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第11回政策評価に関する有識者会議議事録

2004年9月2日議事録

1.日時 平成16年9月2日(木曜日) 10時〜12時

2.場所 東京国際フォーラム G610

3.議題
(1) 「文部科学省実績評価書−平成15年度実績−」及び「文部科学省事業評価書−平成17年度新規・拡充事業及び平成15年度達成年度到来事業−」について
(2) 政策評価に関する今年度の課題について

4.配付資料
資料1−1   文部科学省実績評価書−平成15年度実績−
資料1−2   第10回政策評価に関する有識者会議(8月10日開催)における委員からのコメントへの対応状況
資料2−1   文部科学省事業評価書−平成17年度新規・拡充事業及び平成15年度達成年度到来事業−
資料2−2   平成17年度新規・拡充事業及び平成15年度達成年度到来事業−(案)のコメント(中西委員)
資料2−3   事業評価書(案)に対する事前コメントへの対応状況(中西委員)
資料3   政策評価に関する今年度の課題(予定)資料1−1 文部科学省実績評価書−平成15年度実績−(案)について(概要)

5.出席者
(委員)   伊藤座長、麻生委員、天笠委員、池上委員、大窪委員、小出委員、古賀委員、杉山委員、舘委員、田吉委員、中西委員、平澤委員、藤垣委員、弓削委員、横山委員、ゼッターランド委員

(事務局)   白川大臣官房長、合田大臣官房会計課長、岩橋大臣官房政策課長、岡谷大臣官房政策課評価室長、和田大臣官房国際課課長補佐、舌津大臣官房文教施設企画部施設企画課長、山田生涯学習政策局政策課企画官、加藤初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、惣脇高等教育局高等教育企画課長、柿田科学技術・学術政策局政策課課長補佐、堀内研究振興局振興企画課課長補佐、井上研究開発局開発企画課課長補佐、岡本スポーツ・青少年局企画・体育課長、吉田文化庁長官官房政策課長、塩原科学技術・学術政策局計画官付評価推進室室長補佐ほか

6.会議の概要  
(1 )文部科学省実績評価書及び文部科学省事業評価書について
  事務局より文部科学省実績評価書及び文部科学省事業評価書について説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

伊藤座長】
   それでは、9つの政策目標があるが、政策目標ごとにまとめて議論を進めていきたい。

弓削委員】
   この9つの政策目標の中で、少しコメントと質問をさせていただきたいのは、大学における途上国開発協力を通じた国際競争力強化について、これに関してもいろいろなところを見せていただくと、質よりはどちらかというと量的なものが多いような気がした。
 国際競争力強化を図るための支援ということになると、もちろん件数でどれだけ参加したかということも非常に重要だと思うが、それと同時に大学が参加したことによっての質が重要である。活動の内容がどうであったのか、また質がどうであるかということによって、その大学がまた受注するのかということにも関連するし、それから国際競争力が高まったかということにも関連するので、そこのところの質については、どのようにお考えかというのを教えていただきたいというのが第1点である。
 それから、もう1つは同じ事業に関して、国際競争力強化という中で、もしプロジェクトが2国間援助であった場合には、もしかしたら競争するのは国内の大学同士であって、あまり国際的なほかの国の大学との競争にはならないということが出てくるのではないかなと思う。その場合は、もちろん海外で活動するということで国際競争力との関連は出てくるわけだが、直接的に国際競争力を高めるということになるのか、それとも間接的に日本国内の競争を高めることによって質が高くなって、それが国際競争力を高めるということか、もう少し教えていただきたい。
 それから先ほどあったユネスコの事業の話にも関連するが、国際的な合意について、ここにあるUNDESD、国連持続可能な開発のための教育の10年であるとか、ダカールでの行動、枠組みというような国際的な枠組みとの関連で日本がどういう形で参加して、そういうことの目標達成に貢献できるのか。
 その中で1つ、国際社会で今、非常に重要視されて、ある意味で注目がどんどん高まっているのがミレニアム開発目標、MDGの枠組みである。それに関して、8つの国際目標がある中で、3つが非常に教育に深くかかわっているということで、目標の2が普遍的初等教育の達成ということで、2015年までにすべての子供が男女の区別なく、初等教育の全課程を終了できるようにするとなっている。
 それから、目標3もジェンダーの平等の推進と女性の地位向上という中に、教育面での男女格差の解消ということが2005年までに達成するとなっている。これは初等、中等教育ということも言われている。
 それから、持続可能な環境の確保という目標7の中でも環境教育という8つの重要な国際的な目標の中の3つが今の事業計画に関係するというところで、ミレニアム開発目標とのつながりに関して、どのようにお考えか聞かせて頂きたい。特に、来年の秋には国連総会で2000年に採択された国連ミレニアム宣言の5年後のレビューが各国首脳級の会合として行われる予定である。
 そういう意味では、日本がそこで発言すること、過去のこと、それから今後に向けてどういう提言をするのか、どういう政策、どういう戦略で今後活動を続けていくのかということに関しても、国際社会は非常に高い関心を持って見るので、ミレニアム開発目標についての、もう少し直接的な関連を教えていただければと思う。
 それから、もう1つ、それにも関連するが、日本のODAとの関連については、去年、ODA大綱が改定されて、その改定された新ODA大綱に基づいてのODA中期政策、5年という期間をカバーする中期政策がまさに今策定されているということで、それが今年度の終わりまでには最終的なものになると伺っている。そうすると、これから5年を対象としたODA中期政策と、国際協力的な分野での活動がどういうつながりになるのかということで中期政策に向けてのインプットというのと同時に、中期政策に関連してこのような事業、国際的な事業をどのように見ていくかということが重要ではないかと思う。
 最後のポイントで、ODA大綱とも関連するが、非常に重要な部分として国民の開発課題に向けての理解を深め、参加を拡大するということがある。それに関しては人と人との直接な出会いと交流というのが非常に重要だと思う。そういう点で、留学生との交流であるとか、国際理解を深めるためのいろいろな活動、特に小中高、また大学での途上国の人たちとの出会い、それによって途上国の問題への理解も深まり、また国際協力分野での人材を育てるきっかけになるということなので、ここの部分はODAという観点から非常に重要だと思う。

