ここからサイトの主なメニューです
国際教育協力懇談会(第6回)議事録

2006年6月15日(木曜日)

1. 開会(事務局)

2. 委員等紹介
 
出席者:   木村座長、荒木委員、内海委員、片山委員、白石委員、廣里委員、弓削委員、渡辺委員
欠席者: 工藤高史委員、工藤智規委員、千野委員
オブザーバー: 国際協力機構人間開発部・末森部長
国際協力銀行開発セクター部・橋本部長
外務省経済協力局開発計画課・小野企画官
事務局: 有村大臣政務官、近藤文部科学審議官、瀬山国際統括官、渡辺大臣官房国際課長

3. 有村大臣政務官挨拶
   参議院で現在、政務官をさせていただいております、有村治子でございます。前回は、第2回のときに出席させていただきました。そのときにもご示唆に富むご指摘を賜ったことに、心から感謝申し上げます。
 今、触れていただきました、今後の教育協力のあり方がきょうの議題になろうかと理解しているんですけれども、この6月1日と2日に、大臣の代理ということで、モスクワで行われました教育大臣会合に参加させていただきました。その報告をさせていただきたいと思います。
 来月、小泉総理としては最後になります、ロシアのサンクトペテルブルクのサミットですが、それに先立って、6年ぶりに教育大臣会議を開こうということでございました。大臣は教育基本法の答弁で国会にとられるということで、それ自体、正直なところ、日本のプレゼンスを考えると、それこそ副大臣、政務官が何とかディフェンスをして、トップに国際会議に出ていただくというのが本来の姿ではないかと、私は今でも思っております。日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、それから初めての議長国のロシアというグループ・オブ・エイトの各国に加えて、世界銀行、ユネスコ、それからメキシコ、南アフリカ、中国、ブラジルなど、ロシアと仲のいいところがゲスト参加されていました。
 テーマは、21世紀におけるイノベーション社会のための教育で、サブテーマとしては、イノベーション社会をどう構築していくか、エデュケーション・フォー・オール、万人のための教育を世界としてどう進めていくか、それから移民教育という3テーマに絞りました。かなり精力的な議論が行われたと思っております。
 イノベーション社会についてですが、やはり科学技術が進歩して、イノベーション社会を構築していくためには、先進国、途上国を問わず基礎教育から高等教育、また生涯教育に至るまで、すべての人がアクセス可能な質の高い教育を提供することが重要だという認識が共有されました。そこで、こういう出され方をしていました。教育にアクセスを持てない子供たちがサクセスできるわけがないということで、アクセスさえおぼつかないときにサクセスできようはずがないということで、韻を踏んだ英語でのディスカッションだったんですが、アクセスとサクセスを、どこに生まれようが、どこの地域の層に生まれようが、どうやってアクセスを実現していくのかが大変大きなテーマになりました。
 特に南アフリカの代表などからは、1人を落ちこぼれにさせることで、その町が落ちこぼれを抜け切れない。そういう地域をつくることが、国を落ちこぼれから抜け切れなくする。そういう国を持つことが、その大陸が落ちこぼれから抜け切れないようになる。そして、これは地球の損失だという形で、いかにエデュケーション・フォー・オールが万国共有の問題に認識してもらえるかどうかという、大変パンチのあるプレゼンテーションがなされていたと認識しております。
 教育こそ万国共有の公共財だという認識はなされたんですが、とはいっても財源が厳しい中で、教育の質、どうやって先生方の質を確保するのかという意味では、大変に悩ましい問題だという各国の偽らざる本音の部分も聞かれました。そういう意味では、今回、ほんとうに議長国のロシアも頑張ってくれたんですが、ほかの政策や領域に比して、教育のプライオリティーをどうやって上げていくのかというところは、まだ解決に至っていない、問題共有された最初の部分、スタート部分ではないかと思っております。
 その中で、日本の強みである理数科教育、技術教育、それから、まだまだこれから取り組んでいかなければいけない外国語教育、ICT教育、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー教育、異文化教育、それから教育への国際化という観点で、イノベーション創出のためにはある程度の社会的インフラが必要だという認識がなされました。これは、最後の日の、当日の朝まで、議長声明という形でコミュニケを出そうとしていたんですが、何とか、初めて議長国になろうとするロシアへのヨイショというか、ご祝儀も含めて、モスクワ宣言という形でまとまりました。
 万人のための教育はかなり盛り上がりましたけれども、やはり各国の国益、あるいはユネスコなど組織の益が、それぞれの思惑が錯綜する中で、移民教育に関しては各国ともあまり触れられたくないアキレス腱もあるということで、なかなか情報の開示が進まなかったのも事実であろうと思います。
 日本の強みということで、お金を随分落としてきた、貢献もしてきたということを私のほうからも申し上げましたが、いかにお金を協力するか、技術面でのバックアップをするかと同時に、どういう効果を上げられるのか、また、エデュケーション・フォー・オールなり支援を受ける方々が持続可能な開発を、独自で立っていけるのかという意味では、南南協力などの概念も随分、各国が注視してディスカッションを進めたように記憶しております。
 それから、私のほうからご報告させていただいたんですが、世界でICT教育が進む中で、一方で影の部分もある。例えばインターネットで爆薬とか麻薬、犯罪の手口、自殺のサイトなどで死体サイトなどもありますし、そういうものが子供たちに、お茶の間ですぐに手に入る。それは国境も越えるし、それぞれの大陸の法制や各国の規制もすぐに越えてしまう。児童ポルノなどというのは日本のほんとうに恥ずかしい部分でございますが、日本はそういう意味で負の先進国でもございます。
 そういう意味では、IT、ICT教育が万能薬ではなくて、それを進めると同時に、各国で、子供たちが健全な環境の中で情報にアクセス権を持つという、モラルとか規制、大人の倫理というところも、看過できない大事な問題だと思っております。
 最後になりますが、2015年のEFA目標達成に向けて、先進国が引き続き、グループ・オブ・エイトがコミットして、継続して支援を行っていこうということが約束されました。日本の教育協力においても、援助関係者と教育関係者が連携し、また、プロジェクトマネジメント、それからODAの関係もありますけれども、政治も含めて、いかに当事者間だけの問題にしないかということでは、教育のプライオリティーを国際協力の中でも上げていかなければいけないという思いで帰ってまいりました。
 これが6月2日のモスクワタイムズに載った、一応ビジブルであったということで、真ん中がロシアのフルセンコ教育大臣で、左がアメリカのマーガレット・スペリングス教育庁長官でございます。にこやかにしているのが、大臣のかわりに行かせていただきました私でございますけれども、正直、やはりG7、G8に参加させていただくのは、日本では当たり前のことですが、アジアの中で唯一の公式参加権を持って、しっかりと発言でき、それがしっかり評価できる土台、土壌に、スタートラインに立たせていただけることがこんなにもありがたいことなんだとまざまざと痛感して帰ってまいりました。きょうの議論も、緊急の公務が入らない限り、フルアテンドさせていただいて、お話を学ばせていただきたいと考えております。
 以上で、ご報告させていただきます。どうもありがとうございました。

4. 資料説明(事務局)

5. 討議
 

【木村座長】
 最初の資料2が、前回ここでお出しいただきました議論のポイントをまとめたものです。資料3−1が、前回までにご質問のありましたところについて簡単にまとめた資料でございまして、きょうご議論いただきたいのは、今も室長のほうからお話がありましたが、資料4であります。
 いよいよこの委員会もあと二、三回となり、報告書をまとめなければいけない時期に差しかかりつつあります。そういうことで、今までの委員の皆様のご議論をもとに、骨子案を事務局に作って貰いました。柱を3本立てておりまして、1番目が「バックグラウンド」、2番目が「今後の教育協力のあり方」、3番目が「我が国の大学が有する「知」の活用」ということにしてあります。
 これについて、少し時間をとりましてご議論いただきたいと思いますが、今もお話がありましたように、2 を中心にご意見を賜ればと思います。どういう観点からでも結構ですので、気がついたところがございましたら、御議論頂きたいと存じます。ざっと見る限りこれは問題だという部分はないように思いますが、いかがでございましょうか。
 内海先生、どうぞ。

