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第10回政策評価に関する有識者会議議事録

2004年8月10日議事録

1.日時 平成16年8月10日(火曜日) 10時〜12時

2.場所 東京国際フォーラム G402

3.議題
(1) 文部科学省実績評価書−平成15年度実績−(案)について
(2) その他

4.配付資料
資料1−1   文部科学省実績評価書−平成15年度実績−(案)について(概要)
資料1−2   文部科学省実績評価書−平成15年度実績−(案)
資料2   実績評価書案に対する有識者会議委員からのコメント
資料3   今後の予定

5.出席者
(委員)   伊藤座長、麻生委員、天野委員、池上委員、大窪委員、川邊委員、小出委員、古賀委員、杉山委員、舘委員、田吉委員、中西委員、星野委員、ゼッターランド委員、横山委員

(事務局)   結城文部科学審議官、近藤文部科学審議官、合田大臣官房会計課長、岩橋大臣官房政策課長、和田大臣官房国際課課長補佐、岡谷大臣官房政策課評価室長、舌津大臣官房文教施設企画部施設企画課長、久保生涯学習政策局政策課長、加藤初等中等教育局初等中等教育企画課課長補佐、惣脇高等教育局高等教育企画課長、柿田科学技術・学術政策局政策課課長補佐、堀内研究振興局振興企画課課長補佐、井上研究開発局開発企画課課長補佐、内丸科学技術・学術政策局計画官付評価推進室長、岡本スポーツ・青少年局企画・体育課長、吉田文化庁長官官房政策課長ほか

6.会議の概要  
(1 )文部科学省実績評価書−平成15年度実績−(案)について
  事務局より、「文部科学省実績評価書−平成15年度実績−(案)」について 説明が行われ、続いて質疑・意見交換が行われた。

伊藤座長】
   それでは、評価書(案)に対する皆様のご意見をいただきたい。

古賀委員】
   まず、評価書はこの2年間で非常に努力、進化している感じがする。
 2つ目に、達成度合いを4段階に分けているが、達成している、概ね順調に偏らず、若干未達もあるが、それは今後の対策に役立つだろう。
 3つ目に、巻頭の「文部科学省の使命と目標」に達成度合いを書くとわかりやすいのではないか。
 4つ目は、大変な努力で作る実績評価書、事業評価書をぜひ省の改革の牽引力や、予算編成、新規事業の企画等に役立ててもらいたい。
 個別には、達成目標が明確でないことについて計数的な努力が見られる。アウトプットの目標を達成した項目は、成果の質を施策に盛り込むことが必要。
 例えば施策目標2−3信頼される学校づくり、達成目標2−3−1全公立学校で自己評価を実施してその成果を公表する、の達成年度は平成22年度だが、自己評価を実施した公立学校は9割、結果の公表は4割とかなりの学校で目標を達成している。今後は、実施公表率だけではなく、自己評価の質を上げてもらいたい。ある教育委員会では、点検・評価は単なる教職員と保護者のアンケートを取るだけで、信頼される学校改善に役立っているのか疑問を感じる。評価項目程度は教育委員会で統一してもよいだろうし、あるいは教育委員会で全体の評価をしてもよいのではないか。何かをやったということだけが重要なのは最初の段階である。模範となる教育委員会や学校等を集めて公表、発表することも必要ではないか。自己評価というのは、ややもすると自己満足に陥りやすい。行ったという満足感だけでは駄目だ。
 達成目標2−3−2評議員制度についても、実際に評議員が信頼される学校づくりにどう役立つかが課題である。良い事例を集めて公表すべき。
 達成目標2−3−3の教員評価システムも、信頼される学校づくりには不可欠。人件費がどんどん増えることはないため、教職員のやる気を引き出す、あるいは年功序列を若干でも崩すようなインセンティブのある処遇体系の模範を作るべき。
 達成目標2−3−6の教員の資質向上について。やはり学校教育は教員次第である。大学連携についても書いあるが、基本的な研修の改革が必要ではないか。先生というのは、プロフェッショナルな力だけではなく、コミュニケーション、コーチング等の人間力やマネジメント力が必要。長期的には、教師のリーダーを作る専門職大学院が必要ではないか。
 施策目標3−1大学などにおける教育研究機能の充実を見ると、法人化、COE、GP、インターンシップ等大学等の改革など、大学教育を充実させるための仕組みづくりが進んできていることがわかる。ただ、成果を出すということであれば、いろいろな情報のフィードバックが必要である。
 一方、大学が自主的にアイデアを推進する仕組み、大学から自発的に出てくる提案を極力受ける仕組み作りについては文部科学省も努力している。大学からの自発的な新しい収益事業等については、規制の除去等により推進してもらいたい。基本は私立でやっていることではないか。
 最後に、施策目標3−4特色ある教育研究を展開する私立学校の振興は、他の項目に比して、施策が少ない感じがする。私立学校については、助成金・補助金をしっかり確保することは大切なことだが、それが今非常に危機に瀕していることも事実である。大学の75パーセント、高校は25パーセントが私立学校であるため、私学に向けた政策がもっと必要ではないか。ここで一定の成果が上がっているのは、財務状況の公開ぐらいである。達成目標3−4−4の中学・高等学校の問題にしても、補助金と交付税を合わせ生徒一人あたり28万円という財源措置があるのに対して、交付税は県ごとに額が違う。県の姿勢や財政状況によって相当差があり、危機感を持っている。

