第一次報告
平成18年11月28日
高等教育局医学教育課
はじめに
- 高齢化による疾病構造の変化、患者のニーズの多様化、生命科学や医療技術の急速な進歩などを背景として、国民の期待にこたえる良き医療人の育成が一層重要となっている。
- このため、平成13年3月に、医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議(座長:高久史麿 自治医科大学学長)(以下「平成13年協力者会議」という。)は、報告書「21世紀における医学・歯学教育の改善方策について」を取りまとめ、医学教育の具体的な改善方策についての提言を行った。この報告書は、1これまでの医学教育の内容を整理、精選した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下「モデル・コア・カリキュラム」という。)の提示、2臨床実習をこれまでの見学型から診療参加型とした臨床実習カリキュラムの提示、3臨床実習開始前の学生の評価システム(共用試験)の導入の提案、4教える側(教員、教育組織)の教育能力開発の推進のための提案、を柱としている。
- 現在、文部科学省では、これに基づいた医学教育改革を推進しており、各大学はモデル・コア・カリキュラムに基づくカリキュラム改革や診療参加型臨床実習等の実施に努めている。また、平成17年度から、社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構により、すべての医学部が参加する臨床実習開始前の共用試験が正式実施されている。
- さらに、平成16年度より、医師免許取得後の2年間の臨床研修が必修化された。これは、医師が、適切な指導体制の下で、医師としての人格をかん養し、プライマリ・ケアを中心に医師としての必要な診療能力を効果的に身につけることができるようにするものとされている。
- このように、良き医療人の育成のために卒前・卒後における教育の改善・充実が図られる一方で、地域医療を担う医師の養成・確保や腫瘍学教育、医療安全教育の充実など、新たに緊急かつ重要な課題が提起されている。
- このため、本協力者会議は、平成17年5月より、近年の医学教育改革の動向を検証するとともに、新たな課題の解決を目指した医学教育の改善・充実方策を提言するため、検討を行ってきた。
- このたび、地域医療を担う医師の養成・確保や社会的要請が高い事項に対応するモデル・コア・カリキュラムの改訂等について一定の議論の結果を取りまとめることができたので、第一次報告として公表するものである。さらに残された課題については、最終報告の取りまとめに向けて引き続き議論を行っていくこととしたい。
目次
- 1 地域医療を担う医師の養成及び確保について
- (1)地域医療を担う医師の不足と医学教育・大学病院の果たす役割
- (2)医学部の今後の入学定員の在り方
- (3)入学者選抜における地域枠の在り方
- (4)学部教育における地域医療を担う医師養成の在り方
- (5)卒後教育における地域医療を担う医師養成の在り方
- 大学病院における新医師臨床研修の充実
- 新医師臨床研修後の研修における総合診療医の育成
- 大学や大学病院における生涯学習体制の整備
- (6)地域医療を担う医師確保に関する大学病院の役割
- 大学病院による地域医療支援
- 遠隔医療システムの活用
- 2 医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂について
- (1)「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づく学部教育の充実
- (2)地域保健・医療についての記載の充実
- (3)腫瘍に関する病態発生・診断・治療についての体系的記載
- (4)医療における安全性への配慮と救命・救急に関する記載の充実
- (5)医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する今後の検討課題
- 3 最終報告に向けた検討課題
- (1)入学者選抜方法の改善について
- (2)共用試験の位置付けの明確化
- (3)新医師臨床研修との整合性・接続性・役割分担を踏まえた臨床実習の在り方
- (4)大学病院における新医師臨床研修の充実
- (5)専門医養成の在り方
- (6)医学系分野で求められる教育者・研究者の養成
- (7)臨床研究の推進
- (8)教育研究病院としての大学病院の役割を適切に果たすための組織体制の在り方
- (9)女性医師の増加に伴う環境整備

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