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政策評価に関する有識者会議(第16回)議事録

2006年8月1日議事録

1. 日時
  平成18年8月1日(火曜日)10時〜12時15分

2. 場所
  東京国際フォーラム ガラス棟G602

3. 議題
 
(1) 文部科学省実績評価書―平成17年度実績―(案)について
(2) その他

4. 配付資料
 
資料1−1   文部科学実績評価書―平成17年度実績―(案)(概要)
資料1−2 文部科学省実績評価書―平成17年度実績―(案)
資料2 実績評価、事業評価の今後のスケジュール

5. 出席者
 
(委員) 古賀座長、浅井(経)委員、浅井(彰)委員、大窪委員、川邊委員、高祖委員、杉山委員、田中委員、田吉委員、中西委員、平澤委員、藤垣委員、美山委員、室伏委員、ゼッターランド委員、横山委員
(事務局) 近藤文部科学審議官、金森総括審議官、藤田政策評価審議官、田中大臣官房政策課長、木村大臣官房政策課評価室長、田中大臣官房政策課評価室室長補佐、渡辺大臣官房国際課長、森文教施設企画部施設企画課文教施設環境対策専門官、西田生涯学習政策局政策課課長補佐、大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、小松高等教育局高等教育企画課長、戸渡科学技術・学術政策局政策課長、竹内研究振興局振興企画課課長補佐、渡辺研究開発局開発企画課長、北風スポーツ・青少年局企画・体育課体育官、岸本文化庁政策課課長補佐

6. 会議の概要
  (1)文部科学省実績評価書―平成17年度実績―(案)について

 事務局より、「文部科学省実績評価書―平成17年度実績―(案)」について説明が行われ、続いて、質疑・意見交換が行われた。

【古賀座長】 これから第16回文部科学省政策評価に関する有識者会議を開会したい。案内申し上げたように、今日の主議題は1つ、17年度の実績報告書について。

【田吉委員】 施策目標2−1の「確かな学力の育成」についての評価について意見を述べさせていただきたい。
 まず第1点目は、ほかの施策目標とのクロスの評価が必要ではないかということ。「確かな学力の育成」については、生活習慣や学習習慣が十分に身についていないことに課題があるとのコメントがあったが、施策目標1−3の「家庭の教育力の向上」とのクロスの評価が必要になってくるのではないか。また、1−5の「ITに関連する教育・学習の振興とITを活用した教育・学習の振興」とも大いに関係があるのではないかなと思う。
 第2点目は、朝の読書や少人数・習熟度別の指導に取り組んでいる実施校数等について目標を掲げ、一定の成果があがっているようだが、例えば朝の読書をとってみても、全学年でやっているのか、あるいは、全期間でやっているのか、週あたり何日やっているのか等々、量についてもさらに細かい違いがあるし、さらに、どのような成果があがっているのかといった質の問題もあるのではないかと思う。また、少人数・習熟度別の指導についても、幾つの学年でやっているのか、あるいは、幾つの教科でやっているのかといった細かい分析も必要だと思う。
 量的なものでも細かなもの、さらには、質的なものを評価に反映させることはかなり難しいことだと思うが、質的な調査については、いろいろな機関でやっているので、そういうものを反映すればいいと思う。ただ、政策評価として馴染むかどうか、その辺が難しいが、「確かな学力の定着」を測るという評価が、実態と結びつくかどうかの分かれ目になるのではないかと思っている。
 第3点目は、全国的な学力調査が行われるということであるが、今後の活用により、現場の教育力、子供たちの学習力を変えていくものにつながればいいなと思っている。

【古賀座長】 施策のいろいろな関係を見ていかなければならないという指摘と、量的な評価結果だけではなくて質的な問題についても重視すべきだというお話だったと思う。また、学力の調査についてのご要望もあった。

【大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐】 他の分野とのクロス集計ができないか、あるいは少人数、朝の読書等については、質、量ともに評価項目の工夫をという指摘であった。確かに、質を評価することについては、難しい課題があると思うが、引き続きよりよいものになるように改善していきたい。
 また、確かな学力と学力調査との関係についても、今、有識者の方々から成る会議の指摘も踏まえ、調査内容等を具体的に詰めている。活用の仕方についても、よりよいものになるよう、引き続き検討していきたい。

【古賀座長】 アウトプットとアウトカム、量と質について言えば、朝の読書をやったことがほんとうにどれぐらい読書家を育てたとか、学力が本当に上がってきているのかといった問題もあると思う。

【川邊委員】 3点ほど発言したい。
 1点目は、2−1−3の「教員1人当たりの児童生徒数をOECD諸国並みの水準(小16.5人、中14.3人)へ改善を進める」ことについては、「想定どおり達成できなかった」と判断されている。
 平成13年度に、第7次教職員定数改善計画がスタートした時点では、指標とするOECD諸国の教員1人当たりの児童生徒数は、小学校18.6人、中学校14.4人であり、わが国の状況は、小・中学校ともにプラス2.5人の差であったものが、改善計画の最終年度である17年度には、その差が小学校1.3人、中学校1.1人へと縮まっている。13年度と17年度を見ると、小学校21.1人だったものが19.9人へ、マイナス1.2人、中学校は17.1人から15.7人へと減少し、1.4人マイナスとなっている。これは、児童生徒数の減少傾向の中での教職員定数改善への努力の成果として評価したい。
 しかし、OECD諸国の2005年の数値を指標とすると、「想定どおり達成できなかった」と判断するところとなる。「改善計画5年目として改善の進捗は見られるが」と表現しているが、その状況について具体的に説明がないのは、政策の実績評価において努力の成果が理解されにくいのではないか。
 年度毎に変化していくOECD諸国の数値を指標とすること、5カ年の定数改善計画の数値とをどの様に評価に生かしていくか、検討する余地があるのではないか。
 大事なことは、「基礎学力の向上に、きめ細かな指導を目指して、教職員の配置を充実させていくことにある。残念なのは、第7次計画では、2万5,000人程度の教員配置増であったが、本年度からスタートした第8次計画では1万5,000人、しかも初年度については、第7次が2,500人、第8次では1万5,000人、しかも初年度については、第7次が2,500人、第8次では1,000人とトーンダウンしていることだ。特別支援教育を平成19年度からの推進という課題もある。公務員の定数削減等々の問題も影響しているのか、その辺りのことを少し伺いたい。

【古賀座長】 今の件については、予算との関係、定員削減、いろいろ問題があると思う。

【大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐】 現状について申し上げると、昨年度まで、第7次の定数改善ということで計画的に改善を図ってきた。平成18年度以降の教職員配置のあり方については、中教審答申等を踏まえて、18年度の要求として第8次の計画ということをお願いしていたわけだが、今の非常に厳しい財政状況の中で、総人件費の改革もあり、平成18年度については、第8次の定数改善計画は策定しないことになった。18年度の教職員定数の純減については、児童生徒数の減少に伴う自然減で、1,000人減になっている。あと、合理化減ということを条件に、特別支援とか食育の充実という今日的な教育課題に対応するため、329名の改善増が認められたが、文科省では、現場が抱えているような今日的な諸課題に迅速に対応できるように、今後とも必要な教職員定数の確保に努めていきたい。

【川邊委員】 確かな学力ということが問われている中で、例えば少人数指導が的確に行われるとか、子供の学習の達成の状況に応じた指導体制ということになると、学級の担任だけではなくて、プラスアルファの先生が配置されることによって一層きめ細やかな充実が図れる。食育も特別支援教育も大事。それと、通常の学級における子供たちの指導の充実という観点から、きめ細かな教育の充実を目指すという趣旨については堅持していただきたい。

【室伏委員】 達成目標の1−2−1の「多様な学習活動の機会や情報提供、様々な機関・団体が連携することにより、地域における学習活動を活性化させ、地域における様々な現代的課題等に対応するとともに、総合的に地域の教育力の向上を図る」について。教育というのはやはり国の責任であると思うので、地域の教育力を向上させることについては、ぜひ国が地域社会や他の省庁とも連携して進めていただきたい。地域文化、それから地域の産業や地域医療などというところにまで視点を広げた形での地域の教育力の向上を目指していただきたいと思う。
 それから、教員定数については、これはやはり数だけではなくて、教員の教育環境の整備とか教員の研修制度というものをますます充実させていただくことが重要ではないかと思っている。それも地方に委譲してしまうのではなくて、あくまでも国の責任という考え方のもとで進めて欲しい。
 それから2−1−4の「英語が使える日本人を育成する体制を確立する」とともに、海外の人たちとの交流についても大変重要だと思っている。英語教育については、我が国の言語体系がきちんとつくられた上でなされるとともに、ある一定の年齢からは英語に親しむことが重要だと思う。
 実は、昨日まで、国際サイエンスキャンプに高校生を連れて参加していたが、子供たちが英語でどんどんディスカッションをしたり、いろいろ交流を深めていくのを見て、やはり英語力をつけるということ、小さい頃からの海外の人たちとの交流を図っていくことの重要性を実感した。
 もう1点、3−2の「大学などにおける高等教育の推進と私学の振興」については、大学でのいろいろな基盤整備を図ることがうたわれている。現在、教育や研究に関しては、競争的環境が非常に強く言われていて、そうした競争のもとに大きな資金が動いているという状況があるが、やはり大学における教育研究というのは、子供たちの教育研究と同じように、非常に長い視点で考えなければいけないものであると思う。壊してしまうのは簡単だが、新しくつくることは非常に難しいということをよく考えた上で、基本的な学問研究を守るという姿勢を貫いてもらいたい。
 そのためには、ある一定の資金をプールし、いわゆる現代の競争からは置いていかれたようなところでも、将来的には非常に重要なものもあるので、そういったことをぜひ守っていただきたい。