伊藤座長】
   4点にわたりまして、非常に詳細な問題的のご指摘をちょうだいしたが、国際課のほうからご対応いただく。

和田官房国際課長補佐】
   まず評価指標につきまして、例えばサポートセンター事業であるとか、質について何か評価の指標にできないかということであるが、確かに、おっしゃるとおり、どのような質が高められたかという観点から今後の活動の当面の参考になるので、そういった視点からの評価というのも必要かと思っている。
 他方で、どのように質を評価したらいいのかというのは、本件に限らずいろいろ難しい問題もあり、数値目標として設定しやすい数というところで、カウントしてきたところであるが、今後検討させていただきたいと思う。
 それから、2国間の援助についても、国内の大学の競争、それによって質が高まって間接的には国際競争力の強化になるという視点も今後の参考にさせていただきたい。
 それから、ミレニアム開発目標について、そういった指標が掲げられているということを十分わかっているので、それを踏まえつつ、関連についてもう少し精査した上でまた何らかの検討を加えていきたいと考えている。
 ODAについても、中期政策、確かに今年度ということもあるので、多岐にわたっている。いずれにしても、政府が決定した新しいODA政策に基づいて、私どもも誠心誠意やってきたつもりであるので、不足点、あるいはご指導いただく点等あれば、意見をいただきたい。

伊藤座長】
   これは検討課題ということで引き続き検討させていただきたいと思う。次に2番目の政策目標、初等中等教育について進めていきたい。

天笠委員】
   私は、比較的、初等中等教育関係にかかわることが多く、その立場からその政策形成等々について意見等々、発言させてもらっている、
 そういう立場から、この一連の各政策が出されたときに、ある思いを持たざるを得ないのは、どうしても豊かとか、明るいとか、どちらかというと非常にとらえづらい言葉が一連の体系に並んでいて、一体、豊かな心とか、確かな人間力とか、これをどういうふうに、この話の中に載せていくのか。そこのところについては、まだ知恵が十分出ていないのではないかというのが現在のところかと思う。
 そういう点でここに出てきている効果の測定とか、やり方というのもおそらく担当のそれぞれの方もいろいろ悩みながら、この言葉をいろいろ詰められているのではないかと思っている。だから、私どももやっぱり知恵を出し合っていくこと自体が1つの大きな課題になっているのではないかと思う。
 例えば、豊かな心が育ったというのを現実的にどうとらえるのかというあたりのところで……これまでもいろいろな工夫とかしてきたが結局、なかなか説得力のある指標をつくり出せないで現在に至っているのではないかということである。
 今回も出てきているように、命を大切にするとか、豊かな心を育てるということの必要性は、おそらくどなたも大きな異論はないと思う。ただ、その成果とか、効果が一体どうだったかとなったときに、大変漠とした話になってしまうのがこのあたりの1つの特徴的な傾向で、その漠としている部分にどう迫っていくのか、入っていくのかが、まさに今日、テーマになっている、この指標をどうとらえるかというところが大変焦点化される部分で、既にご指摘のあったように質と量の問題とをやっぱり整理していく必要があると思う。
 そういう点から、効果の測定とか、あるいはどういうところをとらえたらいいのかということについて、一、二、私の考えを申し上げさせていただくと、1つはこのあたりのところは条件整備の側面と、それから質の改善とか向上の側面とをもう少し整理して書くことが、まず必要なのかなと思う。であるから、例えばカウンセラーをどのぐらい充実させるかとか、どのぐらい人数を充実させるかとか、そういうことについては比較的出しやすいのではないかと思う。一方において、それがどういう質とか、あるいはどういう質的側面についてそれに迫っていこうとするのか。そこら辺のところの立て方みたいなものが必要なのかなと思う。
 ただ、これらを拝見させてもらうと、例えば研究指定校等々を指定して、そこから上がってきた報告書を分析するとか、そういうふうなことで効果を見ようとするのであるが、ちょっとそれはまだ足りないのではないか。あるいは、その場合に上がってきている報告書をどういう観点で分析するのかという、そこのところに一歩踏み込んでこれを書く必要があるのかなと思う。それはやはり質の側面ということになってくるのではないかと思う。
 それから、もう1つは改めて豊かな人間性云々と言った場合に、ある種の子供たちの姿とか、人間の育つ姿、あるいはそういう環境の状態を、ある意味では主観的に周囲の人間が受けとめて、主観的な総体がある指標をつくり出すということがあるのではないかと思う。
 話がやや横道にずれるが、ときどきタクシーを利用することがあって、タクシーの運転手さんと雑談することがある。そのとき、タクシーの運転者さんは景気がよくなったとか、あんまりよくないとかというようなことをご自身の売り上げとか、乗車数とかを踏まえながら、ご自身なりの印象でいわれることがあるけれども。ある意味では、そういうそれぞれの立場の方の自分の周囲の状況を総体として、それをあわせて指標化して、それで現状がよくなっているとか、まずくなっているとか、そういう指標のあらわした方というのも現に工夫されて使われているところもあるのではないかと思う。
 例えば、子供の心の状態とか、子供に直接、間接にかかわるようなさまざまな立場の人の声を集めて、それを指標化して、それを読み取ることを通して、こういう施策の効果の間接的な読み取りをするというのも1つの手だてではないか。もちろん、それがすべてであるとは思わないが、いろんな問題行動が現実どのくらいあるか、既に公表されているものとあわせて子供の状態とか、心のあり方というのを、今申し上げたところから取り上げていくのも1つの工夫の仕方ではないかということを申し上げさせていただきたい。