加藤初等中等教育企画課長補佐】
   まず、学校の自己評価の実施公表は、信頼される学校づくりのために大変重要な取組であり、積極的に推進しているところ。文部科学省として、学校評価システムの確立に関する調査研究をすべての都道府県・政令指定都市教育委員会に委嘱して行っている。
 各教育委員会でも、より良い評価に向けて学校向けマニュアルの作成、研究成果の報告、公表等が行われている。文部科学省でも非常に良い事例等を現場に伝える取組は重要だと考えており、現在、「教育委員会月報」の中で適宜、学校評価に関する積極的な取組を紹介するなどの情報提供に取り組んでいる。今後とも、評価の実施率が表面的なものだけではなく、更に質を高め、内容の充実に努めていきたい。
 評議員制度についても、同様に「教育委員会月報」等の活用を図り、学校評議員の有効な活用事例等の紹介を引き続き行っていきたい。これも実質を伴う形で内容の精査に努めてまいりたい。
 教員評価について、文部科学省では平成15年度から調査研究を全都道府県・政令指定都市教育委員会に委嘱しており、人事考果制度の新たな評価システムを構築し、評価結果の処遇への反映に向けて取組を進めている。すでに一部の教育委員会においては先行的な取組等も見られ、当省としても良い事例の紹介、情報提供等に努め、教員評価システムの改善・充実を一層進めていきたい。実を伴う形で進めていけるように取り組みたい。
 教員の資質向上については、専門の人材養成面のための専門職大学院等の設置まで含めたご指摘だが、抜本的な改善方策を検討するために文部科学大臣の私的懇談会として「これからの教育を語る懇談会」を設置しており、6年制の教員養成や専門職大学院の設置等大きな指摘もいただいている。義務教育の改革方策の中でも、教職員の資質向上をしっかりと位置づけ、今後とも取り組んでいきたい。改革提言が具体的に示されていく中で、中央教育審議会等においても、その施策の具体化についても議論いただくことになろうかと思う。

惣脇高等教育企画課長】
   施策目標3−1大学などにおける教育研究機能の充実について、国立大学の法人化とあわせ、COE、GPといった支援施策は各大学の活性化に大いに役立っている。また、国立大学法人の収益事業も含めた新しい提案については、国立大学法人から積極的な提案を受け、COE、GP等の支援をしているところ。収益事業については、教育研究の範囲であれば基本的には差し支えない。特に受託研究等の関係については、積極的に取組が行われている。
 施策目標3−4特色ある教育研究を展開する私立学校の振興では基本的な経常的経費が確保できる施策が中心になっている。COEやGPについても、国公私立を通じた支援策なので私立大学に対する支援の一環と考えている。
 それから高等学校以下の国庫補助については、これを核として地方公共団体が私学振興する間接的な手法となっている。ご指摘のとおり、地方公共団体の財政事情等で助成水準にばらつきが生ずる可能性がある。国が行っている国庫補助については、各都道府県の私学助成に対して誘導措置の意味合いもあるが、今後とも補助の充実を図っていく必要があると考えている。