【古賀座長】 地域の問題、それから、特に教職員の質のご指摘だった。いろいろ施策を打たれつつあるので、その辺のこともお話しいただければと思う。

【大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐】 教員の質の問題について、指摘があった。その問題は、2−7の「魅力ある優れた教員の養成・確保」だったと思うが、評価の項目の中にも掲げている。また、この7月には、中教審で教員養成・免許制度のあり方について答申が出ているので、そういったところも踏まえて必要な制度改正を行うなど、教員の質の向上について、引き続き取り組んでいきたい。

【古賀座長】 3本柱、例の免許更新と、教職、専門職大学院、それから教育課程の改善について。

【大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐】 指摘があったように、中教審の答申では、教育課程の質的な向上、教職大学院、免許更新制の導入と大きく3本の柱がある。
 まず、教育課程の質的向上については、中教審の答申の中では、教員としての使命感を持って教科指導、生徒指導等を実践できる資質、能力を確認できるような、教職実践演習といったものを設けてはどうかといった指摘や外部評価、第三者評価といった教職課程の事後評価制度の導入といったことについての提言もいただいている。
 また、教職大学院制度については、より高度な専門性を備えた力量ある教員を養成する。あと、教員養成課程のモデルとなる、教員養成に特化した専門職大学院という形での教職大学院制度の創設が提言されているが、具体的には2つの機能、つまり、より実践的な指導力を備えた新人教員の養成、現場職員を対象としたスクールリーダーの養成といったところを主な目的としている。
 また、免許更新制の導入についてもご提言をいただいているが、養成段階を修了した後も必要な資質、能力を確保できるようにということで、免許状に一定の有効期限を付して、有効期限の到来時に知識、技能の刷新、リニューアルを図ることを目的としたものとしている。具体的には、この答申を受けて、必要な制度改正に向けての検討を行っている。

【古賀座長】 ほか、高等教育からコメントがあれば。

【森文教施設企画部施設企画課文教施設環境対策専門官】 現時点における競争的な研究分野だけでなく、息の長い教育研究の分野についても長い視点をもって整備を進めることについては、重要な点だと思っているので、大学における高等教育の研究基盤の体力が落ちないように、整備を続けていきたい。

【高祖委員】 政策目標3について、少し申し上げたい。
 3−1−2の「法科大学院をはじめ、各種の専門職大学院における教育内容・方法の開発・充実等を図り、高度専門職業人の要請を推進する」における達成度合いの判断基準が、ここでは、法科大学院等専門職大学院形成支援プログラムに申請を行った専攻が申請対象となる専攻の何パーセント以上かという、いわば申請数で判断している。確かに一つの全体的な指標としては大事かと思うが、申請数だけで見るだけでなく、指標のとり方に工夫が要ると思う。
 今年、完成年度を迎えており、現在、実地調査が行われている。近々また認証評価も行われるので、きめ細かな指標がとれると思うが、例えば授業評価の問題とか成績評価の問題、成績評価もただ形式的な問題ではなくて、A、B、C、Dの評価の割合が実際どうなっているか、そういった中身を見ていくことが同時に要るだろうと思う。
 それから3−3の「意欲ある学生への支援体制の整備」については、非常に国家財政が厳しい中で、奨学金を確保し、充実を図っている点については、非常に感謝している。日本学生支援機構、あるいは日本国際教育支援協会ともかかわりある作業だと思うが、それに関連する会議に出ると、一つの懸念材料として出てくるのが、貸与したお金をどうやって回収するかという問題であり、回収できない率がだんだん高まっていることが問題となっている。そうすると、国家財政が厳しい中で回収をどうするかというあたりのことも同時に考えておかないと、奨学金の資金の基盤を突き崩すということになりかねない。この施策も、これだけお金を出しましたということと同時に、回収に向けた施策も同時に視野に入れ、その辺についての指標も同時に押さえておく必要があるのではないかと思う。
 それから3−4の「特色ある教育研究を展開する私立学校の振興」については、3−4−1の「私立大学及び私立専門学校における教育又は研究に係る経常的経費に対する補助金の割合を高めるため、経常費補助等のより一層の充実を図る」と3−4−2の「私立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園の教育に係る経常的経費に対する補助割合の向上を図るなど、経常費補助等のより一層の充実を図る」がある。経常費の助成予算額あるいは補助金の割合ということで、「大幅」、「いずれも増加」となっているが、もう少し定量化した指標を考える必要がある。
 それに加え、3−4−1と3−4−2については、OECDの調査によると、高等教育のほうに日本が全体で出しているお金はほかの国とあまり差がない。ただ大きな差があるのは、私人の負担分がものすごく大きいというパーセンテージが出ている。その辺の指摘もこの指標の中に取り込んで、その推移がどうなるかということを見る必要がある。
 同じようなことは、国庫補助のGDP比で、大体先進国は1パーセント出しているが、日本は0.5パーセントと言われている。ほかの国との比較みたいな指標も参考として入れておくほうが、より適切な政策評価ができるのではないか。
 最後に、3−4−5の「学校法人に対する経営改善支援の充実を図ることにより、社会・経済情勢の変化に伴い、厳しさを増しつつある経営環境の中、学校法人が自ら経営努力を行うことを促す」については、想定どおり達成しているということを2つの視点から見ている。1つは、大学法人の総負債率がだんだん減少しているという点、もう一つは、帰属収入で消費支出を賄えない文部科学大臣所轄学校法人の割合が少しずつ減ってきている点。これはこれで、全体的な傾向を見るには大切な指標だと思う。
 ただ問題なのは、割合の低下が学校法人のどの層で起こっているのかというところを見ないと、全体が下がっているからOKとは言えない。つまり、非常に安定的、健全な経営体質のところが減らしたのか、あるいは、定員が足りなくて、経営上、非常に苦労しているところが減らすことに成功したのかといった、学校法人の幅をもう少し細かく見るような指標を中に入れないと、この施策がうまくいっているかどうかと見るには少し大ざっぱ過ぎると思う。

【古賀座長】 大変評価にかかわる、評価の指標のとり方、評価の視点について大変重要な指摘があった。

【小松高等教育局高等教育企画課長】 まず、専門職大学院等、特に法科大学院については、現在までのところは、まさに立ち上がりであり、指標のとり方についても工夫してやっている。実地調査等もあり、また、大学団体のほうでも自発的に事業評価等を行って整理している段階に差しかかっているので、それを踏まえて、さらにしっかりとした評価ができるような指標をたてられないかどうか検討していきたい。
 それから、奨学金の件については、今までの指標ではどのぐらい貸せるかということが中心になっていたが、これからは、回収にも目を向けて両輪で回すべきではないかというご指摘かと思うが、学生支援機構で数値等を掲げて回収の目標等をつくるとともに、機構としてどうするかということも一応決めてやっており、確かにその実績等も上がってきているので、どういうふうにすれば政策目標として達成されるかということを考えていく余地があると思う。
 3点目は、私学助成に絡みつつも、国公私を通じて高等教育をどのように支援するかということと絡んで、かつ、大学というか、高等教育については、とりわけ国際的なコミュニティーとしてどのような政策姿勢をとるかということが世界的に注視されるということもあると思う。そういう意味においては、OECD等の動向なり、信頼性のある数字でどの辺にいるのかということを含めて見られるようにすべきで、政策の評価に使っていくのも確かに非常に有効なことかと思うので、先ほどの指摘は、個人なり民間でどのように出しているかということと、GDP比に対する公費支出ということでありが、両面にわたって取り入れられるものがないか検討してみたいと思う。
 4点目については、きめ細かな私学助成を考えていく上で重要であることから、何ができるか考えてみたいと思う。ただ、独立行政法人としての私学事業団で、情報を各大学から集めているので、そういった形で見ていかなければいけないと思うが、その際に当然、私学の自主性があり、これとの関係で、私学事業団が私学から協力を得ながら、それぞれの指標をいただいているということがあるので、そのバランスをよく見るとともに、適切さを欠かないようにやらなければならないと思う。この点についても、何ができるか私学事業団ともよく相談しながら、私学の自主性を尊重した形で行っていきたい。