【内海委員】 口火を切るのは勇気が要りますが、発言させていただきます。バックグラウンドのところは大変結構だと思いますが、地球規模の問題ということで一括りにされていますが、エデュケーション・フォー・サステイナブル・ディベロプメント、平和構築のための教育、災害後や紛争後の教育復興、サイレントディザスターと言われるエイズに対する教育支援等、多くの問題が含まれると思います。地球規模という言葉だけでは受け取る人によって問題が拡散してしまいますので、少し具体的な例を挙げたほうがよいと思います。
 それと関連して、2で、「今後の教育協力の基本的な方向性」の部分ですが、文部科学省が中心となって取り組んできたアフガン教育支援や地震災害後の支援があります。これは教育は人道支援であるとの観点から行なわれたわけで、この点を基本的な方向性の中に明記することが必要だと思います。文部科学省として、日本の教育協力はこのような方向であるということを国際的に示していく上で説得力があるという気がいたします。

【木村座長】 ありがとうございました。まことに同感でございます。
 ほかにございませんでしょうか。渡辺先生、どうぞ。

【渡辺委員】 前回、欠席して大変失礼いたしました。前回の議事録を見せていただきますと、(1)、(2)とあって、(3)に留学生関係の話があったと伺っております。きょうの新しいペーパーを書くための項目の中で、留学生関係はどこに入っているのかちょっとわからないのですが、つまり、日本が留学生をどういう形で受け入れるのがいいのかという項目が見えにくい。独立して書かれてしかるべきテーマではないかと感じますが。

【木村座長】 大山さん、その辺はどうでしょうか。

【大山国際協力政策室長】 留学生関係に関しましては、例えば人材育成とか研修生の受け入れというところと関連していると考えている次第ですけれども、何分、留学生政策全体のことに関しましては、別の中教審の大学分科会等の場でまさに取り上げて、議論しているという向きもございますので、必ずしも政策的な話をここで大きくというのは若干、書けるかどうかというところがございまして……。

【木村座長】 内容としては入ってくると思うんですが、特出しできるかどうかというところですね。中教審の大学教育分科会でも、何回も時間をかけて議論しておりますので、事務局からすると、別に場があるという考え方もあると思います。とりあえず、柱だけをご紹介申し上げたのですが、実際には、内容としては書かざるを得ないと思います。

【渡辺委員】 よくわかりました。別の審議会のほうで、ゲストとして、たしか立命館大学の谷口教授が招かれて、そんな話をしたという機会がありましたか、JUCTeについて。

【木村座長】 谷口さんはありましたね。伺いました。今はっきり思い出せませんが。

【渡辺委員】 日本国際教育大学連合が、先だってNPO法人として東京都から認可をもらって、スタートしたんですけれども、この連合には、日本は非常に留学しにくい国だという認識があるわけですね。留学生のマーケットはこれからアジアの若者を中心にどんどん大きくなるわけですが、日本に来る前に彼らに現地でいろいろなサービスを与えて、それで日本に来てもらおうという、ワンストップサービスセンターを作ったらという提案が出ています。
 留学情報の提供、カウンセリング、英語教育、入学願書の作成、ビザの手続、入学金や授業料の納入、到着時の出迎え、宿舎の手配、留学後のモニタリングや両親への報告等々、いろいろあるわけですけれども、そういったことを、各国にサービスセンターを1つずつ置いて、各国ごとに一元的に運営できるようなことをやろうということで、岡山理科大学、近畿大学、慶應義塾大学、埼玉大学、芝浦工大、拓殖、東海、東京工科大学、東京電機、東京理科、長岡技術科学大学、明治、山口、立命館、早稲田、それからNPOのアジアシードといった16の大学、機関が集まって、会費を払い、維持会費も払って、それをベースに、今言ったようなことを展開してみようということになっています。
 他の欧米諸国や、最近は中国までそういうサービスを始めているわけですが、それに比べて日本は余り積極的にやっていないという反省がわれわれにはあります。ですから、できるところから手をつけていこうということでNPO法人が立ち上がって、運営を始めております。たまたま私が理事長をやらされるはめになりましたが、ことし1年は少なくとも頑張ってみようと思っています。
 留学生の受け入れ、ニーズはますます高まっている一方で、受け入れの体制が整っていないということに対する危機意識がそういうものをつくらせたのだという現状をぜひご認識の上に、こういう報告書にも、細かいことは結構ですので、対応のあるべき姿を描いていただけると有用ではないかと思った次第です。以上です。

【木村座長】 ありがとうございました。
 資料3−1の留学生選抜方法の改善について、中教審の大学教育分科会でも、この議事録で言うと、前回、白石先生が冒頭ご発言になっておりますが、私も全く同じ意見で、あちこちで申し上げているんですが、池田さんは今、国際交流室長でしたか。きのう池田さんが私のところへ来られて、国費留学生についても、あり方について、選抜の方法、事前サービスについて改善しようということを、一部かなり改善されているみたいですね。ですから、留学生という見出しは難しいかもしれないけれども、できれば、やはりその辺のところも入れることが必要ではないかと思います。
 ほかに。どうぞ。

【片山委員】 これは懇談会の報告書の柱立て、概要だと思うのですが、一番最初のところに、トピックといいましょうか、一番中心的な『国際開発教育のための知的ネットワークの構築』という題がついております。多分これが今回の懇談会の目玉だと思うのです。そして、バックグラウンドの一番最後のところにも、知的ネットワークの仕組みを整備していくのだという指摘がある。
 具体的にそれは何なのかということになって、第2の「今後の教育協力のあり方」とか、3の「わが国の大学が有する知の活用」というところを見ると、ちょっと内容が乏しいという感じがします。具体的に今までのディスカッションの中では、知的ネットワークというのは、知的マーケットという意味も含めて、従来の単なる大学あるいはその他の研究者のネットワークをつくるというところにとどまらずに、もう少し、共同の研究であったり、具体的な事業の実施であったり、マーケットとして、ほかの国、海外にも売れるようなものが出てくるというイメージでした。私の持っていたイメージはかなり大がかりなネットワークというか、仕組みづくりではないかと思っていたのですけれども、実際に、2、「今後の教育協力のあり方」の具体的な方策の中でも、ネットワークは、例えば「国内関係者相互のネットワークの形成」というところに出てくるぐらいです。3の「わが国の大学が有する知の活用」では、「サポートセンターの抜本的見直し」や、「大学の人的ネットワークの促進」ぐらいだと思うのです。
 売りにするのであればもう少しその辺を言及する必要がある、あるいは何か目玉になるような新しい仕組みとか体制について踏み込んでいく必要があるのではないかという印象を持ちました。

【木村座長】 大変貴重なご意見、ありがとうございました。今ご指摘がありました3の(4)、サポートセンターについては、一つの項目としてしか書かれてありませんが、この辺に大いに期待するということかと思います。確かに今のご意見のように、全体的には物足りないという感じはしますね。
 弓削さん、どうぞ。