小出委員】
   58ページの政策目標3に個性輝く高等教育の推進と私学の振興という大目標が掲げられ、その目標の下、新しいアイデアが実行されつつある。国立大学の法人化や私立学校法の改正等も決まり、今、着々と実施されつつある。その成果を見守りたい。また、大学設置基準の弾力化も行われたことも評価できる。
 達成目標3−1−3教員の任期制と公募制の実施では、「想定どおり達成」となっているが、指標を見ると任期制は11パーセントから29パーセントに増えている。この数値を非常に増えたと考えるべきか、まだ29パーセントしか達していないと考えるべきか。また、公募制については平成13年度以降集計中となっているが、これらの進んでいないところ、進んでいるところを併せて「想定どおり達成」という結果にするのはいかがなものか。
 逆に、平成14年度に自己点検・評価を実施した大学は92パーセントあり、評価結果を公表した大学は89パーセントとなっている。昨年はもっと進んでいるはずだが、これについて「一部成果が上がっているが、あまり達成できていない」という表現ぶりはどうかという気がする。どこに目標を置いているかによると思う。
 もう一つ、私学助成について、施策目標3−4では、私立大学等における経常的経費の割合が11.9パーセントから12.2パーセントとなっており、ほぼ変わっていない。全大学の75パーセントが私立大学で占められていることを考えても、経常費補助が12.2、3パーセントというのは少な過ぎると思う。
 国の高等教育に対する国庫補助、公財政比率はGDPで0.5パーセントにすぎない。先進国が約1パーセントであるのと比較して、日本の国は低過ぎるのではないか。財政状況は厳しいが、もう少し先進国に近づけるように努力してほしい。

田吉委員】
   政策目標2確かな学力の向上と豊かな心の育成について、中学校の現場から発言させていただく。
 新教育課程、新学習指導要領による教育活動が3年目を迎えたが、学校現場は大きく変わった。例えば、開かれた学校では、地域の方々との連携を図った豊かな体験活動を通して様々な人があふれている学校に変わりつつある。評価についても、保護者や生徒、学校評議員による外部評価や数は少ないが第三者評価として評価委員会を作ろうという動きもある。以上を踏まえ、2点ほど指摘したい。
 1点目は、様々な形で教員の指導法改善のために増員が図られているが、実際に各教員の持ち時間数は、変わっていない。その中で授業の指導等を行うための教員同士の話し合いやカリキュラム作成、マネジメントの時間が必要である。しかし、授業が終われば部活動の指導等もあり、打ち合わせ時間もないのが実情で学校に多忙感があふれている。
 そして、途中で退職する先生が急増している。学級数に対する定員数が改善されれば、余裕が生まれるのではないかと考えている。教育課程実施状況調査においても、少しでも現場がゆとりを持てるようにご配慮いただきたい。
 2点目に、「豊かな心を育てる」という主旨で配置されたスクールカウンセラーについて、週1回8時間の活動時間だがスクールカウンセラーに対する需要は大きく、1日目一杯活動しても、活動状況にはかなり厳しい状況ものがある。スクールカウンセラーの養成研修と配置の拡大という希望がある。

川邊委員】
   施策目標1−2地域教育力の活性化と政策目標2確かな学力向上と豊かな心の育成の確かな学力の育成の面について意見を述べたい。
 第1点目は、6月来降、小学校で同級生を殺害するなど、子どもの心のすさみ、人間的な感情や感性の未成熟が見られる事件が立て続けに発生している。現代の子どもの持つ背景とともに、人間関係、調整能力の衰退に大きな原因があると思っている。平成14年度から完全学校週5日制が実施されたが、所期の趣旨が生かされていない。武蔵野市教育委員会の土曜学校では「ひらめく、感じる、考える」というテーマのもとで、市内の大学工学部と連携した「子どもロボット教室」や学校の先生による「サイエンスクラブ」「ピタゴラス教室」等体験的な学びを中心にした活動を進めている。また、学校施設も大いに活用するという方向も、今後とも一層推進していく必要がある。
 体験を通じて、人間的な力、人間力をしっかり身につけさせるという、今の子どもの一番重要な課題への根本的な対策は達成目標2−2−2である。平成14年度から豊かな体験推進事業が始まり、15年度からは、地域間交流の為の推進校を指定することで概ね順調に進められている。本年度からは長期宿泊体験で都市と農山漁村とで1週間以上滞在して、人間力を高めていくことが大事である。
 各都道府県には指定校が2校ずつ指定されているが、推進校同士が相互に情報交換し、より良い体験ができる仕組みづくりをお願いしたい。今、重要な時期だけに文部科学省が一定の方向性を打ち出し、事業拡大を目指してもらいたい。
 第2点は、達成目標2−1−2についてだが、少人数指導、特に習熟度別指導の推進を図り、子どもたちが自分の習熟度や課題に応じて少人数で学ぶことが、学習の意欲や関心を高め、具体的な学力の定着に役立っている。また、7割の小中学校で習熟度別学習が取り入れられており、概ね良好に推進していると評価されている。しかし今、義務教育費国庫負担制度については三位一体改革の中で取り上げられており、義務教育制度をどう維持するかという大事な問題がある。平成16年度からは総額裁量制を導入し、地方の創意により支出できるようにする趣旨は理解できるが、30人学級を目指す県にとっては、第7次配置定数改善計画で行ってきた習熟度別等の少人数指導のための予算を少人数学級編制へと動かす可能性もあり、習熟度別学習等の少人数指導の衰弱を心配している。第7次配置定数改善計画で配置してきたものが総額裁量制によってどのような影響を受けるのかという慎重な分析と、影響力がどの程度現れるかについて政策評価してもらいたい。
 同様に、達成目標2−1−6についても、平成14年度学校図書館整備第2次5カ年計画として、新たに4,000万冊を整備するとなっているが、一般財源化された場合、所期の目的を下回るような蔵書の予算配当となる可能性があることを危惧する。文部科学省のいう蔵書の充実とは、所期の目的を本当に達成しているのか。平均的には達成しているが都道府県によってはかなりの差があるのかどうか。もし差があった場合は義務教育の機会均等、教育条件の一定水準を確保するという観点からいかがなものか。