【川邊委員】 2−2−2の「全国の小・中・高校における7日間以上のまとまった体験活動や、人権感覚を身につける教育を推進する」について、評価としては、「一定の成果が上がっているが、一部については想定どおり達成できなかった」となっており、「5現状の分析と今後の課題」の「達成目標期間全体の総括」の中で、「さらに、豊かな体験活動推進事業の指定校の状況を見ると、長期宿泊型の体験活動が十分に行われていない状況にあるため、今後は長期宿泊型体験活動をはじめとする体験活動を充実していくことが必要である」と指摘しているが、特に日数が小学校でも減っている。中学校においても7日以上の体験活動は達成していないという状況にある。
 指定校の数は増えたけれども、なかなか宿泊日数は増えない。いわゆる長期にわたる宿泊体験というのはどれほど子供たちの人間形成上の価値があるのかというあたりを一層強調していく必要があるのではないか。もう一つは、2−4−3の「自然体験機会を得た青少年の割合を、維持し又は増加させるための取組を推進する」という目標についても、自然体験等を得た青少年が減少傾向にある。
 自然体験あるいは長期の宿泊体験の減少傾向を考えてみると、学校の教育活動としてもなかなかうまくいかない。それから、日常の生活の中で家族と、あるいはさまざまな団体のそうした機会に参加するということもままならない現状について、もし分析しているようだったら尋ねたいとことと、長期宿泊については、「骨太の方針の2006」の中にも、他者への思いやりや命を大切にする教育及び長期宿泊体験などの体験活動の充実ということで、位置づけられているが、内閣官房副長官を中心とする、文科省も含む7省庁の副大臣プロジェクト会議でも、都市と農山漁村の交流、共生、対流を一層進めるということで、本年度から11地域を指定してそうしたことを行っていることもあり、一層の充実策を図っていただきたいと思う。

【壹貫田初等中等局初等中等教育企画課係長】 文部科学省としても、自然体験活動、とりわけ今後、長期の宿泊体験活動は大変重要であると考えている。ご指摘もいただいた「骨太の方針2006」にも、長期宿泊体験活動の重要性の指摘があるので、今後ともその辺に力を入れていきたいと思っている。
 なお、「平成17年度豊かな体験活動推進事業」については、長期宿泊体験推進校は94校であったが、18年度予算においては282校という形で、約3倍程度増やしている。今後とも、長期宿泊体験等々を含めて、体験活動が充実するよう力を入れていきたい。

【浅井(経)委員】 委員として1年がたち、私のほうがなれてきたのか、それとも、先ほど改善点をご説明いただいたように、改善されたためか、随分よくなってきているように思う。政策目標1について、申し上げたいと思う。
 まず、一番最初の1−1−1の「放送大学において、授業内容の質的充実を図るための評価システムを構築する」について、昨年までは学生数を指標としていたが、ほぼ目標を達成したということで、質的な面に入っていったという点が評価できるのではないかと思う。ただ、今は移行段階だから、具体的な指標は立っていないが、質的な向上を図る指標をきちんと設定していただければありがたい。
 それから、施策目標1−3の「家庭の教育力の向上」については、基本目標1−3の判断基準が、非常にうまくできていると思う。国民に対して、事業の充実を図る必要があることの説明になると思う。
 それから1−2−3の「放課後・週末などにおける子ども等の体験活動の受け入れの場を全国的に拡充することにより、地域コミュニティーの充実を図る」について、ボランティアの参加者数等をとっているが、地域の教育力という点で、事業数などは民間に移行するに従って増えているが、レベルが下がっていくのではないかということを懸念している。事業数だけでなく、ボランティアの数を指標としてとっているのはよいと思う。さらに、ボランティアを含めた地域の方々の研修参加者数なども指標にあげていただけると、レベルダウンに歯どめをかけることができるのではないかと思うので、ぜひお願いしたい。
 関連して、逆に、1−2−7の「子どもたちが地域の特色ある様々な文化に触れ、体験するプログラムを作成し、実施する」については、地域の教育力とどのような関連があるのかがはっきり見えてこないので、地域の教育力を高める観点で指標を設定していただければと思っている。
 それから、1−2−1の「社会教育施設が中心となった社会教育の活性化のための先駆的な事業の実施や評価を一体的に行い、全国的に広く普及することを通じ、自治体における住民ニーズの把握や事業評価等を通じた課題解決的な取組みの充実や人権に関する学習機会の充実に向けた取組みを拡充・振興する」と1−2−2の「様々な機関・団体等との組織的連携を通して、地域学習活動や学習成果を生かしたまちづくりや、男女共同参画の促進に関する取組を拡充・振興する」については、指標の立て方で、事業が地域にどれほど定着していくかという非常に難しいことをあげたのは非常にいいのではないか。かなりシビアな結果が出てくると思うが、まさにそこが大事なところになる。

【古賀座長】 お褒めの言葉も含めてあったが、何か省のほうから。

【西田生涯学習政策局政策課課長補佐】 ただいま数点指摘があった点、今後検討していきたいと思うが、特に指標の立て方等についてお褒めの言葉をいただいたので、これからも、自分に厳しい評価をますますしていきたいと考えている。

【浅井(彰)委員】 私は、どちらかというと科学技術のほうからの参加だが、科学技術のほうからも根っこにある教育の問題に大変関心と懸念を持っている。いろいろなご意見が出たが、細かいところより少し総合的なところで意見を述べさせていただきたいと思う。
 今、教育については、教育基本法、それから教育振興基本計画が論議されていると聞いているが、こうした国の根本的な施策に、いかにこの場のような議論を反映させていくかということが非常に大事ではないかと思っており、文科省内での議論、それからいろいろなパブリックコメントなんかも含めて、教育というものに関する今後のあり方を国民的論議にしていかないといけないのではないかなと考えている。
 極めて一般論で当たり前なことではあるが、その中で、新しい政策ということから考えてみると、今いろいろな方々から意見が出たように、教育というものを一つのルーチンであるというように考えるのではなくて、現場での新しい創意とか、必要といったものに発するところの教育における新しい発想、すぐれた創意というものを募って奨励していくような施策が非常に大事なのではないかなと考えていて、科学技術政策に関しては、そういったものを担保するためにいろいろな新しい政策が出てきている。一言で言うと、競争的資金といった性格で、資金でそれを支援しているように思われるが、競争的と言うと言葉がちょっと悪いようなところがあり、言いかえると、すぐれた創意を募って奨励するような制度であるという言い方ができるのではないかと思うが、教育についても、新しい創意、現場における創意を支援するような制度をいろいろ考えてやっていくということが大事である。
 ただいまの国際体験の話にしても、自然体験の話にしても、あるいは高等教育においても、いろいろと創意が必要。しかもそういったところで、場合によっては、学校だけではなくてNPO法人みたいなものを活用した新しい制度を考えてもいいのではないかなと、いろいろと工夫が考えられるが、そういったところをぜひとも新しい制度として立案し、論議していくようなことが必要かと思う。
 最後になるが、そういったすべてのものを、今日いろいろな議論が出たように、評価するということが非常に大事だが、現場にしても評価する側にしても、やはりまだ評価というものを恐れるというか、避けるというか、そういった雰囲気が残っているのではないかと思うし、論議の一番大事なところとしては、なかなか評価というものはできないものだということがあるように思われるが、そういうことに関しても、評価というものをいかに研究していくかということは非常に大事であり、これに対する努力も、新しい工夫の中で大いに考えていただきたいと思う。

【大窪委員】 青少年を取り巻く有害環境の対策ということで、今までは有害自販機といったものを対象とし、地域の活動として取り組まれていたが、今ここに来て、メディアリテラシーを含めた、携帯電話やインターネットを通しての子供たちの安全が必要だということで、17年度においては、15都道府県においてモデル事業が行われたことに関して、まず感謝申し上げたいと思う。私も一都道府県の対策の実行委員長ということで受けた。
 これに関しても、今、子供たちの身の安全ということで携帯電話を保護者が買い与えようという動きと、それを悪意の大人たちが、携帯電話やインターネットで子供たちをターゲットにした事件が多発している。小中学生でも携帯電話の保有率がどんどん増えているので、金銭感覚、友達関係、社会の中でルールを踏まえることを道徳教育の中で取り組むことが必要だと思う。
 法律上の問題とか、機能の問題で保護者や子供たちから相談を受けられたときに、専門に答えられるような責任ある方が地域や学校の中に配置されることを望んでいる。今後、メディアに対する教育を学校ではどのように取り組んでいくのか伺いたい。

