ここからサイトの主なメニューです

政策評価に関する有識者会議(第18回)議事録

1. 日時
平成19年3月15日(木曜日)10時〜12時5分

2. 場所
如水会館 オリオンルーム

3. 議題
(1) 政策評価を巡る最近の状況について
(2) 文部科学省政策評価基本計画(平成17〜19年度)の改定及び平成19年度文部科学省政策評価実施計画の策定等について

4. 配付資料
資料1   政策評価を巡る最近の状況について
資料2-1 文部科学省政策評価基本計画(平成17〜19年度)の改定及び平成19年度文部科学省政策評価実施計画の策定等について(概要資料)
資料2-2 文部科学省政策評価基本計画(平成17〜19年度)(改定案)
資料2-3 平成19年度文部科学省政策評価実施計画(案)
資料2-4 文部科学省規制に関する評価書−平成18年度−
資料2-5 政策評価の結果の政策への反映状況報告−平成18年度−
資料2-6 「大学等の研究成果を社会還元するための知的財産戦略・産学官連携システムに関する総合評価」の中間報告について
(机上配付)
  文部科学省実績評価書−平成17年度実績−
文部科学省事業評価書−平成19年度新規・拡充事業等−

5. 出席者
(委員)
浅井(経)委員、天笠委員、高祖委員、河野委員、鈴木委員、舘委員、中西委員、星野(敏)委員、星野(芳)委員、宮部委員、美山委員、諸石委員、ゼッターランド委員
(事務局)
田中文部科学審議官、倉持政策評価審議官、田中大臣官房政策課長、渡辺大臣官房国際課長、森大臣官房文教施設企画部施設企画課文教施設環境対策専門官、滝波生涯学習政策局政策課課長補佐、大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、小松高等教育局高等教育企画課長、戸渡科学技術・学術政策局政策課長、川上研究振興局振興企画課長、中原研究開発局開発企画課長、北風スポーツ・青少年局企画・体育課体育官、水田文化庁政策課企画調整官、木村大臣官房政策課評価室長、松渕大臣官房政策課評価室室長補佐

6. 会議の概要
 議事に入る前に、事務局からの指名により、新たに高祖委員が座長に選出された。
 高祖座長あいさつ
【高祖座長】 ただいま事務局から会議の座長の指名を受けました高祖でございます。そうそうたる方々がいらっしゃる中でのご指名に身が縮む思いをしております。精いっぱい務めさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 この有識者会議には、2年前、平成17年3月に開かれました第12回会議以来、加えていただきまして参加しております。委員の方々のご意見から学ぶところも多々ございまして、勢い時間がなくなってしまうという会議が毎回でございました。できるだけ会議がスムースに進むように努めてまいりますが、皆様方のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
 今回、新たに委員になられた方も多数いらっしゃると思いますが、今、勢い会議時間が延びると申し上げましたが、それは、委員の方々がそれだけこの会議の重要性を認識しておられまして、いろいろなご意見をご提示くださるからであります。
 ただ、私どもの本会議は、他の審議会のように、個々の政策のあり方を審議して、こういう政策をつくっていくんだ、こういう答申をしていくんだという性格ではありません。生涯学習、初等中等教育、高等教育、科学技術と学術研究、それから文化、スポーツと文部科学省は幅広くお仕事をしておられますけれども、その中で、それぞれが行っていらっしゃる政策についての評価が客観的、また厳格に行われ、その結果が政策に適切に反映されているかどうかにつきまして助言を行う性格の会議であると、私は理解しております。
 今日、ここにいらっしゃいます委員の皆様方が、それぞれのお立場、ご経験等を踏まえた見識を生かしながら、文部科学省に対しまして忌憚のない意見をお伝えできるよう、この会議を進めてまいりたいと思います。できる限りスムースに努めてまいりたいと思いますが、皆様方のご協力もどうぞよろしくお願いいたします。

 会議の議事に先立ち、田中文部科学審議官よりあいさつがあった。
 田中文部科学審議官あいさつ
【田中文部科学審議官】 第18回政策評価に関する有識者会議の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 先生方におかれましては、ご多忙の中、委員を引き受けていただきまして、大変ありがとうございました。政策評価法ができましてから5年が経ったわけでございますが、文部科学省といたしましても、有識者会議の皆様方のご助言をいただきながら、政策評価に取り組んでいるところでございます。政府全体の動きといたしましても、PDCAサイクルの定着を目指しまして、政策評価と予算、決算との連携強化を図るなど、政策評価の役割が益々重要となってきておるところでございまして、当省におきます政策評価のあり方につきましても、一層ご論議を深めていただきまして、より効果的なものとしていく必要があると考えております。
 本日の会議におきましては、来年度の政策評価を進める上で、議論となります基本計画、実施計画等についてご議論をいただきまして、政策評価の改善、充実に向けまして忌憚のないご意見を賜りたいと存じておる次第でございます。どうぞよろしく申し上げます。

 事務局より会議の公開の扱いについて、会議の議事については非公開、議事要旨、議事録を後日公開する旨説明があった。

(1)  「政策評価を巡る最近の状況について」
 事務局からの資料1に基づく説明の後、続いて質疑、意見交換が行われた。
【鈴木委員】 今、実績評価と事業評価の2つの評価方式について、数値化されているか、されていないかという話があったが、実績評価が数値化されている施策が多くて、事業評価の方では数値化されていないという実態がある。これは事業評価の段階で数値化されていなくても、その後、実績評価していくということで、当然これは数値化していかないといけないということになっているのか。

【木村評価室長】 そこは、我が省としても、いろいろ考えているところでありますが、事業レベルだと、個々の事業レベルにおいて数値化をするということは、特に検証時期、この時期までにこういう効果が出るだろうというのは、教育、文化、スポーツなどなかなか難しい面があると思う。
 一方で、実績評価というのは、既存の施策を評価の単位としており、施策レベルになると、その下にたくさんの事業がある。幾つかの事業をしていく中で、こういう効果が出てくる、こういうところまで実現ができる。いろいろな手法があるが、例えば、アンケート調査をして、政策の効果があったかどうか満足度を見ながら、そういったことを調べるという施策レベルになってくると、数値化した検証が比較的しやすいと思っている。
 そういう意味で、施策レベルで見た事業の集合体、あるいは政策目標を持った一連の事業全体の政策という形では、ある程度数値化して検証しやすいが、個々の事業について、そこまで求めるのは本省の行政対象から見ると若干難しい面があり、こういう差異が出ていると考えている。