伊藤座長】
   それぞれの問題について議論していくと大変深い問題になる。特に、三位一体改革・行財政改革との関連で懸念があるが、この点について、文部科学省の考えを伺いたい。

加藤初等中等教育企画課課長補佐】
   体験学習の充実については、長期宿泊型のスタイルも含めて、事業の一層の充実を図っていく方向で概算要求段階でも局内で前向きに検討を進めているところ。
 少人数習熟度別指導の関係について、次期改善計画の検討にも現場の評価をフィードバックしていくこととなる。また、三位一体改革との関係では、今年度から総額裁量制を導入したが、基本的には地方の裁量で、住民・保護者のニーズを十分酌み取りながら、地域において一番良い形をとることが重要。また、総額裁量制を政策評価の課題として捉えるようにというご指摘も、局内においてしっかりと検討して参りたい。

中西委員】
   成果の質について書くべき。例えば、施策目標1−4奉仕活動・体験活動の推進による青少年の豊かな心の育成についても、奉仕活動とは、本来は活動を強制するのではなく、生徒が自主的に行いたいと思うような仕掛けを作るべき。その仕掛けをもう少し項目として掘り下げ、どのくらいの割合でうまくいったか判るようになれば、もっと成果を理解しやすくなるのではないか。施策目標2−1確かな学力についても同様。学力が本当についているのかを計るメルクマールを設定しても良いのではないか。
 施策目標6−3国民の科学技術に対する理解の増進及び信頼の獲得について、日本科学未来館では施設整備等に費用がかかっているので、例えば、来客者数の目標を立ててどれくらい達成したかなどもう少し内容に立ち入った目標もあって良いのではないか。もっと様々な目標を立てるべきだ。
 次に施策目標3−4については、今後生徒数が減少することを考えると大学数は全体で見たら多過ぎるのかもしれない。新たな申請を個別に審査して許可を出すのではなく、全体的な政策として、質的な面からみたポリシーが必要だ。場合によっては減らす大学も出るかもしれないが、全体としてのバランスを図っていくことが大切である。
 それから、ナノテクノロジー、材料分野の研究開発のところでは、中身が重複しているものがあるため、もう少しきめ細かく見てほしい
 最後に、大学における教育研究基盤の整備については、何を以て世界水準とするのかについてもう少し細かく議論し、評価項目として書いても良いのではないか

伊藤座長】
   未だに、効果をアウトプットというより、むしろインプットで測っているところがあるが、アウトカムで測るようにする必要があるという、非常に重要なポイントである。それぞれの担当課においてもご努力いただきたい。
 もう一つ、大学の数が多過ぎるという問題。文部科学省がどのような政策をとるのか、非常に難しい問題だが真剣に議論していかなければいけないだろう。