【川邊委員】2−5−5の「児童生徒の安全を守るため、学校における安全確保のための取組を推進する」について、「一部については想定どおり達成できなかった」という評定があるが、達成の状況のところで、「防犯教室等の実施状況」という表記になっているが、これは「防犯訓練等」ではないだろうかと思う。さまざまな資料の中でも、「防犯訓練並びに子供の能力を高める防犯教室等(以下、防犯訓練等と言う)」となっているので、いかがだろうかと。
 それから、その下に通学路の安全点検というのがあり、後のほうの資料では、安全点検の実施状況ということがあるが、文科省の調査項目によると、4番のところに安全点検の実施状況、5番に通学路の安全点検の実施状況とありますから、安全点検も「通学路の」というふうに入れられたらどうだろうかと思っている。
 もう一つ、現在は学校と子供の安全・安心は家庭、地域ぐるみでというのがプロジェクトの方向であるし、学校で取り組んでいる中身もそう。文科省の調査の中にもそういう項目があるので、防犯ボランティアの活動を含めた地域ぐるみの安全対策がどこまでいっているかということは、子供の安全を守る上での重要な対策、施策であるので、そういうものを、今年度入らなければ来年度、ぜひ位置づけることが大事。
 それから、何よりも安全教育がまだ遅れているという点。子供の潜在的な危険に対する予知、予測をする能力と危機を回避する能力を育てるのは安全教育であり、安全指導。特に1単位時間の学級で、そういう場面を構成した授業で能力を高めるという点が徹底的に立ち遅れているというふうに私は感じているが、その辺についても十分配慮が必要である。

【古賀座長】 またございましたら後ほど文書ででもいただけるとありがたいが、これまでの意見に対して、省のほうとしてコメントをお願いしたい。

【大金初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐】 情報のモラルの育成は非常に重要な課題だと思っている。文科省の中でも、小中段階で学習指導要領に基づいて、発達段階に応じて体系的なカリキュラムという形で取り扱っている。特に小、中、高等学校すべての段階で、各教科の指導におけるICTの活用に関する情報モラルについての配慮が必要と位置づけている。また、中学校、高等学校の段階では、情報活用能力の育成を目標とする必修の教科を設け、この中で情報モラルについて取り扱うとしている。

【古賀座長】 それでは、三委員からのいろいろ有益なコメントがあったと思うが、受けとめていただきながら反映していただきたいと思う。
 案の定、教育で50分ばかりかかったが、まだ3つしかやっていない。次に、科学技術があるが、ゼッターランド委員が途中退席されるので、1つ飛ばして、7のスポーツ振興を先にやらせていただきたい。

【ゼッターランド委員】 「平成17年度の達成度合い」というところで評価が出ているが、これだけ事細かにいろいろなことに分かれて目標が書かれているが、最終的に達成した結果を記すに当たって、メダル獲得率が何パーセントだったか、平成17年度ということで言えば、アテネオリンピックの夏季大会、そしてトリノオリンピックの冬季大会の2つの大会で、「合計するとメダル獲得率は3.22」ということで、「達成したといえる」と出ているが、合わせてしまってほんとうにいいのだろうかということを、現場のレベルと、それから世間の評価ということをもろもろあわせて考えると、どうなのかなという感が否めない。
 実際に、アテネでたくさんメダルをとったということは非常にすばらしいことで、おそらくご覧になっていた皆さんもとてもうれしく、皆さんに元気を出していただける一つのきっかけになったし、そこに貢献できたということは大いに言えると思うが、成功したアテネの次の北京は本当に大丈夫なのか。現場では、いい結果が出た後、それが継続できるかという不安は常につきまとっている。今度は逆に、トリノで金が1つ、これだけでもすごいことだと思うが、現場としては非常に落胆することも大きいし、世間の評価でいくと、そんなに勝てないのだったら送っても意味がないのではないかという評価が出たりするわけ。
 でも、こういった形で、合わせるとメダル獲得数は達成できた。これは考え方、認識としては大きなずれがあるんじゃないかと思う。国民は、我々が税金を払って、その税金であんたたちはオリンピックへ行っているのだから、結果を出してくれないと困るよという気持ちもかなり大きいと現場では認識している。だから頑張ろうというふうになっていくわけだが、実際に評価を出していくに当たって、特にトップレベルのスポーツであるからこそ厳しい結果、細かく分けての評価が必要になってくるのではないかなと思うので、このところはもう一つ考えてもらいたいと思う。
 もう1点、トップスポーツの強化、それから地域スポーツの普及・発展ということではかなり力が入ってきていると思うが、トップスポーツとか広域スポーツにかかわっていると、学校スポーツのほうはどうなのかということに、随分このところ私自身、懸念を抱いている。実際にこれまで学校スポーツがトップスポーツに対して果たしてきた役割というのは非常に大きかったと思うが、その役割がだんだん不明瞭になってきたという感じを受ける。
 こういった中で、例えば公立の学校の体育あるいはクラブ活動にどれだけ力を入れることができるか。これまでエリート養成校とか私立の学校のほうが大会に強いが、だんだん、お金をかけられるところは競技が強くなるという、よくもあり悪くもある一つの傾向が出てきていると思う。かつての日本のスポーツを支え、大きな役割を果たしてきた公立学校の中でのスポーツが、今後どういうふうに位置づけられるか、どういう指導者が出てくるか、これは少子化に伴う問題だけではない。そういったところを今後どうしていくかということも一つの課題なのではないかと思う。

【杉山委員】 今、ゼッターランドさんが7−2について中心に話しされたので、7−1の「生涯スポーツ社会の実現」と7−3の「学校体育の充実」に対する感想を申し上げたい。
 生涯スポーツ社会の実現をうたった「スポーツ振興基本計画」が平成13年に打ち出されている。そう言いながらも既に5年たって、今年は中間年で、確か見直しを進めていると思う。その結果というか、それを重ね合わせて、平成18年度は新たな評価、新たな展開ができるものだろうと一つは思っている。
 平成17年までの経過については、ここに書いてあるものに対して、私自身は、7−1と7−3に関しては、そう異論を持つ者ではない。ただし、7−1、7−3の中で、生涯スポーツや学校体育の指導者に地域スポーツの関係者、例えばプロ野球選手のOB、JリーガーのOBといった人たちの活用というのもかなり促進されているが、どうしてもその人たちは上達させるためのコーチであり、スポーツを好きにさせるコーチというのはなかなかいない。これは、生涯スポーツと学校体育の中で非常に欠陥になると思う。
 また、タウンミーティングという子供たちのキャンペーンに参加すると、出ている有名スポーツのアスリートたちから聞くのは、どうやったらうまくなるかという話ばかり。スポーツを好きになるということに対してもうちょっと一生懸命やっていかないと、生涯スポーツ社会と学校体育は充実しないと思う。
 それから、スポーツと体育の場合は、この評価の中では2−5の「健やかな体の育成」に、体力の問題とか子供たちのスポーツというものが去年から分かれているが、このことについても、僕自身が子供の体力がなくなると言い始めた頃の子供たちが、そろそろ20、25、30歳ぐらいになっているのではないかと思う。体力がなくなったピークから下降線をたどった成人たちが、一般社会において子供時代に体力がなくなったことがどういうふうな影響を与えるか、それも連結して考える時が来ているのではないかと思う。それは、体育、スポーツというものの中で、いろいろな地域のスポーツクラブとかそういったところからレポートをもらえばいいと思っている。
 ゼッターランドさんと重ならない部分で、そのような印象と感じを持っている。評価全体については、7−1と7−3については、進行途中ということもあるが、順調な展開をしていると思う。これから後5年間というのは質が問われるのではないか。

【古賀座長】 ご両人から大変重要なご指摘があったと思うが、このお二方のコメントについて何かあれば。

【北風スポーツ・青少年局企画・体育課体育官】 まず、達成度合い、メダルの獲得率について、本当に国民が望むところを達成したと言えるのかについてだが、これは以前から指摘があり、内部でも検討しているが、なかなかこれにかわる新しい指標というものを考案することが、現在のところできていない。引き続き、より正確な評価ができるような指標といったものの検討に努めていきたいと思っている。
 また2点目で、学校における体育活動、スポーツの充実について指摘があったが、さらにスポーツ活動との連携も含めて、引き続き検討していきたいと思う。
 後半、お二方目の最初の話で、スポーツ基本計画の見直しについては、ちょうど分科会のほうで審議が終わったところで、現在パブリックコメントを求めているところだが、今回は、スポーツ振興のための子供の体力の向上といったところに焦点を当てた形で基本計画の見直しを考えていて、9月にも、その方向で見直された基本計画をお示しできるのではないかと考えている。
 また、技能の向上だけではなくて、好きにさせる、意欲を高めるということについて、もっと意を用いたらという指摘だったと思うが、この点についても、内部で、意見の趣旨を踏まえて検討を続けていきたい。

【古賀座長】 それでは、政策目標7を一応終わって、政策目標4、5、6、科学技術に関するセグメント、「科学技術の戦略的重点化」、「優れた成果を創出する研究開発環境を構築するシステム改革」、「科学技術と社会の新しい関係の構築」について、意見あるいは指摘等をいただきたい。