【弓削委員】 「2.今後の教育協力のあり方」の1の2番目の「・」で、「アジア諸国を中心に」と書いてありますが、ほかのところでも、「アジア地域における高等教育ネットワークの強化」とか、「アジア」に重点が置かれていて、日本としては今までアジアを中心に援助していたということで当然だとは思うのですが、最近、アフリカについての問題意識が非常に高まってきていることも事実です。去年、総理もアフリカへのODA倍増を表明なさいました。さらに、MDGの達成状況を見てみますと、やはりサブサハラアフリカが一番ひどい状況です。このことを考えますと、「アジア諸国を中心に」と言うときには、どれだけアジアに集中して、どれだけアフリカやほかの最貧国を考えるのかというバランスを考慮しなければならないのではないかと思います。
 また、「今後の」と言うときに、どのぐらいの今後を考えているのかということですが、中長期的に考えるのであれば、アフリカを入れないといけないと思います。2008年に第4のTICADミーティング(アフリカ開発会議)を日本がホストするということであり、その年はG8サミットを日本がホストする年でもありますので、このような点からも、やはりアフリカを視野に入れたらいいのではないかというのが第1点でございます。
 あとは全体にかかわることですが、今までのいろいろな議論で、戦略性を高めなくてはいけないということと、それに関連して、選択と集中という議論があったと思います。戦略性は、言葉としてはいろいろなところに出てきていますが、この内容でほんとうに戦略性が高まる援助ができる方向に物事が動くのかどうかというのは重要な点だと思います。例えば戦略性を高めるための研究、分析、途上国との共同研究は必要だと思います。それは戦略を磨くため、戦略を形成するための研究です。研究のための研究は、戦略性を高めることには必ずしもつながらないので、やはり戦略性を磨くための研究も必要ではないかと思います。
 もう一つは、戦略性と関連する、発信ということです。これも前に議論されたことですが、大学の知を活用するという意味では、いろいろな研究、分析をして、それを日本のODAの戦略、教育方面での政策ということで国際社会に強く発信して、日本独自のものはこういうものであると言うのが非常に重要だと思います。今、ODAの量は、日本は減っていますし、ほかの多くの先進国は増やしているわけですので、量で勝負できない状況を考えますと、ますます中身、内容で勝負することが大事になり、日本から海外、国際社会への発信力が重要になると思います。
 もう一つ、発信力と関係しますが、ODAに対する国民の理解を深め、参加を高めるという意味でも、大学から国内の人々への発信というのも非常に重要な部分で、今よりさらにできることがあるのではないかと思います。もちろん政府機関やNGO、国際機関、いろいろなパートナーと協力してやれると思いますが、国内向けの発信と海外への発信力を強めるための大学の役割も重要だと思います。それによって、国内では国際協力の理解者や参加する人も増え、サポートする人が増えれば、パブリックサポートが広まるということになります。話をもう少し広げますと、国際協力のための人材育成をどのようにしたらより効果的に進めることができるかということと、それに関する大学の役割という次の大きな課題に入ってしまいます。

【木村座長】 ありがとうございました。
 白石先生。

【白石委員】 先ほどのサポートセンターと学内体制との関連ですけれども、おそらく学内体制というふうに書くと、意味としては入っているでしょうが、一番重要な点はサポートセンターの見直しということで、例えばプロジェクト・コーディネーターを養成したときに、それがそれぞれの大学の人事政策の中でポストが制度化されませんと、2年するといなくなるわけですね。そうすると、幾ら養成しても結局使い物にならないというか、いつもそういう人がキャリアパスとして新しい仕事をできない。ですから、その意味で、学内体制とサポートセンターというのは密接にリンクしているということをぜひ指摘しておきたいと思います。
 その上で、重要なことは、新しいプロジェクト・コーディネーターのようなキャリアパスをつくることで、知的ネットワークそのものの制度化が進んでいくきっかけになるということだろうと思います。

【木村座長】 そうですね。それは非常に大きな問題だと思います。
 廣里さん、どうぞ。

【廣里委員】 国際協力の基本的方向性で、ODA協力全般にわたって質の向上、持続性の重視が求められているとあります。2の今後の教育協力の基本的な方向性でも、基礎教育協力については質的向上・持続的発展を促すアプローチを重視する、そのための協力体制の整備・充実を進めるべきであると。持続的発展ということでは、自立的発展に資する能力開発をどう進めるとか、あるいは日本の教育関係者によるコミットメントをどう持続させるかということだと思います。質の向上は重要なキーワードになっていますが、具体的に考えてみたときに、これまでのJICA(ジャイカ)を中心としたきめ細かいサポートを強化していくということだと思います。援助の現場では、例えば根本的学校教育レベル、ファンダメンタル・スクール・クオリティー・レベルと言いますが、あるいは最低教育サービススタンダードという考え方がありまして、これらは基礎教育における質の基準づくりの議論です。
 質とは施設だけではなくて、教員の質とか教材の質、最終的には学習の達成度という話になるんですけれども、日本の支援がこういった議論にどこまで関与しているのかが疑問でして、質の基準をつくる議論というのは、今の援助形態の主流であるセクタープログラム支援を実施するときに、実は政府がないがしろにしがちである貧困層とか少数民族、あるいは僻地住民、いわゆる社会的弱者への教育の質を担保するための重要な議論です。
 そこで、協力体制の整備・充実にかかわると思うんですけれども、政策アドバイザー派遣がありまして、そのバックには日本の知見や経験の蓄積があると思います。そういった形のアドバイザー派遣が、いかに援助協調とか政策対話の場でこのような質向上の議論に参加しているのか、いけるのかという話になってくるのではないかと思います。そうでないと、日本が考える教育の質自体が実態とかけ離れたり、あるいは孤立化してしまうリスクもあるのかなと思います。具体的方策でも、教育関係者を通じた教育ノウハウの提供があり、ここでも、政策アドバイザー、JOCV派遣、シニア隊員派遣とあります。これは、これまでの経緯とか実績で二者択一の議論ではない、例えば政策アドバイザーだけを派遣するのか、JOCV、シニア隊員だけを派遣するのかという話ではないと思います。ある部分で2つをリンクできるところがあるのではないかと思います。例えば、実数はわからないですけれども、相当数の方が保健・体育、音楽、美術、家庭科教師として派遣されると思います。これまでの懇談会の議論でも、保健・体育分野などが重要であり、日本の支援の特色であるという意見があったと思いますし、また、拠点システム構築事業でもこういった取り組みがあると思います。途上国におけるこれら教科の教員ギャップを埋めるという理由ではなくて、こういった分野が重要であるという立場に立って、もう少し政策対話とか援助協調の場で、政策アドバイザーの役割とJOCVの役割をリンクさせていくことはできないかと、具体的な話ですけれども、思いました。

【木村座長】 ありがとうございました。
 荒木さん、どうぞ。

【荒木委員】 1番目のバックグラウンドのところに関して、最後の(国際協力の基本的な方向性)に関係するのではないかと思いますが、もう一つよくわからないのは、例えば我が国の教育協力の、国際的に見て比較優位性を持った分野に、どの分野にそれを置くかということを含めて、我が国の教育協力のODAとしての基本方針が見えてこないというか、その辺をもう少しODA政策の中に、我が国の教育協力の独自の方針というか、比較優位性を持った方針を組み込むべきではないかということが1つあります。
 ここで言う戦略性というのは、ODA司令塔としての海外経済協力会議の新設に象徴される戦略性と同じで、具体的なODAの実施に際する援助戦略的な発想ではなくて、日本国としての国家戦略を考えた戦略性だと解釈しております。
 2番目が、今後の教育協力のあり方についてというところで、これも戦略性というところからくると、やはり1番目の、「今後の教育協力の基本的な方向性」と言うんですが、一番最初の、質的向上と持続的発展を促すアプローチというのは、促す特色あるアプローチを重視しというか、日本の特徴を生かしたアプローチを重視していくことが大切ではないかというふうに、強弱が非常に弱いという感じがします。もう少し強化して言うべきところは言っておいたほうがいいのではないかと思った次第です。
 したがって、日本の知見云々のところも、やはり国際的に見て日本の得意とする部分、比較優位性の高いものに比重を置いた協力のあり方をある程度、選択と集中でやらないと、満遍なく全部やるというわけにはいかないのではないかと思った次第です。
 それから、「3.我が国の大学が有する「知」の活用」についての(3)に、「留意事項」とありますけれども、留意事項ではないのではないかと。ODA政策と教育協力政策とのドッキングというか、ちゃんと整合性を持った形で組み込んでいくということをはっきりうたっていく必要があるわけなので、留意する必要はなく、主張すべきことだと考えています。
 それから、「2.環境整備の方策」で、(1)「大学の知を生かし得る体制の整備」というところで、確かにプロジェクト・コーディネーターの育成と確保は大切だと思いますが、あわせて、大学は知の殿堂ですから、内外のいろいろ、人材育成、研修のソフトの魅力的な開発というか、研修の内容をもうちょっと高めるというか、そういう協力ができないものかと思っているわけです。
 もう一つは、大学の知がどういう価値を持っているかということで、つまり大学の知の市場評価的なものをどうしていくか。つまり第三者的な評価をするか、学内にするか。やはり大学の知に対するちゃんとした客観的な評価が必要ではないかと思うんです。自分でこれがいいと思ってもマーケットになじまないものがたくさんあるわけで、その辺のところも考えてやる。どういう体制を組むか知りませんが、評価体制の確立が必要ではないかということが1点。
 最後に、サポートセンターの抜本的見直しについては、「将来的には、大学関係者による自立した運営を」と書いていますけれども、もちろん大学関係者も入っての上ですけれども、やはり幅広い協力体制による自立的運営ということではないかと思います。経済界も含めた人たちも寄ってたかって、こういうものに対して協賛というか、共同の呼びかけをしていくことが必要かと思います。
 それから最後ですけれども、もう一つの機能として、サポートセンターの抜本的見直しの中で、内外の教育協力機関との協力体制と言うんですか、ネットワークか、あるいは、内外の教育協力関係機関というのは国際的にもあると思うんです。そういうところとも、サポートセンターがネットワーク化して情報をとったり、交流していきながら、必要なものを日本の大学の中にインプットしていくという体制が、サポートセンターならではの仕事ではないかと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【白石委員】 先ほど廣里委員から出た政策アドバイザーのところですけれども、別にこれは教育協力だけの問題ではなくて、一般的に言えると思いますけれども、政策アドバイザーというのは、この前の会合のときに渡辺課長が指摘しておられましたように、大体1人で入っていってもあまり有効ではないことが多いんです。それは2つ理由があって、向こうのほうは、1人だとたまに相手してくれるぐらいで、なかなか身内として扱ってくれないということがありますし、それから日本のほうでサポートの体制がないと、行っただけで忘れられてしまうということで、実は日本の国内でのサポート体制も含めて、チームとしてアドバイザーの活動をやらないと、私見ておりましても、あまり有効にならない。
 その意味で、単に政策アドバイザーを派遣しますということを書いていても、実はあまり有効ではない可能性があるので、どういう形で派遣するのかをきちっと考えた上で書いていただきたいと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 そのほか、よろしゅうございましょうか。先生、どうぞ。