加藤初等中等教育企画課長補佐】
   政策評価について、初中局も、豊かな、明るい、確かなというあたりを立てて、前向きな学校教育の行政を進めていこうとしているわけだか、いざ政策評価の場に立つと、確かに評価の客観性という大きな課題との関係も含めて、指摘されたとおり、悩ましい仕事をしているところがある。
 そういったことをお察しいただいた上で、事柄の条件整備面と、本来、アウトカムに当たる質の向上の部分、これを明確に分けてそれぞれとらえて、整理していくべきではないかというアドバイスや、ご指摘をいただいた。また、子供たちの育ちについては、人間性、心にかかわる部分、非常にとらえづらいところもあって、なかなか国民の皆様の主観的な受けとめ方、印象にわたるような部分を、上手に指標として取り扱えていなかったが、そこを幅広く、いろいろな工夫を凝らして主観的な視点、印象でも広く集めることで、そこに何か政策評価として活用ができるような指標が得られるのではないかというアドバイスをいただいた。このあたりは局内に持ち帰り、より充実した政策評価に向けての参考にさせていただきたいと思う。

古賀委員】
   この政策評価に関する有識者会議でもアウトプットとアウトカム、特に質の問題というご指摘の問題は重要だと思う。先ほど天笠先生はカウンセラーの事例を出されたのであるが、カウンセラーの全国に配備については、18年度で全部終わることになる。
 問題は、それによってどういうふうに問題児が少なくなるか、問題行動がなくなるとかもあるが、私はちょっと別な視点から問題提起をする。
 これは中央と分権との関係もあると思うが、配備した後のコンティニュエーション(継続)の問題についてである。政策評価を打った後の成果というのは、多分、瞬間的に出る成果と、後々じわじわ出てくる成果があるのではないかという感じを受けている。つまり、カウンセラーの配備で予算が全部ついたが、カウンセラーというのは毎年費用がかかるが、これからも文部科学省の予算としてずっと補助事業として続くのかお聞きしたい。

新山児童生徒課】
   スクールカウンセラーの事業につきましては、ご指摘のとおり今、国の事業の補助事業として2分の1を負担しておりまして、17年度までに3学級以上の公立の中学校すべての扱いということで計画を持って進んでいる。17年度の概算要求につきましては、1万校ということでほとんどの中学校に当たるという予算を確保しようとやっているが、その予算の動向もまだ不確実な状態もあるし、その後については、県のほう、それから市町村等と相談しながら決めていくと我々としては考えているが、少しまだ決まっていない部分もある。

古賀委員】
   質の評価と成果を出すというのがやっぱり大事だと思う。コンティニュエーションにより成果を出す。政策評価でも調査とか、呼び水というのはそこで終わってしまうわけであるから、その後のコンティニュエーションという問題を実行の面ではどうなっていくのか。やっぱりここも大事だと感じている。

麻生委員】
   関連して、カウンセラーの配置であるが、やはりカウンセラーもいろいろな資格を持っているとか、持っていないとか、いろいろある。そういう面での、有資格というのは、資格が3つも4つもあって、難しいのだが、その辺もところも一緒に入れて調べるのが本当はいいのだと思う。一体、どういう資格のカウンセラーがいて、無資格がどのくらいいるのかとか、そういうことも考えていただきたい。
 それから、数値がよくなったという場合でも、本当にそうなのか数値の読み方にも課題があると思う。
 それから、やはり教育の施策というのは5年後ぐらいにもう一度フォローすることが必ず必要だと思うので、1年、1年でやっていってもあまり意味がないのではないか感じた。特に、カウンセラーの場合は、相当、国としても取り上げてやってきたので、フォローを厳密にやっていただきたいと思う。
 それから、今義務教育が問題になっているが、今のようなばらばらな調査だけだったら日本の義務教育というのはほんとうに成功しているのかよくわからない。これはやっぱり国民をつくる教育であるから、ある意味では文部科学省の一番大事なところである。昔は、義務教育の教員だけは国立でつくるという形で教育学部をつくった時代もある。そういう点で、少なくとも正面から取り組んでいくべきで、最近はこれがちょっと怪しくなってきている。その場合の言いわけとして、地域的な不公平がよくあげられるが、地域的に不公平になるなんていうのは、たいしたことではないと思っている。果たして、日本の義務教育、つまり国民をつくるという教育が成功しているのか、成功していないのかという指標を、初中局は、大変なのだろうが、あまりにも縦割りになるといけないので、それが構造的に何かが見えるような指標というものを見つけて、大きな政策転換の時期であるので、考えていただきたいと思う。

田吉委員】
   今、スクールカウンセラー等の活用事業等で、豊かな心との関連で話が出ているが、先日も申し上げたように、スクールカウンセラーが配置されたといっても、週に8時間、1週間に1回しかなく、もちろんその成果は非常に大きいわけであるが、はたしてどこまで豊かな心がどう育ったといえるのだろうか。
 例えば、量的データとして配置校は暴力行為が減ったと出ているが、スクールカウンセラーの配置だけでそれが減ったのかというと、それだけではないと思う。豊かな体験の授業との絡み、あるいは道徳の授業がどう進んだか、あるいはもっと広く言えば学校評価をどう生かしてやってきたかというような、複合的な形でその学校の、例えば不登校が減ったとか、暴力行為が減ったとかという形になるのではないかと思う。そういうふうな横断的な見方も今後必要ではないか。