【横山委員】 2点お話ししたい。
 1点目は、今、科学技術の問題で、研究費の不正受給が大きな問題になっているが、それが全く触れられていないということについて、どういうことなのか説明していただきたい。この問題は、皆さんもご存じのように、総合科学技術会議の前議員だった方が競争的研究資金を不正に受給していたことで、いろいろな問題を含んでいる。例えば重点分野に集中していたとか、不正受給もライフサイエンスの分野だったし、それから、一部の人に集中するのではないかという問題が言われているし、研究者の倫理の問題も絡んでいると思うが、これについては一切ない。
 確かに、この問題をどこかで取り上げるとするとどこの項目に入るのか、私も悩んだ。タイミングも、今がいいのかどうかわからない。しかし問題は、日本の科学技術政策の根幹にかかわる問題かもしれないわけで、それに対して、政策評価に関する有識者会議が何もコメントできないということだと、何のための有識者会議かなという気がするので、その辺のことを1点教えていただきたい。
 もう一つは、先ほども、自分に厳しい評価を今後もやっていくとの回答があったが、私もそうやってほしいと思うが、特に科学技術を見ている限り、そんなに厳しい評価をやっているのかなと思う。ほとんどのところが、「概ね順調」で、評価当局のほうも、評価は「概ね妥当」というだけで、ほとんどこれでいいというようなことが書かれている。そういうところでもう少し自らに厳しくやっていただきたいと思う。
 例えば原子力分野なんかでは、かなりこれまでの経過などを正直に書いていて、私は好感を持ったが、それ以外のところではほとんど、厳しい指摘、自分たちに対して厳しく見るという姿勢が欠けているのではないかと思う。

【古賀座長】 研究費の不正の問題、それからもう一つの、自分に厳しく、これはぜひ省のほうからもコメントをいただきたい。

【戸渡科学技術・学術政策局政策課長】 横山委員のほうから指摘があった第1点目の研究費の不正使用の関係については、17年度の達成目標の中でそういったことを想定しての目標設定をしていないということもあり言及していない。ただ、研究費の不正使用の問題については大変重要であり、私どももしっかりした対応をしていく必要があると思っている。
 この問題については、大学等における公的研究費全般の適切な使用の徹底を図るための対策を検討するために、現在、文部科学省内に対策チームを設置し検討を進めているところであり、現段階においては今後の対応方針等が固まっていないということもあり、平成17年度の評価書の中には記述していないという状況になっている。
 なお、省内の対策チームにおいては、過去の研究費の不正にかかわる事例等も踏まえ議論を進めており、8月には検討結果を取りまとめる予定にしている。あわせて、それも踏まえ、外部有識者の方から成る委員会において、12月を目途に、大学等における監査の実施基準、いわゆるガイドライン等について取りまとめることとしている。
 こういったことを踏まえて、今後どのような目標設定等ができるかといった点について、ご指摘も踏まえて検討していきたい。
 もう1点、科学技術全般についての評価をもう少し厳しくすべきではないかといった指摘については、さらに自らに厳しい評価ということで努めていきたい。

【古賀座長】 厳しい評価が次の施策につながるようになることが大切。甘いとやっぱり施策につながらない。

【平澤委員】 最初に、評価のやり方に関連した話を科学技術を例にして述べたいと思う。
 全体にかかわる話としては、フォーマットの整備が随分進んで、非常によくできてきたと思うが、1点だけ、8の「主な政策手段」のところ、つまりフォーマットの一番最後のところは、政策手段というより、むしろどのような成果が上がったかという文言も入れるべきではないかと思う。
 また、フォーマットは一応できてきたと思うが、その中身を埋めていく文言については、先ほどから、いろいろ議論があったように、まだ問題があると思う。
 まず第1は、施策を展開する部署の施策に対する責任の範囲というのが、どのように目標等に入れられているのかということが明確ではない。願望として目標等を掲げることはあり得るわけだが、評価するという立場から考えてみると、その願望がどうだったかということを評価してみても始まらないわけで、掲げるべきは施策の所掌範囲で、意図的に確実に実現するという内容をあげていただきたいと思う。これは非常に大きな問題になり、それからアウトカムをどのように記述するかということと関連しているわけだが、要するに施策を実施するときの、実施を意図した本質的な内容を掲げるようにということをまず申し上げたいと思う。
 それから、例えば事例的に見ると、4−1の「基礎研究の推進」とか4−2の「ライフサイエンス分野の研究開発」は、決して悪い例としてあげるわけではなくて、随分工夫されているように思うが、4−1だと、目標として掲げてあることは、お金をいかにどれだけ取ってくるかというインプットだけで、どのような成果を出そうとするのかというアウトプット、あるいはアウトカムについて目標に出されていないということ自体、非常に奇妙だと思う。
 にもかかわらず、8のところにはどのような成果が上げられたかということも触れてあるわけだから、むしろプログラムを管理するという立場からいうと、世界水準に達しているのをどの程度上げていこうとするかといったような施策の範囲で、つまり球を選ぶ、プロジェクトを選ぶときの選び方等を向上させることによって、それらは可能なわけだから、そういう点を掲げていただければと思う。
 それから、4−2のライフサイエンスのところで見ると、基本目標として掲げられていることは、「活力ある経済社会の創造に資する」とあるが、こういうことを言われても評価のしようがない。先ほどの責任の範囲から言うならば、活力ある経済社会の創造に向けて具体的に書いていただければ内容はよくわかる。今のような書き方は、4−6の原子力分野のところでは「向けて」という表現であり、最大限頑張るという書き方なので、これまた中身を具体的に書いていただかないといけないのではないかと思う。
 このような改善をしていくということはまだ時間がかかるが、しかしながら、この種の改善が随分なされてきているということは私も認めたいと思う。
 最後に、取り組みの中身に関することで1つ申し上げたい。施策目標6−4「原子力の安全の確保」であるが、ここにあげてあることは、安全の確保に関して、装置あるいは施設上の安全性を確保するということに関連した話が中心ではないかと思う。むしろ今、安全性に関して危惧されていることというのは組織や体制上の問題であって、いかにリスクを回避する組織過程を整備していくかにかかっているだろうと思う。そのようなことに触れずに、「概ね順調」、「妥当」という総合評価になっているというのは、やっぱり私は納得できない。

【古賀座長】 目標設定に関するものと、具体的な個別の問題についての指摘があったが、省のほうからコメント、あるいは回答をお願いしたい。

【川上研究振興局振興企画課長】 施策の目標についてより具体的に示して、それを達成していくということは非常に重要であり、よりそういう方向で検討していきたいと思っている。
 施策目標4−1「基礎研究の推進」については、この中には科学研究費補助金といったような、基礎研究といったところがあり、必ずしもどこまで具体的な目標が定められるかという課題もあるが、ライフのような分野も含めて、全般的により具体的な目標を設定して施策を遂行していくように努力していきたいと思う。

【平澤委員】 基礎研究の質を表現するのはなかなか難しいということは私もよくわかっているが、しかしながら外国ではそれなりの工夫もある。だから、まず所掌しているプログラムの成果に関してのベンチマークをするとか、その中で上がってきたハイライトに相当するようなもの、これは8のところに、成果に書かれている部分もあるわけだが、それをハイライトとして、アウトカムはどういうものが出てきたのかということをあげることは十分できるだろうと思う。
 そういうことから、基礎研究といえどもサイエンスコミュニティーに任せておけばいいのだという話ではない、社会にちゃんと還元されているということが理解されてくるのだろうと思う。

【中西委員】 平澤委員が言われたように、フォーマットで少し改善をしてほしい点がある。フォーマットは、昨年、その前を考えてみると非常にわかりやすくなり、また数値化も多くなり、実によくなってきたと思う。説明図も一枚で非常にわかりやすいが、施策はそれぞれ単年度ではなく長期にわたるので、平成17年度の個々の施策がどの部分にあったかという位置づけが示されるともっとわかりやすいのではないかと思う。つまり、長い大きな施策の中で、昨年は何を目標としていたのか、また全体としてどのくらいが達成されたかということを、もっと説明図を活用し、色分けなど、うまく工夫されるとよいと思う。
 それから、科学技術施策については、予算もかなり増え、またプログラムオフィサーの設置などシステム改革もかなり進んだのではないかと思われる。ただ、少し気になる点は、競争的資金に注意が行き過ぎている面もあるのではないかと思われることである。競争的資金により、トップのすぐれた研究が育ってきていると思う。しかし、研究者や、研究コミュニティーというのは、際立った存在ではない人もたくさんいるということも忘れてはならないと思う。そのような人たちが大学や研究所を通過して、社会に出ていき、一般社会におけるいろいろな技術の維持や向上に非常に役立っている点である。優れた研究を育てる観点から、競争的資金は非常に役立っていいが、人材育成という側面から競争的資金の果たすべき役割についても少し議論しても良いと思う。
 また将来の芽を育むという面から、ばらまきと言われるかもしれないが、もっと助成を薄くても広範囲に行っていくスタンスも大切である。優れた研究と現在評価されるものは是非育てるべきだが、そこだけに目が行くのではなく、助成にあたっては社会全体への影響や予測できなかった将来の研究の芽など、何を助成してきているのかをトータルに考えていってほしい。研究助成を受けた人も受けない人も常に社会に出てきている、そのような人たちを私たちが育てて、かつ研究も育てているというスタンスにも触れていただきたいと思う。