舘委員】
   具体的な指摘をさせていただく。
 政策目標3について。達成目標3−1−4は、自己点検・評価の実施を100%にするということだが、一部については想定どおり達成できなかったという評価がされている一方、現状の分析と課題では「取組が進むまでに至った」と肯定的な表現ぶりになっており、齟齬が生じている。ただ、自己点検・評価はすでに大学設置基準で義務化されているため、その状況下で伸びたというだけでは評価できない。
 達成目標3−1−5については、客観的な試験システムを構築することが「想定以上に順調に進捗した」という自己評価になっているが、現状の分析と今後の課題では支援するとなっている。主な政策手段を見ると予算額はゼロで、試験システムの構築主体は文部科学省ではないのではないか。そうすると目標の書き方が少し気になるところ。
 COEに関しては、「想定以上に進捗した」という評価だが、申請件数・採択件数が指標になっているが、政策目標は明らかに世界的な研究拠点を形成することにあるため、どのような状況になれば形成されたと言えるのかを指標化しないと評価ができないのではないか。既にスタートしているものについては、今年度が中間評価の年で成果がわかるため、むしろそちらを指標化しておくとよい。世界のセンター・オブ・エクセレンスになるのだから、世界中からトップレベルの学生が集まってくるという指標がなければ、この達成目標を測ることはできないのではないか。また、対象に短大も入っているため、指標の対象としては短大も入るのではないか。
 施策目標3−3意欲ある学生への支援体制の整備の達成目標3−3−1と達成目標3−3−2とはよく似ており、他の目標と比べると細か過ぎる。
 施策目標3−4について。評価法の観点から見ると想定どおり達成できなかったことを反省しているが、指標を見れば確かに帰属収入の割合などなかなか難しいことが伺える。ただ、達成目標3−4−2については主要な政策手段が書かれておらず、政策手段なしに達成しているように読めてしまう。経常費補助に関しても、私学振興助成法で補助率が2分の1までという枠組みがある。法律の枠組みの中で目標値を設定しないと評価しにくい。

天野委員】
   達成目標3−1−1〜4は、指標が大体実施率になっており、質的なものを表していない。例えば、インターンシップの実施率を5割以上にするということだが、一体何人の学生がインターンシップを実際に受けているのかはわからない。プログラムが開設されたことと実施されていることは違う。新しい達成状況の評価指標を検討してほしい。また自己点検・評価の実施率が100パーセントでほとんど公表しているとあるが、どういう形で我々が見ることができるのか全然わからない。その辺を検討してもらいたい。
 達成目標3−1−6のCOE関係は、平成19年度に一体どのような評価をするのか大変気になる。今のところは申請件数のうち何件通ったかで大学の活性化をみているが、本当に活性化されたかをどのように測るのか。これも来年あたりから指標が問題になるため、検討してもらいたい。
 専門職大学院制度も同様に大学院の数を増やすことは政策目標だが、これは15年度で達成されたことになっている。今後専門職大学院の成否を何で測るのかという課題もある。
 施策目標3−2大学などにおける教育研究基盤の整備について、まず一点目は、国立大学に限ってだが、国立大学等施設整備緊急5か年計画を立てて、17年度までに行うことになっていたが、達成率は極めて低く5割強というところ。17年度で終わるとすると、この目標は達成できるのかどうか。目標を達成するために厳しい予算の中で、文部科学省として何ができるのかという点。2点目は、本来の目的は老朽化した施設整備に重点が置かれているはずだが、先端的な部分に重点が置かれ、老朽化した施設の整備はなかなか進まない。老朽化した施設のほとんどが教育にかかわる部分で、教育条件がどんどん悪くなっている。こういう中味も踏まえた指標のとり方をぜひしていただきたい。年々老朽部分が増え、いつまでたっても整備が追いつかない状況をどう考えるのか。
 施策目標3−3意欲ある学生への支援体制の整備では、奨学金制度をどんどん拡充しているが、問題は、教育の機会の平等化に役立っているかということ。無利子分の奨学金の給付額がどのくらい増えているのかを計る指標を設定しなければならないのではないか。
 達成目標3−4−3の私学助成は、12パーセント強で横ばいだが、中身はかなり変わってきている。これは文部科学省の政策のかなり大きな転換であり、徐々に重点配分分を増やす方向にあるのだが、それがここには書かれていない。また、これまで国立に限られていた競争的な資金の配分を私学にも及ぼしていくという政策がある。こういうことも書き込んでおく必要があるのではないか。
 最後に、財務状況を公開している学校法人の比率が100パーセントに近くなり、情報公開が義務化されたことで終了となっているが、個別大学の財務情報はどうやったら手に入るのか不明である。情報公開されていると言っても、事実上はされていないのに近い状態ではないか。この辺も検討いただきたい。