伊藤座長】
   それはまさしくご指摘のとおりである。因果関係など、非常に複雑であるが、それをなんとか解明していく必要がある。これはセオリーではないかと思うので、それをぜひ今後、精力的に進めていく必要があると思う。
 この事業評価書を拝見して、文部科学省の場合にはモデル事業が大変多いことに気がついた。これは仮にということだと思うのであるが、モデル事業って一体何かということを改めて考えさせられる。
 今、問題になっているスクールカウンセラーも実は7、8年前モデル事業として始まった。それである程度成果が上がるということがわかり、これだけ普及していっているわけである。モデル事業をやる1つの意味は、モデル事業として出発することによって、一体、その効果をどういう指標でもって測定したらいいのかという効果の測定の仕方もわかってくることではないか。それを知るというのもモデル事業の1つの存在理由だと思う。
 文部科学省の場合、これだけモデル事業が多いわけであるから、やはりモデル事業をそういうふうに使って、どのような指標を使ったら効果を測定できるかということも同時に確かめながら、その事業を進めていっていただければと思う。
 それと、もう1つ、天笠委員がおっしゃったように、豊かな心とか、あるいは心に響くというような言葉や、あるいは人間力とか教育力というような言葉に、ある意味でちょっとレトリックが出てきている。担当課としていろいろ真剣に考えていくと、どうしてもそういう新しい概念をつくり出すことになるのはよくわかる。しかし、そういうレトリックと同時に、それをどうやってオペレーショナルなものにしていくかという努力をしていただく必要があるだろうと思う。
 さて、まだ問題が残っているかと思うが、次の政策目標に移らせていただきたいと思う。政策目標3の高等教育であるが、これについて藤垣委員のほうから何かご意見をちょうだいできればと思う。それから、同時に科学技術政策についても何かご意見をちょうだいできればと思う。

藤垣委員】
   まず109ページの「魅力ある大学院教育」イニシアティブであるが、これは大学において教育の現場にいる者にとっては非常に大事な事業だと思う。世界のトップレベルの研究者の養成を目指して、国際的なエリート人材を養成するという観点で現場は動いてはいるのだが、なかなか学生がついてこなかったり、あるいは教官の側に時間がとれなかったりするということがある。
 であるので、これを実際に進めていただくとともに、効果の把握の仕方についてであるが、これが第三者評価委員会による評価の状況としか書いていないが、それでは実際に、先ほどの政策目標の2のところでも議論が出たように、国際的なエリート人材というのは何をもってそのように判断をするかとか、それが数として増えたのか、あるいはどのような質的にエリートと言える人がどういうふうに評価できて、それがどのくらい増えたのかというところで効果を検討していただければと思う。
 同時に、197ページのサイエンス・パートナーシップ・プログラムで、子供たちにとって理科離れの傾向が指摘される中、子供たちの知的好奇心を増やすために、このような事業が計画されているが、109ページと197ページの先ほどの2つの事業など、異なる側面でありながら担う人間は同じ大学の中の人間になる。そうすると、国際的なエリート人材をつくるということをそのまま子供たちに見せれば、それで彼らが非常に刺激を受けるかというと、全くそうではないので、大学の現場にいる者としては、全く異なるこのようなものをどのように実現していくかということは非常に悩ましいことである。
 コメントを申し上げると、198ページのサイエンス・パートナーシップ・プログラムに関して、有識者による会議体により事業実施の方向性などについての効果の把握の仕方が書いてあるのだが、本当にこれではかれるのかどうか、少々疑問がある。例えば、参加した子供たちの事前アンケートと事後アンケートを比較するなり、あるいはOECDで生徒たちの学力評価以外に生きる知識の調査の指標もあるので、このような事業によってそれが果たしてきちんと増加したことになるかどうかということをチェックしていただければと思う。
 197ページの事業は、実は政策目標の6に関連する。政策目標の6は、科学技術と社会の新しい関係の構築を目指したシステム改革となる。科学と社会の新しいパートナーシップについては、平成15年度の科学技術の振興に関する年次報告で、第159回国会に提出された資料であるとか、あるいはそれをベースに書かれた平成16年度の科学技術白書においても、第1章のかなりの部分を割いて、科学と社会の新しいパートナーシップの構築に向けてのことが書かれている。そのような白書なり、年次報告において大きなページ数を割かれているにもかかわらず事業が3つしかないのは、これでほんとうに白書で主張しているようなことがカバーできているのか、少々疑問に思う。
 科学技術に関係する意思決定に、例えば市民参加の場を開くなどというものがサイエンス・パートナーシップ・プログラムだけでは、それが実現できるものではないし、あるいは施策目標6−1、施策目標6−2にもなかなか入らないものも実は白書などの場でまあ議論はされている。それが実際の、具体的な政策にはまだつながっていないのではないかというようなことがあるので、ちょっと指摘をさせていただいた。

惣脇高等教育企画課長】
   先生の今のご指摘の1点目のほうについてお答えをさせていただければと思う。「魅力ある大学院教育」イニシアティブの事業の関係であるけれども、来年度から新規で考えさせていただいている。
 本事業であるが、そこにあるとおり、やはり大学院、特に博士課程における教育機能の実質化ということを目標に、新たな取り組みというふうに考えているが、この事業をどういうふうに評価していくのかというのは、我々としても非常に悩ましいところが正直ある。
 きょうの会議の最初に、COEの事業評価をどういうふうにやっていくのかというお話があった。こういった問題と、やはり軌を一にする課題だろうと受けとめている。そのとき申し上げたが、中教審のほうでやはりポストCOEを含めて議論をこれからしていただくということを考えているが、そういった中で新しい大学院対策の事業といったものも含めて、評価のあり方などもご検討していただけるように我々としても今考えているところである。そういったご示唆をいただきながら、我々として今後、検討していきたい。

