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国際教育協力懇談会(第5回)議事録

2006年5月23日(火曜日)

1. 開会(事務局)

2. 委員等紹介

 
出席者: 木村座長、荒木委員、内海委員、片山委員、工藤高史委員、工藤智規委員、白石委員、千野委員、廣里委員
欠席者: 弓削委員、渡辺委員
オブザーバー: 国際協力機構人間開発部・末森部長
国際協力銀行開発セクター部・橋本部長
外務省経済協力局開発計画課・小野企画官
事務局: 近藤文部科学審議官、瀬山国際統括官、渡辺大臣官房国際課長、小松国立大学法人支援課長

3. 資料説明(事務局)

4. 自由討議
 

【木村座長】 資料2と3についてご説明をいただきました。
 いかがでございましょうか。資料2はこれまで出た意見の簡単なまとめということですのでよろしいかと思いますが、資料3について、何かご質問等がございましたら、お願いしたいと思います。
 こうやって見ると随分いろいろなことをやっていることがわかりますが、何かございますか。
 どうぞ、白石先生。

【白石委員】 この場が適当な場なのかどうかがよくわからないのですが、国費留学生の選抜のシステムのことです。少なくとも現在ですと、全然知らない学生がこちらに接触してきて、その中から当たるも八卦で選ぶということではなく、遠隔地教育をやって、学生の質をよく見た上で国費留学生の選抜ができる、そういうかつてはできなかったことができる時代に入っています。そういう意味で、特に国費留学生の選抜の仕方のところを、今の技術発展に対応できるような形で少し柔軟にしてみるというのは随分意味のあることではないかと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 私、最近の事情は知らないのですが、国によってやり方にかなりばらつきがあるようですね。非常に非効率的というか、日本にとって決してメリットにならないような選抜をしている国もあると聞いています。そういうことで、各国の事情を調べてみたらということを機会あるごとに発言してきたのですが、いまだにそういうデータは見たことがありません。私は今の白石先生のご意見に大賛成で、そういう工夫をする必要があろうかと思っています。文部科学省は在外、出先でいろいろなことをやっておられますが、やり方等について、捕捉されているのですか。相当いいかげんなことがやられているところもあるようですね。ある国の友人から、日本の国費留学生の制度の情報が、ごく細いチャンネルにしか渡っていないということを聞きました。その辺について何かありますか。

【大山国際協力政策室長】 今、手元に十分な資料がございませんので、担当のところとも話をさせていただきまして……。

【木村座長】 いろいろなうわさを聞いています。相当大きなお金を出して国としてサポートをしているわけですから、やはりきちんとすべきだと思います。
 ほかに何かご意見はございますか。
 どうぞ、片山さん。

【片山委員】 発表の中で、NGO等による活動ということを加えていただいて、NGOがやっているぞということを示していただいたことは非常にうれしく思います。けれども、ここは草の根技協JICA(ジャイカ)との連携の例が出ていると思いますが、実際にNGOの側は、例えば外務省とNGO支援無償を使ってやるとか、一番多いのはNGO自身の自己資金でやっている事業が数多くあります。スケールは小さいかもしれませんけども、非常に多くあって、カバーをしている内容が識字教育であったり成人教育であったり、就学前であったり、あるいはノンフォーマルであったり、非常に多岐にわたる事業をしているということです。NGOとしても、教育に関係する事業をしているNGOの数が日本でも非常に多いものですから、その辺のところを今後も何らかの形で生かしていけるようにしたいということだけつけ加えさせていただきたいと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 ほかに、どうぞ、工藤さん。

【工藤(智)委員】 先ほど資料2をさらっと見て、これをこれからのベースにするとすれば、(1)の2つ目のポツ、「大学としては、研究者そのものが成長するようなプロジェクトに参画すべき」というのは、何かネガティブで、それ以外はやらないみたいな、腰が引けたような印象を受けるんです。どういうご発言だったかは覚えていないのですが、より積極的に言うとすれば、後ろと前を逆転させながら、大学の教職員がプロジェクトに参加するに当たっては、大学の教育研究上プラスになるように、それと、大学の先生方だけですべてはできませんから、また、大学の先生方の中にも好奇心旺盛な方がいますから、そういう個人とグループを含めた、チームとしての人のマッチングが大事なのかなと。それに、何をやっても必ず何かのためになるだろうと私は思うのですが、この原案だと何か一部しか担当しないよという印象を与えると、大学にとって防御的すぎるかなという気がいたしました。
 それから、資料3ですけれども、大変多岐にわたってやっていらっしゃっていて感心いたしますが、逆にいっぱいやっているので、何が漏れているのかわかりにくいのですが、多分これからの施策づくりだとか議論の方向としては、やっていることよりはやっていないことが何なのか、どこが足りないのかというのが、もうちょっとあぶり出されるものである必要があるのかなという気がいたしました。
 そういう中で、非常に断片的な印象なのですけれども、例えばアフガンでああいう紛争があった後に、たまたまテレビを見ていたら、アメリカが英語の教科書をどさっと贈ったというのがあったのです。それはアメリカ的なやり方なのでしょうけれども、学校もない、教科書もない中で学校教育は大変だったと思うのですが、そこで押しつけ的にがさっと、しかも映像では英語版だったのですが、ほんとに現地の人にとっていいのかどうかがある中で、我が国は、この施策の中にあまり書かれてありませんけども、現地の事情によっては、教科書とか教材とか、現地のニーズを踏まえた対応もあるのかもしれないという気がいたしました。
 3ページ目の中で、マルチセクトラルでいろいろやっていますというのは、大変大事なことで、教育というのは教壇で勉強を教えるだけではなく、保健とか栄養というのも大変大事な要素でございますから、いろいろと多角的に、日本では当たり前と思っても、外国ではあまりやられていないことというのは結構あるのだろうと思うのです。ちょうど2000年のミレニアムのときに小渕総理のもとでG8の教育大臣会合というのがありまして、日本で初めて主催したのですが、そのとき、たまたま文部省の文部統計要覧というのも英語版でお渡ししたりしたら、一つびっくりされたのは、日本で明治以来、子供たちの身長、体重も含めた体力データがあるのです。アメリカやイギリスの人たちはびっくらこいて、何でこんなの持っているんだと。どうも諸外国はあまりやられていなようで、このようなデータはないということでした。また、今、特に食の問題が欧米でも問題にされておりますけれども、栄養のバランスの指導というのは大変大事なことでしょうし、これに加えて、スポーツとか文化という部分も必要かなという気がいたしました。
 それから、先ほどの留学生の関係で言えば、これもいろいろと取り組んでいらっしゃるのだと思いますが、大事なのは、アフターケアだと思うのです。別に留学生だけではなく日本の大学の場合には往々にして卒業してしまったらほうりっ放しで、あとは10年に一遍ぐらいの寄附をお願いねというのが通常のような気がするんです。特に、留学生の場合にはアフターケアがなかなか難しいのですけれども、母国にお帰りになって、時々ニューズレターを出しながらつなぎとめておく、それで日本への親近感とか、思いを絶えさせないようにする努力、これは政府だけではなく各大学も含めて、いろいろやられる必要があるのだと思いますけれども、そういうのが大事なのかなという気がいたしました。
 最後にもう一つ、これも非常に断片的な体験で、あるいは一般化するのは間違っているかもしれませんが、あるとき、アメリカの片田舎に行きましたら、いわゆるJET(ATL)で来られた先生が戻っておられるし、近くに日本語センターといいましょうか、国際交流基金のご援助だと聞いていましたけれども、いくらかささやかな日本語の文庫が用意されているスペースがあったのです。あちこちでそういうご努力をされているのかもしれませんが、私がたまたま見た限りでは、日本語を学ぶ人、あるいは日本を理解したいという人のための文庫としては大変お粗末でして、手近にあった本をとりあえず贈ったという印象なのですけど、せっかくいろいろと日本語、あるいは日本をPRするに当たって、例えば、JICA(ジャイカ)でも、あるいは国際交流基金でもいいのですけれども、外国の方にお薦めする100冊の本などを選ばれて、基本的にこの100冊はどこへでも贈るようにしようかとか、何かせっかくそういう拠点があり、事業があるのであれば、文科省も協力しながら、いろいろやれることはあるのかなという気がいたしました。