小出委員】
   達成目標3−1−5について、17年度から医師・歯科医師の養成を目的に、臨床実習前に統一試験を行い病院に出させるという共用試験が実施される。それに対して予算措置がゼロとなっているが、来年度の予算措置に入れていただきたい。私学は全部各大学で費用を持たなければならないし、OSCEという模擬面接方式の共用試験にしても、模擬患者の費用など非常にコストがかかる試験である。その点も考慮していただきたい。
 それから国立学校の老朽施設については、一部についてはまだ十分達せられていないが、確実に進んでいることは事実。校舎の老朽化や耐震工事に対応するのは私学も同じなので考慮してほしい。

池上委員】
   文化の項目は、165ページの8−1から8−4に至るが、芸術文化振興から始まり、文化財、文化の振興基盤、国際交流という構成で、前半は概ね順調で、後半は少し問題があるとなっている。
 1点目は、今後どのような評価指標を立てるべきかについて。概ね順調とされているものの指標では、一定の文化事業等にどのくらい支援できたか、また、子どもたちが文化に触れる機会をどのように広げたか、どの程度デジタル化が整備されたか等が指標となっている。文化の指標の場合、芸術文化は創造性、文化財は日本文化の質の高さであり、幾つかの指標がそれなりにあると考える。例えば、どれだけの観客を動員できたか、どれだけの訪問者を海外から引きつけたか等は非常に重要。また、創造というものは、単に創造者だけに任せておくものではなく、質の高い訪問者や参加がないと基本的には達成されない。大変難しいが、将来の課題として考えるべきことであり、視野に入れていただきたい。
 2点目は、現在多くの文化施設は、財政危機もあり、指定管理者制度その他の新たなマネジメントシステムが要求されている。このシステムの担い手がしっかりしていなければ、今後の日本の芸術文化は大変な状態になると考えられている。しかし、このアートマネジメントの専門家の養成については、専門家養成のための大学ができ始めたばかりだ。また、全国的な研修組織でも養成が追いついていないのが実情だ。その一方で、指定管理者制度で多くの人材が次々と必要とされており、文化財の領域に於いても学芸員の再教育・再訓練を強力に推進する必要がある。
 3点目、最近の文化事業というものは分離融合型である。情報技術の集積と創造的芸術文化の結合があったところに新たな産業が起こっている。それを視野に入れた場合、創造の成果をどのように映像化、複製、市場化、大衆化するかも、重要な文化基盤に位置づけられる。文化基盤の視野はここに書いてあるとおり、どんどん情報分野に広がっている。情報分野に広がった領域と結合する方法を評価基準に加える必要があるのではないか。
 4点目、著作権問題は更に大きな位置づけを要する。今や物的財産より知的財産がはるかに重要性が高いことは、誰の目にも明らかである。日本国中にこれだけインターネットが張り巡らされていれば、すべての人間が創造者にも、優れた成果の享受者にもなり得る。ここで著作権の運用の実態・知識について、専門的なデータベースを作成しておくことは極めて重要で、今後のビジネスモデルにまで大きな影響を与えるだろう。著作権問題は、今や国民的課題であり、データベース化と専門的に研究教育する人材育成は急務である。これをどのように評価基準として将来を展望するかは極めて重要な課題。

吉田文化庁政策課長】
   著作権の関係では、この政策目標8−3−5、6に講習会や教材の関係を挙げているが、それ以外にも、学校で著作権教育を担われる先生方に対する教材の提供や、研究指定校による著作研究等、様々な取組を行っている。また、文化庁のホームページを通じ、各界、各層へ教材提供も行っている。平成17年度は更に進めてeラーニングシステムによる教材提供の計画を進めているところ。ただ、著作権の現代的な重要性について政策目標の中でどのように捉えていくかについての改善点は多く、今後の政策評価の中で生かしたい。

麻生委員】
   毎年の評価書を見ると、放送大学を例にとると多様なニーズに応えているかいないかがよくわかるようになっている等、全体としてよくまとめられる方向になってきたと思う。放送大学の場合、10万人を達成することが目的ではなく、様々なニーズにどうやって応えるか、デジタル化された場合の授業料が今のままで維持できるかという問題もある。多様なニーズに応えられる放送大学になっているかどうかを評価する方向が出てきたことはありがたい。
 日本の場合、義務教育を受けていない世代に対して学習の機会を考えていくことが大切である。また、リフレッシュ教育でも循環の問題や様々な問題を放送大学は解決してきつつある。その点の評価もきちんとお願いしたい。
 評価書全体は、最後はエキスパートジャッジで決めているが、個々の施策の自己評価をしているアドミニストレーター(行政官)はエキスパートではないので、個別の政策の評価の段階でエキスパートを例えば3分の1でも入れて、名前を出すことで非常に信頼性を増し、一挙にこの評価書がよくなると考える。