柿田科学技術・学術政策局政策課長補佐】
   サイエンス・パートナーシップ・プログラムの関係で、指摘のあったような効果をはかる手法として、アンケートの調査であるとか、あるいは本事業をさまざまな各方面に周知するためのシンポジウムもやっている。そういったところへの参加者数や、あるいは本件プログラムへ申請する内容とかがどの程度、年々充実が図られていくかとか、さまざまな側面がある。そういったものを順次、いろいろな形で取り込みながら、この政策目標がどの程度達成できていっているか評価するために活用できる指標といったものを、さまざまなものを盛り込んで、今後の政策評価を充実させていきたいと思っている。
 それから、もう1つ、科学と社会のパートナーシップの関係であるが、これも白書で書かせていただいたとおりで、我々の部局でもこの問題は非常に重要だと考えている。今回のサイエンス・パートナーシップ・プログラムもそうであるし、それから別途、科学技術振興事業団(JST)という独立行政法人があるが、そちらの事業において研究者情報発信活動推進モデル事業というものを新規で別途立てており、社会のための科学技術といった考え方のもとで、研究者みずからが参画する全国各地で開催される講演会、あるいはイベントに対する支援を行ったり、あるいは科学者のコミュニティーと一般社会との対話の機会を充実させるといったような内容の施策を、独立行政法人の事業として新規に立ち上げている。
 実績評価の中には独立行政法人の事業は入っていないので、きょうの資料の中には入っていないが、そういった政策も進めながら今後とも科学と社会のパートナーシップという側面の施策の充実を、引き続き文部科学省としても充実させていきたいと思っている。

岡谷評価室長】
   それについては、実績評価の段階できちっと網羅した形で評価をしていくということになっているので、来年の実績評価にはそれを全体で束ねて、今回の事業とそれからJSTの事業をあわせて、効果がトータルとしてどういうふうに上がっているのか、きちんと評価させていただければと思っている。

伊藤座長】
   それから、もう1つ、藤垣委員がおっしゃった政策目標といいますか、施策目標を少し整理する必要があるのではないかという感じがした。例えば先ほど議論になった問題行動に対する対応としていろんな政策が今始まっているが、これは教育の問題が社会的な関心を集めているので、何か新しい角度や視野から指標を設定する必要があるのではないか。そういうところから事業なり、政策なりをまとめ直してみる必要があるのではないかと感じたわけであるが、同じことはより強い程度で科学技術の問題について言えるのではないかなという感じがする。特に、政策目標4、5、6については、かなり入りくんできているので、一度整理をして、新しい目標体系をつくり出す必要があるのではないか。これは次の政策評価の基本計画の課題と思っている。

平澤委員】
   科学技術関係の課題というのは、中を見てみると、かなり多様なものが雑多にある。例えば、120ページの基礎研究の振興とか、流動性とか、こういう制度にかかわるもの、あるいは190ページの産官学連携、これも一種の制度にかかわるものということになるかと思う。
 それに対して、タンパク3000といったようなもの、あるいは、184ページのSPring−8の話があるが、これは主に維持費にかかわるような話であり、こういった内容のかなり違うものを、ここでは事業評価の1つのフォーマットの中で評価するようになっている。ここに多少、無理があるのではないかという気がしている。
 科学技術に固有の話としては、プロジェクトに関係した話というのは、科学技術の枠内で完結するようなタイプのプロジェクトか、それとも社会経済的な効果まで範疇に入れて、それを実現していこうという種類のプロジェクトかということで、評価すべき内容というのは非常に変わってくる。
 どうも、ここに書かれているものを読んでみても、どっちのタイプとして位置づけてあるのかというのが不明確で、こういうところが評価指標を立てるときにかなり混乱をしているのではないかと思っている。
 したがって、第1点としては内容のカテゴリー、位置づけ、こういうものをもう少し明確に区分けしていくと、それなりの評価指標というのが見えてくる。
 それから、2番目に、これは政策評価法、あるいはガイドライン等に述べられているわけだか、必要性、有効性、効率性、公平性、優先性という評価項目の位置づけが、この事業評価のフォーマットとは多少位置づけが違っているのではないか。逆に言うと、政策評価法にある位置づけとは違ったカテゴリーで、いわば文部科学省独自の枠組みをつくっておられるのではないかと思う。それはそういうことであって構わないと思うが、私自身、標準的なガイドライン等から科学技術を評価するときの枠組みを想定しているのは、こんなふうに思っている。
 まず、必要性というのは英語で言えば、ラショナルとオブジェクティブズであって、それを設定する根拠、位置づけ、それと目的、そういう枠組みの必要性である。このように分かることによって、立体的な施策とのつながりが明確になるわけで、事業だけがごろっと評価されるということにはないのではないか。つまり、ラショナル、位置づけというのが非常に重要な中身であると思っている。
 それから、有効性というのは、ここでは評価の仕方というふうに位置づけているけれども、政策評価法では内容にかかわる有効性が述べられるべきだと思っている。つまり、必要性が枠組みだとすると、有効性というのはその中身に関しての話である。それから、効率性のところは、これは取り組み方、方法論、マネジメント等であって、これもこの事業評価の枠組みの中で書かれている内容というのは、もちろん取り組み方を効率性の中に入れてある部分もあるわけだが、中身に関する、内容に関する効率性といったようなものも混在していて、どうもうまくフォーマットしきれていないのではないかなと思う。
 これが第2点で、文部科学省のフォーマットを生かしながら、特に科学技術に関しては長期的な課題に取り組むわけなので、課題がその成果としてどのように結実していくかということのほかに、非常に重要な話というのは、どのような取り組み方で、それを実現していっているかというマネジメント、方法論、こちらのほうであるわけなので、それをもうちょっと強化して、評価していく形にすべきであろうと思う。
 あと関連して、評価をするときに幾つかのポイントがあるが、先ほど来、出ているアウトカムというのは科学技術に関しても当然考えられなくてはいけないわけだか、政策評価法では国民的視点から成果重視で評価していくといったようなことが、3本柱の1つに挙げられているわけで、その国民的視点というのが、要するに成果の本質的側面だというふうに思うわけである。そういう成果の本質的側面が何かということをもう少し踏まえた上で評価指標を選別すべきなのだろうと思う。これが結局、国民から見たときに役に立っているのだなということがわかる仕掛けになるわけである。
 それから、科学技術に関してはプロジェクトだけをごろっと展開していくというのは非常に効率が悪いわけで、制度の枠組みの中でプログラムとして展開していくというプログラム化を図るべきだと考えているわけである。これは数回前の会議でも出てきたかと思うが、そういうプログラム化の取り組みということを、やはり本格的に考えないと、いつまでもごろっとしたプロジェクトだけが個別に打ち出されているという、そういう非常に乱雑な状況から抜け出せないだろうと思う。
 それから、科学技術に関してはやはり長期的な課題であるということから、ロードマップのように計画を立てて、どの時点でどういうことが実現されるべきかということをそれぞれ明確にしていって、そのロードマップに従って評価していくというふうな形になれば、もっとよく見えてくるわけである。こういう計画自身を、もちろんこの中にも随分、書かれている部分があるわけであるけれども、それをもう少し明確になるようにしていくと、こういう長期的課題を評価する視点が得られるだろうと思う。
 それから、最後に、例えば今、120ページの基礎研究の推進といったような課題に関してもそうなのであるけれども、研究費に対してどういう成果が上がってきたか。例えば、論文の数であるとか、その他、そういう種類の指標で日本の状況を把握するということは当然あり得るわけなのである。そして、それらが増加しているといったような傾向が把握されて、それでうまくいっているといったような評価になるかというと、私は必ずしもそうは思っていない。この種の制度的な話の場合には、類似した制度と比較してみるということがぜひ必要であって、もっと端的に言えば、例えば国際的な比較をやってみて、確かに日本だけをとってみると増加はしているけれども、国際的に見ると、それは非常に限られた増加であるということを把握することによってもっと抜本的な課題が残されているのではないかというふうなことがわかってくるわけである。他との比較、類似した他者と比較するという、こういう視点がもう1つ、非常に重要になってくるだろうと思う。
 いろいろ評価の仕方について申したが、私の率直な印象としてはもう少し踏み込むためには今のような枠組みを整理するということが必要ではないかと思う。