【古賀座長】 フォーマットについても意見があったが、省のほうからは。

【藤垣委員】 2点申し上げたいと思う。お二人からかなり大枠の話がありましたので、少し個別な話を申し上げたい。
 1つ目は、施策目標4−5の「ナノテクノロジー・材料分野の研究開発の重点的推進」について、かなりたくさんの細かい目標が立てられている。ところが、まだ環境影響とか健康影響に関しては不確実な点が多い。これに関して、英国ではケンブリッジ大、ニューキャッスル大、ガーディアン紙、グリーンピースが共同で、例えば市民陪審員制度を設けて議論するとか、あるいは欧州でも各種の審議会が設けられている。米国では、研究費全体の10パーセントが社会影響とか環境影響、健康影響に予算が割かれているが、それに対する日本の状況について考えてみると、達成目標4−5−6の「物質・材料研究機構において、物質・材料科学技術に関する研究開発等の業務を総合的に行うことにより、物質・材料科学技術の水準の向上を図り、国際競争力があり持続的発展が可能で、安心・安全で快適な生活ができ資源循環可能な社会の実現に貢献する」というところで、少し「安心・安全」という言葉が出てきているが、実際のところを見てみると、今後の課題とか今後の政策、反映方針といったところに、こういうことが見えてこない。
 だから、海外の科学技術政策の人から、ナノテクに関して健康影響はどうしているのと聞かれたときに、非常に恥ずかしいと思うので、何らかの今後の対応を考えていただけたらと思う。
 2点目は、施策目標6−3の「科学技術に関する国民意識の醸成」については、非常にいろいろな試みがなされていると思う。ただ、これも欧米の状況を見ると、国民意識に関しては、科学技術の理解、コミュニケーション、リスク判断、デシジョンメーキングの参加と4段階ぐらいあるが、理解のレベルにとどまっているというところもあり、このあたりも意見を伺いたい。

【古賀座長】 ドメスチックな話だけじゃなくて、グローバルな視点でよく比較するようにという大事なご指摘だと思う。2点あったが、省のほうから何か。

【川上研究振興局振興企画課長】 指摘のあったナノテクノロジーの安全性の部分について、申し上げたいと思う。
 ナノテクの安全性についても非常に重要な問題というふうに認識していて、ここであるような、物質・材料研究機構において、まだ細かいナノテクノロジーの安全性については具体的なデータ等がわかっていない部分もあるので、基礎的な部分について取り組んでいるところ。
 また国際的にも、例えばOECDにおいて、各国知見が十分じゃないという認識があるので、情報交換をしようというふうな動きも始まっている。そういうところにも積極的に参加しながら、本件について対応していきたいと考えている

【室伏委員】 まず、政策目標4についてだが、文部科学省の大きな努力で大変大きな科学技術関係予算が確保されていることは、我が国の科学技術政策上、大変よいことだと思う。それと同時に、やはり税金が使われているわけだから、配分の仕方、使用の仕方について、公正性や透明性が保たれるように十分な配慮をお願いしたいと思うし、そのためには、配分方法においてすぐれたPD、PO、あるいはPMなどを育成し、あるいはそういった人たちを雇用するということも必要だろうと思っている。
 それから、政策目標5については、ポスドクの1万人計画が大変成果を上げているというふうに評価している。これはそれでいいのだろうと思うが、ポスドクの人たちの将来のキャリアパスについて、もう少し配慮する必要があるだろうと思っていて、大学でも十分努力するべきことではあるが、文部科学省が何らかのイニシアチブ、リーダーシップをとって進めてもらいたい。
 5−1−10の「学校と科学館、大学等との連携による教育活動や教員研修の推進などにより理数教育の充実を図り、子どもの科学技術に対する興味関心を高める」で、SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)やSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)、あるいは科学館や博物館など、あるいは大学との連携において、若い人たちの教育を進めていることもあり、非常に大きな成果を上げているというふうに感じている。ますますこういったことを進めていただいて、国と地方、それからいろいろなNPOなどとの協力のもとで、ぜひ大きな成果を上げていただきたいと思う。
 SPPやSSHというのは、子供たちも成長するし、学校の教員も成長するし、それにかかわる大学人や大学院生、学生など、それから企業や一般の研究所などからも参加があるが、そういった方々も非常に成長しているという状況があるので、これはぜひ推し進めていただきたい施策だと思っている。
 今、いろいろな科学館や博物館が民間委託のような形になりつつあると伺っているが、これは教育にかかわる非常に重要なものだと思うので、ぜひ国が底を支えていただきたいと感じている。民間に委託すると人が入るものだけに集中するようなこともあるし、どうしても本当の意味での教育の質を保つためには、国や地方といったものがきちんとした形で底支えする必要があると思っている。
 それと、5−1−11の「高校等と大学等とが連携して先進的な理数教育や高大接続の取組を進めることにより、生徒の科学技術に関する能力を高める」で、科学コンテストについて触れているが、これは子供たちを励ます上ではとても重要だと思っている。いわゆるアスレチックスのオリンピックで、若い人たちが取り上げられて褒めたたえられるという状況があるが、科学コンテストや科学オリンピックでいろいろなメダルをとってきたり、あるいはそういったところに参加しようとしている若者たちを励ますことが、我が国の人材育成という点では重要だと思う。
 その中で、女性の科学技術領域への進出を進めるということで、これは1−2−2の「様々な機関・団体等との組織的連携を通して、地域学習活動や学習成果を生かしたまちづくりや、男女共同参画の促進に関する取組を拡充・振興する」とも関連するが、いろいろな施策が進んでいることは大変ありがたいことだと思うし、今後の日本の科学技術を進める上でも、それから日本の国力を高める上でも、ぜひ十分な支援をお願いしたい。

【戸渡科学技術・学術政策局政策課長】 ただいま指摘があった点については、先生ご指摘の方向で一層取り組んでいきたいと考えている。特にポスドク1万人計画の点については、18年度から、新たに科学技術関係のキャリアパス多様化促進ということで、対応した事業を起こすなど、取り組んでいる。また、SSH(スーパー・サイエンス・スクール)の一層の促進、科学コンテスト等については、国際オリンピック等での活躍を踏まえた表彰の実施等を含めて一層、幅広いすそ野の人材育成ということで推進していきたい。さらに、女性研究者支援促進等も、ご指摘を踏まえて一層取り組んでいきたい。

【浅井(彰)委員】 政策目標4の「科学技術の戦略的重点化」、それから政策目標5の「優れた成果を創出する研究開発環境を構築するシステム改革」については、振興調整費の重点的、戦略的な利用を中心として、いろいろな施策が進んでいると思う。個別の評価も、「概ね順調に進捗」といったことになっているが、ここら辺はもう少し辛目に見ていったほうがいいのかなというふうに思っているが、2つ、3つ感じたところを申し上げたい。
 ポスドクの問題については、今、室伏先生から指摘があったように、本当にうまくいっているかということについてのしっかりしたフォローが大事ではないかと思う。企業のほうがもっとポスドクを雇用すればいいという論理もあるが、どんな人材が育っているかというところとの兼ね合いもあり、そう簡単にいかない問題になってしまっていると思う。今後のやり方が大事だと思う一方で、こういうやり方については、豊かな研究人材をもっと養成していこうという動きは非常に大事なことなので、気長に取り組んでいただかないといけないなと思うが、そういった意味では、ポスドクもあるが、それと並んで充実していただいているドクターコースの学生の支援も、今までに加えて、これからより研究資金にリンクさせたような支援の方法とか、新しい工夫をさらに考えていっていただかないといけないのではないかなと思う。
 それから、振興調整費については、使い方に関して、きちっとした倫理的なやり方、受ける側が整備してやっていくようなやり方を工夫しないといけないが、そういった議論もあったので、いろいろとこれからやっていく必要があると思う。
 もう一つ、振興調整費が非常に大型のものに向いていて、もう一つは独法化もあり、機関ごとの応募になっている。確かに、機関ごとの応募だけに限られているわけでもないが、比較的、機関に対して振興調整費、大型の資金が支給される形になっていて、世界に冠たるような研究を今、日本の中で組織しようとすると、どちらかというと科研費補助金スタイルで、大学間の連合を図るほうがかえってうまくようなケースも考えられる。そこら辺のやり方も、相当頭をやわらかくしていかないといけない一方で、今は各機関が、独法化を受けまして機関の責任という感じの意識が高まっていることも非常に重要なポイントで、その辺も崩したくないという感じもする。
 しかしまた、矛盾するようなことを言うが、一方で、独法化ということで機関別に評価が進み過ぎているので、機関間の協力といいますか、機関間でバトンタッチして、リレーして、いい成果を社会へ届けていこうといった動きが非常にディスカレッジされているんじゃないかというような意見も出ておりまして、こういったところをどんな工夫で突破していくか、いろいろ新しい工夫が必要ではないかなと考えていて、これは一般論ですが、個別の評価を少し超えて議論させていただきたいと思う。
 それと、科学技術ということで新しい制度でいろいろとあるが、もっと人文科学に関係したようなところも重点的な項目はあるのではないかと感じている。資金的にあまり要らないということがあるのかもしれないが、格別にテーマが挙がっていない。一つは、私は日本というものを取り巻く歴史観が非常に大事な観点だと思っている。非常に論争のあるところであるが、論争を避けないで、いろいろな歴史観を組み立て、論議していったらいいのではないかと思う。
 また、法律や経済も同様でありまして、法制などを見ておりますと、会社法などは今ほとんどアメリカから直輸入という形になっているが、こういったものも自分の頭で考えていくような時代になっているんじゃないかと思う。ヨーロッパとアメリカで全く違ったような、そういったところに関する価値観がぶつかり合ってくるような感じもしておりますし、その辺をよく考えていかないといけない。経済に関しましても同様であり、世の中の動きを見ながら独自に分析していくような努力が必要じゃないかなと思うので、言いたいことは、科学技術政策の中に、人文と、それから科学技術と人文の境界といったあたりもちゃんと入れていかないと、今後問題が出てくるんじゃないかなと感じます。