【鈴木委員】 そうすると、事業評価の方は、目標を数値化していくということについて、推進する必要がないということではなく、していこうということでよいのか。

【木村評価室長】 ご指摘のとおりである。政策評価という観点からは、できるだけ得ようとする効果を定量的に設定することが望ましい。当省においても、困難性はあると思っているが、できるだけ定量的な目標を置いて、それが難しい場合は、定性的な目標を置くということにしている。いずれにしても、できるだけどういう効果を得ようとしているかをはっきりさせる。漫然と事業を実施して、去年もやったから来年もやるということではなくて、できるだけこういう効果を得たいということを明確にして進めていきたい。それは事業評価も変わらないと考えている。

【鈴木委員】 田中審議官からお話もあったが、PDCAを回していくためには、ぜひ、目標は数値化された方がいいと思う。

【高祖座長】 今、ご指摘があったように、実績評価というのは既に行っているものの成果について評価している。事業評価はこれからやろうと思っているものである。
 しかし、目標のところで、その間に関連性を持つべきだというご指摘である。今、木村室長からご説明があったように、その辺りについては、さらにまた精査していくと思うし、量的にすべてが評価基準で出せるとは限らないものもある。その辺りの区別をしながら進めていただくということである。

【舘委員】 個々の評価の動向については、報告いただいたので理解できたような気がするが、ここに書かれていないことで、教育基本法に教育振興基本計画をつくるということが法令化された。それとの関係がどうなっているのかというか、振興計画がつくられると、そこに目標が生まれてくる。かなり明確に生まれてくる。その関係が今年度起こるのかどうか、それをどう受けとめられているのかということをお聞きしたいと思う。

【木村評価室長】 私の方で、スケジュール的なところを把握しておらず、大変申しわけないが、教育振興基本計画において、政府として目標が立てられれば、政策評価法に基づく政策評価というのは行政機関が自ら行う政策について評価を行うものであり、国が行う政策については、当然ながら政策評価の対象になってくると考えている。
 ただ、教育振興基本計画については、今後どうするのか検討中のものであるが、必ずしも政府が行うものだけではなく、地方が行うものなど、いろいろあり得るかと思う。
 そういったものについては、政策評価法の対象という形にはならないと思うが、その辺りについては今後、教育振興基本計画の具体的な内容を検討する上で、政策評価法における評価との仕分けも考えていく必要があると考えている。

【高祖座長】 とても大事な視点だと思う。

【浅井(経)委員】 先ほどの数値でとらえるという問題だが、19年度から「放課後子どもプラン」が始まるが、ある自治体の担当者にこの事業の予算をとるためには、説得力のあるデータを出してはどうかと申し上げたことがあった。例えば、その事業をやればいじめの問題がなくなるとか、学習意欲が高まるとか、そういったデータを出していくことが大事なのではないかと申し上げたが、実際にはそういうデータはない。
 ですから、前にも申し上げたことがあるが、何が使えるかわからないので、日頃からいろいろ指標となるようなデータを集めて、それを必要に応じて出し入れしていく必要があり、そうしていかないと、説得力のある数値化を得ることは、なかなか難しいのではないかと思う。

【田中文部科学審議官】 今、「放課後子どもプラン」のお話があったが、これは平成16年度から3年間で子供の居場所づくりということで取り組んできており、平成18年度で言えば、全国約8,000カ所でやらせていただいているが、平成17年度に実施していただいたのは、7,700、800あったところ、ここの保護者の方、それから子どもさん方、それから学校関係、校長先生方にも、なかなか数値では出ないが、やはり参加してよかったとか、あるいはこれからもずっと参加したいとか、そういう意味での一定のアンケート調査と申しましょうか、評価に関するアンケート調査は実施している。全国にこういう調査が出ているということはお返ししたい。

【天笠委員】 目標の数値化については、各省庁別のグラフでそれぞれ出ており、視覚的にも大変わかりやすいのだが、何をどの程度どうするか、文部科学省のとある政策についてこんな形で示しているという具体例を紹介いただけると、よりわかりやすいというのが一つである。
 もう一つ、例えば、文部科学省の初等であるとか、高等教育政策であるとか、スポーツであるとか、仮にそういった分野ごとに見たときに、比較的表しやすい分野が出てくるのか、それとも現在はその辺りのところまではっきりとした傾向は出てきていないのか。文部科学省内の政策別のこの種の傾向がもし整理されているようであれば、合わせてその点についてもお知らせいただきたい。

【木村評価室長】 具体例については、例えば、前回の事業評価では、「目指せスペシャリスト」という初中局で実施している事業があり、この事業自体は個々の専門高校の専門的職業人の育成を図る、そのための専門高校の活性化を図るという事業であるが、この事業の目標値として、生徒の職業教育に対する理解、習熟について、80パーセント以上の習熟度を目指すという目標値を置いているところであり、このように数値化をしているものも一部ある。
 ただ、先ほどもお話しがあった初中教育、高等教育にしてもそうであるが、このような数値化が果たしてすべてになじむのか、先ほど申し上げた習熟度80パーセントが本当に他の分野についてもいいのかと考えると、正直申し上げてなかなか難しい。
 初中教育においても、例えば、豊かな心を目指すといった目標もある。では、そういったものを数値化して図れるのか。もちろん、アンケートを使ってやればある程度はできるのかもしれないが、数値化になじみにくいものも、やはり教育の分野は特にあると考えている。
 できるだけいろいろなものを活用しながら、定量的な方途を考えていきたいと思っているが、なかなか難しい面もあるいうのが正直なところである。
 2点目のご質問については、細かく分けているわけではないが、先ほども申し上げたように、やはり教育の分野というのは、特に難しい面があると思っている。
 科学技術、特に研究開発の大きなところについては、もう少し定量的な把握が行いやすいが、教育分野については、教育内容に関するものであるとか少し難しいところがある。進路などに関するものについては、具体的なパーセント、割合を出すことができるわけであるが、難しい面として特に教育があるのではないかと考えている。

【天笠委員】 私は何でもかんでも全部数値化すればそれでよし、ということではないのではないかと思っている。ただ、そういった点については、確かにこれまで十分掘り下げられてこなかったということも実際の問題だと思うので、何が難しいのか、あるいは、どういうところがなかなか数値化できないのか、それを明示することが極めて大切なことなのではないかとも思っている。
 また、私自身は、比較的初中に関わりを持たせてもらっているので、今、言われたことも非常によくわかる点であり、そういう中で数値化できるところはどんな形にしていったらいいのか。この辺りが検討の課題になると思うし、知恵を出し合っていくべき点かと思っている。