伊藤座長】
   それでは、今ご指摘されたことは大変重要な点であるので、今後の事業の具体的な実施方法なり、事業評価の手法、あるいは来年度の実績評価書の内容等に反映していっていただければと思う。

横山委員】
   今の議論と少し関連するが、科学技術で、150ページの地球観測システム構築推進プランと、人工衛星による地球観測推進のための基盤整備というのがあるが、これを読んでみると、かなりよく似ているテーマである。現実には、この地球観測システムというものが人工衛星のほうも含むような形になっている。片一方は新規で、片一方は拡充ということで、それぞれ全く独立してやっているように書かれているが、その関連がどうなっているかについて書いていただきたい。そうしないと、この2つのプロジェクトの関連性があんまり理解できないということだと思う。
 それから、達成年度到来事業の地球環境遠隔探査技術等の研究は、今後は先の2つのうちの、地球観測システムのほうに統合するというふうなくだりが出てくる。片方は、やっぱり大くくりの地球観測システムに全体として考えようという中で、人工衛星のほうはそのまま残っており、わかりにくいので、そういう75のプロジェクトの中でも、もう少し整理する必要があるという印象を持っている。

井上開発企画課長補佐】
   ただいま、指摘のあった地球観測システム構築プラン、それと達成年度到来事業との関係について、新規で立ち上げている地球観測システム構築プランは、本年4月に行われた地球観測サミットにおいて、地球温暖化という中でシー オー ツーがどのように海において吸収されているかという問題とアジア地域の、アジアモンスーンの水循環の問題が特に指摘されているので、その点を取り組んでいきたい。
 一方、250ページの事業のほうは、京都議定書との関係で、二酸化炭素問題に取り組むために、特に取り組んできたが、この地球観測サミットにおける結果を踏まえ、これまでやってきた本事業の取り組みも含めて、新たに新規事業で取り組んでいこうと思う。
 また、新規で立ち上げるものは、新たな観測手法であるとか、新たなセンサーなどの開発に主眼をおいており、新たな外部の知見を活用して取り組むべく、競争的な資金として実施する。
 また、人工衛星による地球観測推進のための基盤整備事業の方との関係であるが、地球観測には、全体を俯瞰するためさまざまな手段がある。地球観測システム構築プランのほうは新たなセンサー開発であるとか、観測手法の開発、そのようなものを実施するが、もう一方は衛星を用いて宇宙からも見ていくということを推進するもので、これらはそれぞれ独立のようであるが、地球観測という分野全体として整合性のとれた取り組みを図りたいと考えている。ご指摘のとおり、この事業評価書、これのみを見ると、それぞれ独立、ばらばらでやっておるような印象であるが、これは我々も地球観測全体の中で非常に連関して、統一的に、整合性をとった施策として進めていきたいと思っている。