【木村座長】 内海先生、どうぞ。

【内海委員】 今、工藤委員からご指摘のあったアフガニスタンにおける教科書支援の件ですが、私自身が教育省政策アドバイサーで派遣されておりました時期のことですのでつけ加えさせていただきます。アメリカがいち早く、2003年に1,600万冊の教科書の印刷支援を行ないました。それは英語ではありませんで、もちろん教科としての英語もあるのですが、パシュトゥ語とダリー語のものを印刷しました。2004年には1,500万冊です。教科書を作成するに当たって、どういう教科書にしたらいいかを検討するのも政策アドバイザーの仕事で、国際的なワークショップでかなり議論をしたことを覚えております。これは、教育復興が重要であるとのブッシュ大統領の強い意向で実現したと聞いております。印刷をどこで行なうか、あるいは配付方法など支援の仕方にはいろいろと議論がありますが、教科書が英語だったということではございませんでした。
 日本が政策アドバイザーを派遣することは、どういう支援をするかだけではなく、どういう支援をしてはいけないかということも検討できるという意味で、私は当時、かなり有効な教育協力のあり方だと思いました。

【木村座長】 どうぞ、白石先生。

【白石委員】 先ほど、工藤委員が資料2の(1)の2番目の中ポツについてふれられました。おそらくこれは、私が先回申し上げたことをこういうふうにまとめられたのだと思うのですけれども、ポイントは、研究者がこちらにいて、マーケットが向こうにあって、マーケットと研究者をつなげば大学の「知」が活用できるという話では必ずしもない。むしろ、研究者がプロジェクトに関与することによって、研究関心そのものがもっと広がっていく、それが実は大学の教育と研究にとっても重要ですということを申し上げたかったのです。
 それに関連して、おそらくここにもうインプリケーションとしては入っているのだと思うのですけども、もし少し明示的に入るのならばということで申し上げますと、私は、サポートセンターは非常に大事だと思います。そのときに、サポートセンターでやったらいいことというのは、やっぱり人材の養成であり、そこでの趣旨は、例えば、(4)の一番下のところにプログラムオフィサーのことが書いてありますけれども、そういうプログラムオフィサー的な人をプロジェクト形成の中で、実際にサポートセンターで訓練していく、そういうことができるとサポートセンターそのものが非常に有機的な、システム的な意味を持つのではないだろうかということであります。

【木村座長】 ありがとうございました。
 よろしゅうございますか。
 どうぞ、荒木さん。

【荒木委員】 9ページの留学生の問題に関係する話ですが、留学生支援無償資金協力(外務省)は、国連に行かれている大島さんが経済協力局長のころ決めた制度です。JICA(ジャイカ)は年間何千人という研修生を受け入れる。短期で日本を見て、感じて帰ることも大切かもしれないけれども、100人ぐらい知日派をつくったらどうだということで、長期の研修という形で、日本の大学で知的な刺激を受けて帰っていく、知的な知日派というグループを形成するというかなり政策的な意図をもってこれを進めたのです。
 私が何を言わんとしているかというと、留学生政策というのは、ちゃんと確立されているのかということです。
 それから、ドイツ、イギリスなどはブリティシュ・カウンシルに代表されるように、留学生政策は外交政策の一環です。したがって、事これに関しては文部省と外務省の共管ということになって、かなり厳しく外交政策としてこれを考えていくというようなことを思うと、いろいろな留学生の政策、制度がたくさんありますけども、トータルとして日本の留学生に関しての新しいコンセプトを明快にしていかないと世界的にみて時代おくれになっていくのではないかという感じがしてならない。
 全体として、仕様書みたいにODAの中でいろいろな教育協力をやっていると出ているんですけれども、何か基本的にオールジャパンの政府としてのODAを絡めた教育協力、つまり基本的な政策が下敷きにあってここをやっているかというと、そうではない。そこのところが、我々現場をやっている人間としては時々わからなくなって、個々ばらばらという感じがありますので、ここはどこへつながってくるのだろうというところの幹のところをしっかりつくっていただかなければ、現場でやっているJICA(ジャイカ)にしても専門家にしても、大学の先生方にしても、困ってしまうのではないかという感想を持っております。
 以上です。

【木村座長】 どうもありがとうございました。
 よろしゅうございますか。
 今の荒木さんのご発言に関してですが、JICA(ジャイカ)がやっている地震工学と地震学のコースももう40年位続いています。2つのコースがあって、それぞれ10〜15名位参加しており、いろいろな大学の先生方がボランティアで講義をされています。これは2年コースです。2年、日本にいて頂くと確実に圧倒的に親日家になって頂ける。初めはいろいろとトラブルがあって、先生方にも親身に相談に乗って頂くこともあります。私、そのアフターケアで、10年ぐらい前にペルーに参りましたが、すごかったですね。JICA(ジャイカ)のプロジェクトに参加した研修員だけではなく、その周りの連中も集まってきまして、日秘センターに200人位の人が来ました。日本がやっているこの種のプロジェクトはこれだけ効果があるのだなとつくづく感じました。
 今、荒木さんがおっしゃったように、そういうものをナショナルポリシーとしてやっていかないといけないと思います。このコースについてもこれ迄もやめるとかやめないとか随分いろいろな議論がありましたが、我々が努力して、これまで続けてきたのですが、荒木さんの言われたようなことは必要ですね。
 それでは、資料についての質疑は以上とさせていただきまして、今日は名古屋大学の廣里先生のほうから資料をご準備いただきましたので、4を使って、ご説明をいただいて、その後また包括的な議論をしたいと思います。
 廣里先生、よろしくお願いいたします。