伊藤座長】
   同様の難しさは、スポーツ政策についても言えると思う。

杉山委員】
   今回の評価は、スポーツ振興基本計画に対する進捗状況と現状を表している。特に生涯スポーツ社会の実現・充実については、スポーツ体育の拠点をこれまでの学校スポーツから地域へ移すという大きな転換があった。地域そのものが非常に戸惑いながらも、概ね順調に進み、既に多くの市町村で総合型スポーツクラブができている。「総合型地域スポーツクラブ」は、一つのスポーツにこだわらず様々なスポーツをお年寄りから若い人たちまで行うクラブと理解され、実践されている。非常に良い方向に向かっている。
 競技力向上については、メダル獲得率を3.5パーセントにするという数字が出ている。これを金メダルで考えると、間もなく始まるアテネオリンピック約300種目のうち9つくらいとなる。9つくらいというのは、金メダル5つだったシドニーオリンピックの2倍に近い。そのための施策として、国立スポーツ科学センターの発足やスポーツ医・科学の充実、一貫指導システムとあるが、この一貫指導システムというのがなかなか難しい。従来、中学スポーツ、高校スポーツ、大学スポーツ、企業スポーツと縦割りで、サッカーでいうところのU19、U23という年齢別の考え方が日本ではなかなか出てこなかった。一貫指導システムとは、それを年齢ごとでやっていくこと。中学生と高校生とではルールが違うスポーツもあるが、一貫指導体制がようやく緒についてきたと思う。
 施策目標7−3に中学生、高校生の薬物乱用問題が目立ってきている。スポーツの世界でもドーピングという名前で取り上げられているが、ドーピングは単にスポーツだけの問題ではなくキャンペーン活動として取り上げることが必要ではないか。

ゼッターランド委員】
   スポーツに焦点を合わせて見ていたが、予算が関係すれば、明確な目標値を出さなければならない。実際にスポーツを行う上では、どんなに実力があってオリンピック前に好成績を出していたとしても、オリンピックで必ずメダルが取れるという保証はどこにもない。オリンピックで勝つためにはそれ以上の運が必要だということを痛感している。そこで実際、22年度までに達成する目標値としてメダル獲得率3.5パーセントとするのはいかがなものか。また、メダルを取った選手の年齢的な問題として、今幾つなのか、次のオリンピックでも活躍できるのか、次の世代は育ってきているのか等にまでつながってくる。達成目標7−2−1平成17年度までにトップレベルの競技者を組織的・計画的に育成するため、一貫指導システムを構築する、の評価は「進捗にやや遅れが見られる」となっている。そうすると、次の世代は育っているのか、それをもとにして、メダル獲得率3.5パーセントという数値が適切なのか、このあたりの評価が気になるところ。当然、選手がいないとどうにもならないが、その選手を育てる指導者についてはどうなのか。ナショナルコーチアカデミーのシステムを確立するというところでも「進捗にやや遅れが見られる」という評価がされている。このあたりを総合的に見て、国際スポーツの競技力向上をどのように考えているのか。
 ジュニア層の育成についても国はどれだけ支援するのか、それとも、各競技団体に任せてしまうのか。現状の分析と今後の課題の欄で、ジュニア育成の一貫指導システムを34競技団体中19団体が行っているとあるが、バレーボールに限ると実業団チームの中でジュニアチームを持っているところは3チームと全体の10パーセントにも満たない状況があり、内容が伴っていない。そういったことも含めて、国際力をつけオリンピックで勝っていくためには、目標を立てるだけではなく、その内容を充実させていかなければならない。
 学校の中におけるスポーツの位置づけについてだが、児童生徒の体力低下が言われているが、極端に分かている。実際に運動部活動の参加率の推移を見ると、年々向上しているとは言え、チャンピオンを目指そうという子と運動しない子と極端に分かれる傾向がある。その中間層の子どもたちをどのように救済していくかは学校スポーツにかかっている。学校施設などのハード面を活用して、ソフト面を投入していくことが必要になる。
 今の社会状況では、子どもにとって遊び場が非常に少ない。学校という場所で、子どもたちが時間を有意義に使い、遊びながらスポーツができる活用の仕方を考えてほしい。
 達成目標7−3−5関係の指標を見ると、中学生の運動部活への参加率が年々上がっている傾向にある。13年度は翌年にサッカーのワールドカップを控えており、トップ競技者の活躍を見れば、そのスポーツをやってみようという子どもたちが増えるのは当然である。トップ競技者がどれだけ頑張るかが、子どもたちがそのスポーツに携わるかに大きく影響している。一貫的な指導で地域スポーツと学校スポーツとが両方トップに結びついていくように、また生涯スポーツに結びついていくようになることが望ましい。