【高祖座長】 今の関連でいくと、今日は、実際に事業評価と実施評価の中身まで入れないと思うが、今後、各委員の皆様方には中身を検討していただくことになる。その中で、今、天笠委員からご指摘のあったところを実際にそれぞれ点検していただき、ここはこういう指標を出したらいいとか、そういうことも委員の皆様方からご指摘をお願いしたいと思っているので、よろしくお願いしたい。

【星野(芳)委員】 今の話に関連するが、いつも説明を受けるときにやはりよくわからないところがある。資料をこれだけたくさん用意していただいているのに残念だと思っている。先ほど浅井委員が説明された放課後児童クラブとか、子育て支援のところだが、文部科学省では子育て支援と言ってはおらず、地域の教育力と言っているので、今の話であればぜひ説明していただきたかったのは、実績報告書の40ページである。常に教育関係と科学技術と2つ事例を加えて、特に今回、委員の方も代わっていらっしゃるので、常に実績評価書を原点にして、質問なり回答をしていただきたいと思っている。せっかくなので、40ページのところを見ていただきたい。
 これまでの答えだけでは、入り口のところで教育は難しいという観念論な話になってしまう。そうではなく、具体的には40ページのところを見ていただくと、達成目標というものがある。これが中間的な目標であり、施策目標は一番右の地域の教育力の向上ということである。これがいわゆる数値化されていると言っているものになるが、要するに達成目標の部分をもう少し厳密に指標設定なり、現状把握なり、目標設定なりをやっていくと実績評価のレベルも上がるし、当然、達成目標を達成するために事業がある。一番左側にあるが、地域子ども教室推進事業、子どもの居場所づくり支援ということで87億6,200万円もかけている。
 ところが、当然、目標がなければ、これが高いが安いかはよくわからない。そういう意味では、ここまでできているのだからもう一歩踏み込んで、これをよりよくしていくということをやっていくべきではないか。
 私は、政策評価、平成19年度については施策ごとに分科会なりをやっていただいて、目標設定なり実績の把握レベルを上げるべきだと思っている。

【高祖座長】 この会議の持ち方にも関連することであり、少し事務局の中でも検討いただき、どういう対応ができるかを示すということでお願いしたい。
 実績評価は、先ほど紹介があったように、他の省庁と比べれば相当進んでいるという評価をいただいているとのことである。
 実際、実績評価を見ると、今、星野委員から指摘があったように、それぞれの施策目標を細かく分けて、予算との関連が図式化されており、相当詰められたものが出ている。
 ただし、それが完全というわけではないので、様々な検討が必要ということは事実である。

【諸石委員】 目標を設定するときに、効果が上がったかどうかをどうやって評価するかをあらかじめ決めておくというか、それを考えて目標設定をする。それが定量的にできるか、できないかいろいろあろうかと思うが、当然、目標を設定するからにはPDCAサイクルを回していき、評価ができるということが前提になっているのではないかと思う。
 そういったように、目標を設定するときには、この効果はどうやって判定するということを含んだ目標を設定することが必要だと思うのだが、そういったことが可能かどうかということをお伺いしたい。

【高祖座長】 今まさに、その点を挑戦しているところ、目標、つまり予算との関連で、大きな予算をつけて一つの目標を目指して実行していく。そうすると、目指したものに対してどういう成果が得られれば達成したと言えるのか。達成する場合でもかなりランクがある。そういうものも正直にというか厳格に見ていこう。
 そして、訂正できるところ、修正できるところは修正して、次に臨んでいくということの繰り返しを、今、やろうとしている。その辺の評価をこの会議の中で見ていただいて、委員の皆様方から様々な角度でご指摘をいただいて、それを政策に活かしていきたいということで進めている。
 おっしゃるように、目標が非常につくりやすいものもあれば、非常に難しいものがある。つくりやすいものの中でも、数字で出せるけれども、質的な面はなかなか難しいものもある。その辺りを上手に区分けしながらやらないと、すべてを数字でというわけにはいかない面が、特に教育の場にはたくさんある。文化、スポーツも同じだと思う。
 そのようなことを切り分けながら、皆さんの知恵をいただきながら、より精度の高い政策形成に寄与できればという意味の評価であるので、よろしくお願いしたい。

(2)  「文部科学省政策評価基本計画(平成17〜19年度)の改定及び平成19年度文部科学省政策評価実施計画の策定等について」
 事務局からの資料2-1〜2-6に基づき説明の後、続いて質疑、意見交換が行われた。
【高祖座長】 最初に、基本計画と実施計画の改定に関わるところについて進めたい。
 以前から委員を続けていらっしゃる方はご存じのことと思うが、基本計画というのは、3年サイクルで動いており、これから来年3月までが基本計画3年サイクルの最後の3年目ということになる。そのため、基本計画の大きな枠組みが決まっている中で、いわば小幅な改定を加えているというのが今回の基本計画の改定のところになる。
 実施計画については、単年度の計画であって、基本計画に基づいてこういうふうに進めていくということについては、先ほど法律等の改正もあったことから、より精度の高い評価を進めていく上での実施計画であるという説明であった。
 この基本計画と実施計画の改定について、皆様からお気づきの点、またご質問等も含めてご意見をいただければと思う。
 ここで、実績評価の組み立て、構造について具体例をもって確認しておきたい。
 実績評価書5ページに文部科学省の使命と政策目標とが1ページにまとめてある。この文部科学省の使命を受けて、その使命を達成するための政策目標というものが1から9まで並んでいる。政策目標1だと、例えば、生涯学習社会の実現、生涯にわたって学ぶ機会が提供され、学んだ成果が適切に評価される社会が実現するとある。その政策を実現するための施策が、1−1から1−5まである。1−1が生涯を通じた学習機会の拡大と、以下、それぞれが政策目標を支える施策目標になっている。
 大きな目標が皆同じような組み立てになっている。
 そして、1ページめくっていただくと、生涯学習社会の実現の1−1、施策目標の次に、高度で体系的かつ継続的な学習社会を提供する高等教育機関等において、学習者の多様なニーズに対応し、生涯を通じた幅広い学習機会を提供するという基本目標があり、そして、実際にどういうものが達成されたら施策が実現されたと見るのかを、その次の達成目標というところで支える仕組みになっている。
 1−1の中に、さらに細かく1から5まであり、それぞれの達成目標を見ていく構造である。それぞれの達成目標を、先ほどご議論があったように、こういう指標で見ていって、これがどこまで達成できたら成果を生んでいると見るか、あるいはまだまだと見るか、足らないと見るか、あるいは指標が足らないという議論をこれから進めていくことになるが、このように政策評価をする枠組みが大きくつくられている。
 枠組みに関することでも結構なので、基本計画と実施計画について何かお気づきの点があったら、ご発言をお願いしたい。