【内海委員】 先ほど弓削先生からご意見がありましたが、「今後の教育協力の基本的な方向性」における「今後」とは、一体いつまでなのかという点です。教育協力においては、明確に2015年というターゲット・イヤーがありますので、そこを目指して、エデュケーション・フォー・オールを目指すことを、教育を扱う文部科学省としてのターゲットとして明確に示したほうがいいのではないかと思います。
 それから、サポートセンターの抜本的見直しの部分ですが、「将来的には、大学関係者による自立した運営を」というところが、私には、よく分かりません。先ほど大山室長のご説明には、アメリカのようなという形容詞があったと思うのですが、アメリカの大学とUSAIDの関係と、日本の大学とJICA(ジャイカ)やJBIC(ジェイビック)との関係は、かなり異なっていると思います。ですから、アメリカのモデルをサポートセンターに当てはめて、自立した運営をするということが果たして可能か、若干疑問を持っております。

【木村座長】 ありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。
 よろしゅうございますか。それでは、一わたりご意見をいただきました。かなり多様なご意見をいただきましたので、このご意見を全部入れられるかどうかわかりませんが、なるべく生かして、改訂版をつくってみたいと思います。
 それでは、まだ予定もございますので、先へ進ませていただきます。
 まず最初に、片山委員から、NGOの視点から、きょうの議題にも関係してきますが、教育協力関係者の連携促進ということで、ご意見をいただき、引き続きまして渡辺委員から、開発教育について、資料を使ってご説明いただきたいと思います。その後、少し時間をとって、まとめて議論したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、片山委員、よろしくお願いいたします。

