ここからサイトの主なメニューです

1 入学者選抜の改善

 
 入学者選抜は、基本的には各大学の教育理念や教育目標に照らして各大学の責任において行うべきものであるが、入学者選抜の在り方は、入学後の医学教育や、前段階の高等学校教育の在り方に深く関わっていることに留意し、その改善を図ることが必要である。

(入学者選抜方法等の改善)
 近年、少子化の進行に伴って、専攻分野によっては学生数が収容定員に満たない大学が生じてきている中で、すべての医学部においては入学定員を満たすのに十分な学生が入学を志願しており、かつ、他分野と比較して成績優秀な学生が多いと考えられる。確かに、疾病構造の変化や医療の高度化等に伴い、医療に必要な知識・情報、診療技能等が高度化する中で、それを学習するためには相当の知的能力を有していることが期待される。しかしながら、 教育や研究に携わる者も含めて「良き医師」の養成という医学部教育の使命を踏まえれば、入学時点での知的能力のみならず、医学を学び研究することまたは医師になることの目的意識が明確か否か、将来医師になるために必要な人間性や自ら学ぶ姿勢さらには高度化・複雑化する医学・医療を担うために必要な資質を有しているか否か、といった観点を入学者選抜に当たって重視することが求められる。

 このため、入学者選抜方法に関しては、学力検査のみに頼ることなく、面接、小論文、高等学校長からの調査書、適性検査の活用や、推薦入学の実施など、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化を進めることが望まれる。さらに、アドミッション・オフィス入試の活用等により、受験生の資質や目的意識、意欲等を時間をかけてきめ細かく判定する取組も望まれる。その際、受験生に地域の社会福祉施設等におけるボランティア活動の感想文の提出を求めるなど、地域の保健、医療、福祉に接して将来を考える経験や機会を持たせ、その結果を入学者選抜に反映させること等が考えられる。入学者選抜方法の改善については、大学の入試担当部門や担当者のみならず、医学部教員全員が積極的に取り組む姿勢を持つことが求められ、また、入学者選抜の結果と入学後の成績や活動状況、医師国家試験の結果等との関係について追跡調査を行うなど改善のための取組も重要である。

(高等学校教育と医学教育との接続の改善)
 さらに、高等学校教育の多様化や大学進学率の上昇等により、多様な能力・適性、意欲・関心、履修歴を有する生徒が大学に進学してくることを踏まえ、大学医学部の教育内容、教育方法等もこれまで以上に学生個人に応じたものとなるとともに、大学と高等学校の連携を図りながら個人の能力等の伸長を図ることが求められる。このため、入学者選抜方法の改善にとどまらず、高等学校教育と医学教育との接続の改善(高等学校教育から医学教育への円滑な移行)という観点から、大学医学部と高等学校の連携の充実や取組の改善を図ることが求められる。

 具体的には、まず大学は、求められる学生像や医学部教育を受けるのに必要な学習、アドミッション・ポリシー(受験生に求める能力、適性等についての考え方をまとめた入学者受入方針)等を、募集要項等を通じて、明確に示すことが必要である。

 その上で、オープンキャンパス等高校生が大学を訪れて見学や視察等をする機会の充実に加え、高等学校における出前講座(大学教員が高等学校に出向いて行う講義等)、高校生の大学の講義等の受講(大学における科目等履修生や聴講生としての学修)等、医学部教員が高等学校を訪れる取組や高校生が医学部の教育や研究に触れる機会などを通じて、医師に求められる資質や医学部教育を受けるのに必要な学習等を直接高校生に伝え、医師になることへの関心を高めるとともに医師の社会的責任の重さ等を認識させる機会の充実を図ることが重要である。このような医学分野の高大連携を促進するため、大学における科目等履修生や聴講生としての学修等を高等学校が単位認定するなどの高等学校の協力支援や、高校生対象の講座の開設や単位認定等も含めた、大学と高等学校間の高大連携の協定書の締結などの取組も有効と考えられる。特に、理科や数学に重点を置いたカリキュラムの開発や大学等との連携方策についての研究を実施しているスーパーサイエンスハイスクールと大学とが連携した取組を進めることにより、高校生の生命科学や医学に対する興味・関心を、より一層高めることも可能であると考えられる。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