【星野(芳)委員】 基本計画の赤字の部分を見ていると、今までの取り組みが反映できているということで、以前よりは非常によくなったと評価させていただきたい。これも評価室の皆さんのご努力だと思っている。
 ただし、今後のことだが、基本計画の6ページには、原則として毎年度、政策目標の達成度、施策目標の達成度合いをみるということになっている。そうなると、今後、政策目標自体の目標を設定すると考えてよいのか。
 それから、設定するのであればどのように設定するのか、また、当面、政策目標の9つでいつまで行くのか、3つまとめて質問させていただきたい。

【木村評価室長】 政策目標については、例えば、生涯学習社会の実現であれば、生涯にわたって学ぶ機会が提供され、学んだ成果が適正に評価される社会を実現するというのが具体的な内容かと思っている。
 そのような目標に向かって、それぞれに判断基準を別途また置いて、それに基づいて生涯学習社会の実現という我々が持っている政策が達成できたのかを評価していく必要があると思っている。
 そして、政策評価体系そのものについては、先ほど申し上げたように、今、予算と制度評価の連携というものがあり、今後、概算要求までに改めて精査をして、必要があれば政策体系を見直す必要があると考えている。
 したがって、政策目標体系が今後も変わる可能性はあると考えている。その点については、我々が直すべき必要があると思うのであれば、案を作ったうえで、先生方のご意見を改めていただきながら変えていく必要があると思っている。

【星野(芳)委員】 スケジュール的なことであるが、特に19年度の計画はどうなっているのか。

【木村評価室長】 スケジュールについては、例年、少なくとも8月末に概算要求を出す必要があるので、それに向けて20年度概算要求では、現在の予算のあり方、あるいは政策評価の体系を直した上で、概算要求する必要があると考えている。
 そういう意味では、8月末の概算要求がデッドラインであるので、予算書の見直しとあわせて政策評価体系の見直しを行う必要がある。8月末に向けて、先生方のご意見を聞きながら直していくというスケジュールで考えている

【高祖座長】 確認だが、政策評価の体系を見直すということになると、この次の基本計画に反映することになると思うが、19年度からになるのか。

【木村評価室長】 それについては、20年度概算要求からになると考えている。

【高祖座長】 では、次のサイクルということでよいのか。

【木村評価室長】 しかしながら、今の基本計画は、19年度までの計画となっており、考え方として幾つかやり方があろうかと思っているところである。
 現在、本省において、方針を決めているわけではないが、19年度の基本計画自体を改定して、それに基づいて20年度概算要求をするというやり方もあれば、別途20年度以降はこういう体系をつくって、それに基づいて20年度概算要求をしようということで、19年度と20年度が並列したトラックになるというやり方もあろうかと思っている。
 いずれにせよ、どういうやり方でやるのか、将来、体系を見直す必要があるかどうかもまだ明らかでない状況であるので、今後、詰めた上で先生方とご相談して進めていきたいと考えている。

【高祖座長】 いずれにしても、基本計画が来年春で一度3年サイクルが終わる。そうすると、その次の基本計画を立てなければいけないという作業が実際は始まることになる。そういうことで、政策目標の体系そのものを変えるということも、そこに反映する可能性はあるという回答であった。

【星野(芳)委員】 今、19年度の政策評価の実施計画を審議していると認識している。19年度の活動は4月から始まるが、今の話を聞いていると、8月の概算要求までに20年度の新しい政策目標体系をつくるということでいくと、やはりどこかでデッドラインを決めて、例えば、6月とか7月とか、その時点で一応確定して、それ以降、教育基本法とか政策目標に影響を与える要因があるかもしれないが、それは来年度だけでなく、毎年見直しをしていくことが必要だと思う。
 また、この有識者会議の開催も、それに合わせて組み込んでいかないといけないということで、例年8月ぐらいにやるが、でき上がったものを承認みたいな形になっているので、もう少しそういったところもスケジュール化していただきたい。早急にスケジュールを日程ベースで決めていただきたい。

【木村評価室長】 その点に関しては、まさしくご指摘のとおりであり、我々としてもPDCAサイクルの着実な実施の観点から、有識者会議については6月開催を予定している。どうしても従前の7月末の段階で1回開いて、8月末でもう一回開くという形でやっていると、なかなかご意見を反映させることが難しいということもあり、6月に開催させていただき、その上で先生方に、その時点での案ができていればお示しをして、ご意見をいただいてやっていこうとは考えている。
 ただ、これは政府全体で調整した上で、こういう方針でやりましょうと決まって、初めて我々も動けるということがあるので、そこを見ながら案をつくっていきたいと思っている。

【中西委員】 案自体はこれでいいと思うが、内容についてちょっとお伺いしたい。実施要領も同じ書き方だったが、1ページの実施計画に関して事業評価の新規の対象について、1社会的影響または予算規模の大きいものを対象とする、とあるが、これはこの書き方でいいと思うが、だれが何を、何か基準があるのかとか、何を目安にだれがどういうふうに決めるのか、もう少し具体的に示してもらえるとわかりやすいと思う。
 もう一つ、4ページから5ページにかけて、有識者会議委員から助言を得ると書いてあるが、この会議の位置づけとしては、参考的意見なのか、実施計画には総合評価のテーマの決め方についても書いてあるが、もう少しこの会議の位置づけについて伺いたい。
 最後に、5ページの6、職員の評価能力の向上というのは非常に大切なことで、とてもいいことだと思っている。
 評価というのは、やはり評価者のスキルというか技術の向上が大切なので、とても大切なことと思う。その研修の内容について、どのような内容かおわかりなら教えていただきたい。

