今後の学級編制及び教職員配置について (報告)

平成12年5月
「教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議」報告

今後の学級編制及び教職員配置について(報告)



「今後の学級編制及び教職員配置について」(概要)

I  基本的な考え方

1  自主的・自律的な学校運営等を支える学級編制及び教職員配置
  平成14年度から実施される新学習指導要領では,「総合的な学習の時間」の導入など,各学校において今後さらに特色ある教育課程を編成することが求められ,各学校が創意工夫を凝らしてより多様な指導形態や指導方法を展開し,そのためにふさわしい指導組織を構成し,教職員が一体となって教育活動を展開していくことが望まれる。
  学級編制及び教職員配置の在り方についても,それぞれの学校がその自主性・自律性を確立して特色ある教育課程の編成や多様な指導形態・指導方法を展開することを可能とすることが必要である。

2  基礎学力の向上を図り,学校でのきめ細かな指導を実現する観点からの学級の在り方の見直しとこれに対応する学級編制及び教職員配置
  特色ある教育課程の編成,小人数授業などきめ細かな指導,総合的な学習の時間や各教科の指導における多様な指導形態・指導方法を導入できるよう,一元的な学級の捉え方を見直し,今後,学級は生徒指導や学校生活の場である生活集団としての機能を主としたものとして位置付け,これまで一体のものとして含まれていた学習集団としての機能については,学級という概念にとらわれずにより柔軟に考えることが効果的と考えられる。
  きめ細かな指導を通じて,児童生徒の個性を育んでいくためには,できるだけ多くの教職員が児童生徒の発達を見守り,支援していくことが極めて効果的である。多様な学習集団の編成は,きめ細かな指導と相まって生徒指導上の課題にも大きな効果が期待される。
今後の学級編制及び教職員配置を考えるに当たっては,このような新しい学級の在り方に対応するものとすることが必要である。

3  非常勤講師及び学校内外の専門的人材の活用
(1)  今後は総合的な学習の時間をはじめとする多様な教育活動を展開するのに対応して幅広い指導スタッフを整備することが求められることを考慮すると,教員定数を活用して非常勤講師を任用できるようにすることが必要である。また,特定教科を担当する教員の担当授業時数が極めて少ない場合に,常勤教員を非常勤講師に置き換え,当該教員定数を他の学校に配当し,有効に利用することができるようにすることが効果的とも考えられる。
  今後の教職員配置を考えるに当たっては,このような非常勤講師の活用を考慮することが必要である。
(2) 養護教諭等,学校栄養職員,事務職員など学校内の専門的人材を教育活動に積極的に活用するとともに,地域社会の多彩な人材を社会人特別講師,スクールカウンセラー,心の教室相談員,外国語指導助手,ボランティア等として活用することを一層促進することも必要である。

4 教員1人当たりの児童生徒数を欧米並みの水準に改善
  公立小・中学校の教員配置については,欧米諸国と「教員1人当たり児童生徒数」を比較するとなお格差がある。今後,我が国全体として教育水準の維持向上を図り,人材を育成していく観点から,教職員定数について改善を図り,教員1人当たり児童生徒数を欧米並みの水準とすることが重要な課題である。

5  国と地方の新たな役割分担
  今後,各学校が特色ある教育活動を展開し,それらを支える教育委員会が主体的かつ積極的な行政運営を展開できるよう,地方分権推進の趣旨を踏まえ,学級編制及び教職員配置の在り方についても,国と地方の新たな役割分担を確立する必要がある。
  このため,教育に関する基本的条件整備についての従来からの国の役割を維持しつつ,具体的な条件整備の在り方については,都道府県教育委員会の裁量に委ねる部分を拡大する必要がある。



II  具体的方策

【制度に関わるもの】

A1 県費負担教職員制度,国庫負担制度等の仕組みの維持
  県費負担教職員制度,国が定めた標準に基づく都道府県の学級編制基準の設定,国が定めた学級編制標準に基づき算定された教職員定数に係る教職員給与費の国庫負担等の仕組みは今後とも維持する。

A2 学級編制基準の弾力化
  国が定める学級編制の標準は,教職員給与費国庫負担に係る教職員定数算定基準としての性格をより考慮して,都道府県が地域や学校の実態等に応じ,必要があると判断する場合には,義務標準法で定める学級編制の標準を下回る人数の学級編制基準を定めることができるようにする。
  その際,国が定める学級編制の標準については,1都道府県全体として一定の教職員定数を確保するための算定基準であること,2児童生徒の社会性を育成及び互いに切磋琢磨する場として一定の規模が必要であること,3学級と異なる場を形成して,多様な学習集団による指導を進めることが必要であり,また,多数の教職員が児童生徒とかかわることが児童生徒の個性を育んでいく上でも効果的であること,4学級規模と学習効果の相関について,学習効果の上での適正規模等に関する定説的な見解が見いだせないことから,現在の状況では,現行どおりの上限40人とすることが妥当である。