【廣里委員】 ありがとうございます。
 それでは、早速、報告を始めさせていただきます。
 スライドの2ページ目なのですが、国際教育協力の背景として2つの主要課題を示しております。国際的なコミットメントとしては、質の高い万人のための教育、EFA目標の達成、それからミレニアム開発目標、MDGsの達成を掲げております。
 また、グローバリゼーションの深化によりまして、国際競争が激化、それから知識型経済社会の流れが加速化してきました。それで高度の人材育成の必要性も高まっており、加えて基礎教育を拡充してきましたので、中等・高等教育の需要増があります。そこで、近年は、ポスト基礎教育としての後期中等教育や職業技術教育訓練及び高等教育の見直しも行われています。途上国、それから支援国・援助機関による挑戦というかジレンマなのですけれども、このような2つの課題を、仮に低所得国であっても、ほぼ同時並行的に達成する必要があることだと思います。
 途上国は、基礎教育における質の高いEFA目標の達成は地方分権化という文脈で進めている一方、ポスト基礎教育の見直しに関しては民営化、市場化を導入することによって推進しようとしているわけです。
 スライドの3ページ目に移りますが、基礎教育の重視による質の高いEFA目標にかかわる経緯の説明です。ここは既に事務局の資料で触れられておりますので、このスライドでまとめにかえさせていただきたいと思います。
 4ページ目以降ですが、教育に直接かかわるMDGsの進捗状況を示しております。それはスライド4から6ページ目になります。
 MDGsで教育にかかわる目標は、目標2の2015年までの初等教育完全普及化です。これは、就学年齢に達するすべての子供が2009年/10年に1年生に就学している、それで2015年にはすべての子供が初等教育を終了していないと達成できない目標であるということを意味しております。
 目標3は、2005年までに初等・中等教育における男女格差の解消と、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差の解消です。
 それで、現在の状況が、次の5ページ目です。まず目標2の初等教育の完全普及の達成については、サハラ以南のアフリカでの改善は不十分です。アジアでは、東南アジアでほぼ達成されておりますが、南アジアでの改善は不十分です。
 スライド6ページ目の表は、教育における男女格差についてですが、2005年までということで見ましても、やはりサハラ以南のアフリカでは改善が不十分か不変です。特に南アジアの中等教育段階では不変、西アジアの中等教育段階では悪化している状況です。
 次のスライド7ページ目で少しこの状況をまとめてみました。そうしますと、23カ国が2015年までの初等教育完全普及達成は困難という見込みです。数で言いますと、現在、約1億人の初等教育就学年齢の子供が未就学で、うち55パーセントが女子です。94カ国が、初等・中等教育における男女間格差の是正が達成できておりません。41カ国において小学校に入学した児童の3分の2が終了前にドロップアウトします。これは教育の「質」の問題が示唆されると思います。世界の15歳以上人口のうち7億7,000万人が非識字です。特に、サハラ以南のアフリカ諸国ではHIV/AIDSの影響が深刻で、多くの教師や児童が感染し死亡している状況があります。
 次の8ページ目に移りますが、こういった状況で国際社会はMDGsとEFA目標達成戦略の見直しをしております。MDGsの達成につきましては、2005年に国連ミレニアムプロジェクトとして、「教育とジェンダー平等性に関するタスクフォース報告書」が提出されました。
 また、EFA目標達成戦略の見直しに関しましては、幾つかの動きがあります。まず、グローバル行動計画を策定中です。これはEFA戦略の再設定とそれぞれの援助機関パートナーの得意分野を確認する作業で、2006年11月のEFAハイレベル会合で採択される見込みです。より具体的には、EFAフラッグシップ・プログラムの再検討と、E−9(人口の多い9カ国)イニシアチブの枠組み強化策が中心になっております。また、EFAのファスト・トラック・イニシアチブの枠組み強化も進んでおります。これは、FTIと呼ばれて、2015年までの初等教育完全普及化に向けた資金を加速的に増大させるためのイニシアチブで、2002年のG8カナナスキス・サミットで正式に発足したものです。
 これら取り組みの再検討や枠組みの強化を通して、2007年にはEFAの中間評価が予定されておりまして、ここで残された重点分野が再確認される見通しです。
 9ページ目は、冒頭で触れましたように、一方のポスト基礎教育と高等教育で、1998年のユネスコ世界高等教育会議以降、一連のポスト基礎教育と高等教育の役割見直しの動きが定着しております。最近では、2005年の世銀による中等教育政策研究とか、2006年に公刊予定の世銀の教育セクター戦略アップデートでも、ポスト基礎教育の強化が盛り込まれる見込みです。
 次の10ページ目では、これらの国際的な思潮や動向を踏まえまして、日本がとり得る国際協力の新たなイニシアチブあるいはフラッグシップの提案を試みました。選択肢はたくさんあると思いますが、この場では、ここにありますように5つほどを挙げました。
 第1に、MDGsやEFA目標達成戦略見直しの方向性に沿った「拠点システム構築」事業のプログラム化と、国内外援助機関との連携です。
 第2に、日本が表明しておりますBEGIN(成長のための基礎教育イニシアチブ)の評価と、BEGINに次ぐ国際イニシアチブとしてポスト基礎教育支援戦略を打ち出すことではないでしょうか。これには、例えば「万人のための中等教育」や「万人のための教育の質」などが考えられると思います。
 第3に、グローバル化による人材需要への対応にとどまらない、国家発展戦略やバランスのとれた教育システム構築としての高等教育開発支援も必要ではないかという点です。
 第4に、近年、特に低所得諸国で主流となっております個々の教育プロジェクト支援から教育セクター・プログラム支援への移行の中で、日本の援助形態やスキームを連携させることによって、援助協調に参加し、場合によってはリードしていけないかということです。
 第5に、今後の展望なんですが、日本の国際教育協力の特徴や優位性として、これまでに行ってきた途上国の自主性や自助努力を促すアプローチをさらに強化して、途上国の内発的な能力開発を促進することではないかと思います。
 スライド11ページ目になりますが、第1の「拠点システム構築」事業を今後どうしていくかということにつきましては、既に牟田先生のご報告の中でご指摘がありましたプログラム化がキーワードになると思うんですけれども、その際のヒントが、MDGsやEFA目標達成戦略の見直しの方向性の中にあると思います。この11ページ目では、EFAフラッグシップ・プログラムとE−9イニシアチブを取り上げたんですが、例えばここで挙げられているEFAフラッグシップ・プログラムの中に今後の方向性が示唆されているのではと思いますし、もちろん、それ以外のものが出てくることもあろうかと思います。HIV/AIDSに関する教育、障害者教育、農村部での教育、紛争後の教育、教員と教育の質向上、女子教育などなどです。これらのフラッグシップ・プログラムは、推進する国際機関との連携も重要になってくるのではないかと思います。
 次に移りまして、12ページ目は、BEGIN(成長のための教育イニシアチブ)に次ぐ国際イニシアチブということです。このスライドはBEGINのことなんですが、BEGINに関しては、2002年以降、教育ODAを向こう5年間で少なくとも2,500億円以上実施するというイニシアチブで、3つの重点分野と3つの新たな取り組みで構成されております。このイニシアチブを強化することももちろん重要だと思いますが、これから2015年に向けたイニシアチブとしては、ポスト基礎教育支援戦略を打ち出すことではないでしょうか。先ほど触れました「万人のための中等教育」、「万人のための教育の質」ということで、MDGsに含まれるすべての教育レベルにおける男女格差の解消も、ポスト基礎教育への取り組みを強化していかないと達成できない性格のものだと思います。
 次のスライドが、国家発展戦略と言いますか、教育システム構築としての高等教育開発支援ということです。例えば、ラオスでは、首都のビエンチャンにラオス国立大学というのがありまして、最近まで総合大学と言えるのはこの1つだけでした。ラオスでは、大メコン川流域圏プログラムで、成長回廊といった道路網が整備されつつあり、地方の中核都市での高等教育機関の設立の動きとして、2000年以降、2つの地方大学が生まれています。また、地方の女性が地元を離れて首都ビエンチャンの大学で寄宿舎生活を送るというのは難しく、女性の高等教育進学率が低い原因への対応にもなっています。
 カンボジアでは、経済面からの人材需要にこたえる形で、かなりいびつな形で私立大学が乱立されております。国の高等教育機関も収入増の観点から、これら私立大学にキャンパスを貸すなどしており、プノンペンあたりに行きますと、国の大学や研究所なのか私立大学なのか、一見、見分けがつかない有様になっております。果たしてこういった市場原理のみで、国の高等教育システムがいびつな形で発展していって良いのかという疑問を持っている次第です。
 そこで、こういった新興の地方大学や私立大学を含む途上国の高等教育機関の質保証を通して、国内外に比較し得る質の高い水準を確保するための大学評価体制の整備といったことも重要になるのかなと考えます。
 もう1点は、日本にできた開発系の大学院をより積極的に活用して、その知識や経験の共有化のための国内外のネットワーク構築による途上国の高等教育支援の可能性についてです。既に神戸大学大学院国際協力研究科では、ラオス国立大学経済経営学部の支援をなさっておりますし、政策研究大学院大学のベトナム支援もすばらしい成果を上げておられると思います。
 私がかかわっております名古屋大学大学院国際開発研究科でも、これは科研の助成なんですが、ラオスの地方大学の質保証研究チームを立ち上げたところでして、さらに王立プノンペン大学の開発学大学院の支援を細々と続けております。この開発学大学院は今年の10月からの開校予定で、国際開発研究科をモデルにしているわけです。これは日本の開発系大学院をモデルにした一つのインスティチューション・ビルディングだと思いますが、大学院レベルということで、カンボジアなどではODA枠内での支援というのは不可能で、立ち上げのシードマネーがなかなか得られない状況です。こういった支援も、日本の開発系大学院の組織的なバックアップあるいは非ODA資金の活用によって実効性が上がるのではないかと思います。
 次のスライドは、先ほど触れました個々のプロジェクト・アプローチから、近年の教育セクター・プログラム支援への移行に関してです。この場ではあまり深く立ち入るつもりはないんですが、その特徴だけ簡単に触れますと、ここのスライドにありますように、相手国のオーナーシップの重視、単一の教育セクター計画と予算枠組みの支援、長期コンサルタントの雇用や途上国の既存の組織から乖離したプロジェクト実施ユニットの削減、援助手続の共有化、そして経常収支などの財政支援を含む援助形態です。
 しかし、貧困削減戦略体制下と言われる中で、財政支援を含むセクター・プログラム支援を急激に進めてきた世銀や英国の路線変更の兆しがありまして、この流れの中で、途上国のスキルギャップを埋める欧米流のやり方の反省に立って、途上国自身による意思決定とか行動を重視する日本型の技術協力の必要性が再認識されつつあることを指摘しておきたいと思います。
 そうしますと、15ページのスライドにありますように、これまで個々のプロジェクトとして取り組まれてきました教育機会の向上、教育の質改善、教育マネジメントの改善といった目的と、それぞれの有償・無償資金協力形態、技術協力のスキームを同時に取り込むことで、実は教育セクター全体の改善を支援する、あるいは基礎教育サブ・セクター、中等教育サブ・セクターなどの改善を支援する教育セクター・プログラムができ上がるのではないかと思います。もちろん、現在の援助協調下では、これを日本単独でやることは難しいわけですし、その必要もないと思いますが、少なくとも援助協調に効果的に参加して、場合によってはセクター・プログラム支援をリードできる潜在性があると思います。
 今後の連携可能性ということで、実は幾つかありまして、東南アジアの途上国で準備中のものを主に例として挙げました。ブラジルのものは、ラテンアメリカですけれども、JBIC(ジェイビック)によって検討中と聞いております。サハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ、南アジアの諸国でこういった連携の可能性がまだまだ多くあると思います。
 最後になりますが、16ページ目では、今後の展望として、能力開発に焦点を当てた国際教育協力の取り組みを強化していくことを提案したいと思います。能力開発は英語ではCapacity Developmentと言われておりまして、従来の能力構築、Capacity Buildingと言われていた概念が進化したものです。すなわち、「途上国の課題対処能力が、個人・組織・社会など複数レベルの総体として向上していくプロセス」とされておりまして、途上国の主体性や内発性を重視するものです。先に触れました日本の国際教育協力の特徴としまして、特に技術協力は途上国自身による意思決定や行動を助ける知見・経験を共有するアプローチをとっており、有償資金協力にしても、返済を促すことで相手側の自助努力を支援してきたという経緯があると思います。要するに、個人レベルの研修活動から組織レベルの組織強化に結びつけて、さらに制度構築に至る政策・制度の定着と、そのための予算確保を含む環境や条件の整備を行うことだと思います。例えば、紛争終結後の教育復興・開発支援はまさに能力開発支援のプロセスそのものだと思いますし、ほかにも教員の授業実施能力を高めるシステム構築、あるいは地方分権化における教育計画、財政管理、学校運営システム構築も能力開発のプロセスに当たると思います。
 少し長くなったと思いますが、以上で私の報告を終わります。ありがとうございました。