【木村評価室長】 1点目の社会的影響または予算規模の大きいものの判断基準については、明確な基準をお示ししにくいことがあって、このように書いているという現状であり、まさしく個々に考えるしかないと正直思っている。
 予算規模については、例えば、10億円以上の研究開発費というものはそもそも対象となっているところであるが、当方であれば予算の主要事項に載ってくるようなもの、具体的な金額としては1億円以上のものがほとんどになるが、それ以下であっても、対象としているというのが運用上のところかと思っている。
 いずれにしても、文部科学省の予算の主要事項という形で載ってくるものについては、すべて対象として新規・拡充事業の評価を行っているという整理で、我が省の方は評価を実施している。
 他省庁では、全然違う形で、事業評価をほとんどしない省庁もあるが、我が省の場合は、予算主要事項はすべてやっているというのが一つのメルクマールかと思っている。
 2点目の有識者会議の助言の話については、こういった形で有識者会議を開催していただく助言もあれば、事前に資料をお送りさせていただいて、事前にご意見をいただいて、それに基づいて評価書を直すということもさせていただいている。有識者会議の位置づけが政策評価法上、知見を活用するという形になっているので、それに基づいて先生方の助言を得るという表現をしているところである。
 実際上、そうやっていただいた意見によって評価書を直したり、会議を開かなくてもいただいた個別の意見を踏まえて評価書を直したり、改めて定量的な分析をしてみたり、そういったことをやっているので、いただいた意見は最大限活用させていただきたいと思っている。
 3点目の研修の点については、新採研修ではいろいろな演習がある中で、政策評価はこういったものと新人の方に教えていることが一つあるが、もう一つはスキルを磨くという観点から、本省の職員を対象として、政策評価研修という形で行っている。
 去年の例であれば、200名ほど、本省の約10分の1の職員を対象として研修を行っており、ここにおられる星野委員にも講師をしていただき、研修をみっちりやっていただいた。
 来年度も引き続きこういった研修の実施についてやっていきたいと思っている。

【天笠委員】 基本計画の5ページ、4の政策効果の把握に関する事項の部分についてだが、特に何を書き加えるとか、字句を修正するということではないが、ここに関連して1点申し上げさせていただきたい。
 政策効果の把握に情報データを収集するというのは極めて当然のことであり、そういう意味で、収集に努めるものとするということで結構かと思う。このことをもう少し別の観点から見たときに、様々な手法を持ってデータの収集を図ることになるわけであるが、それが今度は現場における受け手の立場からしたときに、調査が非常に多くなってくる。場合によっては、副次的なものを生み出す心配がないかどうかがある。
 今、具体的にデータを持っているわけではないが、想定されることは、例えば、小中の場合、学校現場に対して様々な調査作成依頼という形で、それを吸い上げることによって効果を読み取るということになるわけであるが、こういう政策の体系の元に、それぞれがそれぞれとして突き詰めていこうとすると、そのような点についての心配も考えなければいけないのではないか。
 そういう点では、データ収集のシステムの整備というか、あるいは手法自体の配慮というか、政策の効果を確かめる、例えば、調査であれば、政策全体を通しての総量の配慮というか。
 そういうもろもろをとってということについても、また今後、検討していく必要があるのではないかと思う。
 当省は、ここまでこういう形でこぎ着けてきたということで、この間の組み立て方はよくわかるが、こういう形で実際にいろいろな形でデータをとっていくことになると、今、申し上げたことへの配慮も必要なのではないかと思う。データのとり方であったり、システムの整備であったり、あるいはそれに関わって現場にあまり無理のかからない形でデータがとれるように、そちらについても今後、検討していかなければいけないのではないかと思う。
 その点、よろしくお願いしたい。

【浅井(経)委員】 天笠委員のおっしゃったことはそのとおりだと思う。
 直接その事業に関しての効果を得ようとすると、おそらく現場は本当に大変なことになると思うので、先ほど申し上げた、いろいろなデータを集めておく必要があるというのは、必ずしも直接的なものでなくても、国民に対して説得力のあるデータというのはあるので、それを日頃から収集しておくことではないかと思う。
 前も申し上げたように、例えば、社会教育費の効果分析をしたときに、犯罪率が下がるなどの分析を私どもは得ているので、いろいろなデータを集めておくと、現場に迷惑をかけなくても済むのではないかと思う。

【星野(敏)委員】 初めて参加させていただいた。私の専門は、青少年の野外教育や体験活動といったものをやっており、まさしく定量化できないものをいつも相手にしている。
 ただし、効果を表明するときには科学的にデータを出さなければいけないので、常に狭間に立っているところであるが、今、先生がおっしゃられたように、現場では結構いろいろな開発をしていて、よく言われている生きる力というのは、こういうふうに分析すればデータができるだろうとか、そういうことをやっている。
 要望と言えば要望ですが、文部科学省はたくさん扱っていると思うが、データにしにくいものをどうすればデータ化できるかというワーキンググループ、あるいは施策の一つでそういう研究チームを立ち上げて、やっていただくことも必要ではないかという気がしている。
 もう一点は要望になるが、自己点検評価をしていくと、どうしても定量化できないものは政策化するなという暴言が出てくる。あくまでもデータにしくいものはあるので、なぜデータにしにくいかを明確にしておき、データにしやすいものとしにくいものを別にして、データにしやすいものを総務省でグラフ化していただいた方がいいのかなという気がしている。あまりデータ化しているもの、していないものと一緒くたにしない方がいいのではないかという気がしたので、その辺りはこれからの要望として一言申し上げておきたい。

【美山委員】 今、データの話がいろいろ出ているが、私が関わるのは、多分、政策目標8の文化による心豊かな社会の実現ということだと思う。私自身、かつてこの会議で文化関係のデータの整備の必要性を言った記憶があり、この3月になって、大変見事に文化関係のデータ整備のアンケートなどが送られてきて、やっていただいているのだとありがたく思う反面、これだけデータのことが出ると、データをつくる、あるいはデータがあることによって、施策の目標にぶれが生じる恐れがあるのではないか。それがあっては逆にいけないわけで、やはり目標を立てるときに、こういう部分はデータにならないものであるときちんと言うフィロソフィーが必要だと思う。
 例えば、私は、美術館教育などに関心があるのだが、本来、美術館をつくることが目標ではなく、運用が目標になるのだが、その運用によって何を達成するのか。私たちが必要なのは、1,000人の日曜画家なのか、1人のレオナルドなのか。そういうことを考えたとき、1人のレオナルドをつくる、あるいは生み出すということはなかなか数値化できないし、それができないところは施策として失敗ということになってしまう。そういう議論はきちんとしておかないと、データ集めばかりに走ってしまうおそれがあるのではないかと思う。
 例えば、美術館の運営にしても入館者の数を調べたりするわけだが、それだけで評価されるわけでは決してない。
 その辺りのしっかりとした理念構築というものも一緒に、20年度から新しい3年間に入るということなので、整備、構築、あるいは心構えも一緒に進めていただけたらと思う。

【高祖座長】 データ収集のことにわりと話が集まっているが、この会議は、後ろに文部科学省の各局を代表する方々がお見えになっている。そういう方々も議論をお聞きになっており、ご自分の関係するところの政策についていろいろ考えてくださることになっている。それとの連動という面もあるので、ご指摘の点についてまたご検討をお願いしたい。