【片山委員】 資料5をごらんください。資料5にしたがってご説明いたします。この国際教育協力懇談会の中で、NGOという立場で加わらせていただいていることを、ほんとうに時代が変わってきているなという感じがいたします。昔のNGOは、何だかわけのわからない団体だと思われている方が、(今でもいらっしゃると思いますけれども)、多い中で、一緒に議論の輪に加わらせていただいていることを感謝します。
 最初に、NGOは、特に教育に関してはどんなことをやっているのか、どういう問題があるのかを書きました。特に直面している課題と実際の活動ということで、1番、2番を書きました。そういう経験の中から、NGO側から見て、ほかのセクターと協力できることの可能性としてはこんなことがあるのではないかということを、箇条書き的なものでございますけれども、書かせていただきました。
 まず、教育支援を行っているNGOは初等教育支援が非常に多いわけですが、実際にNGOが直面している、問題を整理してみようということで考えました。大体3つぐらいに分けて考えると理解しやすいかなということです。1つは、アジア・アフリカは、中南米もそうですが、大体共通していることですが、都市部の問題。次に農村部における問題。第三は紛争とか自然災害の後の教育の問題ということで、都市部、農村部とまた違うカラーがあると思います。
 都市部においては、やはり最近の都市化の中でスラム化している都市が非常に増えているということです。スラムに暮らす、特に経済的に貧しい子供たちへの初等教育の問題、それからストリートチルドレン等の問題が、NGOが一番かかわっているものが多いわけです。その場合に、初等教育だけを援助しても実効性がないということを、だんだん私たち経験してきました。例えばストリートチルドレンの場合には、子供の家族との和解とか子供自身へのカウンセリング、それから、ある程度の職業訓練をして世の中で働いていけるようにするとか、基本的なライフスキルを身につけさせないと社会生活が営めないということが、課題として見えてきております。
 農村部においては、若干違いまして、アフリカの場合、干ばつ等では状況が違いますけれども、持っている課題は、食糧とか基本的な医療、保健、それから、収入が少ないということで教育が受けられないということがあります。ある意味では都市部と似ていますけれども、教育効果を高めるためには、教育の場だけを提供してもなかなか上手くいかないということを我々は経験してきております。特にアフリカは、最近はアジア、インド、中国でもそうですけれども、HIV/AIDSの問題が非常に深刻ですので、学校の先生がエイズである、子供もエイズである、授業が成り立たないということが現実の問題としてたくさん出てきているわけです。エイズへの対策を含めた総合的な支援が必要で、教育支援だけをやればいいということではないと最近は思うようになってきております。
 そういう中で、学校という場が地域のネットワークの場であるということも、実際の経験の中からわかってきております。学校は単に子供の教育だけではなくて、親の教育、あるいは地域でいろいろなライフスキルを学ぶ場という、公的ネットワークの場であるということも一つの重要な点であると思っております。
 それから、紛争とか自然災害が21世紀になって増えているわけですけれども、紛争や自然災害の後にNGOが直面する教育の課題は、直接的には、すぐに校舎の修築とか教材、教科書等の配付という、言うなれば物、あるいはハードの面の支援が優先するわけです。しかし同時に、子供のトラウマケアとか教育制度の立て直しというソフトの面でも、やはりNGOがかかわらなければ解決にならないということに直面しております。
 そういう問題の中で、実際のNGOの活動を大まかに分けますと、まずは就学前の子供への支援です。学校に行く前の子供たちに基本的な行動様式とか社会性を身につけてもらうような働きを、就学前の教育としてやっているケースがございます。多くの場合には、大体NGOがデイケアセンターのようなものを運営しながら、そこで就学前の教育を実施していくということです。
 次に、小中学校、初等教育の場合ですけれども、学校のカリキュラムそのものにNGOが加わるというのは、紛争の後とか特殊なケースを除いて、比較的少ないように思います。むしろ学校の環境の整備ということで実際の援助事業を、例えば学校の建設、机・いすの支給、トイレの設置、あるいは一部給食等をするという形で、環境整備をすることがNGOの活動の中心であります。それから、教師の再教育、あるいは子供の健康のための予防注射とか健康診断等、学校での学びが成功するための補助的な働きが大きいと思います。
 それ以外のところで、学校外において、NGOが運営していろいろな補習クラスをやる場合もございます。ストリートチルドレンのための施設を運営していく、あるいは補習をしてドロップアウトを防ぐということですね。それから、一番よく実施しているのは、子供の基本的な生きる力、ライフスキルと呼べると思いますけれども、生きていく上での基本的なスキルを、子供に補習の形でやっているNGOが非常に多いと思います。
 最後に、成人の識字とか職業教育にも取り組んでいるわけです。こういう中で、例えば少数民族への配慮、使用言語への配慮ということを、授業の中で行っています。
 NGOの活動の特色は、やはり第1が住民参加、自立志向だろうと思います。住民が自分たちで、例えば学校建設にも加わるとか、あるいは補習の中にもPTAのようなものを組織していって、親の意見を聞きながら進めていく。そういうことの中に、自分たちが教育を担っていかなければいけないのだという意識を持ってもらうような、そのためにも住民参加というのが一番大きな特色だろうと思います。
 2番目の特色は、現場主義ということで、草の根のニーズ、あるいは人々のライツ、基本的な権利に基づいた現場での活動が、行われています。こういう中で、NGOが草の根の経験を通して、現地に適した技術を身につけているケースが多いだろうと思います。日本の経験をそのまま現地に持ってくるというよりは、現場の人たちの声を聞きながら、現場でできること、あるいは教材等も現地で調達できるものを使ってやっていくというような、非常に草の根の技術を習得しているというのが特色だろうと思います。
 課題についてですが、沢山ございます。第一は、スケールアップの必要ということです。日本のNGOの場合、NGO自身の財政基盤とか人材育成、それから国際的なスキルをもう少し身につけるという意味で、日本のNGOのスケールアップが必要です。また、現地でも主な事業は規模が小さいものがたくさんございますので、国際機関等との連携をしながらスケールアップしていく必要が非常にあるだろうと思います。
 更に、現地の行政との連携を構築するスキルを身に付けることです。いつまでもNGOがそこで活動していくわけにいきませんので、その後のサステナビリティーを考えますと、現地の行政にゆだねていく部分が非常にございます。ですので現地の行政との連携を構築するスキルも、NGOにとってこれから必要だろうと思っています。
 また、NGOは現場での事業実施を得意としておりますけれども、長年やっていく中で、やはりその国の教育行政あるいは教育政策に対して提言していかなければ、幾ら現場で事業を実施しても対症療法に終わるということを感じております。近年は、政策提言能力がNGOにとっても必要だ、そのためには調査・研究、あるいは評価の能力開発がNGOにとっても必要だということが、課題として今あると思います。
 このような特色と課題の中から、NGOの側では、大学を含めたいろいろなところとの連携を進めていくというニーズが近年すごく高まってきているだろうと思います。そういう中で、具体的な可能性を幾つか、かなり具体的なところもありますけれども、書かせていただきました。
 まず第一は、(1)政策のレベルで連携できるだろうと思われるところがあります。日本の教育政策の中で、政策決定過程にNGOの声を反映していくということです。近年、外務省はじめいろいろなところで、あるいは政治家の方々も、NGOの声を聞くということが大分行われてきております。具体的に一つの過程の中に、制度的にNGOの声が反映できるような仕組みをつくることが大事だろうと思っております。
 あるいは、それをもう少し下のレベルで言いますと、教育セクター支援事業の計画立案あるいは実施の段階における協力も、NGOとしては可能性があると思います。例えば事前調査への参加、現地でいろいろな情報を集めるときに、現地のNGO、あるいは日本のNGOがそこに介在した形での情報収集、それから事業の実施に関しては、NGOへの委託がもっと行われていいのではないかと思います。これは、先ほどアメリカと日本の違いについての指摘がございましたけれども、日本のJICA(ジャイカ)の場合には、ODAの実施機関であります。アメリカのUSAIDは、実施機関というより政策機関ですので、USAID自身が事業を実施するということは非常に少ないわけです。予算の30パーセント前後はNGOを通しての事業実施です。そういう違いはございますが、いずれにしても、NGOにもう少し事業委託という形でしていくならば、関係者との連携が進むのではないかと思います。
 次が、政府あるいはJICA(ジャイカ)、JBIC(ジェイビック)との協議、意見交換。これは既にいろいろなところで行われております。今後さらに進めていく可能性があると思っているのは、人事交流とか相互の人材派遣だろうと思っております。人事的な交流がもっと進んでいくような体制を作る必要があるのではないかと思います。
 それから、先ほどから出ておりましたサポートセンターですが、ここにもNGOの経験を持っている者が何らかの形で加わることが、連携の一つの可能性になるのではないかと思います。
 最後は、少し大きな話ですけれども、大学、研究機関、JICA(ジャイカ)、国際機関、NGO等による情報交換や共同研究は既に行われています。更に、本懇談会では知的ネットワークという言葉でディスカッションしてきましたけれども、共同調査や共同の事業が行えるような、かなり大きなネットワークを構築することができればいいのではないかと願っております。そのためには、予算の確保が当然必要になろうと思います。
 (2)の大学とNGOの連携ということですが、先ほど、拠点システムで研究しました報告書をお手元に配ってございます。その26ページ、27ページに、NGOと大学の連携についての提言が3つほど、大きな項目で書かれておりますが、相互乗り入れによる人材の育成ということで、例えば大学のポスドクの方をNGOで受け入れる、あるいはインターンとしてやるという形で、人材を相互に乗り入れていけないだろうか。あるいは、大学の場を利用してのセミナーとか、大学が出すいろいろな出版物にNGOの職員が書くというようなことも、既にたくさん行われておりますけれども、今後も推進していくという形での連携ができるのではないかというのが1番目。
 2番目は、共同で事業の実施を行うことができるのではないか。特にNGOの得意であります草の根や住民参加、あるいは、ノンフォーマルや復興後の教育支援、それからエイズとかマイノリティーの教育というNGOの得意分野において連携ができるのではないでしょうか。例えば、大学が現地の調査をする場合に、共同調査を行い、論文等の形で業績として出していただくことができます。さらに大学とNGOが連携して現場での事業実施もできれば、いい連携が進んでいくのではないかというのが2番目でございます。
 3番目は、人材育成という意味で、NGOはまだ人材育成するキャパシティーが充分にはありませんので、そういう意味では、大学の中にNGOの人材育成のコース、例えば既に大阪大学なども、NGO対象というわけではないですけれども、あったりしますので、そういうもので、現職のNGOの職員が在籍したままで人材育成を受けることができないだろうかというのが書いてございます。
 そして、先ほどから出ております、大学におけるプログラム・オフィサーというか、プログラム・コーディネーターにもNGOの経験のある者が採用されればそれぞれの知見を発揮することができて、連携が進むのではないかということです。
 (3)は、日本国内での活動の可能性です。先ほど国内向けの情報発信ということがございましたが、NGOの現場での具体的な経験を、日本の学校で発信していくということです。国際理解あるいは開発教育を、NGOの職員を使って、学校の中で、小学校、中学校、高校で進めていくことができるだろう思います。そのためには、やはり教育委員会ともう少し制度的な連携、あるいはパイプが必要だと思っております。
 最後が、(4)現地での具体的なことです。青年海外協力隊、あるいはシニアボランティアでもいいですけれども、そういう方々が現地で活動するときに、受け入れ先は現在は現地の国になっているわけです。けれども、現地のNGOで受け入れて、そのNGOの事業を協力隊が実施していくということも連携の可能性としてあるのではないかと思います。それから、大使館、JICA(ジャイカ)等で今、ジャパンデスクとかいろいろな形で事業を進めていくわけですが、そのときに、現地採用の日本人職員も必要になります。そういうときにNGOの職員が入ると、現場を知っている者がそこでの新事業に貢献できるのではないかということが、具体的な可能性としては考えられるのではないかということです。
 以上で、報告を終わります。