【木村座長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの廣里委員の資料について、必ずしもこれに限らなくても結構でございますが、ご意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
 どうぞ。

【工藤(高)委員】 よくまとめられていると感心しました。
 資料の15ページのセクター・プログラムに関して言えば、今後はプロジェクト支援からプログラム支援に切りかえていかなければ限界なんだろうなと思います。前にも触れたかもしれませんけれども、ワンプロジェクト・ワンメニューで対応すると、どうしても建物が建っておしまいとか、先生を派遣しておしまいとか、多分広がりがないんだろうと思います。先方のニーズもかなり多様なので、それにどう応えるかというと、おそらくプログラム支援がいいんだろうと思います。
 それに関連して、基礎教育の協力についてですが、確かに世界的な潮流でいろいろ言われているかもしれませんけれども、廣里先生が指摘した5ページでしょうか、サブ・サハラの状況は、おそらくどうやって協力したらいいかわからないくらい困難だと思うんです。もちろんアフリカをリードするキーカントリーがあって、南アとかケニアとか幾つかの優等生の国がありますが、そういう国は別にして、ほかの国々は紛争中であり、飢餓であり、貧困であり、そこに基礎教育の協力を行うにしても、非常にハードルが高い。その関連で、いつだったでしょうか、WFP、国連世界食糧計画の事務局長がいらっしゃって、その方がアフリカで教育問題をやっていると言うので、「食糧援助の方がどうしてまた教育をやるんですか」と尋ねたところ、学校があっても子供が来ない。つまり、家計を助けるために働かなくちゃいけないから、学校に来ない。そこで、給食を導入したら学校に来るようになった。しかし、そのうちまた来なくなった。どうしてかというと、家族のメシ代が必要だから、やっぱり働かなくちゃいけないんだと。最終的には、給食に加えて3人分の弁当を与えたら、毎日来るようになったという、ちょっと笑い話のような話ですけれども、それが現実です。他のドナーがいくら基礎教育で先生を派遣し、いくら教材を送っても、現実に生徒が勉強しに来ないという現実をWFPはとらえて、食糧援助と一緒に連携しながらやっている。なかなかうまいコンビネーションでやっているなと思いました。
 話は、戻りますけれども、やっぱりプロジェクト援助よりプログラム援助の方が、いろんなコンビネーションを持っているので望ましい。日本はこれだけ多種多様の援助メニューを持っていますから、幅のある協力ができる。JICA(ジャイカ)は再来年には新生JICA(ジャイカ)になって、技協、無償、有償とを併せもつわけですから、おそらく教育についてもいろんなニーズに対応できるようにするべきだと思いました。

【木村座長】 ありがとうございました。
 どうぞ、白石先生。

【白石委員】 3点、質問というかコメントですが、最初は、先ほどのプレゼンテーションは、そういう論理構成にされたということで、必ずしもそう考えられているかどうかはわかりませんけれども、論理構成としては、国際社会の大きな流れがあって、それに対して日本がどういうふうに対応していくかという構成になっている。しかし、先ほど荒木さんが言われたことは非常に大事で、こういう問題は無限のリソーシズを必要とするわけで、そういう中で、日本として戦略的にどこに関与していくのかという発想が私は非常に重要だと思います。たとえば、E−9イニシアチブを見ますと、今、評判になっておりますBRICsのうちの3つまで入っております。こういうところに日本としてリソーシズをつぎ込むことがほんとうに賢明なことなのか。むしろ、BRICsになるぐらいの国だったら自分でやればどうかという気も私はします。その意味で戦略的に考えるというのが大事だということが第1点です。
 2点目は、教育システム構築としての高等教育開発のところで、私もラオス、カンボジア、ベトナムで日本の開発系の大学院の協力、貢献があることはよく承知しているつもりですけれども、今、必要なことは、ここで言われておられるように、知見・経験の共有化のための国内外のネットワークの構築なのかどうか。私の見るとことろ、これまで四、五年やってきて、かなりパフォーマンスに違いが出てきている。ですから、一遍きちっとそれぞれのプロジェクトのパフォーマンスを評価した上でめり張りをつける時期に来ているんではないだろうかというのが2点目です。
 3番目はその次のページの「『教育セクター・プログラム支援』:導入と展開」のところで、相手国のオーナーシップを重視する、それから長期コンサルタントの雇用やプロジェクト実施ユニットの削減が大事だというところです。これは筋論としては整合性が高く、おっしゃるとおりなんですけれども、実際には、オーナーシップを重視すればするほど、パフォーマンスとかアカウンタビリティーのところが怪しくなる可能性は常にあるわけです。だから、その辺をどう担保するのか。ここでおっしゃっておられるとおり、アメリカに比べますと、日本の技術協力ははるかに相手のオーナーシップを重視する形になっています。現在のように、予算削減の話がいつもあって、パフォーマンス、トランスペアレンシー、アカウンタビリティーが常に強調されるときに、果たして今までのような日本モデルでずっといけるのかどうか、私は不安があります。ですから、その辺をもう少し何か考えておられるんだったら、これについては教えていただきたいということです。