小出委員】
   高等教育関係は、新規拡充事業がたくさんあって結構である。117ページの表のところで、私学助成の表が出ているが、右のところに123とあって、例えば教育条件の維持向上で、教員1人当たりの学生数、昭和50年と平成15年の比較が出ている。その下の授業料の公私間格差の昭和50年と平成15年、その下の経営の健全性の向上のところも、昭和50年と平成15年、昭和50年と比較したらすべて非常にいいデータになって、私学助成の効果が上がっているという評価になっている。実際、私学助成の効果が出ていることは事実であるが、昭和50年というと30年前である。30年前と今とでは私どもを取り巻く社会環境、経済環境、非常に違っており、あまりにも30年前との比較だけではちょっとまずいのではないかと思う。
 昭和50年というのは、私学助成法ができた重要な年であるから、これはこの指標で結構であるが、これプラス最近の、例えば平成15年だったら5年前の平成10年をとって、平成10年と比較してどうなったと。昭和50年と比べればすべてよくなっているのは事実であるが、最近の状況はどうかというのも1つの指標として考えていただきたい。そうすると、最近は若干ずつ伸びているという程度であるので、さらに拡充していくことが必要になってくると思う。
 それから、もう1つ、98ページに地域医療に対する新プログラムがでている。これは新規であるが、結構だと思う。これは大事なことであるが、地味な活動で、華々しさがないので、どの大学もやらなければいけないと思ってはいても、あるいは少しずつやっているのであるが、積極的というまでにはいっていない。そういう点、こういった支援プログラムをつくって、積極的に支援してくということになると、各大学は積極的にやることになり、地域医療が非常によくなってくると思う。これはぜひ進めていただきたいと思う。

舘委員】
   100ページ、103ページあたりについて、昨年度から、こういう教育に関する競争的資金の政策が始まっていて、非常にいい面があるけれども、ちょっと展開に気になる点もある。初年度は特色ある教育支援プログラムということ1本だったが、今年から現代的教育ニーズ取組支援プログラムが出てきて、また法科大学院の形成支援というのも出てきたと思う。
 そういう意味で、教育に関する組織単位の財政支援のプログラムが出てきたので、今見ておかなければいけないと思う。また、100ページの特色あるすぐれた大学教育の一層の展開という大きなジャンルの中に、前から言っていたスタートの特色ある教育支援プログラムという非常に広い名前のものに対して、今年から現代的教育ニーズと出てきたわけである。
 そうすると、今まで現代教育ニーズに当たるものは特色ある大学教育支援プログラムに入っていなかったのかというと、そういうものも選ばれていたので、そういう意味で、仕分けがどうなってきたのかと思う。いろいろ広がりを持って展開していくのはいいが、法科大学院だって特色があれば広い概念には入るので、そういう意味で仕分けの問題が出てきたのではないかというのが1点である。
 それから、このタイプの教育に関する支援は、非常に難しい。研究ならどこかである分野の研究がすごくいい形でやられていれば、1カ所、あるいは幾つかでもいいという場合があると思う。研究の場合はそこで発見がされるわけだが、ところが、教育の場合は同じような教育をやりながら、ここだけがいいというわけには多分、日本全体として見ればいかない。
 そういうことから、このプログラムというのはグッドプラクティスということで、波及効果を考えていると思う。いいものを示して、事例集をつくったりして、波及を見るということである。その点で、財政支援策を見てみると、期間を区切って重点的な財政支援をするということになる。
 ちょっと論理的に考えていただくと、既にいいということで選ばれたところに財政支援をすることになる。他に対して、それを事例に見倣ってみようといわれても、いいと言われているところはさらに財政支援を受けてやっていくのに追いつくわけがないのではないかと、論理的にそうなのではないかと思う。ちょっと笑われてしまうかもしれないが、実際、そういうことが起こるのではないか。
 そういうことから、教育に関する財政配分みたいなものは、教育に関しては多くの国では賞だと思う。いいことを既にやっているところから選んで、賞を与える。その賞は、既にいいことをやっているので、それに財政支援を使わなくてもいいわけである。大学として賞をもらって、あるいは学科とか、そういうところでもらったわけだから、ほかのことにも使えるわけであるが、そのプログラムをさらによくするために使えということになると、さらによくする余地があるものに対してすばらしいと言ったことになってしまうし、ちょっと論理的な揚げ足とりのように聞こえるかもしれないが、論理はそうで実際もあるので賞を与えるという選択もある。
 もう1つは、ほんとうに波及効果をねらうならば、そのいいプログラムに対して与えるものは一般的な財政支援ではなくて、モデル事業の役割がよいと思う。モデル事業だから、波及の努力をしてもらう。それに対して与えるのならば、波及の効果が出てくると思うが、あまり論理的過ぎるかもしれないけれども、施策のあり方として財政支援の問題を考えていただきたいと思う。
 それから、ご存じのように、意外と国立大学がいっぱい選ばれたということで新聞報道を持ち出されているが、公平性、優先性ということで、101ページにあるが、国公私立、どの設置形態にもかかわらず公平に支援できるということで、公平性がうたわれている。これは選定のほうで考慮はされていると思う。当然、私立であるから財政基盤が国立と違うけれども、どっちがいいかということで見ているとは思うが、やはり正直言って一般的に言うと、同タイプであれば、今の条件で言えば、国立のほうがいい大学があると選ばれるわけである。
 だから、公平性の原理として同じ条件を与えることが公平なのかということではちょっと気になる点がある。先ほど申し上げたように、評価者のほうがそういう条件を考慮して、コストも見ながら予算を見るということを徹底すれば、そういうことはなくなってくるとは思うし、別な形でもカバーはできると思うが、必ずしも同じ競争条件を与えることが公平だということにはならないのではないかということで、その点は指摘だけしておく。