【ゼッターランド委員】 先ほどデータをきちんと出して、整理して、それをリンクさせていく大切さという話もあったが、例えば、スポーツですと、メダル獲得率3.5パーセントという指標は変わらず、基本計画の見直しは3年サイクル、オリンピックは4年サイクルである。
 これって全く合わないのではないだろうかという疑問が、今、頭をもたげてしまっていて、本当に現場にフィットした数値目標なのかということもあり、また、私はスポーツというのは芸術とか音楽と質はほとんど変わらないものだと思っている。
 データとして出すこともできるのがスポーツではあるけれども、出ない部分での評価がどれだけ大きいかということを実感していただけているか、フレキシブルな部分を持たせておいて評価していただけるか、今、非常に考えさせられているところである。
 後ほど数値と、本当に現場に沿ったものでメジャーなチェンジ、あるいはマイナーなチェンジをしていただけるのかどうかお伺いしたいこともあるので、とりあえず今のところはここで止めさせていただく。

【田中文部科学審議官】 今のご質問で、オリンピックのメダルを3.5パーセントに上げるというのは、平成13年から平成22年までのスポーツ振興基本計画というものが元々あって、10年計画で3.5パーセントまで上げようとしたわけだが、アテネオリンピックは大変成績がよくて、夏だけでいうと3.5パーセントに達してしまった。
 しかし、冬も入れると3.2〜3.3パーセントになっているところである。
 それから、週に1回スポーツに親しむ人を50パーセント以上にしようというものがスポーツ振興基本計画の中にあり、それをこの計画の中にも反映させていただいているところである。

【ゼッターランド委員】 数字というところで、3.5パーセントを全体のこととしてとらえていいのか。実際に3.5パーセントを表向き、近い例を挙げればアテネでたくさんメダルをとって、トリノでは金が1つということを考えますと、こういった表向きの全体に出てくる評価、一番表面に出てくる評価というのは、3.5パーセントで万々歳ということになるのかもしれないが、これがどれだけ現場が影響を受けることになるかというのは、実際のところ、一番現場レベルでいくと、競技そのものがメダルをとれたか、とれないかの評価をされることになる。とれなかったというと予算が下がる。その予算を再び獲得するためにどれだけのボランティア的な力を加えなければいけないかということになってくる。
 この評価そのものが、数字の設定を含めて現場に痛手を加えることにならないのか。強い競技は、もちろんどんどん予算がつくので、もっと強化することができる。トップレベルだけではなくて、次代の育成、ジュニアの強化にもつなげることができる。
 だけども、メダルがとれなかった競技というのは予算がなくて、やはり予算がないと苦しい部分も現実問題としてある。
 そうすると、全体3.5パーセントと言っているのにも関わらず、中身を見てみると、ものすごい二極化が進んでいて、いい競技はものすごくいいが、だめな競技は全くだめということがいつまでたっても直らない。結局は、すそ野に関しても、たくさんの競技人口が増えるかというと増えてこない。
 国民のレベルの中においても、スポーツをする人としない人と全く分かれてしまうということが出てくると思う。その辺りをもっとしっかりと見ていただいた中での数字を出してほしいと思う。

【田中文部科学審議官】 今、数字のお話だったので、10年計画の中にありますというお話をさせていただいたのであって、スポーツ振興基本計画というのは3つの観点からなっている。
 学校体育を充実させよう、生涯スポーツを振興させよう、競技スポーツも振興させよう、この3つの大きな柱があって、その中に一つのメルクマールとしてメダルの獲得を目指そうではないかというのが、指標として一つ入っているということである。
 今般、一番初めの学校体育のところで申し上げますと、子供の体力がどんどん低下している。この20年間、子供の体力が低落傾向にあるので、13年につくったときには、学校体育の振興ということで書いていたところ、このたび見直しをし、1番目に子供の体力の話、次に生涯スポーツの話、それから競技スポーツの話と大きく3つに分けてスポーツの振興を図っていこう。その中のメルクマールとして、先ほど申し上げましたような週1回スポーツ活動をする人を50パーセントにしようとか、メダルの獲得率3.5パーセントを目指そうとか、そういうことを掲げているということである。

【高祖座長】 私たちの委員会は、意見のやりとりがあることによって深まっていくので、私としては、非常に喜ばしく感じている。
 えてして委員の言いっぱなしとか、文部科学省からの説明で終わってしまうことが多いので、やりとりを通して議論を少し深めていって、問題点を掘り下げていく。
 その辺りは非常に大事なことだと思うので、よろしくお願いしたい。

【星野(芳)委員】 今の話は、19年度の政策評価を実行しているときにどのように反映するのかがないと、この場だけのやりとりで終わってしまうので、次の目標設定については、やはり見直しをすべきと考える。数値自体と、目標設定の過程もやはり見直すべきだと思う。
 その辺をどう考えているかお聞きしたい。

【田中文部科学審議官】 スポーツ振興基本計画の3.5パーセントをどうするかというのは、文部科学省全体の大きな問題である。いろいろな競技団体の実情もある。3.5パーセントというのは、今まで日本がシェアした中で一番高い数字3.5パーセントであったから、もう一回一番高い水準まで届こうではないかという目標でつくったところであり、数値目標をすぐ変えることができるかどうかはよく検討しなければならないと思う。

【星野(芳)委員】 そのことと政策評価の兼ね合いがよくわからない。ずっとそのまま3.5パーセント前提でいくのか。

【田中文部科学審議官】 次の北京オリンピックでどれだけのメダルがとれるかわからないが、そういう実績を十分見てやらなければならないだろうと思う。

【星野(芳)委員】 ということは、施策によって基本計画のタイミングも違うから、それに合わせて目標設定するということなのか。

【田中文部科学審議官】 そういうことになる。

【星野(芳)委員】 そこのところを基本計画に書くべきだと思う。

【高祖座長】 そこのところは、これからの検討課題だと思う。
 もう一つ、先ほどゼッターランド委員のご指摘の中であったのは、2−5の資料を拝見していくと、評価結果の概要があり、それがどんなふうに施策に反映しているか。
 これはこれでよくできていると思う。
 ただ、先ほどのご指摘は、反映状況というところは、えてしてプラスの面での評価、関連しているという書き方がやはり多いと思う。
 しかし、こういう政策をやった結果、そこからこぼれているもの、あるいは逆にマイナスというか、政策で予期していなかったところが出てきているということもあり得るだろう。そういうものも評価の中には取り込んで、全体を見る必要があるのではないかというご指摘だったと思う。
 それがちょうど本日出されていた。
 今、2番目でやっている規制評価のところで、まさに規制がどういう効果を生んでいるか。それと同じような視点がこちらにも要るのではないかというご指摘が、今、あったと思う。
 確かに、これは非常に大事なところだと思うので、私たち委員としても考えなければいけないが、事務局の方でも少しその辺りを検討していただき、どういうよりトータルな評価が可能か、その辺をまた一緒に考えていければと思う。