横山委員】
   達成度合いの分類について。3分類から4分類になったことは良いが、まだ「進捗していない」という評価を嫌がる傾向があるのではないか。施策目標7−4「宇宙分野の研究・開発・利用の推進」で、「進捗にやや遅れが見られる」となっている。しかし、今、ロケットの打ち上げ失敗、「みどり」の運用断念、アメリカのスペースシャトルの事故等で非常に厳しい状況だ。この状態が「進捗にやや遅れが見られる」だとすると、「想定どおり達成できなかった」「想定したとおりには進捗していない」というのがどういう状態を指すのか。この分野ぐらいは、「進捗していない」という評価をしても良いのではないか。
 同様に、施策目標3−4も、ほとんどの項目が「想定どおり達成できなかった」となっているのに、全体として「一定の成果が上がっているが、一部については想定どおりには達成できなかった」はおかしい。遠慮なく今の状況が一番厳しい状況だということを言い、そこから抜け出す努力をすることがこの政策評価の目標ではないか。

星野委員】
   8月23日に文部科学省政策評価会議において実績評価書を決定する為にこの政策評価に関する有識者会議が開催されている。この会議の目的は、我々有識者が客観的に外部の目で検証することにある。この会議の目的自体を我々委員の間で少し自己評価しなくてはならない。それは文部科学省が行った政策評価結果の仕組みとその評価結果を、客観的・専門的な観点から検証することと考えられるため、今日の会議で出された意見がいかに評価結果に反映され、より客観的なものになるかがこの会議の目的達成度、アウトカムになると思う。そこで、「達成目標」の達成度、つまり、達成目標の235が分母で「想定どおり達成」した達成目標数を分子とした数字がいわゆる15年度の目標達成率である。これを明確にして示すべき。
 もう一つ、この会議で達成目標を全部点検し、実態と異なる・矛盾しているという指摘を受けた達成目標と文部科学省内部での評価がどういう関係だったのか、成果指標に基づく集計を是非やってもらいたい。これが文部科学省の評価結果へのいわゆる外部評価結果となる。
 さらに、達成目標自体の設定の妥当性について。達成目標を変えるべきもの等もう少し整理し、できれば来年度はこの会議を評価書を作る前にやるべきで、施策目標ごとに会議を開催してもらいたい。評価室がまとめる前に、有識者の達成度評価について各施策目標の主管課と関係課とで検討する機会を設けてほしい。そうしなければ、運用のレベルは上がらない。
 そもそも基本目標がはっきりしていない。例えば、信頼できる教員の養成にしても、施策目標や基本目標がはっきりと設定されていない。達成目標の一つ一つの仕組みづくりを使い、養成がどれだけできたかという基本目標、成果指標を設定すれば、アウトカム型の目標が設定できる。さらに、最初の信頼される学校づくりの施策目標の達成度を以て成果指標を設定できる。来年度は、施策目標ごとに分科会をつくり、より突っ込んだ内容の議論をしていかなければ、次のレベルにいかない。制度の改訂等を考えるよりも、こうした運用水準を高めることを重視すべき。
 まずは事業の目的を明確にしないと、何が目的なのかはっきりしない。整理を一つひとつ行い、主管課が事業の評価をより厳格に目的設計することが望ましい。できる限りシンプルに、目的、対象と意図と結果、活動、それに対する指標を事業評価に反映してほしい。

伊藤座長】
   文部科学省各担当部局においては、引き続き実績評価書の取りまとめを進めていただきたい。

(2 )その他について
  政策評価の今後の日程について説明が行われた。

伊藤座長】
   本日は、大変充実したご議論をすることができた。今後とも文部科学省の政策評価の客観性、実効性を高めていくために、委員の積極的な協力、助言をいただきたいと思う。引き続きよろしくお願いしたい。

  ── 了 ──



(大臣官房政策課評価室)

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