2.効果的な学習教材の選定・開発
事例16:地域の教材化
地域の様々な活動に携わる人々との出会いを通して、地域についての肯定的な意識や地域社会に積極的に参画する態度を養うための教材化事例である。
1 テーマ
地域に親しむ
2 目的と概要
地域の様々な公共施設、NPO、作業所、商店などの施設や、すみよい街づくりの活動などに携わっている方と出会い、地域の方の願いや歴史について学び、校区に対する肯定的な意識と地域の一員としての自覚を持ち、地域社会に積極的に参画する態度を養う。
※ 期待できる効果
- 1)自分の生活が地域と関係していること、また多くの地域の方によって生活がよりよくなっていることを学び、地域の一員としての自覚を持つ。
- 2)興味関心に応じた調査活動を主体的に進めることにより、自ら学ぶ力を養う。
- 3)地域の方との出会い、活動や願いを聞き取ることを通して、人と出会うことの喜びと人への信頼を得る。
3 所要時間/教科等
長(事前・事後学習を含む)/社会、総合的な学習の時間、特別活動 等
4 準備するもの
校区地図、資料、ワークシート など
5 進め方
- 校区地図やその他の資料を使って、校区の様々な公共施設について、その場所とはたらきや自分たちの日常生活とのかかわり等を調べる。
- 公共施設で働く方を招いて仕事の内容や願いを聞き取り、次の時間からとりくむフィールドワークの聞き取りの視点を確認する。
- グループで計画を立て、フィールドワークを行い、様々な施設やそこで働く人、校区の歴史について聞き取る。
- グループごとに活動のまとめを行い、全体で共有しながら、自分たちが地域の一員として参画できることについて考え、提言や行動提起文を作成する。
- 自分たちの意見を、聞き取りした方やお世話になった方に発表し、評価をもらう(発表については、ポスターセッション、パソコンによるプレゼンテーション、劇化など児童生徒の発達段階やその他の実情に応じて、様々な形態で行う。)。
6 留意点
- 校区の課題や歴史、どんな活動をしている人がいるかによってテーマを設定する。(環境、福祉、人権など)
- 子どもの主体的な調査活動を行うためにも教員が事前に校区について知り、協力を依頼しておく。また、校区に限らず、活動を市区町村域に広げてもよい。
- 子どもたちが校区に出て活動する上で、保護者に協力を依頼するなどして、安全の確保に留意する。
- 取組の期間中だけでなく、その後も継続的なかかわりを維持していくことが望ましい。
事例17:外部講師の講話の教材化/生命の大切さに関する教材
自分自身の生育歴を振り返り、保護者や様々な人たちの自分に対する願いについて知り、自分と他の人たちの生命を大切にできるような態度・技能を養うための教材化事例である。
1 テーマ
わたしが、いま、ここにいること
2 目的と概要
自身の生育歴を振り返り、そこにある保護者や自分の成長を支えてくれた様々な人々の願いに触れ、自他の生命を大切にする心を育む。
※ 期待できる効果
- 1)生命誕生について知ることにより、命の大切さを実感する。
- 2)保護者からの聞き取りや発表会の時のコメントを通して、自分が大切に思われていること、また、まわりの仲間も同じであることを実感する。
- 3)日常の学級、学年での課題や社会の問題について考え、自身の行動について考える。
3 所要時間/教科等
中(事前・事後学習を含む)/道徳、保健体育 等
4 準備するもの
ワークシート
5 進め方
- 助産師さんから生命の誕生のすばらしさについて聞き取りを行う。
- 保護者に協力を呼びかけ、子育てについて何人かの保護者に語ってもらい、今後の活動の視点を確認する。
- ワークシートに基づいて、保護者や成長を支えてくれた様々な方に、その時の願いやかかわりのある物や出来事などをインタビューする。(生まれたときの様子、名前の由来、たいへんだったこと、うれしかったこと、思い出の品、写真など)
- インタビューした内容とともに、写真や思い出の物を用意し、自分史写真絵本を作成する(コンピュータを使ったプレゼンテーションやそれを収録したDVDにしてもよい。)。
- 自分史絵本を基に、参観日等で自分史について発表する。それぞれの保護者にもコメントをもらう。
- 学習を振り返り、保護者に手紙を書く。
- 日常生活の課題や命についてより深く考えるために、いじめや病気などを乗り越えたくましく生き抜いた方の体験談や手記等を読み、意見交流を行う。
6 留意点
- 事前に保護者説明を行い、理解を得るとともに協力体制をつくる。
- 一人一人の生活背景をしっかり掴み、家庭環境等に十分配慮しながら進める。
- 学級・学年に生活上の課題があれば、そうした問題とつなげて学習できるようにする。
事例18:同世代の児童生徒の書いた作品の教材化/生命の大切さに関する教材
阪神淡路大震災という大災害に遭遇して悲しい思いをした子どもたちの作文等を読むことを通して、他者に対する共感性や命の大切さの感覚を養うこと等を目的とする教材化事例である。
1 テーマ
阪神・淡路大震災の被災児童生徒の作文を読んで
2 目的と概要
阪神・淡路大震災に被災した同世代の児童生徒の作文を読む等の学習を通じ、歴史的な事件に遭遇し、悲しい体験を共有した同世代の児童生徒の思いに共感し、生命の大切さを感じとる。さらに、防災に関わるボランティア活動に参加して、助け合いの心を養う。
※ 期待できる効果
- 1)命の大切さや生き抜くことの強さを感じる。
- 2)ボランティア活動を通して人に貢献することの喜びを知る。
- 3)人と人がつながり合い、支援しあうことのすばらしさを感じる。
3 所要時間/教科等
中(事前・事後学習を含む)/国語、特別活動 等
4 準備するもの
大規模災害の被災者の暮らし等に関する新聞記事等
阪神・淡路大震災の被害に遭った同世代の児童生徒の作文(その他被災者や支援者の文章)
5 進め方
- 新聞記事などを活用し、各地の様々な災害被害やそこに生活している方々の苦労について学習する。
- 阪神・淡路大震災の被害に遭った児童生徒の作文などを読み、厳しい状況の中でも生き抜いた強さに学ぶとともに、その背景に様々な支援があったことを知る。
- 消防士等の実際に災害救助に当たっている方や、防災に関わるボランティアに参加された方を招き、災害援助や防災の実際について話を聞く。
- 防災に関わる身近なボランティアに参加し、感想を交流する。
6 留意点
- 子どもたちがより身近に感じられるように、同世代の文章を用いたり、阪神・淡路大震災に限らず身近なことがらを教材にしたりする。
- 実際に進行形の災害被害があれば、安全には最大限配慮しながら、子どもたちにも可能な支援活動を行わせる。
- 災害援助に携わっている方から海外での様々な災害に関するエピソードを聞いたり、現在ボランティア活動をしている元被災者の方から「震災被害にあったからこそ真っ先に支援の手を差しのべたい」との思いで活動されている話を聞くなど、子どもの実情にあわせて様々な話題を紹介してもらってもよい。