【古賀座長】 実績評価を超えている問題もあると思うが、大変広いコメントをいただきました。最後のところは若干、政策目標8、9にも関係するので、そちらのほうをまとめたいと思う。
 それでは、政策目標8の「文化による心豊かな社会の実現」と政策目標9の「豊かな国際社会の構築に資する国際交流・協力の推進」、それから、既に出ている、政策評価のあり方、あるいは政策評価の問題についても議論いただきたいと思う。

【田中委員】 政策評価法が施行されて5年目に入ると思う。要するに文科省でも政策評価を5、6年運用しているということになると思う。結論から申し上げると、そろそろこれまでの文科省での政策評価の制度的なあり方、あるいはその運用について検証した上で、今後どういう方向に進むべきかということを一度検討されてはどうかなというのが私の一つの提案。その上で2点、問題提起をさせていただきたい。
 1点目は、本日のテーマは実績評価だが、総合評価、事業評価という別の方式もある中で、やはり実績評価というのが国の政策評価の中心になっていると思う。この実績評価のあり方について、今日、皆さんからいろいろな指摘があったと思うが、これまでのいろいろな経緯を踏まえて、内容が非常に充実、洗練されたということは私も同感だが、ただ、この評価書だけを見ていくと、こういう指標が必要ではないか、あるいは個々にこういった分析が必要ではないかという指摘がどうしても出てくると思う。なぜかと言うと、実績評価というのは、もともとは政策のいろいろなパフォーマンスを、幾つかの限られた指標によって、ある意味ではやや簡便に、かつタイムリーに把握していこうというモニタリングの指標から発していると思う。だから、やはり実績評価だけの結果をもってすべてを言い尽くせるということではないと思う。
 先ほどゼッターランド委員から指摘があったように、アテネとトリノだけの指標で政策を判断していいのかという問題が当然ある。だから、実績評価の使い方としては、決めた評価指標を見ていったときに、気になる数字が出た場合は、もちろんその原因を突きとめて対処していくということだが、仮に指標上、目標を達成したように見えたとしても、どこかに問題がないのかということをきちんと分析して、必要があれば対処していくということが大切だと思う。
 そういう意味では、今後は実績評価に加えて、より踏み込んだテーマごとの分析なり評価、これはある意味プログラム評価的なものが入ってくると思うが、そういったものをどうやって文科省内で採用していくのか、いかないのかといった視点が必要になるのではないかと思う。これが1点目。
 2点目は、政策評価というのは、今日、ここに集まっている担当者を含めて、相当な労力、時間を使ってやっている作業。だから、やはり評価結果を活用していかないと非常にもったいないと思う。評価を活用していくというときに、どういう視点があるかということだが、おそらく従来は、文科省の施策の内容なり成果について、庁内外に知らしめていくというような役割が非常に強かったのではないかと思う。それも必要な反面、これから、この有識者会議に出るような、評価結果を題材にした政策論議につないでいくといった意味での活用方法、あるいは省内でのいろいろな行政資源の配分等に使っていくというマネジメントへの活用、いろいろな活用の方向性があると思う。残念ながら一つの評価制度で複数の目的にうまくフィットする制度ってなかなかないものですから、やはり目的に応じた制度設計というものを今後検討していく必要があると思う。
 今後、庁内ではこれまでの5、6年の運用の検証をぜひ行っていただきたいと思うし、この有識者会議でも、タスクフォース的なものを設けて、そこで今後のあり方について探っていくということを提案したいと思う。

【古賀座長】 評価制度のあり方について、ここで一度、今までのレビューをしてみてやったらどうかという、大変重要なご指摘。聞くところによると、予算との連動というものも平成20年度からということもあるようだし、今の指摘は大変重要だと思うので、別途、先ほどのお話のように、文科省の評価制度のあり方そのものも検討に値するので、ぜひ検討していただきたい。

【木村大臣官房政策課評価室長】 政策評価法が施行されておよそ5年が経ち、文科省としても、基本計画をつくって、毎年度の実施計画をつくり、政策評価をやってきているわけだが、毎年度、まさしく見ていただくように、我々としてもブラッシュアップをしてきているが、そもそもこういうやり方でいいのか、こういうやり方だけでいいのか、あるいは、先ほどご意見があったが、例えばテーマ別の分析評価をやってはどうかとか、せっかくやった評価が、もちろん国民へのアカウンタビリティーという意味では非常に大きいと思っている。評価のための評価ではなくて、今後の政策立案、あるいは政策の見直しという点にもつなげていかないといけないと思っているし、資源配分という観点につきまして、先ほど座長のほうからも紹介があった、平成20年に向けて政策評価と予算、あるいは決算というものが一体的に流れていくようなことも今、制度全体の中でも議論しているところで、政策評価の利活用という点についても大きな課題かなと考えていますので、また、先生方のご意見をいろいろいただきながら、検討体制も含めて、対応していきたいと思っている。

【美山委員】 今の評価のあり方についての議論は、多分これは政策目標8に一番関係するのではないかと思うが、1つは、文化関係のものは定量的な数値化が非常になじみにくいということがあるし、また、施策の実施から効果が発現するまでにかなり時間を必要とする。これは教育にも言えることだと思うが、こうした特性を持っているために単年度で評価していくことが非常に難しい部分がある。
 それを踏まえた上で、今回のレポートを拝見すると、非常に率直に、ある部分においては目標に達しなかったところも書かれており、大変いい印象を持った。8−1の「芸術文化活動の振興」に関して、この種の場合よくあることだが、派遣した人数とか支援した数とか、数になってしまいがち。その問題点は前回のこの会議でも指摘したところ。フォローアップをして、そこで支援した、あるいは派遣した人たちが、その後どのような活動をしているのか。海外派遣などは、現在の日本の芸術を支えるきら星のような人たちがそこにいるわけで、そういう人たちの存在というのをもっとアピールする必要があるのではないかと前回の会議で申し上げたところ、そのように今回のペーパーにも書いてあり、ただ、それをどのように実施していくのかという具体的な方法にまでは至っていないということで、今後も研究をお願いしたい。
 それにつけても、文化関係の統計などのデータが我が国においては非常に少ない。統計局における諸統計の中でも、文化関係の統計は今、削減されようとしているわけで、そういうところとの関係もあるが、さらに工夫が必要になると思う。
 それから、鑑賞教育の重要性は、ほかの部分でも指摘されている。例えばスポーツがうまくなるだけではなくて、好きになる人をつくるということだが、芸術、文化においても鑑賞者教育の重要性というのは指摘されていて、スポーツと同じように、鑑賞教育がどれだけ行われたかということもさることながら、鑑賞教育があることによって、どのように好きな人が増えて、その人たちが将来、自主的な鑑賞活動にどのようにつながったかというフォローが必要であろうかと思う。
 それから、主に8−2−3の「国や地方の有形・無形の文化遺産に関する情報を積極的に国内外に公開する「文化遺産オンライン構想」を積極的に推進する」あたりに関係するが、文化財の活用に関しては、例えば「ビジット・ジャパン」というキャンペーンが一方で行われながら、それに対応して英語版で日本の文化財をちゃんと紹介しているのかというと、非常に難しいことがあることは重々わかる。例えば新劇というのは何と英語に訳すんだろうと考えると非常に途方に暮れてしまう。しかしこれは重要なことなので、今後も努力して、この部分は、十分な達成を見ていないとあるので、今後も進めていただければと考えている。