【木村座長】 ありがとうございました。
 引き続きまして、渡辺先生にお願いしたいと思います。後で配られました、これですね。

【渡辺委員】 先ほど言い落としたことをちょっと話をさせていただいて、人材育成の問題に入りたいと思います。
 今回おまとめになる報告書は、主として大学の知的ネットワークの構築にポイントを置いた報告書になるのでありましょうけれども、初めて文科省が国際教育協力について本格的な報告書を出すということであれば、そこがポイントでありつつも、いずれかの日に本格的に議論するための、いろいろなテーマを含めた、多少なりとも包括的な性格を持った報告書であってしかるべきではないかと私は感じております。今回は、包括的であるけれども、しかしここに重心が置かれているという書き方になれば、理想的な報告書になりはしまいかと思っているわけです。
 そういう点からしますと、次のようなこともぜひ書き加えておいてほしいと思うんです。つまり、大学の高度の知的資産の活用という観点に加えまして、国民各層から成る開発協力人材を発掘して、恒常的に供給していくようなシステムが国内でつくられねばならないということです。その点に関する大学の役割はかなり大きいのではないかと思います。もう一度言いますと、開発教育協力人材を恒常的に供給していくための教育の仕組みということです。
 今、片山委員の意見を、非常に感銘を受けながら話を伺っておりました。例えば、ご報告書の中で7ページ、8ページあたりに、シャンティ国際ボランティア会でやっているという、NGOの海外研修制度など大変魅力的に思います。桜美林大学のケースですか、学生をSVAの事業に送って、そこで卒論や修論の材料を蓄えて帰ってきて、その活動報告に対しては単位を与えるということですね。こういったことも、私どもの大学でもやっているんですけれども、大学がこういう仕組みで開発教育人材を恒常的に生み出すような仕組みをNGOとの関係で築くというのは、実に斬新ですぐれたアイデアではないかと思います。
 私どもの大学のケースを言いますと、前にここで発言したような気がして、繰り返しになったら恐縮ですけれども、拓殖大学とインドネシアのダルマプルサダ大学とは姉妹関係にあるんですけれども、両大学が共同して、ダルマプルサダ大学の近くにある、住民二、三千人のコミュニティーの開発、特にコミュニティーリーダーの育成をやっていますが、ここに、拓殖大学の大学生並びに大学院生、後で話します開発教育のファシリテーターコースに集まっている人たちをかませています。
 今年、3年目になりますけれども、一番大きな効果は、日本人の学生がそこでの仕事を通じて育っていったことです。つくづくいいことをやったなと思わされました。このプロジェクトについては、実はJICA(ジャイカ)の草の根技協で年間1,000万円ずつ、3年間いただきまして、それに大変な感謝をしているわけですけれども、ともかくこういった試みは有効です。くどいようですが、開発協力人材を恒常的に生み出すような側面をぜひ書き込んでほしいと思います。
 次に開発教育の話になりますけれども、開発協力人材を恒常的に生み出していくという場合、大学生や大学院生に対する取り組みだけでは不十分だと思います。やはり小学生、中学生、高校生への働きかけが必要だと思います。そこで、私のアイデアに基づきまして、赤石和則さんという、この分野では有名な、アクティブな教員がいますけれども、彼が中心になって小学校、中学校、高校の先生に集まってもらって、開発教育のファシリテーションスキルを身につけてもらおうという試みを今やっているわけです。国際開発ジャーナル社の荒木さんにも大変な厚い協力をいただいているものです。
 都心の大学ですが、水曜日の夜、仕事が終わって7時ごろから集まっていただくということで、参加している人には大変つらい思いをしてもらっているんですが、それでも週1回で年間20数講をやっています、ウェイティングリストに100名以上もいるんです。1クラスを50人にし、さらに土曜日にもう一回コースを開くということで、全体100名近い人が集まってくれています。小学校、中学校、高校の先生はどうしてこんなにニーズが高いのか、そのニーズを調べているわけですが、わかったことは、総合的な学習の時間に何をやっていいのか、非常に戸惑っている先生が多いようですね。そして、開発教育という言葉に魅力を感じたらしくて、総合的な学習の時間の中に開発教育を組み込もうという意向を持った先生方が非常に多いことに気づかされております。
 もちろん小学校、中学校、高校の先生方だけではなくて、あの辺は文京区で、大学がいっぱいある町ですので、他の大学の教職課程をとっている大学生あるいは大学院生等も入ってきております。自分で言うのもおかしいですけれども、大変な盛況ぶりで、実は供給過多の状態にあります。他の大学でもこんなことを始められたらどうかと思うんです。その小学校、中学校、高校の先生が、ここで身につけたファシリテーションスキルを持って、現場に帰ってどのような成果を上げているのかということを目下、静かにウオッチングしているところです。
 お手元のイントロダクションの7、8ページを見ていただければ、カリキュラムの概要をわかっていただけるだろうと思います。こんなことをやっているわけです。ファシリテーション、ファシリテーショングラフィックのつくり方、そういったスキルを前期に身につけてもらって、後期には、テーマを設定したり、設定されたテーマを吟味したり、あるいはプレゼンテーションの仕方、評価の仕方、学習プログラムの作成等々もやっております。最終的には教材を作成したり、ワークショッププログラムを組成させたり、カリキュラムを作成するところまでやって、一人前にして出していこうということです。一つの小さな大学がやっている試みですけれども、非常にニーズが高いものだという実感を得ておりまして、他の大学等でも展開されれば、より大きなものになるのではないかと思うんです。
 さらに、小学校、中学校、高校の先生を中心とした開発教育のネットワークを私どもの大学が中心になってつくっていこうと考えています。学会という名前はつけないほうがいいと思うんですが、要するに開発教育に関心を持つ教員のアソシエーションです。そして、できることならば定期的なジャーナルの発行をして、この分野のプロモーションを図っていきたいと考えています。
 もとに戻りまして、大学の知のネットワークをつくって何かポジティブな成果を上げようという側面と同時に、開発協力人材を国内で、大学生、大学院生、小学生、中学生、高校生も含めて、協力への意欲を発掘し、形成していくという努力もやらなければならない。そうしなければ、日本の教育協力もいつか息が切れてしまう。息が切れないように持続的にエネルギーを注入していくような仕組みづくりが必要です。これはいずれこういうところでも本格的な議論をしなければならない時期が来るだろうと思うんです。
 そういったことを、今回の報告書の中でも、いずれやるぞという姿勢を見せるような書きぶりにしておいていただけると大変ありがたいということでございました。時間をとりましてすみません。

【木村座長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのお二人のプレゼンテーションに対しまして、ご質問あるいはご意見を賜りたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしくお願いいたします。
 荒木さん、何かありますか。

【荒木委員】 片山さんにお伺いしたいんですけれども、こういう教育関係のNGOの分野の人材というか、組織というか、今どのぐらいの規模で存在しているんですか。

【片山委員】 国際協力をやっている日本のNGOの数は大体500ぐらいと言われています。500ぐらいのNGOの中で、6割から7割は何らかの形で教育の事業をやっているだろうと思います。ですから、NGOの中では、教育分野に関わっているNGOの数が一番多い。保健よりも多いと思います。ただ、それは、例えばある学校とか地域の教育だけをやっているというのではなくて、先ほど申しましたように、最近は保健や職業訓練等も含めて総合的に支援を行っていますので業単発的に教育の事業だけ、例えば教師の再教育だけをやるという形ではないですね。
 NGOの数はそれだけあるのですけれども、NGOの中で教育の専門家がどれだけいるかということになると、数はちょっとわからないですけれども、そんなに多くはないだろうと思っております。日本の現状としても、例えば外務省の中にも、私の記憶ですと教育の専門家というのは、今お一人ですよね。

【荒木委員】 いたかな。

【木村座長】 小野さん、そうですか。

【小野企画官】 援助をやっている各課におきまして、教育分野を担当している者はおりますので、どこまでを専門家と定義づけるかどうかという問題はあります。教育分野の援助方針をつくるという観点では、当課の担当が1名です。

【片山委員】 NGOも似たような傾向で、教育だけをやっている、専門的に事業をやっているというのはそんなに数多くないと思います。ちなみに私は、この懇談会に「教育協力NGOネットワーク」というNGOのネットワークから出ているわけですけれども、教育協力NGOネットワークに加盟しているのが二十六、七のNGOです。ですから、実際に教育事業を実施していても非常に教育に関心があって、教育支援事業を中心的、集中的にやろうと思っているNGOの数は、そんなに多くないのではないかと思います。

【荒木委員】 もう1点。実は私、ミャンマーのシャン州というところで、日本財団がやっている小学校建設を視察しましたが、建てると同時に、ここに書いているように、コミュニティー開発をやっています。先生方のお給料を村が負担しなければならない。そのお給料を、村が自発的に収入を得ていくための、収入源のいわゆる技術協力をやって、収入を増やすという協力までしています。まさに住民参加です。したがって、学校を建てるときも勤労奉仕ということで、ほとんど住民の人たちが出てきてやる。学校の先生方の給料も、彼らが一生懸命稼いで出す。稼ぐ方法を一緒に教える。こういうパッケージのやり方は、NGOでは一般的にやっているんでしょうか。