伊藤座長】
   最後に、オリンピックがちょうど終わったばかりではあるが、7番目の政策目標、スポーツについてお願いする。

ゼッターランド委員】
   今回、金メダルをこれだけとりまして、日本復活プロジェクトなんていうのもあるけれども、復活ということがほんとうに言えるのは、目標を達成したことが復活ではなくて、達成した後、それが継続できるかどうかがほんとうの復活というふうに言えると思うので、そちらのほうに向けてスポーツの強化等、あとは地盤を固めていくことができるかということが1つ言えると思う。
 私、事業評価書のほうをちょっと拝見させていただいていたが、例えば、203,204ページのJISS、国立スポーツ科学センターの使用状況であるとか、こちらは設立されて、他の国と比べるとすごく日が浅いので一概に比較というのはなかなかするのは難しいと思うが、こうやって見ていると、かなり個人競技の選手が多く使用して、そして北島 康介選手なども2冠を達成するなどの成果が得られたわけである。ほんとうに結果を出したということは、もちろんここでは国のサポートというのは言えるとは思うが、今回の選手の活躍を見ていると、日の丸をつけて日本代表として出場してメダルをとってはいるが、どうしても地域代表とか、企業代表という印象が非常に強いと、逆に私などは思ってしまう。
 特に、個人の場合、3連覇をした野村 忠宏選手なんかはミキハウスという、非常にスポーツに理解のある社長が力を入れてやってくれている。そういうところを考えると、まだまだ企業であるとか、選手の発掘にしても、地域に頼らざるを得ないところが非常に大きいのではないかなという印象がしてならない。
 あと、もう1つ、概算要求のほうだが、スポーツは15ページのところに豊かなスポーツ環境づくりの推進というふうにあり、ちょうどその裏の16ページには今度は文化力がある。トップでは、心豊かな魅力ある社会を目指した「文化力」の向上ということで、概算要求が出ているが、これからスポーツを発展させていただくためには、あくまでも体力づくりとか、鍛練としてスポーツをとらえるのか、文化としてとらえていただくことができるのかで、全然変わってくると思う。
 一概に、予算とかの比較というのはどうかとも思ったが、例えば目標が世界水準の芸術家、世界に誇れるそういった文化の水準を上げていくということや、日本文化の魅力の発見とか、そういったものはスポーツでも言えるのではないかと思う。
 そうすると、果たしてこの概算要求額というのが3分の1しかスポーツはないというところでいくと、このあたりもやはり国というよりは、先ほどいったように、企業の力にまだまだ頼っているというところがあると思う。ほかの国を見ると、国を挙げてスポーツに取り組んでいるというところもあるので、スポーツをどういうふうにとらえていくのか、どういう位置づけとして持っていくのか。そういうことによってこれからの取り組み方というのは随分変わってくると思う。
 私はどちらかといえば、指数としてスポーツを出していくのはなかなか難しいと思うが、はっきりとしたものがメダルという形であらわれるとすると、それは有形の文化財としてとらえることもできると思う。なかなか選手の資質に頼らざるを得ないというところもあるが、これを1つの形としてとらえるのであれば、無形の文化財であるという言い方もできると思う。
 心豊かとか、そういったものがどういうふうに数字としてあらわすことができるか、文章として載せることができるかは非常に難しいし、検討する必要があるというお話があったが、インタビューとかを見ていると、スポーツ選手が出してきた結果を受けて、「どうですか」と聞かれた小泉首相の、あれだけ笑顔が何度も何度も画面に出てくるというのは、近年見たことがない。そういうところにも代表されるように、あえて言わせていただくとすれば、笑顔指数というものが多く見られるということが1つの達成目標、スポーツにとっての達成目標だと思う。そういうところを、抽象的ではあるのであるが、この中で考慮していただけると非常にありがたいなと思う。

伊藤座長】
   第1の議題に時間をとってしまいまして、ほとんどもう時間が残っていないが、第2の議題、政策評価に関する今年度の課題について、1枚紙の資料が用意されているので、これについて評価室のほうからご説明をいただき、これに対するご意見は時間の関係もあるので、後ほど事務局のほうに直接ご連絡をいただくということにさせてもらおうと思う。

(2 )事務局から政策評価に関する今年度の課題についての説明がおこなわれた。

伊藤座長】
   それでは、ただいまご説明のあった今年度の課題については、ぜひご意見を事務局のほうにお寄せいただきたいと思う。
 最後に事務局から一言、あいさつをどうぞ。

白川官房長】
   政策評価法ができて、評価のプラクティスが始まり3年弱が経過する。私ども、正直最初始めるときには、今でも同じような悩みをたくさん抱えているが、どう進めていくかということを大変心配していたし、手探りの状態が長く続いていた。
 その状態は今でももちろん残っており、むしろ政策評価自身がそれぞれのその時代の要請を受けて、エボリューションを時々やらなければいかんと思っているけれども、きょうのご議論を拝聴していると、やはり評価の物差し、指標をどこに求めるかということが非常に多岐にわたる事業、施策の中で一番難しい点に、これは永遠の課題となっているという印象を受けた。
 国際関係のところでは、例えばミレニアム目標であるとか、ODA大綱といった、文部科学省としての目標だけではなくて、政府全体、場合によって世界全体という大きなパースペクティブの中でどう位置づけるかという考え方がちゃんと入っていたかも考えていかなければいけないかもしれない。
 それから、初中の関係では、スクールカウンセラーでは質と量というか、まさに評価の物差しをどうとっていくかということの難しさの議論があった。
 科学技術の関係では、政策評価について平澤委員のほうから3点ほど、非常に深いご指摘をしていただいたし、高等教育、それからスポーツのところでも個別のご議論もあったわけである。私ども、先ほど申し上げたように、なかなか政策評価というものの進め方と、それをどう実際の施策、その評価の結果を反映させていくかということに、いまだに手探りで悩んでいるというところがあるけれども、少しずつ進歩していることは間違いないと思っている。それもひとえに有識者会議の先生方のいろいろなご指摘の賜物であると大変感謝している。
 今回は、実績評価書、事業評価書の取りまとめが終わったわけであるけれども、先ほど評価室長のほうからもお話し申し上げましたように、この後、3年が経過したので、その後の基本計画をどうリファインしていくかとか、新しい分野にどう政策評価を反映させていくかという課題をずっと抱えているわけであり、引き続き外部の方々から我々が日ごろ気づかないような厳しい視点を持ってご意見をいただければと考えている。

伊藤座長】
   それでは、これをもちまして本日の会議を終了する。

  ── 了 ──



(大臣官房政策課評価室)

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