【田中政策課長】 今、ご指摘いただいたことは、一つの事柄に対して一つの尺度を当てはめる、すべての分野に対して、同じ尺度を当てはめるということではなく、いろいろな尺度を用意する。
 ただ、どんな尺度でその施策を見るのかということは、きちんと決めておかなければいけないと思う。だからといって、スポーツだったらメダルの数でいいのかというと、そんなことはないのであって、いろいろな尺度で評価ができるということをこちら側としても用意して、それぞれ個別の施策をきちんと見ていくことが大事だろうと思う。

【河野委員】 私も長く、人材育成をメーカーの子会社でやってきて、定性評価の部分、文部科学省の悩みと同じような課題を二十何年抱えて仕事をしてきており、皆さんがおっしゃるとおり、ほんとうに評価すべきものなのか、定性の部分をどうして評価できないのか別枠で考えておくことはすごく重要かと思って聞いていた。
 本来論で考えていくと、こういう評価が導入されて、文部科学省でやっていることがさらによくなると見られることと、内部の方、職員の方々がいい意味でやりがいを感じ、楽になり、方向性が示されるような、職員一人一人の中にPDCAが組み込まれた仕事にならないと、やはり結果的には、仕事として分けてしまうと少しずつの発展性がないように感じていた。政策評価の導入が、単に仕事が増えるとか、データを集めてよい結果だけ集めようとすることではない方向で進むことを非常に強く望んでいる。
 質問もあるのだが、例えば、この中で想定以下であったとか、幾つか評価の結果が出ているものについて、そこが重要だとは私は思っていて、その結果どういうふうに進展させたのかなどの情報というのは共有化されているのか。または、その辺が開示されているのかどうか、一つお伺いしたい。
 もう一つは、よくなかった結果が出てしまった関係者の方々が、かえってよい数値を出すような方向だけに努力をする団体にはなってほしくないと思う。その辺りも含め、内部の方々は、これが導入されてからどのように動いているのかが一つ気になったところである。
 あと、星野委員がおっしゃった分科会については、これだけ膨大なものがあるので、私も今日初めて拝見させていただき、いくら速読をしても読み込めない部分もある。正直、得意な分野と得意ではない分野がそれぞれあるのではないかと思うので、するならばそういう形も効果があると感じた。
 最後に一言、私は目標というのは生き物だと思っている。環境であったり、進捗状況によって常に見直しをすべきものであったりと思っており、中長期の目標の中で定めたものとの実施面での微妙な対応が必要だと思う。その辺のこれからのあり方というものを今後の議論の一つに入れていただければ幸いである。

【木村評価室長】 想定以下だった場合、どういう対応をしているのかということについては、例えば、確かな学力の向上の中で、教員1人当たりの児童生徒数をOECD諸国並みの水準へ改善を進めるということを一つ設けておりました。
 達成目標でいう2−1−3というものがあり、こちらで、教員1人当たりの児童生徒数をOECD諸国並みの水準へ改善を進めるというところがあって、要は教員の人数を増やすべきではないかということがあった。
 これは残念ながらなかなか進捗していないということで、想定どおりには達成できなかったという評価をしている。
 そうであれば、今後、人数を増やさなくていいかというと、当然そういうことはなく、我々としてはそういった努力をしていきたいと考えている。
 一方で、公務員の削減であるとか、人件費の抑制という傾向があり、今、政府全体の中で教員の数を増やすことはなかなか困難な状況にある。
 引き続き努力をしていく必要はあろうとは思っているが、今後も改善に向けた可能な範囲での努力をしていかなくてはならないと考えている。
 改善計画を子供の純減に対して教員の数をあまり減らせない形で、改善を図ってきたわけであるが、なかなか難しい状況にあり、想定以下だったからといって、もうやめてしまうというものでは必ずしもなく、一方で、来年できるかというとなかなかそういう政府全体の環境がそういうことにない。
 今後5カ年は抑制傾向ということもあるので、そういった状況を見ながら、できる限りの対応を我々はやっていかないといけないということは、部内でいろいろ議論して、あるいは関係の方々とも話しながらやっていくということかと思っている。
 分科会の話については、星野委員からもご提案があったが、今後どういうやり方で評価を進めていけばいいのか。しかも、今回、事前に資料を送付した中で、必ずしも十分な余裕を持って送れなかったかもしれないので、今後できるだけ時間的な余裕を持って見ていただける連絡の仕方を検討していきたいと思っている。
 あとは、評価について見直しが必要だというのはごもっともなご指摘であり、実際の具体の評価の実務以外に、評価のあり方とか、基本計画にかかってくるようなこともあるかもしれない。
 それについても、ご意見いただければ、引き続き、我々としても見直しをして、基本計画、あるいは実施計画を直す必要があれば、本日ご意見いただいたものを踏まえ直すようにする。
 それ以降においても、いただいた意見を踏まえて直すべきものは直していくというふうに考えている。

【河野委員】 先ほど一つ申し上げ忘れたが、プラス方向のものについて、何か一つやった結果、結果はそこそこであったれども、それ以外の副産物の効果が得られたような、例えば、数学や何かの力を上げようと思ったら、それをリタイアしたサラリーマンたちが応援してくれて、団塊の世代の居場所ができたなんていうことが、生涯学習であると思う。
 そういうものは、適切に後から評価されるのだろうか。結構副産物が多いと思っているのですが、そこが出てこないのが文部科学省のもったいない点ではないかと思ったので、お伺いしたい。

【木村評価室長】 その点については、評価基準の設定の仕方にまず問題があろうかと思う。
 評価指標、あるいは評価基準という形ではかろうと思えば、副産物も含めてはかることができるし、事業の結果よい他の波及効果が出た場合についてはアウトカムとして、事業が本来目指したものという意味でのアウトプットでは、目指していないにしても、アウトカムとしてそういったことも生じたということであれば、施策自体云々というよりも、次のところでもっと増やしていくとか、より斟酌していくとか、直接的な目的とした事業を進めていくとか、そういったことを来年度の政策への反映につなげていけるのかなと感じている。
 今の実績評価も、単に施策がうまく進捗したかどうかだけではなくて、次年度以降の政策評価への反映という欄を設けて書いており、波及効果的なところについては、そういったところで斟酌をしながら、それ以降の政策につなげていくという仕組みを考えている。