【岸本文化庁政策課課長補佐】 まず、最初の指摘があった、評価のあり方で、どのように派遣された方々についてのフォローアップ、または紹介を行っていくのかということに関してだが、昨年度に比べて、評価に関しましてはなるべく定量的な評価ということで、達成目標の設定などにおいて改善を図ってきたところだが、行われた結果、どのような活動が行われたか、どのような成果が上がったかという内容的な面での評価に関しては、今後さらに努力して改善を図っていきたいと考えている。
 また、文化関係の統計が非常に少ないという指摘があったが、それに関しては全く同感で、具体的にそのような統計について調査していく必要があるということで、内部で検討を行っているが、工夫して、データについても集積を図っていきたいと考えている。
 それから、鑑賞教育の重要性について指摘があり、どの程度行われたかということだけでなく、どの程度好きな子供などが増えたかというフォローアップについても、指摘を踏まえて、どのような達成目標の設定ができるのかということについて工夫を図っていきたいと考えている。
 また、文化財の活用に関しまして、英語版での紹介については、指摘があったように、あまりはかばかしく進展していないが、工夫して、少しずつでも紹介していけるように努力していきたいと考えている。

【古賀座長】 文化は大変大事なテーマですので、ぜひ庁のほうで、いろいろ政策についても、評価についても工夫していただきたいと思います。

【高祖委員】 9−1−2の「青年海外協力隊をはじめとする国際協力事業への現職教員の参加体制を整備・強化する」について、健康診断で不合格となる割合が高いというご指摘があって、しかし、最終的には100人に対する割合が83パーセントであり、想定どおり進んだと書いてある。
 これはこれで一応、評価の対象でいいかもしれないが、私なんかからすると、むしろ不合格となった人たちが一体なぜ不合格になったのかというところを分析すれば、これからの政策として実るものが出てくるのではなかろうかと思う。実際に基準が厳しいのか、それとも申請する側のほうに問題があるのか、あるいはこういうことを広報する中に問題があるのか、その辺を少し調べていくと、今後こういう施策でいったらいいと出てくるのではないかという気がする。
 同じようなことは、9−2−1の「留学生の受入れ・派遣の両面で一層で交流の推進を図るとともに、留学生の質を確保する」について、留学生のための公的宿舎の整備、そこに、入居者が前年比850人減の2万6,773人と出てくる。ところが、このことについては、トータルの評価なり総括のところには一切出てこない。むしろ、こういう点を少し押さえて、それが一体どういう意味をもっているかについて見ていくのが大事ではないかと思う。
 それからもう1点、達成目標9−1−5を見ると、「「国連持続可能な開発のための教育の10年」の主導機関であるユネスコに信託基金を拠出し、持続可能な開発を教育面から支援するための国際的な取組に貢献する」、これは結構で、その下なんですが、ユネスコに加盟している国の「教育の10年国内実施計画策定国の割合が当該年度の想定基準に対し」と出てくる。文部科学省が計画をつくるなら、この指標はよくわかるが、これはちょっと指標としては無理があるのではないかと。支援は文部科学省でするが、策定するのはその国のことだから、少し無理があると思う。

【渡辺大臣官房国際課長】 青年海外協力隊は、基本的には公募制をとっており、2年間の現地活動での厳しい環境を想定すると、健康診断基準が非常に厳しいということがある。結果こういう数字になっているわけだが、公募制の中で、「体力、剛健」等々いろいろ基準を示しているが、これが実態だということで、今後の対応の余地、できるだけ合格率を上げていくというふうなことも含めて、公募の段階で各県の教育委員会に協力を願っているので、改善の工夫の余地があるだろうという指摘はそのとおりだと思う。
 それからESD、持続可能な開発については、これについては、日本政府はこの3月に、全政府挙げて実施計画をつくったところ。実際、各省庁でさまざまな取り組みがなされているし、文部科学省については、環境教育を中心に実施していくという中身で対応しているが、今後の全体としてのユネスコの取り組み自体も、かなり具体の段階で動きが出てくる。環境教育という1つを取り上げても、非常に広範囲な事項を扱うということがあり、目標設定というものがなかなか難しい。農水省、文部科学省、国土交通省、環境省、それぞれ取り組んでいるが、他国においての実情等について、いろいろと経験交流も今後必要であろうということで、国際セミナー等の機会をとらえて、全体としての政策、目標設定、基準等のあり方についても改善を工夫していきたいと考えている。

【小松高等教育局高等教育企画課長】 留学生の関係は、特に宿舎等の入居状況の数値等があり、これについてどう判断するかということかと思う。留学生の宿舎問題は大変複雑なところがあり、片方で、入居の希望者に対して入居の有利なもの等が不足しており、国での努力、それから民間の財団等の努力、各大学の努力、さらに地方公共団体及び民間へのご協力のお願いというようなことを組み合わせてやっている。
 確かに割合が減ったということが、その時々の情勢により意味が少しずつ違ってくるということは事実だと思うので、片方で努力しながらも、この数字の変動について、要は分析というものがきちっとできなければいけないということだと思う。政策目標としてどうかということとは別に、あるいはこの点にどこまで書けるかということはちょっと考えてみなければいけないと思うが、その点をよく分析しながらやるということについては、指摘を受けとめて、努めていきたい。

【平澤委員】 先ほどの田中委員のご発言を受ける形で、補強したいと思う。
 政策評価が、いわゆる総務省の枠組みの中で進んでいるということは承知しているが、そこで設定されている枠組み自体に非常に矛盾があるわけだから、それを超えて取り組むことをぜひお勧めしたい。政策評価・独立行政法人評価委員会そのものの合意というのは、府省連絡会議という府省並びの会議の中で了承されたものということになっていて、政策評価、特に今日、議題になった実績評価に関しては、文科省が最も進んでいる省の一つだと思う。だから、そういう自覚的な省がさらに先導するように、あの枠組みを踏み出していただきたいというのが大きな趣旨。
 具体的には、委員会で設定しているのは、GPRAというアメリカの前のシステムを踏襲しているわけで、そこの欠陥というのは、アウトカムというのは社会の中の他者が出してくれるものだという位置づけになっている。出力を出すところまでは内部が責任を持つけれども、結果を出すのは外部との共同作業ということになる。そうなると、どこまで責任を持つのかということが明確にできなくなってくる。今、アメリカが実施しているPART法は、そこのところの欠陥を克服しているわけで、ぜひ新しい体制にということを考えたい。
 もう一つは、委員会では、評価ということをマネジメントサイクルの中に取り入れようとしたが、これはマネジメントサイクルの後ろから入ってくるわけで、最初、事前評価のところ、プランあるいは戦略をつくるところから入っていかないといけないわけで、その体制が、どうも今回の実績評価書を見てみると、かなりできてきている。各担当のところ、新しい施策を設定する、施策内容を初めに明確にするというところがかなりできてきているので、事後評価でフィードバックしていくというメカニズムの枠組みから、事前に新しい施策を設定するというところから、責任を持てる範囲を明確にして、それを中間によってつなげていくという本来あるべきものに直していただければと思う。
 もちろん財務省との関係とか総合科学技術会議との関係、あるいは内閣府との関係等もあり、このあたりも整理していくのはなかなか厄介な問題もあるわけで、一つの省だけではできないけれども、自覚的に高まっている省が先導すべきだと思う。

【横山委員】 政策評価担当部局のコメントについて、1点だけ申し上げたい。そのほとんどが、達成度合いの判断基準の明確化、定量化を図れという提言と、評価結果はおおむね妥当だという記述になっている。判断基準の明確化というのは、私も非常に重要だと思うが、かなり限界に達しているようなところもあるので、これからもぎりぎり定量化せよというのは少しおかしいような気もする。それから、「評価結果は概ね妥当」、これはやめて、苦しくても何かコメントを書いて出すような工夫をしてもらいたい。

【木村大臣官房政策課評価室長】 我々としてもできるだけその辺を、評価担当部局としても精緻に評価していきたいと思っている。もちろん今回の実績評価を、まず各担当部署での自己点検評価ということに基づき、我々がヒアリング等をしながら評価するわけだが、確かに「評価結果はおおむね妥当」というような書き方だけではどうかというのは指摘のとおりであり、そこはできるだけ見ていきたいと思っている。
 また、判断基準の明確化をこれ以上ぎりぎりやるのはどうかというのは、まさしく我々も同じような考えを持っているところであり、すべてにそういったものをつけているわけではない。ただ、もう少し明確化したほうがいいと思われるものについてセレクトして書いているつもりなので、すべて明確化すればいいんだということではなくて、施策の内容、あるいは達成目標の置き方、とらえ方、そういったものの性質から適切な判断基準を置くようにということを、先生方のご意見もいただきながら対応していきたいと思っている。

【古賀座長】 8月29日もよろしくお願いしたい。今までも話があったように、政策評価の客観性あるいは実効性を高めるために、大変いいご意見をいただいた。また、先ほどから出ているように、この評価書を分析することによって、次の政策というか、予算というか、そうした計画にも結びつける一つのドキュメントになると思うので、ご協力をよろしくお願いしたい。

─了─

(大臣官房政策課評価室)

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