【木村座長】 では、廣里先生、応対のできる範囲で結構ですから、よろしくお願いします。

【廣里委員】 白石先生のご質問とコメントに対してなんですけれども、E−9イニシアティブにつきましては、もちろんブラジルや中国の基礎教育というのは自国が取り組むべき課題だと思います。それ以外にも、バングラデシュとかパキスタンとか、南アジアの国も入っておりまして、これらの国に関しては、国際支援の枠組みが必要というか重要になると思っております。
 2点目の高等教育開発に関して、開発系大学院のパフォーマンスが違ってきているという点ですが、実は私がかかわっている国際開発研究科も非常に危機感を持っております。というのは、こういうことをこの場で申し上げていいのかどうかかわりませんが、中期計画が終わっていつ再編されるかわからないという状況で、いくらこういった開発系の仕事を頑張ってやっても、大学の中でどういう位置づけになっているのかというところがあります。もともと自然科学系が強い大学における開発系の大学院、文系もある程度実績を上げている大学の開発系大学院で、パフォーマンスも含めて置かれている状況が違うということです。ここでもう一度開発系大学院のネットワークを強化して、組織的な活動を進めることが可能かどうかという意味で、取り上げました。
 オーナーシップをどう担保するのかは、途上国にとっても援助機関・援助国にとってもジレンマです。だれかが触媒的な機能をしないと、セクター・プログラム自体が動かなくなるわけです。長期コンサルタントというのはここでスキルギャップを埋めてきまして、途上国が払うなり、援助側が払うなり、非常に高いお金で雇用されてきたという経緯があります。プロジェクト実施ユニットと言っても出島的なもので、通常、教育省の外にある機関です。ここにいる途上国スタッフは給料が高いということで、教育省から見れば、向こうで何かプロジェクトをやっているというような態度が生まれがちです。日本のやり方はそうじゃなくて、政府カウンターパートと直接に経験なり知識を共有しようとするアプローチを原則としてきたわけです。それが十分ではないとわかっているんですけれども、方向性として、日本がとってきたやり方というのは、財政支援にしても、そもそも財政を吸収する能力がないところに財政支援をやろうとするのではなく、まず財政吸収能力を高めようとする日本型の技術協力のやり方が中長期的には生きてくるのかなという認識です。

【木村座長】 どうぞ、千野先生。

【千野委員】 どうもありがとうございます。ご説明は、現状がどうなっているかという包括的な内容で、それはそれとして大変参考になります。わかりましたけれども、問題は、それに日本がどうかかわっていくかということになるかと思います。そして、ODA全般に関しても、日本のODAはいまや限られた財源の中で戦略性を持たなければならないということが強く言われているわけでありまして、教育協力についても、それはあてはまることであると思います。
 そうしますと、ここでこれからもう少し語られなくてはいけないことは、例えば全般的に地域のいろいろな状況が出ているわけなんですが、それはあくまでも地域の状況であって、それに対して日本がどこの地域にどうかかわるかというふうな地域の選び方、それからその地域によって教育協力のあり方は異なるんではないかと思うんです。そういう地域の特性を日本の教育協力がどこに最も発揮できるかという部分の論議がもう少し必要なのではないかなということを感じております。

【木村座長】 内海先生、どうぞ。

【内海委員】 廣里先生、どうもありがとうございました。
  Education For Allの会議があってからもう15年以上たつわけですけれども、当初のとらえ方というのは、教育は基本的人権である、子どもの人権を保障していこうという、90年代にかなり高まった人権アプローチの一環として教育の普及があったと思います。そして、基礎教育を普及させるためにはどうしたらいいのかという議論のなかで形成された合意として、多文化主義を導入、教育行政における地方分権化、教育指導における児童中心主義の3つのことが出てきたと思います。その正当性に関しては議論はあるものの、基本的にはこうした原則に則った形で日本の教育協力も行なわれてきたと思います。
 今後のことを考えるときには戦略性、ある意味では国益とか日本の立場が重視されることは当然のこととしても、原点に返る、人権としての教育を保障していくという立場を確認することが必要だろうと私は思います。そうしたときに、現在、教育にアクセスできない子どもはどういう子どもかといいますと、最貧層、障害を持った子ども、遊牧民なども含めた少数民族、それから難民や国内避難民になった被災者の子どもがまさに教育支援を必要としていると思います。
 そして、今、廣里先生のご発表にあったフラッグシップ・プログラムとかファスト・トラック・イニシアチブというのは、確かに戦略としては必要なのかもしれませんが、例えばE−9イニシアチブに挙げられている国でも、決して教育開発自体が遅れているわけではなくて、国内の格差がどんどん広がっている国だろうと思います。そういう国に、国内格差のそのまま放置したままでプログラムアプローチというか、財政支援を行ないますと教育から落とされている子どものところに重点的に支援が行くとは思えないのです。ですから、そうした国には、もちろん国際的な連携というのは必要としながらも、日本独自の視点、つまり日本は教育を非常に重視している国であり国民でありますから、すべての子どもに教育という視点から明確に発言していく必要があると思います。
 例えば、日本は開発途上国に対してポリティカル・ウィルがまったくないとは言えないかもしれませんが、非常に弱く、それを表に出さない国ですから、日本人の政策アドバイザーの発言や日本の政策対応に対しては、当該国から信頼されています。ですから、アドバイザーをもう少しさまざまな国へ派遣して、援助協調などに対してアドバイスする支援が重要だと思います。その中には、大学の設置基準とか学校の建築基準などの基本的な法律の整備とか規格の整備もアドバイスできるような体制が必要だと思いますそういうことによって、大学の乱立とか手術できない医者の発生ということも防げるのではないか。
 もう一つは、障害者、女性、難民などの社会的弱者に対する支援を日本はするんだという発信をすることで、日本の国際的な立場というものを発揮できるのではないでしょうか。ODAの中にはいろいろな分野がありますけれども、教育こそそういった基本といいます、人権とか人道というものにふさわしい支援のできる分野ではないかと私は思っています。

【木村座長】 ありがとうございました。ほかに。
 どうぞ、荒木さん。

【荒木委員】 今、日本は教育協力で何ができるのかということが基本的には問われていて、基礎教育、高等教育、ノンフォーマル教育とか、いろんなものがずっと出て、何でもありという感じで羅列されているわけです。その中で、国際的な比較優位というか、日本の得意とする分野とは何なのかということの選択と集中が必要です。予算もないんですよ。今、技術協力関係でせいぜい120億円ぐらいですか。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】 20パーセント弱になると思います。300億円ぐらいになります。