【片山委員】 何らかの形のパッケージというのは多いと思います。ただ今のようなケースに、両親の収入を増やすために職業教育をするというよりは、学校の先生の給料をNGOがある程度肩がわりして出しているというケースのほうが現実的には多いと思います。ただ、先程申しましたように行政との連携、あるいは親への収入増加ということを頭に入れながらも、実際問題は出していかざるを得ないということだと思います。

【渡辺委員】 大学とNGOの連携をどう図るかという場合、NGOの現地体験と大学の専門的知識との連携というトーンが全体的に強いような感じがします。それと同時に、NGOが教育の機関である、ある種学校であるという認識も必要なんじゃないかとも思います。先ほど申し上げたように、大学生や大学院生をNGОが受け入れて、そして彼らがNGO活動のいわばフロントで動くような連携の仕方は面白い。シャンティのケースで1つ、ここで発見したわけですが、他にもございましょうか。私、そういう機能は非常に重要ではないかと先ほど強調したわけですけれども。

【片山委員】 ここに載っていないかもしれませんが、例えばCanDoという小さいNGOで、アフリカ支援を中心に行っている団体があります。そこでは毎年二、三名の修士あるいは博士課程の人を受け入れて、半年程、現場で実際に活動してもらって、そこでの経験を論文に反映してもらうそうです。論文でCanDoの現場のことを書いているので、それをまたCanDoに還元してもらって、自分たちの事業に反映していくということをやっているケースです。このような事例は幾つかありますけれども、ほとんどのNGOがそれを目指しているかというと、なかなかそういうふうになっていないと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 何かほかに。廣里さん、どうぞ。

【廣里委員】 私は今、開発系の大学院にかかわっていまして、広い意味で開発教育に関連するところだと思います。実は学生がNPOをつくって、国際理解教育プログラムというのを2000年から始めているんです。外国人の方とか留学生をリソースとして、愛知県の小学校、中学校、高校に出張授業をやっていますが、要するにスケールアップが課題で、NGOにも共通することだと思うんです。NPOという形をとれたのは非常にいいかなと思います。教員は大学の中でNPOをつくれないんですけれども、学生はつくれるということです。そこで、協力というか、連携ということで、学生のNPOと中部地域を基盤にするNGOが連携して、今、思いつきですが、こういった活動をスケールアップできないかなと思います。

【木村座長】 どうぞ、弓削さん。

【弓削委員】 今のお話についてですが、開発協力人材を恒常的に生み出すための仕組みはほんとうに重要だと思うんです。先ほど前半で議論された報告書の柱の中では、教育協力人材の育成とか初等中等教育の現場における国際理解教育の充実ということは書いてありますが、今のプレゼンテーションに含まれていたことは、もっと大きな課題だと思います。国際協力に関する国民の理解を深め、参加を高め、そしてパブリックサポートをじわじわと日本国内で広めていくためには、このような大きな取り組みが必要だと思います。
 ですから、今回の報告書でも、もちろん教育協力に焦点が置かれていることはわかるんですが、このような大きなとらえ方で、国際協力をどういうふうに推進していくかということが大事です。国民の大きな層を巻き込んでじわじわと広げていくということはほんとうに重要だと思います。
 そうしますと、この報告書のタイトルは仮だと思うんですけれども、「知的ネットワークの構築」というよりも、もっと中身の濃いものができるのではないかと思います。「知的ネットワークの構築」というと、ネットワークを構築するということはわかるのですが、つなげるという意味が強く出てしまうと思います。つなげる、連携ということも必要ですが、連携プラス、内容的にももっと積極的に踏み込んでやっていくんだと感じられるような強いタイトルをぜひつけていただきたいと思います。

【木村座長】 難しいと思いますが、努力してみます。要するに、ただネットワークの構築というと、何かつなげばいいじゃないかという感じですね、確かに言われてみると。もっと強いメッセージが出ないかということですね。

【弓削委員】 ネットワーク構築に加えてプラスアルファが必要です、はい。

【木村座長】 そうですね。ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。

【内海委員】 渡辺先生、どうもありがとうございました。非常に重要な事業だと思いますし、安くない受講料を払って学校の先生方がたくさん受講されているということに大変感銘を受けました。多分、学校の先生方を対象としたこういうコースは今までなかったわけで、こうしたニーズが非常に高いことを示していると思います。1つお聞きしたい点は、教育委員会等からの派遣や委託される等の連携はございますでしょうか。

【渡辺委員】 率直に申し上げまして、そこのところが一番のネックになっています。ウェブサイトや我々のプロモーションを耳にしてわれわれのところにやってきます。面接してみますと、実際にはやはり出にくい、出席しにくいと言う方が多い。こちらのほうから公的に校長あてに文書を出してくれという要求がかなり多い。もちろんそうやります。教育委員会クラスでオーソライズしてくれて、積極的に出ろと言ってくれれば有難い。我々がプレステージを持てば自然にそうなるだろうと思いますけれども、なかなかそこまでいっていないという問題があります。
 一私立大学が都あるいは区の教育委員会を動かすということは、実際問題、非常に苦しいことですね。その辺、お役所のほうのご理解等があり、やってもらうということがあれば有難い。その辺は荒木先生などと一緒に、実はごまめの歯ぎしりをやっているところですが、ぜひそういう方向を出してほしいですね。
 ODA大綱でも、一番最後のところで開発教育の重要性ということははっきりうたっているわけでもありますし、政府としても何らかのサポートをやっていただけるとありがたいというのが、我々現場にいる人間の切なる願いであります。

【木村座長】 荒木さん。

【荒木委員】 ちょっと追加して、確かに教育委員会、校長先生等がいい顔をしないというか、理解がない人もいるし、理解のある人もいる。とても理解のある先生は、それはいいよ、行ってこいということもあるけれども、大半は消極的で、先生方がなかなか出にくい。積極的に出る先生は、場合によっては出張してこいというぐらいまでやっていただけるところもある。ばらばらなんですね。
 したがって、この問題は、最初の開発教育の問題が持ち上がったときからの大きな課題で、文科省では、国際理解教育をどんどん進めていたので、国際理解教育のコンセプトと開発教育のコンセプトをどうやって整理統合して新しいコンセプトをつくっていくかということも含めて、大きな話題だったんです。だから、ここらでもう一度、真剣にこの辺のところを国民教育という観点から再整備していく時代が来たのではないかと思います。
 先ほど渡辺先生が、学校の先生方ということもあったんですけれども、中には企業から来ている人たちも何人かいまして、その人たちも、帰って企業の中で、逆に開発教育を研修しているということもあって、企業にとっても、つまり開発とは何ぞやということをわからずに海外投資したりするところもあって、改めて別な形から情報をいただいているということも聞いていますので、幅広く、学校のみならず社会全般に与える影響が非常に大きいと思うんです。その辺をぜひご理解いただきたいと日ごろから思っていましたので、改めて強調したいと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 ほかにございませんか。どうぞ。

【内海委員】 私がなぜこういう事業に感銘を受けたかという点を申しあげます。イラクで3名のNGOの方たちが拉致されたり、その後にも1人の若者が殺されたりした際に、無茶な行動をするということで、自己責任という言葉等によってかなり批判されました。しかし、悲劇に遭っているイラクの人たちに対して何かしたいという思いで手を差し伸べることは非常に重要だと思います。問題は、そういう思いを持った人たちにどうオリエンテーションしていくのか、どのような活動の場を与えていくのかが重要だと思っています。ですから、先生方が開発や支援に関して研修を受け、教育にあたると言うことは、子供たちに対して、正しい方向性を与え得るのではないかと考えていました。こういう事業は非常に重要だし、また、先生方もそういう思いを持っているからこそ、コースに参加するのだろうと思います。ですから、何らかの形で公的な支援ができればいいなという思いでご質問させていただきました。

【木村座長】 ありがとうございました。
 こういう方が将来は実際に現場へ出られるといいですね。ごめんなさい、変なことを言って。昔の仲間なものですから、つい。
 今のところは部屋の中での、頭の中でのトレーニングですね。実際に何人かが現場へお出になれると、その経験が子供たちに返ってきますね。

