的意識を持って考えさせる場を保障すること、体験的な活動の種類や内容を事前に学習する機会を設定し、自ら選択し活動していくような場面を設定していく。
体験的な活動は、座学と異なり、児童生徒にとって新鮮であり興味や関心の高まるものと言える。例えば、児童生徒同士の話し合いや発表の場を数多く設定することで体験的な活動の成果と課題が自覚できるようにする。その際、学校内に止まらず、広く、家庭や地域社会の協力も得て、児童生徒の成長を支援する体制をとることも効果的である。
また、指導の過程で、児童生徒一人一人の成長を見逃さないためにも、個々の発言を尊重すること、さらには、感想や学びの記録を通して、一人一人の心に寄り添う指導を継続させることが望ましい。
人権教育の実施においては、児童生徒や学級、学校、地域社会などの実態を踏まえて体験的な活動の内容を精査することが必要である。例えば、学校が地域の中でどのような役割を果たしてきたのか、また、どのような役割を家庭や地域社会から期待されているのかを事前に把握した上で、体験的な活動を実施することが重要であり、実施に際しては、このような家庭や地域社会からの理解と共感を得ることが必要である。
子どもの成長は、学校だけで図られるものではない。特に人権教育のように、長く生涯にわたって、社会における更なる実践が求められるとき、家庭や地域社会との連携は不可欠である。そのため、学校だけでなく、保護者や地域住民が、体験的な活動における指導的な役割を担っていくことが、体験的な活動の成果を高め、社会参画を目指す行動力を育てることにもつながる。
体験的な活動は、総合的な学習の時間や特別活動の時間に実施されることが多いが、心の問題として人権感覚を育てていくためには、人間としての在り方や生き方という視点から道徳の時間を工夫し、体験的な活動と連携を図ることが効果的である。
道徳の時間の主たるねらいは道徳性の育成とその道徳的実践力の向上であり、その内容項目は、人権教育の学習内容と密接に繋がるものが多数含まれている。このような道徳の時間本来の計画的・継続的な指導を通して、発展的な課題として人権課題への動機付けや価値への自覚の深まりを図ることは、体験的な活動を主体的なものとしていくためにも必須の指導である。
幼児期は、遊びを中心とする生活の場で人権感覚を育むことが望まれる。以下は、絵本の読み聞かせをする中で、共感能力等を涵養する取組事例である。
絵本に親しむ
「絵本に親しむ」活動を通じて、人と人との温もりのある言葉のやりとりの心地よさに気付き、「伝え合う力」、「相手を思いやってかかわる力」、「社会的共感能力」の基礎を育む。
中/-
小学校低学年において、肯定的かつ受容的に自他を受けとめる児童を育てることをめあてとした取組である。
ぼく・わたしを発見する
「自慢できること」、「びっくりしたこと」など、自分のこと、自分が体験したことを記入させる記入カードを使用して、自分の様々な面を見つめさせ、発表させるとともに、自分や友だちについて発見したこと等を確認する。個々の個性や良さをお互いに理解し合う中で、自己肯定感や他者に対する受容性を養う。
短/特別活動 等
概念理解が進み、抽象的思考が深まる小学校高学年において、地球規模の問題である環境問題についての学習を行う。日常の生活圏を越え地球規模で繋がる問題についての認識を深め、そこで培われた問題意識で日常生活を照射し、各自の生き方・在り方を考えさせる取組である。
環境問題から考える「共に生きる社会」
環境問題について、「共に生きる」という視点で自分の問題として考えさせる。世界各地で起きている環境問題の原因がどこにあるのか、自分たちの生活とどのように繋がっているのかを学んだ上で、人類の未来に責任を負うという視点から認識を深めさせ、共に生きるために自分ができることを考えさせる。
グループで協力して調べ、発表する、各グループの成果物を互いに評価し合うなどの活動も取り入れ、共生感覚の涵養と実践力の育成を目指す。
長(事前・事後学習を含む)/総合的な学習の時間、特別活動 等
パソコンや携帯電話などの情報機器を個人で所有する者も多くなり、ネットへのアクセス等の機会も増える中学生を対象に、情報モラルの大切さを指導する取組である。
情報モラルの大切さを学ぶ
インターネットの特性及び個人情報保護の必要性を知り、情報モラルの重要性を理解させる指導の取組を通じ、情報に関する倫理観を養う。また、高度情報化社会の光と影について理解を深めさせ、情報の真偽を適切に判断し、情報手段を適切に活用できる能力と態度を育てる。
中/技術・家庭 (技術分野)等
「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドライン(1980年9月OECD理事会勧告附属文書)第2部 国内適用における基本原則」より
個人データの収集には制限を設けるべきであり、いかなる個人データも、適法かつ公正な手段によって、かつ適当な場合には、データ主体に知らしめ又は同意を得た上で、収集されるべきである。
個人データは、その利用目的に沿ったものであるべきであり、かつ利用目的に必要な範囲内で正確、完全であり最新なものに保たれなければならない。
個人データの収集目的は、収集時よりも遅くない時点において明確化されなければならず、その後のデータの利用は、当該収集目的の達成又は当該収集目的に矛盾しないでかつ、目的の変更ごとに明確化された他の目的の達成に限定されるべきである。
個人データは、第9条により明確化された目的以外の目的のために開示利用その他の使用に供されるべきではないが、次の場合はこの限りではない。
個人データは、その紛失もしくは不当なアクセス、破壊、使用、修正、開示等の危険に対し、合理的な安全保護措置により保護されなければならない。
個人データに関わる開発、運用及び政策については、一般的な公開の政策が取られなければならない。個人データの存在、性質及びその主要な利用目的とともにデータ管理者の識別、通常の住所をはっきりさせるための手段が容易に利用できなければならない。
個人は次の権利を有する。
データ管理者は、上記の諸原則を実施するための措置に従う責任を有する。
高校生を対象に、現代社会が直面している問題を、法的な観点も含めて考えさせることにより、社会規範の相対性と「人権」の持つ普遍性についての認識を深めさせることを目当てにした取組事例である。
生命倫理について考える
科学技術の急速な発達に伴い、生命倫理をめぐる諸事案が深刻な社会問題となっている。社会事象の持つ多面性に気付かせるとともに、ディベートの手法を採り入れることにより、命をめぐる問題について自らの課題として引き付けて考えさせる。
中(事前・事後学習を含む)/総合的な学習の時間、特別活動 等
PC室(インターネット検索)、図書室(参考図書検索)の使用予約(1時間)
初等中等教育局児童生徒課