【荒木委員】 要するに、全世界を相手にしてそのぐらいの予算しか割けないような状態の中で、相当選択と集中で固めていかないと、何でもありではばらついちゃって、日本は何をやったのかというか、私は顔の見えるというのは物的には嫌いなんですけれども、もっとスピリット的な意味で顔の見えるというところが見えてこない感じが一つするんです。その辺が、私はODA総合戦略会議にメンバーで参加していて、例えば貧困削減計画の中で一番重要なファクターは教育と保健医療だといっても、セクター計画の基本方針をもうちょっと政府が立てておかないと、国別援助計画を立てるときも、こういう重要な保健医療あるいは教育という分野の基本的なところが見えない形でその国を見るといったって、日本が何ができるかというのをちゃんと査定していないので、見えないんですよ。そういうことが一つあって、これを何度も主張したんですけれども、それは文科省がやるんじゃないですかという話になっていて、やっぱりオールジャパンとして、ODAの予算を使うんだったら使う形でちゃんと計画を立てて基本方針を立てるということが必要じゃないかと思います。
 それから、今度は10ページに書いています国際イニシアチブ・フラッグシップのところですけれども、4番目に教育セクター・プログラム支援、有償・無償、技協とスキームの問題があります。これはこれからの大きな課題なんですけれども、さはさりなん、JICA(ジャイカ)に円借款が一緒になったからといって初めてそれが始まるというのも変な話で、本来、そのスキームは技協、無償、円借とあって、既にある中で何十年もやってきて、一度たりとも連係プレーをやっていないわけです。ですから、これからやるといっても問題なので、要するにそういうフレームワークを早くつくっていくということが大切なので、どういう形でこれを進めていくのかを、実施機関と当該当局だけじゃなくて、有識者グループをつくって、そういう中で議論することが必要じゃないか。そうしないと、いつまでたってもパッケージ型の教育協力はできないと思います。ですから、無償で学校を建てて終わりと先ほどお話があったけれども、もちろん当該国の教育計画の中で学校を何十軒建ててもらいたいという要請があって来るんですけれども、それと我がほうのソフトとの関係、例えば学校経営の問題とかをどういうふうに絡ませていくかは、全くばらばらに行われているのが実態なんです。教育が大切だというならば、そこのところをみんなもうちょっと、真剣にやっていると思うんですけれども、もっと集中的に……。我々がODA大綱をつくるときのキャッチフレーズは選択と集中だったんですよ。ODAのバブル時代というか、たくさん予算がついたころは、ばらまき型で、やむを得ずばらまいてきちゃったので、もうちょっとそういう癖を直して選択と集中でやっていきたい。教育の場面も全く同じだと思います。ほかの場面も今、全く同じ状態になっていますので、もう少しこの話を実際に生かそうとすれば、実態的に今やっているODA政策とほんとうに実質的にリンクしない限り絶対だめだと思います。実際、JICA(ジャイカ)のほうは、基礎教育事業計画なるものをちゃんとつくっているんですよね。頂上作戦で、それが上のほうとどうリンクしているかといったって、上が見えないという状態。だから、基礎教育基本方針というのがあって、先ほど言ったどの国にどのぐらい、どの地域にどのぐらいという配分もまだ決まっていない状態で実施機関が一生懸命やらざるを得ないということになっている。要するに、その矛盾を正さなければ、この問題は難しいということを現場からお話しした次第です。

【木村座長】 ありがとうございます。
 どうぞ、課長。

【渡辺大臣官房国際課長】 私は昨年1年、アフガニスタンに教育省の副大臣顧問ということで、JICA(ジャイカ)から派遣されました。
 まず、基礎教育については私もアフガニスタンで、基本的には教育法の整備と、教員訓練のプロジェクト――これはJICA(ジャイカ)の技プロベースの話です、あと識字等々、JICA(ジャイカ)のプログラム管理という2つの用向きで行きました。しかし、アフガニスタンは治安が悪いということで、事実上、地方展開が難しいんです。中央政府においても、私自身、マンデートはあったんですが、日本からの後方支援と、現実に機能している基礎教育支援の現象というものについてのケーススタディーなどの必要性を感じた次第です。
 また、私が現地におりまして、アメリカとか諸外国のコンサルタントの方々といろいろ話をする機会がありました。彼らには雇われているというイメージが非常に強くあって、日本のノウハウを日の丸を持って向こうにきちっと主張するというような、国を代表して貢献するスピリットが重要であると感じました。つまり、荒木さんも言っておられるように、国策としての教育支援の切り口が、外交、技術協力の問題、ここで本来メーンとなるべき日本の大学、あるいはさまざまな研究機関といったところの援助哲学といいますか、基本的な考え方が、統一されている必要があると思います。この部会として今後どういうふうに基礎教育を支援していくかについての文部科学省としての考え方、哲学を見出していくためには、援助の実情、実態というものをJICA(ジャイカ)からもご紹介いただければと思います。現実を踏まえて、例えばJICA(ジャイカ)から見た場合に文部科学省にはこういうことを期待する、こういう方向性を目指したいんだというふうな点を踏まえて議論をしていただきたいと思います。
 以上です。

【木村座長】 ありがとうございました。
 どうぞ。

【工藤(高)委員】 多分アフガニスタンの話は特殊なケースだと思うんです。もちろんオールジャパンで考えなくちゃいけない問題で、JICA(ジャイカ)を中心にして、教育もあるだろうし、保健もあるだろうし、いろんなセクターをどのような形でトータルで進めるか、他のドナー国と協調しつつ対応する問題です。繰り返しますが戦後復興のアフガニスタンは特殊なケースです。先ほどの内海先生の話に絡むんですけれども、基礎教育協力というのは人道主義的、人権、その種のたぐいだと思うんです。戦略性とまた違う。ですから、高等教育への協力あるいは大学との連携とかアドバイザーを送るという話と基礎教育の分野での協力というのは、やっぱり一線を引くべきだと思うんです。教育を受けられない人たちへの協力は、人道主義に基づくべきなんです。他方、高等教育への協力はまさしく戦略的にするべきです。例えば中国は、アジアに対して非常に戦略的にやっています。教育の現場はどうかは別にして、経済分野では、今、ASEAN(アセアン)の後発国CLMVには中国の影響力が強まっています。例えばミャンマーに対しては、今、日本の政府も経済界もアプローチが難しいのですから、そこに、教育分野の技術で日本のプレゼンスを示すようにできないかなと思います。多分、これは戦略だと思うんです。そういう視点もあっても然るべきかなと。
 要は、基礎教育の分野は人道主義的でどんどん進め、国際貢献をやるべきだと思います。戦略的なところを高等教育のほうに求めるべきじゃないかと思います。
 話を戻しますが、アフガニスタンとか戦後復興国に対する支援は特殊ケースで、日本一国じゃとてもできません。イラク復興への支援も同様で、50億ドルの支援を約束していますけれども、ようやく円借款の案件が決まりつつある。日本の企業がどういう形で係るのかわかりませんけれども、危険が多い。無償の15億ドルは国連機関を通じて供与したんですよ。日本のコンサルタント、商社も直接絡んでいない。だから、そういう特殊ケースと支援の仕方が違うので分けて考えたほうがいいんじゃないかと思います。
 何か反論の反論のようで。

【木村座長】 じゃあ、白石さん、先に。

【白石委員】 反論ですが、基礎教育に対する貢献は人権かもしれないけれども、現に日本の持っている資源に限界がある中で、それをどういう比率でもって配分するか、これは戦略にかかわる問題です。ですから、それを抜きにして、いや、こちらは人権だからやるべきだというんだったら、私は話が違うんじゃないかという気がいたします。

【木村座長】 じゃあ、千野さん。

【千野委員】 私も白石先生と同じようなことを言おうと思っていたので、短く言いますけれども、まさにそのとおりなんです。それからもう一つは、これはこの会だけに限らず、私が幾つかかかわった中でも、言われることはどこでも選択と集中なんですね。ところが、結果的には全然集中しないんです。これも大事です、あれも大事ですって、全部大事です。大事じゃないことはないと思うんです。ですから、どこかで切って選んでいくということが戦略なのではないでしょうか。

【木村座長】 どうぞ、渡辺さん。

【渡辺大臣官房国際課長】 こういった教育プログラムの支援のあり方において、外務省とJICA(ジャイカ)という実施機関との間における意思疎通はやっておられるんでしょうけれども、決定に際するプロセスが、現場においても見えてくることが大切だと思います。
 また、援助の現場において、こちらの思いと実際それを展開するもっと高度なといいましょうか、procedureに対する科学的な分析等々について、ケーススタディーということでもいいんでしょうけれども、投入するだけではなくて、どうすればうまくいくか等についてのきちんとした、大学の専門家あるいはJICA(ジャイカ)のプロフェッショナルな人たちと合同で、もっとその辺の分析作業がなされてしかるべきだと感じています。