【渡辺委員】 8ページの一番下に書いてございますけれども、参加希望の学生を募って現地での研修をやっております。片山委員がおっしゃったようなNGOのプログラムとこういったものが結びついていけば、より光を発するということになると考えられます。まだ始まったばかりで、アイデアはいろいろあるんですけれども、実行に移せないことがまだたくさんあります。少々本気でやってみようと思っているわけです。
 拓殖大学も、カリキュラムの外のいろいろな夜間講座の中で一番光っているというか、参加者の意欲が一番高いカリキュラム外のコースが開発教育コースなのかなと最近感じています。一般的な教養を身につけようというのではなくて、非常に高い問題意識を持って先生方が参加してくれているという感じを持っております。さらにプロモートしていきたいと思っております。

【木村座長】 今の現場の話で、実際に学生さんなら現場へ参加できると思いますが、現職の先生は非常に難しいですね。

【渡辺委員】 夏休みにやっておりますから、何人かは参加……。

【木村座長】 可能ですか。

【渡辺委員】 可能ではあります。ただ、どうしても全額自己負担で行ってもらうしかないので、なかなかその点はつらいところであります。

【木村座長】 わかりました。
 ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、大体ご意見が出尽くしたようでございますので、まだ少し時間が残っておりますが、議論は以上といたしたいと思います。

【小野企画官】 今回のご議論を拝聴させていただきまして、最後に一言だけ申し上げさせて頂きます。開発協力分野での様々な形の人材の育成は、ODAの担い手として、我々がODAを実施していく上でのインフラの強化につながり、先ほど弓削委員からもご指摘いただきましたように、国民のODA支持の強化にも結局はつながっていくと思います。そうした観点から、渡辺先生がご紹介されたようなプログラムを国としてもサポートしていきたいと考えております。皆様ご承知のとおり、ODA予算が近年、減少し続けていることもございますので、そういった意味で、国としての様々なプログラムにサポートを行う上でも国民のODAへの支持ということが極めて大事であると思っております。
 荒木委員よりご指摘いただきました、ODA全体としての教育の位置づけについては、ODA大綱や中期政策でも、重点分野ということで明確に位置づけております。また日本としての強みという点では、主に技術協力を通じて、理数科教育支援を積極的に行ってきております。そうした地道な取組が南南協力につながる事例もございます。例えばケニアとかホンジュラスで実施してきた理数科教育強化プロジェクトが非常にいいプラクティスとして、周辺国にも広がり、広域的協力となったというようなサクセスストーリーがあります。
 こうした事例の詳細な説明は、今回お配りさせていただいた資料の13ページ、14ページあたりに載っておりますので、ご覧いただければと思います。更に、日本としての強みという点では、先ほど委員の方からもご指摘がありましたように、クロスセクトラルと我々は申しておりますけれども、いろいろな分野を横断的に組み合わせていくアプローチを推進しており、その重要性を国際的な場においても積極的に発信しているところです。
 冒頭にご発言いただきましたとおり、G8の教育大臣会合におきましても、有村政務官より、これらの点を明確にご指摘いただきました。来る来月のG8のサミットでも、教育が議題の一つになっておりますので、総理ご自身より、そういった点を明確にご発言いただく方向で、現在、調整しているところです。
 これらを通じ、国民の国際教育協力に対する関心が惹起されて、渡辺先生にご尽力いただいているプログラムとか、片山委員にご紹介いただきましたNGOのプログラムへの国民の参加も促進されるといった好循環ができれば、我々としては非常に好ましいと思っておりますので、その方向で努力させていただきたいと思います。以上です。

【木村座長】 ありがとうございました。
 どうぞ。

【有村大臣政務官】 貴重なお話、ありがとうございました。会が終わるに際して、私、次回以降どのぐらい参加させていただけるのかわかりませんが、ちょっと気になっていることをご報告させていただこうと思います。
 まず1点は、拓殖のファシリテーター、きょうは私、このパンフレットをいただくことも今回のミッションの大事な目標に掲げていたぐらい楽しみにしておりました。実は、私はアメリカの大学院を出ておりまして、そこは平和協力部隊、ピースコアを養成するのが母体の大学院だったものですから、ファシリテーターの技術だけは特訓されまして、今、政治家になっても、開発分野ではないですが、ファシリテーションスキルというのは日本人にとってはすごく大事な分野だなと思っています。特に、読み書きが重点的な日本の公教育なので、リアルタイムで聞いて、話して、それを相乗効果にまとめていく力というのは、日本人にとってはほんとうに必要な分野だし、こういうことをやってくださっているのがコースになってきた、しかも強気の価格設定というのも、(笑)すごく勇気づけられます。10年、20年動いてきたなという感じが、アメリカにしばらくおりました者としても思いました。すごくうれしいです。
 きょうの直接的な課題ではないですが、きょうも出たり入ったりしているところで、日本の提唱している、成長のための基礎教育イニシアチブにも、ジェンダー格差の改善のための支援、女子教育ということが書かれています。そして、きょう回った中にも、国際協力機構さんが出された平成17年の課題別指針を見させていただきました。その中にも書いてあるんですが、世界的に言う、教育におけるジェンダーの格差を是正しようというところは、女子の就学を阻むさまざまな要素、要因を取り除いて、女子の積極的な教育に対する参画を高めていこうというのが本来の理念であろうと思います。
 実際にきょう書かれていた具体的なアプローチとしては、女子に配慮した施設整備、例えば男女別のトイレをつくって、女性が安心して衛生的な水場あるいはトイレにアクセスを持つこととか、妊娠や出産によって小学校を中退した子供たちを、どうやって女子の復学をさせるか、そういうのが世界的な教育協力だと思うんですけれども、実は昨日、国立新美術館が六本木に竣工いたしまして、大臣とともに行かせていただいたんです。黒川紀章先生がつくられた大変いい美術館だったんですが、そこのトイレに行きますと、最初の見出しも男性と女性の区別がなく、両方真っ黒になっているんです。男性が青で女性が赤という表示がステレオタイプだというようなお話だろうと思うんですけれども、今、全国で潮流になっているところが一部あるんですが、やはり男女が混乱なく、安心してお手洗いに行けることはすごく大事だと思うんです。
 それを今さら、わざわざ全国の中で、赤はやめて、青はやめてといって中性にして、どちらも黒の表示にして、だけど男性は背広を着て、女性はスカートをはいているというのは、すごく極端な主張をする方の声がうるさいがゆえに、哲学なく、その主張にやみくもに飲み込まれているような気がいたします。国立新美術館、ここでもかという思いが正直いたしました。明確にこれは男女共同参画社会の理念の目指すところではないと思います。
 やはり中庸であること、ラジカルではないこともすごく大事だし、トイレに行きたいというときに、お互い両者の恥じらいなく、うわ、すみませんでしたということなく行けるというのが本来の公共のサインであって、両方黒にするようなことをしてだれが恩恵を受けるんだろうか。こういうことを、うるさいフェミニストの女性が言うからみたいな感じで、やみくもに受け入れるということがまかり通っていくのは非常に残念なことだと思います。
 そういう意味では、哲学を持って、ジェンダーの学習、教育に対する格差を是正していこう。男性のトイレにもおしめの交換台をつけるというのは大賛成でございますけれども、やみくもに中性化する、男を女化する、女を男性化するというような主張は、哲学を持ってしっかりと選別、峻別すべきではないかという思いをきのうもいたしました。
 どうしてもこの分野は結構、勇気が要ることで、これを言うと、国連でも女性の地位参画がという美名だったり、美しいロジックを出されるんですけれども、日々のセンスある、常識のある行動を勇気を持ってやっていくことも大事ではないかという思いを強めております。以上でございます。

【木村座長】 ありがとうございました。
 渡辺先生の大学のコースの参加者について御意見を申し上げたのは、当初のうちはたくさんの参加者があると思うのですが、そのうち、先生がおっしゃったように職場が出してくれないというケースがかなり出てくるのではないでしょうか。
 それでは、以上で終わりたいと思いますが、今後の予定等について、事務局からよろしくお願いいたします。


6. 事務連絡
   次回(第7回)は、7月13日(木曜日)14時から16時、文部科学省省議室に於いて開催する。

−了−


(大臣官房国際課国際協力政策室)

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