A3  教職員配置の弾力化
  今後,各学校の特色ある教育活動の展開やそれぞれの課題の克服に対する支援をより強化する観点から,都道府県教育委員会が弾力的かつ機動的に学校へ教職員を配置できるよう,義務標準法に示されている学校の学級数に応じた係数は,具体の各学校への配置数を算出するためのものではないことを明確にする必要がある。その際,教職員の学校間の兼任等も可能であることも併せて明確にする。

A4 非常勤講師の配置と高齢者再任用制度(いわゆる「新再任用制度」)による短時間勤務教員の活用
  地域や学校の実態等や教育上の必要性に応じて,都道府県の判断により,教員定数を活用して非常勤講師や短時間勤務教員を任用することができるようにし,これに係る非常勤講師の報酬については国庫負担することが適当である。
  校長,教頭,教務主任,学級担任教員については,今後とも常勤教員をもって充てる。 

A5  高等学校における学級編制及び教職員配置の在り方
(1) 国が高等学校の学級編制の標準を定めるという仕組みは維持するが,地方分権の観点等から,設置者において,学級編制の標準を下回る人数で学級編制することができるようにする。
  高校標準法に示されている学校の学級数に応じた係数は,具体の各学校への配置数を算出するためのものではないことを明確にする必要がある。
(2) 教職員定数の算定方式を,学級数を基礎とするものから,生徒数を基礎とする算定方式に変更することとする。また,非常勤講師等の活用については小・中学校に準ずるものとする必要がある。

A6  特殊教育諸学校における学級編制及び教職員配置の在り方
  児童生徒の障害の種類や程度に応じた適切な指導が行えるような教職員配置を行う必要があるため,教職員定数の算定方式を,従来の学級数を基礎とする算定方式から,児童生徒数を基礎とする算定方式に改めることについて検討する必要がある。また,非常勤講師等の活用については小,中,高等学校に準ずるものとする必要がある。

【教職員定数の改善】

B1 教職員定数の改善の趣旨
  今後,基礎学力の向上を図り,学校においてきめ細かな指導の充実を図る観点から,教科等の特性に応じ学級編制と異なる学習集団を編成して小人数授業を行うなど,各学校における指導上の具体的な取り組みを支援することに重点を置いて教職員定数を改善する。
  その際,教職員定数の改善の趣旨について国民の十分な理解を得ること,各学校において自己評価と説明責任が求められること及び都道府県等において情報開示と説明責任が求められることについても留意する必要がある。

B2  教職員定数改善の方法
  今後の教職員定数の改善に当たっては,第6次改善計画を踏襲して,主として加配定数の改善によることとし,特に小人数の学習集団を編成して授業を行うなどの個別の学校の状況に着目した加配方式によることとするとともに,きめ細かな学習指導,生徒指導の取り組みを支援する加配措置を一元化し,各都道府県の中で弾力的に活用できるようにする。

B3  教職員定数改善の規模
(1) 今後の教職員定数の改善の規模を考えるに際しては,1教職員定数の自然減が今後も発生するという状況を勘案すること,2教職員定数の算定に当たっては,教員の担当授業時数は従前を下回らないようにすること,3一定の担当授業時数以下の教員については,常勤教員ではなく非常勤講師や短時間勤務教員に置き換えたり,学校間の兼任で対応することが可能であることを考慮することに留意する必要がある。
(2) 改善の規模としては,教員1人当たり児童生徒数を欧米並みの水準とするという目標を達成できるような規模とすることが適当と考えられる。

B4 特殊教育諸学校,中等教育学校(中高一貫教育校),高等学校において教職員定数を改善する際の考え方
(1) 特殊教育諸学校については,今後の特殊教育の基本に関する検討が進められていること及び障害のある児童生徒に対する教育の実態を踏まえ,教職員定数の改善を図る必要がある。
(2) 中等教育学校については,その設置を促進するとともに,特色ある教育活動を幅広く効果的に行うため,定数上の優遇策を講ずる必要がある。
  また,中等教育学校以外の中高一貫教育校についても必要な配慮を行うことが望まれる。
(3) 高等学校については,総合学科や単位制高等学校等の実態,生徒指導の困難性や複雑な進路指導等を踏まえ,それに対応する教職員定数の改善を図る必要がある。  

B5  校長・教頭・教諭等以外の職種について教職員定数を改善する際の考え方
  今後の学校教育活動は,それぞれの分野の教職員が協力して行われていくべきことを踏まえ,養護教諭等,学校栄養職員,事務職員について,それぞれ教職員定数の改善を行う必要がある。


-- 登録:平成21年以前 --