【木村座長】 はい、ありがとうございました。
 どうぞ。

【内海委員】 ありがとうございます。私が先ほどEducation For Allのために3つのことと言ったのは、私自身がこの3つの援助政策に賛成しているということはありません。それがいいというわけでなくて、そういう政策が国際的に推進されたのですが、実はうまくいかなかったのです。例えば中央政府がしっかりしておらず、また地方政府も機能していないのに、地方分権化を進めてもできないわけです。それから、しっかりとした教育カリキュラムと教員養成ができていないところに、多文化主義、多言語主義、児童中心主義の教育方法を入れても意味がありません。教師が教科内容についてしっかり把握していない限り、それは不可能なわけです。国際的な教育援助の動向というのはかなり理念的に動いていくというところがあります。それに対して、必ずしも日本としてそれに同調してやる必要はないということを私は申し上げたつもりです。
 それから、白石委員と千野委員のおっしゃった、パーセンテージというのでしょうか、それは確かに必要だと思います。JICA(ジャイカ)にいたときに、最初の開発と教育の援助研究会が開催され初めての教育援助方針作ったことがございます。その時の3つの基本方針の一番目は、2国間ODAの15パーセントを教育分野にするということでした。なぜ15パーセントなのかというと、はっきりした根拠はなかったのですが、基本的には、当時七、八パーセントだったものを倍にしようとか、国際的に70年代は15パーセントだったので、そこへ戻そうという動きを捉えたのだと思います。目標値というのはある意味では戦略的に決めていかなくてはいけないと思います。
 昨年の暮れにUSAIDで、現在の教育支援の内容を聞いたところ、USIDの担当者は、75パーセントを基礎教育にして25パーセントを中等高等教育にするという、かなりはっきりした数字を出していました。これは、かつての100パーセント基礎教育から大転換でして、そういう展開をある時点でぱっとしていく、それが戦略だと思います。しかし、そういうパーセンテージとかを出したときに、その実現をシミュレーションして、実施する場合にはどういう人材が必要なのかとか、この目標を例えば10年続けたときにどういう効果が予想されるとか、数値目標と方法と結果をワンセットにして出していかないと、理解を得られない。単なる掛け声になってしまうという心配はあると思います。

【木村座長】 ありがとうございました。何かありますか。
 じゃあ、小野さん。

【小野企画官(外務省)】 外務省の小野でございます。先生方及び渡辺課長等々から、様々なご意見をいただきましたので、少しだけ発言させていただきたいと思います。
 ご案内の通り、日本はこれまで、教育分野に関し、ハード面とソフト面の支援を実施してきておりますし、またマルチセクトラル、クロスセクトラルともいいますが、保健分野等、他の分野とも組み合わせて支援を行って参りました。確かに「選択と集中」により戦略的に援助を実施していくことも重要ですが、こういった広いメニューを持っていること自体は、非常に日本としての強みでありまして、そこはやはりある程度そのまま活かしてべきじゃないかと感じております。例えば、学校教育を通じた、いわゆるフォーマルエデュケーションだけではなくて、寺子屋といったような日本ならではのノンフォーマル教育を活用した援助案件といったものもございますし、国際機関との連携もございます。例えば、ミャンマーについては、日本が商品開発を支援したケシの代替作物のそばクッキーというのが、WFPとの協力により学校給食として取り入れられたりですとか、日本としてのプレゼンスをそこで示すといったこともございます。また、アフガンは先ほどからいろいろと、渡辺課長ご自身のいろいろなご経験に基づいてのお話もございましたけれども、教育の質の改善ということでは、相当早くから努力はさせていただいております。
 ODAの実施体制につきましては、いろいろな形でのご批判もいただいて、90年代から改革プロセスが続いております。昨年12月には、「ODAの点検と改善」を出させていただいて、その中の10項目をとにかく直ちに実施するということで進めております。また、実施機関レベルでは、JICA(ジャイカ)とJBIC(ジェイビック)の統合プロセスの開始、それに先立ち、政策レベルでは、海外経済協力戦略会議が既に立ち上げられ、また外務省としても機構改革を行い、マルチとバイの連携の強化等、戦略的な援助に向けた企画立案機能を強化するために、政府部内での調整を始めたところです。まだまだいろいろと不備な点があると思いますが、改革に向けた歩みは進めているところでございます。こういった機会にいろいろなご提言をいただきまして、ご示唆いただいた点が企画立案や現場の援助に活かされるように努力していきたいと思っております。
 以上です。

【木村座長】 荒木さん、今のことで何かありますか。いいですか。何かさらにご追加の意見がありましたらお願いします。

【荒木委員】 今お話があったことはそのとおりだと思うんですけれども、やっぱり当局、外務省が組織的なアプローチをちゃんとしなきゃいかん。要するに、戦略本部というか、こういう話をどこへ持ち上げていって、大本営というと戦前になっちゃいますけれども、大本山のところにあって、そこで何か国の政策としてこれをこうするという、要するに最上位のアップストリームの決定場面というのをちゃんとつくらないとだめなんです。だから、みんなどこへこの話を持っていけばいいかといったって、外務省の技術協力課に持っていったってJICA(ジャイカ)を所管しているというだけで、戦略的な話をどこへ持っていけばいいか、今までわからなかったわけです。無償へ持っていったら全然違うところへ行っちゃうという話で、今後の改革はおそらくそういう企画立案本部みたいなのがあって、その中でこういうものを全部吸収して、トータルで政策決定、最終的な戦略会議の政治レベルの話と連動させながらやっていく。そういうふうにして教育問題もやらないと、政策的優位性をちゃんと上のほうで担保しないと予算がとれないんですよ。予算の比較優位がだんだん落ちてくるんです。ですから、上がこうだと決めて、どんと落とせば、下はそれをもって交渉するわけです。そういう流れがなかなか今、できていない。したがって、選択と集中をやれといっても、そういうメカニズムができていないので、言葉だけは踊っているんだけれども、実態が伴わないというのがこれまでのことじゃないかなと思います。

【木村座長】 どうぞ、工藤さん。

【工藤(高)委員】 只今の荒木さんの意見に反論したいのですが、2008年から新JICA(ジャイカ)が発足する。参議院でもうすぐ行革法が通り、その後で新JICA(ジャイカ)法の詳細設計を作るのでしょう。これによって3つの援助メニューがワンセットでそろったわけですから、実施機関に大幅に権限移譲をすべきだと思います。今まで、外務省があまりにも政策じゃなくて、手続き上での細かいことまで微に入り細に入り口を出してきたということが大きな問題で、実施機関にある程度任せればよいと思います。
 もう一つ、技協の問題点は、いわゆる評価システムが確立していないことです。円借とか無償は評価システムがありますが、技協の場合は研修生が来てその後どうなったかとか、どれくらいのスパンで評価すればよいのか、そのシステムがないんです。アフガニスタンの先ほどの文科省の方の場合だったらば、プロ技協にして関連の品物をやるとかというふうに、何か後ろから応援部隊がいれば、もう少し効果的だったかもしれません。そういった評価を行いフィードバックするシステムが成り立っていないのが技協の悲しいところかなと思います。しかし私は前に、AOTSという研修生受け入れ機関の評価システムのメンバーになったことがありますけれども、確かに評価は難しい。どのスパンをとって、どれだけの技術が向上したか、どれだけの満足度があるか。帰国してすぐは皆さん満足度100パーセント、それが5年後どうなるか、技術が高まったかどうかも評価する方法がない。だから、教育分野も含めた技協のある種の評価の方法を鋭意考えていくべきじゃないかと思います。