【高祖座長】 そういう政策が予算と絡んでくる、つなげていこうというところが基本であると考えている。

【宮部委員】 総合評価について、研究成果を特許化するということは、すごく大事な話で、研究成果が特許化されて初めて事業的な価値が出てくると言ってもいいと思うので、そういう意味では、最近、大学での特許の意識が非常に高まってきたということはものすごい進歩だと思う。
 一方で、産学連携という観点から考えると、大学で生まれた研究成果が事業を通して社会に還元することが産学連携の使命かと思って日頃やっているが、産学連携の観点でこの評価を見たときに、評価以前の問題であるが、2ページのモデルそのものに少し課題があると思っている。特許そのものを実施しない大学が特許を持ち続けるモデルになっている。
 もちろんこういうモデルがあってもいいと思うが、例えば、共同研究、委託研究が生まれた段階で、特許を企業に譲渡してしまうとか、権利取得した後で譲渡してしまうとか、そういうパスもモデルの中に入れておくべきだと思う。
 それはどういうことかというと、21ページに特許出願経費というものがあるが、出願時の経費だけではなく、特許を維持することに関してはすごく経費がかかる。ここには書かれていないが、特許の係争費用はもっとかかる。
 例えば、特許化されたものをつぶしにかかられる、それに対してどれだけ訴訟費用をかけて守るのか。その特許と紐づけされた事業との関連でもって、どれだけ訴訟費用なり係争費用をかけて守るのかという判断がやはり必要になってくる。
 だから、出願まで、特許を生み出すところと特許を維持するところとでは全然フェーズが変わってしまう。
 したがって、大学が特許を持ち続けるという道ももちろんあっていいが、早い段階で譲渡するということも、企業から見たら奨励していただいて、適正な対価で譲渡することも奨励していただけると、そういう意味で2ページのモデルをもう少し検討いただいた上で評価をしていただかないと、ちょっと混乱が起きるのではないかと思っている。それだけは意見として、申し上げさせていただきたい。

【上田課長補佐】 ご指摘の点、大変重要だと考えており、ライセンスという形態もあり、また、特許譲渡という形態もある。ぜひとも評価の方に盛り込んでまいりたいと考えている。

【星野(芳)委員】 1点目は、今の総合評価について、資料2−6の3ページと、実績評価書の237ページを見比べていただきたい。237ページの施策目標の説明と、今回の総合評価と政策体系との関係がどうもよくわからない。
 要するに、今回の総合評価によって、来年か再来年の実績評価がどのようにレベルアップするかを明確に意識してほしいし、3ページを書いた人が237ページの施策目標の振り返りをやっているかどうか、ちょっと心配になった。
 せっかく研修を受けていただいているので、しっかりと担当者の間で引き継ぎをやっていただきたい。
 2点目は、今回の話は、施策ごとにタイミングや目標設定の仕方が違う。施策ごとに主管課長を決めているので、ぜひ施策の主管課長には、19年度の政策評価をどのように運営していくかということについて、今回の実施計画に基づいて、施策の特性に合わせたスケジュールを作成してもらい、この有識者会議の中でも、これには意見を言いたいという方もたくさんいるので、施策についての担当制度を設けて進めていただきたいと思っている。
 大変かもしれないが、これは説明責任ということにもつながるので、できる限り施策の特性を踏まえて、政策評価を回していく。Plan Do Check Actionと言っていますが、回していくことにつながるので、ぜひそこはやっていただきたい。

【鈴木委員】 目標の数値化については、冒頭、私はぜひ進めてほしいという話をしたところだが、後ほど数値化できないこともあるのではないかというご意見もたくさん拝聴した。そういう意味では、何が問題なのかを明確にするために、つまり状態Aを状態Bにしたい、状態Aはどういうことなのか、何が問題なのかということを明確にするためには、やはりできるだけ数値化した方がいいということを望んでいる。
 今回、この委員会の中で、私は「目標は数値化すべきだ」ということで一貫していこうと考えている。
 それと、先ほどPDCAの話が何回も出ましたが、達成目標の2−1−1のところで、先ほども皆さんご覧になったと思うが、うまくいっていることだけではなく、目標達成していなかったことも評価として記入しているということの事例でお話しされていたが、これがPDCAのサイクルでなぜ達成できなかったのか、これを達成するためにはどうしたのかという流れがこの後どうなっているのか、ちょっとご説明いただきたい。その部分がないと、評価の中でPDCAが回っているとは言えないと思う。

【大金初等中等教育企画課課長補佐】 先ほど評価室長の方からもご説明があったとおり、これは平成13年度を基準年度とし17年度までということで、教員1人当たりの児童生徒数を、OECD諸国並みの水準に改善を進めることを目標として立てていた。
 その後、政府全体の中で、骨太の方針等で、教職員の定数について、子供の数に応じた削減を行うこととし、具体的には今後5年間で1万人程度の純減を確保するという閣議決定が行われているという、政府全体の方針がある。
 そういった中で、例えば、特別支援教育や食育の推進といった集中的な対応が求められているところには、別途、緊急的な定数措置を図っている状況であるが、5年間の政府全体の方針があることもあり、そういったところを見ながら、できる限りの対応をしている状況である。

【鈴木委員】 例えば、17年度実績があれば18年度実績があって、19年度計画があって、こういう流れの中で一通り見られると、我々としても評価の方法が、全体像がわかると思ったのでご質問申し上げたが、今の説明では個別になり過ぎて、ちょっとわかりづらかった。私はそういう視点で勉強させていただきたいと思う。

【高祖座長】 多くの貴重な意見を本当にありがとうございました。
 文部科学省の各部局におかれては、本日出していただいたさまざまな意見を踏まえながら、引き続き、基本計画、実施計画、また、今出たPDCAのサイクルをどう生かしていくかということも含め、さらに精度を高めるようなご尽力をお願いしたい。
 これで本日の議事を終了させていただくが、文部科学省の政策評価の質を向上させるために、今後とも有識者会議として、積極的に助言をしてまいりたいと思っている。
 今日、まだ言い足りない点もあったかと思うが、お考えを少し整理していただき、次の会、あるいは、個別に直接事務局宛にご意見をお出しいただいても結構なので、ぜひ委員の皆様のご協力をお願いしたい。
 これをもちまして、本日の会議を終了いたします。ご協力ありがとうございました。

─了─

(大臣官房政策課評価室)


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