【木村座長】 ありがとうございました。
 どうぞ、じゃあ、先に末森さん。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】 文科省のほうからもご意見をいただいたアフガニスタンですけれども、ポストコンフリクト国、戦後復興であり、かなり限られた期間でやらなくちゃいけないということもありました。文科省もかなり力を入れておられたので、教育のところはかなりの投入をやっているのが事実で、まだ始まったばかりで、おそらく渡辺さんも行かれていろいろご意見はあるんでしょうけれども。ポイントは、重点課題がたくさんあるので、重点課題を全部やるには、限られた資金の中でどういう配分をするかということです。
 もう一点は、先ほどの工藤さんの技術協力も研修員の受け入れとか専門家派遣とか、プロ技協とかの組み合わせでやっているものがあります。おっしゃるように研修についても評価はやっているんですけれども、研修系事業の総体としての評価がなかなか難しい。これは留学生も同じなんじゃないかと思います。技術協力プロジェクト自体を評価しようというのは、OECDのDACの基準とかも含めて、無償と有償も含めて、また、その公表だとかを今後どうしていくかというのが一つ問題で、研修受け入れだとか専門家派遣とか、もう少し評価の工夫をする必要はあろうかと思いますけれども、かなりのレベルでできつつあると申し上げたいと思います。
 もう一つ、課題のところですけれども、選択と集中でいきますと、国別の協力ですと、国別アプローチで重点課題は何かというのがまずあって、重点課題のうちに、その国で教育といっても、初等なのか、高等なのか、職業訓練なのかというところでかなり国ごとに違ってくるので、一律にすべて基礎教育というわけにもいかない。そこの戦略は、おそらく課題別の戦略と国別の戦略との組み合わせでやっていくというのが非常に重要なので、JICA(ジャイカ)としては、基礎教育についても課題別指針をつくったり、地域別にどういう方針、アフリカのどこが重点国とか、どういう方向でやるかというのは分析もして、一応協力方針の案をつくって、そういう面では政府にそういうのを提言するといいますか、提案していくというレベルで、決定は政府でやるわけですので、政府への提案は積極的に今やっているという現状であります。
 あと、そういう面では、これまでのケーススタディーとかも、課題別指針を作成するに当たりまして、大学の先生とかいろんな人に集まっていただいて助言をいただきながらまとめているということで、機会がありましたらご紹介させていただければと思っています。
 以上です。

【木村座長】 廣里先生、どうぞ。

【廣里委員】 選択と集中がご議論に上がっております。私はきょうの報告で、教育セクター・プログラム支援そのものについては深く取り上げないということを申し上げました。しかし、アフガンはもちろん戦後復興という特殊な例で、低所得国では、教育セクター・プログラム支援が、かなり所与の条件というか前提になっています。政府も援助機関のいろんなミッション全部には対応できないわけで、個々のプロジェクトを乱立する方向にはもう戻らないんじゃないかと思います。セクター・プログラム支援をある程度前提で考えた場合に、例えば極端な話をしますと、北欧の国は、アドバイザー型で、調整機能を持つスタッフを現地に張りつけて、さっき渡辺課長がおっしゃったような後方支援を非常に手厚くやっています。セクター・プログラム支援を仕切ってはいけないんですが、途上国のオーナーシップ重視にもかかわらず、かなり仕切るところがあるわけです。日本は個々にフィードレベルで教育においても非常にすばらしいプロジェクトをなさっているわけなんですけれども、そういった個々のプロジェクトをこれからも続けて、かつアドバイザーも送りつつという方向でいくのか、あるいは、資金のことにも関係しますが、選択と集中ということを突き詰めれば、これからアドバイザー型に特化するのかどうかまで来るかもしれないという気がしているわけです。これは私自身が援助協調の場に何年かいて経験したことの実感でもあります。日本のプレゼンスは、最近、現地ODAタスクフォースで随分改善されてきたと思いますが、例えば教育部門の援助グループのワーキンググループに各援助機関の代表がやって来て、政府スタッフを含めた議論の中でセクター・プログラムができていくんですが、日本は、技協も無償も有償もといったいろんなメニューがありつつ、支援のプロセス自体に効果的に参加できていなかったんじゃないかと思います。ここで私が申し上げたかったのは、潜在性としていろんなメニューがあるわけで、技術協力一つをとっても、資金なり後方支援も含めてアドバイザー型の技術協力をやれば、かなりセクター・プログラム支援の流れの中で効果と実効性のある支援につながるんじゃないかという問題意識で、きょうの報告で触れたということです。

【木村座長】 橋本さん、どうぞ。

【橋本部長(JBIC(ジェイビック))】 私も実施機関の立場で、先ほど荒木委員から、これまで連携を全然やっていないじゃないかというご指摘がありますけれども、そうでもないということを少し弁明しておきたいと思います。
 これは実は残念ながら教育ではなくて保健の分野なんですけれども、こんな例がございまして、ベトナムで、ホーチミンとハノイの拠点病院にJICA(ジャイカ)が集中的に無償資金協力とか技術協力を投入して、そこのレベルアップを図って、その技術を活用して、ベトナムの地方都市における病院の整備に円借款を供与するというものを1年前に実施いたしております。これは、そういった意味では技術協力あるいは無償と有償の連携のいい例で、かつネーションワイドの展開をねらったという意味ではセクターワイドアプローチにも合致する例だと思うんですけれども、基本的には私どもとJICA(ジャイカ)、末森さんのところとの話し合いで進めた話でございまして、実施する立場でいろいろ悪戦苦闘しておりますと、互いにどこにリソースがあって、どう活用できるかということは実施機関同士で結構わかりますので、今後、2年後に統合するということで、よりそういったことがやりやすくなって、今度は連携というよりも1つの機関ですから当然のことですけれども、おそらく教育分野でそういったことが展開できるんじゃないかと考えております。

【木村座長】 ありがとうございました。
 それでは、ほぼ時間になりましたので、きょうはこれで閉じたいと思います。先ほどから集中と選択という問題が出ておりまして、それについての最終的なデシジョンはどこでやるのかという点について多くの議論が出ました。留学生問題について、小規模な協力者会議の座長をやらされたことがあります。報告書を書いていて思いましたのは、一体この報告書はどこへ行くのかなということです。非常に無力感を持ったことを覚えています。その意味からすると、この懇談会は、メンバーの出身先が非常に広範囲で、そういう意味でいうと今までなかったような幅広い会議なんですね。さきほど渡辺さんから一体この懇談会では何をやるんだというご質問が来ましたが、集中と選択をするためにナショナルポリシーを決めるような場所をきちんと国として備えろというふうな提案をここから出していくべきだと考えています。そのような積りで、最終的なまとめをやりたいと思っています。
 それから、先ほどアフガニスタンの話が出ましたけれども、前から多少イギリスの状況を見ていて、援助がばらばらになるのは、どうも日本の大学の責任もあるんじゃないかと思っています。リージョナルスタディーに対する取組みが、極めてお粗末なのではないかと気にしています。英国では、ロンドン大学のSOAS等が一度滅びそうになりましたが、政府がてこ入れして大きな金を出して今日に至っている。先程メールを見たのですが、ジャパニーズ・アンド・チャイニーズ・スタディーのセンターの創設に関して、オックスフォードとSOASが組み、シェフィールドとリーズが組んで大変な争いをやった結果、シェフィールドが勝って、非常に大きな予算がつき、日本と中国の研究拠点ができることが決まったようです。そういうふうなことが、日本ではいまだに起きていませんよね。その辺のところを大学として考えていく必要があると思います。
 それでは、時間が参りましたので、これで終わりたいと思いますが、事務局、次回等の予定について、よろしくお願いいたします。

5. 事務連絡
  次回は、6月15日(木曜日)14時から16時、文部科学省省議室に於いて開催する。

−了−



(大臣官房国際課国際協力政策室)

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